吉田遺跡の古代に注目
山口市南部の鋳銭司(すぜんじ)地区に古代の官営銭貨鋳造機関「周防鋳銭司(すおのうじゅせんし)」が設けられたのは、天長2(825)年のこととされています。周防鋳銭司の跡地は昭和48(1973)年に国の史跡に指定され、近年は山口市と本学とで共同調査が行われており、鋳損じ銭をはじめとする貴重な発見が相次いでいます。
本年は、周防鋳銭司が設置されて1,200年にあたることから、山口市により記念事業が開催されることになりました。当館は、山口市歴史民俗資料館で開催される『古代の山口』展に連携して、古代の吉田遺跡に関する展示を行うことになりました。
山口県山口市平川地区に所在する本学吉田キャンパスは、旧石器時代から江戸時代まで全時代の埋蔵文化財を包蔵する「吉田遺跡」の中に立地しています。半世紀以上に及ぶキャンパス内での発掘調査により、遺跡の各時代の性格などが明らかとなっていますが、中でも奈良時代から平安時代にかけて、官衙(かんが:役所のこと)が存在したことが大きな特徴として挙げられます。
古代律令制下では、行政組織は国・郡(評)・里(郷)制がとられていました。国はその規模により大国・上国・中国・下国に区分されており、周防国は上国に位置づけられていました。国の下には郡が置かれており、周防国には大島郡、玖珂郡、熊毛
郡、都濃郡、佐波郡、吉敷郡が置かれました。現在の山口市平川地区は、吉敷郡内に位置します。周防国で国司が政務を執る国衙(こくが)は現在の防府市に置かれましたが、吉敷郡で郡司が政務を執った郡衙(ぐんが)(郡家(ぐうけ))の所在地は未だ明らかとなっていません。
吉田遺跡に官衙が存在したことは確定的ですが、その位置づけ、役割については未だ不明確な点が数多く残されています。展示では、官衙成立前夜から官衙設置期までの吉田遺跡の状況を、数多くの出土品から紐解いていきます。ぜひ足をお運びください。
主 催:山口大学埋蔵文化財資料館
協 力:山口市教育委員会
会 場:埋蔵文化財資料館展示室
会 期:令和7年7月22日(火)〜11月21日(金)
開館時間:9時〜17時
休 館 日:土・日・祝日、8月12日(火)〜18日(月)
入 館 料:学内・学外者問わず無料