金属元素の性質を活かした薬理活性化合物の創出

ビスマス製剤のルーツは、今から約200年も前にさかのぼります。
古くから
抗菌作用を有することが知られ、感染性腸炎の治療や
ヘリコバクターピロリ菌の除菌に無機ビスマス化合物が用いられていたこともありました。
現在、
海外では次サリチル酸ビスマス(BSS)が整腸薬として市販されていますが、
国内では人体への副作用を理由に認可されていません。
ビスマス化合物の抗菌活性や副作用に関する作用機序には、
まだ不明な点が多く残されています。

私たちは、ビスマス製剤の作用機序の解明や、副作用を軽減したビスマス製剤の創出に向け、
研究を進めています。

白金や金、アルミニウムなど、様々な金属元素が薬剤の中に含まれています。
例えば、白金製剤(抗がん剤)のシスプラチンはPtCl
2
(NH3)2の分子構造を持ち、
がん細胞のDNAに白金が配位して
DNAの複製を阻害することで、
がん細胞の増殖を抑えます。
「金属は体に有害」というイメージがありますが、毒と薬はまさに紙一重です。

私たちは、窒素族で最も重い元素「ビスマス」の薬理活性に着目し、
ヒトと同じ真核生物である酵母(Saccharomyces Cerevisiae)に対して増殖阻害活性を示す 
有機ビスマス化合物(ビスマス製剤)の創出を行っています
(生物分野 宮川勇 教授との共同研究)。
この研究は、2009年度の山口大学理学部ハイライト研究に採択されました。

最近の研究成果として、ジフェニルスルホンを骨格とする以下の有機ビスマスが、
酵母に対して非常に高い増殖阻害活性を示し、C logP 値(疎水性の尺度)の減少とともに 
阻害活性が高くなる(構造活性相関)ことを明らかにしています。

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