一側性難聴について考える 外来相談の一例から
片耳は聞こえる。
それでも、会話がつらいとき。
突発性難聴のあとに残った聞こえにくさや耳鳴。相談できること、治療の選択肢、人工内耳について、患者Aさんと菅原の会話を通して紹介します。

患者 Aさん:50代。数年前の突発性難聴後、右耳に高度な難聴と耳鳴が残り、現在は通院していないそうです。
菅原:難聴外来を担当。今回は一側性難聴の診療について説明しました。
片耳は聞こえるのに、会話がつらい
患者 Aさん数年前に突発性難聴になり、治療を受けましたが、右耳がほとんど聞こえないままです。左耳は聞こえるので何とか暮らしています。ただ、会議や食事の席では、話が分からなくなることがあります。
菅原片耳で聞こえていても、周りが騒がしかったり、何人かが同時に話したりすると、聞き取りが難しくなることがあります。音がどちらから来たのか、判断しにくい方もいます。
患者 Aさん聞き返すのが申し訳なくて、分かったふりをすることもあります。聞こえない側から呼ばれても気づかず、困ることがあります。
菅原診察では、聴力の数値だけでなく、そうした場面も教えてください。座る位置を工夫する、聞こえやすい側から話してもらう、一人ずつ話してもらうなど、周囲の協力で負担を減らせる場合もあります。
通院が途切れていても相談できますか
患者 Aさん「これ以上は難しい」と思って、今は通院していません。時間がたっていても相談してよいのでしょうか。
菅原相談できます。まず、現在の両耳の聞こえと、日常の困りごとを確認します。難聴の原因や期間によって選べる方法や期待できる効果は異なりますが、今の状態を調べて、対応を一緒に考えることができます。
患者 Aさん受診すると、すぐ手術の話になるのではと心配です。
菅原相談したことで手術が決まるわけではありません。補聴器や、聞こえにくい側の音を反対側へ届けるCROS(クロス)補聴器なども含めて検討します。検査と説明を受けてから、ご自身に合う方法を考えていただけます。
人工内耳は、どのような治療ですか
患者 Aさん片耳の難聴にも人工内耳という選択肢があると知りました。補聴器とは違うのですか。
菅原補聴器は主に音を大きくして聞こえを補います。人工内耳は、体の外の装置で音を拾い、電気信号に変えて、耳の奥の蝸牛に入れた電極から聴神経を刺激します。体内装置を埋め込むため、入院と手術が必要です。
患者 Aさん私のように、突発性難聴のあと片耳が聞こえない場合も対象になりますか。
菅原対象となる可能性はありますが、診断名だけでは決まりません。両耳の聴力、ことばの聞き取り、騒がしい場所での聞き取りや音の方向の判断、画像検査などで評価します。補聴器などの効果、全身の状態、術後に装用や練習を続けられるかも確認して、適応を判断します。
聞き取りや耳鳴は、どのくらい変わりますか
患者 Aさん会話が聞き取りやすくなったり、音の方向が分かるようになったりするのでしょうか。
菅原聞こえにくい側からも音の情報を取り入れることで、騒がしい場所での聞き取りや、音の方向を判断する力が改善する可能性があります。ただし、効果には個人差が大きく、元の聞こえに戻る治療ではありません。十分な効果を実感できない場合もあります。
患者 Aさん右耳の耳鳴も続いています。静かな場所では特に気になります。
菅原人工内耳の装用で耳鳴が軽減する方もいますが、すべての方に効果があるわけではありません。耳鳴があるという理由だけで手術を決めるのではなく、難聴の状態や生活への影響などを含めて判断します。耳鳴の困り方についても診察でお話しください。
手術をしたら、すぐ聞こえるのでしょうか
患者 Aさん手術後、すぐに会話ができるようになるのですか。
菅原傷の状態を確認して装置を使い始めたあと、音の感じ方に合わせる「マッピング」という調整と、音やことばを聞く練習を行います。日常での装用と定期的な通院を続けながら、新しい聞こえに慣れていきます。
患者 Aさん手術の心配もあります。仕事との両立も気になります。
菅原手術には、めまい、味覚の変化、感染、残っている聴力の低下などのリスクがあります。入院期間や復職の目安、通院・練習の負担も含めて個別に説明します。期待できることと負担の両方を確認して、治療を選ぶことが大切です。
費用についても相談したいです
患者 Aさん人工内耳は高額なイメージがあります。費用のことも教えてもらえますか。
菅原一側性高度難聴に対する人工内耳治療は、2026年から、所定の条件を満たす場合に保険診療の対象となっています。ご自身が該当するかは診察・検査で確認します。
菅原保険診療の自己負担には高額療養費制度を利用できます。上限額は年齢や所得などで異なり、入院中の食事代や差額ベッド代などは対象外です。具体的な費用や手続きは、加入する医療保険の窓口や病院の費用相談窓口で確認してください。
患者 Aさんまずは今の聞こえを調べて、選べる方法を知りたいです。
菅原診察では「会議で困る」「耳鳴で集中しにくい」など、具体的な場面をお聞かせください。ご希望や生活の状況も伺いながら、検査の結果をもとに相談を進めます。
受診のご案内
山口大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科
担当外来:耳科手術外来または難聴遺伝子外来
受診方法:再診の場合は電話で予約、初診の場合は主治医の先生の紹介状を取得してください
予約・問い合わせ:0836-22-2520
受付時間:平日8:30-17:00
なお、急に聞こえが悪くなった場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診してください。