山口大学大学院医学系研究科眼科学

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研究会・講演会記録


アイリーア発売記念2周年記念講演会in山口

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日 時:平成27年3月12日(木) 19:00~

場 所:山口グランドホテル3階 末広

特別講演:『加齢黄斑変性診療のトレンド』
関西医科大学眼科学教室 主任教授 髙橋 寛二 先生

特別講演印象記

柳井 亮二

 特別講演は関西医科大学 眼科学教室 主任教授 高橋 寛二 先生に『加齢黄斑変性診療のトレンド』というテーマでご講演頂きました。
 高橋先生は昨年 NHKの「ためしてガッテン」の「1200万人! 目の現代病 ~ 危険な目ヤニ 発見ワザ」に出演され,大反響がありました。患者さんだけでなく,一般の方へ病気について知っていただくことが,加齢黄斑変性AMDの予防や早期発見につながるということで,今週末にもテレビ出演の予定があるとのことでした(チョイス@病気になったとき「モノがゆがんで見えるとき」3/14 (土) 20:00 ~ 20:45 NHKEテレ1)。今回はそんなご多忙の中,初めて山口までお越しいただくことが出来ました。

 診断におけるトピックとしては「新しい前駆病変:reticular pseudodorusen RPD網状偽ドルーゼン」が治療をしても悪化する前駆病変で,今後の外来診療で重要な所見となるようです。光干渉断層計OCTの進歩もあり,最近の数年でますます研究が進展している分野で,色素上皮の下に沈着する「軟性ドルーゼン」とは異なり,RPDは網膜下に沈着物が発生し,徐々に数が増えてくるとのことです。RPDの特徴としては,ドルーゼンと同様の物質で,女性,高齢者に多く見られ,眼底の上方,脈絡膜(中心窩)や網膜外層が薄くなる(outer retinal dystrophy),経過中に消失することがあるとのことです。

 「萎縮型AMD」は日本人の有病率が0.1%(約5万人)の眼疾患ですが,今後増加する可能性があると危惧されていました。滲出型AMDに移行することもあり,現在までに有効な治療法は開発されていません。軽症の萎縮型AMD治療は予防が大切で,最近の研究結果から薬物治療の可能性が模索されているようです。

 「地図状萎縮は病変部」が250μm以上で境界線明,脈絡膜の中大血管が透見可能で,網膜自家蛍光FAFとOCT(脈絡膜信号の増強)による検査・経過観察が重要です。重症化の指標としては中心窩を含むものと含まないものが,視力に大きく影響するとのことでした。興味深いことに,萎縮型AMDにみられるouter retinal tubulation ORT 網膜外層チューブ形成があると地図状萎縮の進行が遅いということでした。網膜色素上皮細胞と網膜視細胞の関係はなかなか複雑ですが,このような現象のメカニズム解明することが,AMDの病態の解明につながっていくのでしょう。
 「AMDの脈絡膜厚」についても研究されており,ポリープ状血管腫,典型AMD,網膜血管腫状増殖RAPの順に脈絡膜が薄くなっている傾向があることを示されました。ポリープ状血管腫では脈絡膜深部血管の拡張がみられますが,そのメカニズムは脈絡膜毛細血管板が萎縮・狭小しているのか,間隙の繊維が組織の密度が低下しているのかについては未だ明らかにされていないようです。近年,AMDの治療の主要な位置を占めている抗VEGF療法によっても,脈絡膜が菲薄化することが知られており,抗VEGF薬の種類によっても菲薄化の程度が異なるようです。菲薄化は脈絡膜間質の容積の減少や脈絡膜血管径の狭小化によって起こるのではないかと考察されていました。

 「治療」AMDの治療指針は2012に発表されましたが,既に古くなっているとのことです。ガイドラインの改定は,なかなか時間のかかる作業とのことですが,治療方法が次々と開発実用化されているため,最新の治療方法についていくことが大切なようです。AMDは多因子疾患なので,経過観察を行うときにもライフスタイルに注意することが重要です。世界中で遺伝マーカー,環境因子,行動因子,遠視などのその他の因子についての研究が進んでおり,予防的治療法を確立することが現在の重要課題となっているようです(Lancet 2012)。

 「食生活とAMD発症リスク」以前からAMDの発症には食生活が重要な因子であることが知られていましたが,昨年の報告で東洋パターンの食事のほうが西洋パターンの食事よりもAMD発症のオッズ比を早期でも後期でも低くする効果があることが明らかにされました(AJO 158: 118-127, 2014)。
 AMDに対する治療法は日進月歩で,その変化に対応することは眼科医の使命となっています。高橋先生の特別講演は現在のAMD診療に必要な最新の知見についてわかりやすく解説していただきました。講演後の情報交換会においても,質疑応答に対丁寧にご返答いただき、大変有意義な特別講演でした。


第14回高次統合感覚器医療研究会

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日 時:平成27年3月11日(水) 19:00~

場 所:国際ホテル宇部3F「パール」

特別講演:『網膜疾患の病因と病態機序の解明』
独立行政法人国立病院機構東京医療センター分子細胞生物学研究部 部長 岩田 岳 先生

岩田岳先生の特別講演を拝聴して

永井 智彦

 東京医療センター臨床研究センターの岩田岳先生に「網膜疾患の病因と病態機序の解明」という題でご講演いただきました。内容は、加齢黄斑変性症・緑内障・オカルト黄斑ジストロフィのそれぞれの原因遺伝子の機能解析について、最後に網膜変性疾患における全エクソーム解析プロジェクトについてお話いただきました。

 原因遺伝子の網羅的な解析において、「次世代シーケンサー」が非常に重要なキーワードとなっています。20年前では、180万塩基の配列解析に、キャピラリー電気泳動法にて1年以上の期間と100万ドル以上のコストが必要でした。初めてヒトゲノムが解析されたのは2003年のことで、当時は配列解析に13年間、コストも30億ドルほどもかかっていました。2003年のゲノム解析の対象は数人のゲノムが混じったものでしたが、2007年に初めて個人一人の全ゲノムが解析されました。その際に投入された次世代シーケンサーは、わずか2ヶ月間、100万ドル以下のコストで読み切っています。さらに2012年には1回のランで解析できるデータ量が2007年のシーケンサーの1,000倍まで飛躍、2014年に登場したシーケンサーでは3日間で16人分の全ゲノム配列を決定できるなど、ムーアの法則をはるかに超えるスピードでの技術躍進がみられます。(2014年にIllumina社が発売したHiSeq X Tenは上記の性能の機器10台分をひとまとめとしているため、その10倍の量の解析が可能です。これは1年間ではおよそ18,000人分以上のゲノムデータ量に相当します。)コスト面では、2014年のシーケンスの登場により一人あたりのゲノム解析がついに1,000ドル(約12万円)を切るようになりました。(これは私のおよそ1年間分のおこづかいに相当します。)

 このように以前はできなかった大量シークエンシングにより、疾患原因遺伝子の検索様式も大きな変貌を遂げています。岩田先生は、次世代シーケンサーを用いたエクソーム解析を行い、疾患と関連の高い遺伝子の特定、さらに発生機序に踏み込んで解析をされています。 加齢黄斑変性(AMD)においては、ARMS2/HTRA1というハプロタイプが疾患関連遺伝子として取り上げられました。これらの遺伝子多型は連鎖不平衡を有しており、欧米人で強く相関すると言われているCFHよりも高い疾患相関性を示しています。ARMS2/HTRA1は染色体10番にローカスがあり、ARMS2のエクソン1番、2番、HTRA1のエクソン1番が存在します。AMD患者では途中から塩基配列が欠損しており(insertion/deletion:indel)、indel領域がある人はない人に比べてAMDのリスクが5-6倍と高くなることがわかっています。RGC5(神経視細胞由来の株)にてHTRA1の発現が確認され、またAMD患者のiPS細胞では健常人と比べHTRA1の発現が上昇していることがわかりました。HTRA1のトランスジェニックマウスを作成したところ、網膜切片より脈絡膜からの血管新生を確認しました。免疫染色においても血管新生であることが確認でき、これらのTGマウスが血管新生モデルとしても利用できるのでは、とのお話でした。今後は治療戦略としてHRTA1がターゲットとなるのでしょうか。

 次に緑内障の関連遺伝子についてお話されました。緑内障に関しては20年以上ゲノム相関解析が行われていますが、複数の遺伝子領域の関連が示唆されているものの、未だ遺伝子は特定されていません。2007年に発表された緑内障関連遺伝子に関する論文では、特にMYOC(染色体1番)、OPTN(染色体10番)の二つの遺伝子に再現性がみられています。岩田先生はOPTNの、特にE50K(グルタミン酸→リジンへの変異)に注目されました。OPTN E50Kの緑内障家系が特定され、解析がしやすかったことが理由の一つです。OPTN に関しては、現在、NF-kB、ミオシンⅥ・Rab8と関連するゴルジ体からの生体分子の移動、オートファジーに関与していることがわかっています。また2010年にはOPTNが筋萎縮性側索硬化症と関与していることも報告されました。ユビキタスなプロモーターを使ってOPTN変異体を発現するマウスを作製したところ、外網状層が変性し薄くなっていることが確認されました。HEK293にOPTNと変異体のOPTNをそれぞれトランスフェクションしたところ、発現量の減少を認めました。そこで細胞に E50K の変異体と正常体をそれぞれ発現させ、それらをbaitとして結合するタンパクを質量分析計で解析したところ、TBK1というタンパクが浮上してきました。Bx795(TBK1阻害剤)にて確認したところOPTN変異体との結合抑制(沈殿の抑制)を認めました。TBK1がE50K患者において治療のターゲットとなる可能性が示唆されました。

 オカルト黄斑ジストロフィー(OMD)に関しては、RP1L1(染色体8番)という遺伝子の変異(R45W、アルギニン→トリプトファン)が原因として挙がっています。RP1L1は、色素変性症の原因遺伝子である RP1 と相同性が高くRP1にlikeな遺伝子で、マイルドな色素変性を引き起こすそうです。RP1L1はヒトでは反復配列が多く、マウスではみられないようです。マウスはヒトと違い黄斑部が存在しないため、そのような構造の違いもRP1L1が関わっているという可能性が頭をよぎりましたがどうでしょうか。OMDの診断にRP1L1遺伝子の解析が有用である可能性が示唆されました。

 最後に網膜変性疾患のエクソーム解析についてお話しされました。網膜変性疾患の原因遺伝子として200以上の遺伝子が発見されています。現時点でも発見された遺伝子数は増加し続けておりプラトーに達する気配がないため、網膜色素変性をはじめとした網膜変性疾患の原因遺伝子を解析する研究班を立ち上げたそうです。また解析のため、担当医と情報をやり取りできるオンライン症例登録システムを採用しています。日本人の遺伝性網膜疾患家系における既知遺伝子変異は17%、既知遺伝子ではあるが未知の遺伝子変異が発見された家系が14%でこれを合わせても約30%であるため、その他の70%の家系は新規原因遺伝子である可能性が示唆されます。耳鼻科疾患では遺伝性のものが多く7割ほどはすぐ原因遺伝子が見つかるそうで、遺伝子解析分野では眼科とは様子が異なるようです。

 岩田先生のお話をお聞きして、火炎放射器のような荒業とも言える広く網羅的な全エクソーム解析と、狙いすましたライフルのようなピンポイントでの遺伝子の機能解析・疾患機序の解明と、対照的な研究手腕が非常に印象的でした。私も、マウスが逃げないようにと段ボールの囲いを完成させて喜んでいる場合ではなく、研究内容をより広く検討し、より深く研究することを目標に精進していきたいと思います。


ロンドン大学山口大学スペシャルセミナー2015

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日 時:平成27年2月24日(火) 18:00~

場 所:山口大学医学部総合研究棟8階 多目的室

特別講演:『The mechanism and potential treatment of Prominin1-mediated photoreceptor degeneration』
University College of London 教授 大沼 信一 先生

大沼信一先生の特別講演を拝聴して

折田 朋子

 平成27年2月24日に開催された、ロンドン大学山口大学スペシャルセミナー2015にて、ロンドン大学の大沼信一教授による、”The mechanism and potential treatment of Prominin1-mediated photoreceptor degeneration”という演題を拝聴した。

 近年、長州ファイブによるロンドン大学留学150周年記念を迎え、日英学術交流がさらに盛んになっているなかで、ロンドン大学から山口大学へ来ていただき、大変感慨深いものがあった。

 Prominin-1は5回膜貫通型の膜糖タンパク質で、細胞表面に発現する造血幹細胞や前駆細胞のマーカーとして知られている。このタンパクは、幹細胞の特性維持や細胞増殖に関与しているほか、網膜の視細胞死をひきおこす遺伝病の発症にもかかわっており、その変異のパターンによって網膜色素変性症になったり、Stargardt病になったりする。これらの遺伝病は現在のところ治療法もなく、また家系によって進行の度合いに差がある。今回はProminin-1の変異によって引き起こされる網膜変性疾患の分子メカニズムについてご講演頂いた。
 まずC57BL/6という遺伝的背景をもつwild typeとProm1 KO mouseを用いて、網膜の組織構造を免疫染色で検討した。Prom1 KO mouseでは生後14日(p14)の時点では視細胞外節層の厚みは変わらないが、p20になると視細胞外節層は消失した。純粋なC57BL/6のKOマウスの交配が困難なため、C57BL/6とCBA/NSlcを掛け合わせたハイブリッドマウスで検討したところ、ハイブリッドProm1 KOマウスでは、同様にp14の時点で視細胞外節層の変性が始まるが、p20の時点で純粋なC57BL/6のKOマウスと比べてみると、外網状層やIS/OS lineは比較的保たれていることがわかった。このことから、Prominin1欠損による表現型は、遺伝的背景によるところが大きいことが示唆された。
 電子顕微鏡でp20のKO mouseの視細胞を観察すると、視細胞外節の部分がかなり変形しているのが認められた。また免疫染色にてロドプシンとM-Opsinの局在を検討したところ、wild typeとは異所性にその発現が認められた。
 視細胞の変性が、マウスの開眼するp14以降で認められることから、Prom1による視細胞変性に光が関与していると考えた。そこで、mouseを暗闇で飼育すると、prominin-1 KO mouseではp20の時点で、視細胞外節が障害されていないことがわかった。またERGにて網膜機能をみてみると、やはり暗闇で飼育したKOマウスの網膜機能は、普通の明暗サイクルで飼育されたKOマウスに比べて保たれていることがわかった。
 光障害による網膜変性には様々な要因が知られているが、視サイクルが大きく関与していると言われており、Prom1 KOマウスでは視サイクルに必要なAbca4とRdb12の発現が著名に低下していることがわかった。
 もともと抗腫瘍作用をもつことで知られているビタミンA誘導体のFenretinideは、視サイクルを遅らせることでリポフスチン形成を阻害する。そこでこのFeniretinideをProm1 KOマウスに投与しその作用をみてみると、p30の時点でも網膜の構造が保たれていることがわかった。

 

 遺伝性網膜変性疾患の分子メカニズムについて、動物モデルを用いて非常にわかりやすく説明していただいた。また現在、治療法のない網膜変性疾患に、少しでも変性を遅らせる可能性のある薬剤についての話もあり、研究の醍醐味のつまった、大変有意義な講演であった。


アゾルガ発売1周年記念講演会in山口

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日 時:平成26年10月9日(木曜日)19:00~20:30
場 所:ホテル松政 2階 芙蓉の間

寺西 慎一郎

 2014年10月9日に開催された「アゾルガ発売1周年記念講演会in山口」で、吉川眼科クリニック院長の吉川啓司先生による特別講演「中期緑内障のマネージメント ~アラ探しは“粘入り”に~」を拝聴しました。吉川先生は、学会や研究会で大変お忙しくご活躍されている先生で、本年6月には第3回日本視野学会学術集会を主催されました。吉川先生の演題名は一目見て「吉川流」とわかる、味のあるネーミングが多く、大変面白く思わず聞き入ってしまう講演をされる先生です。

 今回の特別講演では、中期緑内障マネージメントにおいて、眼科医は「念入り」ではなく、むしろ「粘入り」に、「粘って診ていく(=アラ探しをする)」ことが重要であることを解説されました。緑内障診療の基本は、現状と危険因子を把握することであり、緑内障は「乏症状」疾患であるため、眼科医の評価が重要な役割を担っている。特に中期緑内障から後期緑内障の患者では視野障害進行がQOL低下に直結するため、粘入りにアラ探しする必要があり、そのためには「ベースライン眼圧測定」と「ベースライン視野測定」が不可欠であることを示されました。

 具体的には、年10回(ネンテン)眼圧を測定すれば眼圧変動を把握することができ、年2回(ネンニ)視野の計測を推奨されました。眼圧測定値は「変動」と「変化」を区別し、異常値が検出された場合は再検査で確認すべきと強調されました。さらに、視野検査の3連続悪化は、視野悪化の予想因子になりうる事を示され、あらためてベースライン視野や年多数回視野検査の重要性を再認識する機会となりました。また、正常眼圧緑内障において視野障害進行を生じる乳頭出血の臨床的意義と、乳頭出血見逃し防止のため定期的な眼底写真撮影の重要性についてお教えいただきました。

 角膜透過性に着目され、点眼薬を「内用薬」としての視点から薬剤作用機序について解説いただき、炭酸脱水素酵素阻害薬(CAI)点眼製剤化の経緯についてお教えいただきました。また、点眼薬による全身副作用の影響は小さいものではない点について指摘され、驚きとともに高齢者に対する処方は慎重に検討すべきであると再認識しました。β/CAI配合剤の使用上の注意、後発医薬品の実際とその注意点についても触れられ、アドヒアランスを考慮して点眼数最少化を目指すことが粘入り治療になるとお話されました。

 中期緑内障においても症例毎に多様性・多彩さがあることについても言及され、各症例を粘り強くアラ探しする診療=Personalized medicineが中期緑内障のマネージメントにおいて必要であることを強く実感しました。

 講演内容以外に関するお話では、Big dataを解析した論文の増加や単独施設での臨床研究が難しくなっている状況、統計学的解析で世界と競争しにくい日本の現状について懸念を示されました。今回ご提示いただいたスライドはversion 50を超えると伺いました。長年蓄積されたデータを元に作成され、吉川先生のこれまでのご経験が濃縮されたもので、まさに「明日からの診療に役立つ」実践的な講演でした。講演後の質疑応答に対しても丁寧にご返答いただき、大変有意義な特別講演でした。

山口大学眼科大学院セミナー

日 時:平成26年4月9日(水曜日)18:00~
場 所:総合研究棟8階多目的室

柳井 亮二

 平成26年4月9日,ハーバード大学から二人の基礎研究者をお招きして,山口大学眼科大学院セミナーが開催されました。 講演のテーマは肥満と血管新生で,メタボリックシンドロームや糖尿病など現在の医療の重大な問題となる疾患の基礎となる分野の最新の知見を拝聴することが出来ました。

 Dr. Kip M. Connorは免疫および血管新生の専門家で,現在,Massachusetts Eye and Ear Infirmary, Harvard Medical SchoolのAssistant Professorです。今回の講演では,網膜血管新生における補体系の役割,特に副経路の重要性について,ノックアウトマウス(Fb-/-)を用いた研究成果について概説していただきました。マウスの未熟児網膜症モデルを用いて,補体の副経路が血管新生の退縮機構に深く関与していることを綺麗な免疫染色とともに示されました。これまで,補体の副経路は自然免疫での重要な役割について知られていましたが,免疫細胞が血管新生においても重要な働きを担っているということでした。

 Dr. Linh VongはNovartisのシニアサイエンティストで,糖尿病および肥満に関連する神経回路のマウスモデルの開発を行っています。今回の講演は,前職のBeth Israel Deaconess Medical Center/Harvard Medical Schoolで発表した肥満関連因子の神経制御について概説していただきました。肥満は食事摂取量とエネルギー消費量のアンバランスで起こります。これまでの研究で,食事摂取のパターンや運動の頻度など食事摂取と日常の行動に,脳による神経支配が重要であることがわかっています。今回,Dr. Vongは下垂体にあるMC4受容体が食事摂取量を規定していることをCre-LoxPシステムを用いて特異的な遺伝子発現をさせたノックアウトマウスの体重の変化や神経電図などにより示していただきました。どの図も実に洗練されており,難しい内容でしたが非常に明確な論理展開で,わかりやすく解説していただきました。肥満やメタボリックシンドロームは生活習慣病と言われるように食生活が重要な危険因子ですが,遺伝的な背景も関連していることが示されたことで,新たな治療戦略の可能性が広がったのではないかと思います。 両講演とも英語のスライド,講演で翻訳スライドや通訳もありませんでしたが,眼科だけでなく第3内科や免疫学教室の先生方も出席していただき,大変盛大な研究会となりました。講演後も若い先生が両演者に様々な質問をぶつける時間があり,生の英語に触れるいい機会となりました。

 講演後は二人の演者を囲んで宇部市内の料亭でささやかな懇親会が催されました。お二人はご夫婦で,Dr. Connorは私の留学先のボスでした。二人とも初めての来日で,東京でのWorld Ophthalmic Congress 2014 TOKYOへ出席した後に,京都の観光地を巡ってから,山口まで新幹線で移動して来てくださいました。アメリカは高速鉄道網が発達してないため,日本の新幹線に静かさ快適さにとても感動され,日本の技術力の高さを改めて評価していました。日本食もお寿司や天ぷら,そば,湯葉など色々なものに挑戦されたようで,築地魚市場やラーメンスタジアムなども訪問していましたが,京都で行った「居酒屋」がBestとのことでした。マムシ酒を飲んで,熊の肉を食べたといわれていたので,どんなお店に行ったのだろうとみんな不思議がっていました。研究の話でも大変盛り上がり,インターネット電話を使って日米で合同ラボミーティングを開催することで,今後も共同研究を進めていくことなどが提案されました。 これを機会に今後も日本国内だけでなく海外からの演者を招いて大学院セミナーを企画していき,眼科ならびに医学全般の知識の向上と優れた研究者との交流の場を設けることができればと思います。


参考文献
Kip M. Connor:

1.The alternative complement pathway regulates pathological angiogenesis in the retina. FASEB J. in press.
2.Melanocyte-secreted fibromodulin promotes an angiogenic microenvironment. J Clin Invest. 2014 Jan 2;124(1):425-36.
3.PGC-1α regulates normal and pathological angiogenesis in the retina. Am J Pathol. 2013 Jan;182(1):255-65.

Linh Vong:
1.An excitatory paraventricular nucleus to AgRP neuron circuit that drives hunger. Nature. 2014 Mar 13;507(7491):238-42. doi:10.1038/nature12956. Epub 2014 Feb 2.
2.GABAergic RIP-Cre neurons in the arcuate nucleus selectively regulate energy expenditure. Cell. 2012 Oct 26;151(3):645-57.
3.Leptin action on GABAergic neurons prevents obesity and reduces inhibitory tone to POMC neurons. Neuron. 2011 Jul 14;71(1):142-54.


Yamaguchi Glaucoma Seminar

日 時:平成26年4月8日(火曜日)18:30~
場 所:総合研究棟8階多目的室

鈴木克佳


京都の「哲学の道」

 4/2-4/6にWorld Ophthalmology Congress 2014 Tokyoが開催され世界各国から眼科医が東京に集まりました。私がロンドン留学の際に大変お世話になったMoorfields眼科病院/ロンドン大学眼科研究所のGarway-Heath教授たちも来日されました。折角の機会だったので、WOC後に山口大学で講演をお願いしたところご快諾いただき、4/8にYamaguchi Glaucoma Seminar を開催することとなりました。
 Garway-Heath教授と研究マネージャーのHo先生は5度目の来日でしたが、同行された友人のスイス人夫婦(眼科医と産婦人科医)は初来日だったので、東京から移動して途中で京都に寄った後、山口まで来ていただきました。


Yamaguchi Glaucoma Seminarの講演後記念撮影
中央左からGarway-Heath教授、
Ho先生、Gordana先生(スイス人眼科医)

 Yamaguchi Glaucoma Seminarの講演では、「The United Kingdom Glaucoma Treatment Study – A Summary -」と題してイギリスで行われた緑内障薬物治療の大規模臨床研究から得られた知見を紹介されました。私もロンドン留学中に参加していた臨床研究のデータ解析の結果で、緑内障の進行過程や治療効果についての新しいエビデンスや緑内障の病態解明のヒントとなる興味深い結果を分かりやすいスライドとイギリス英語で説明していただきました。



講演会後の会食

 山口大学眼科に所属する医師だけでなく山口県内の緑内障研究グル―プの先生方にも参加していただき、講演会後には宿泊ホテルの鉄板焼きで楽しく会食しました。
講演会前後には山口市や萩市もご案内しました。天気も良く、行く先々で日本の美しい文化や風景に触れ、「山口は歴史があり、とても美しいところで、訪れて大変よかった」と喜ばれていました。京都・山口観光・講演会と長い時間同行させていただき、私にとっても彼らの様々な文化や宗教や歴史についての知識の深さや思考を参考に、日本(山口)の歴史や美しさを再認識する良い機会となりました。


左:山口市瑠璃光寺の「五重塔」前
中央:萩市の「岩崎酒造」で見学・試飲
右:萩城下町の日本の道百選「菊屋横町」

 山口大学はロンドン大学を海外提携重要拠点大学と位置づけ、国際交流事業を活発化しようと計画しています。今後このような交流を経て緑内障の共同研究にも発展させたいと思います。

第8回 高次統合感覚器医療研究会 -Society for Higher lntegrated Sensations -

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当番世話人 西田輝夫

日 時:平成21年3月23日(月曜日)19:00~

場 所:霜仁会館 3階 会議室

プログラム

情報提供 「新規キノロン系抗菌薬ジェニナック錠200mg」 アステラス製薬株式会社

座長:山口大学大学院医学系研究科 眼科学分野 教授 西田輝夫先生

一般演題

「ヒトケラチノサイトの多様な生物機能について」
山口大学大学院医学系研究科 皮膚科学分野 教授 武藤正彦先生

特別議演

「先天性難聴児の早期発見 早期教育に関する医学生物学的基礎について」

国立病院機構東京医療センター 臨床研究(感覚器)センター長 加我君孝先生

共催

高次統合感覚器医療研究会 アステラス製薬株式会社

The 4th International meeting of Clinical and Research Colloquium in Ophthalmology

Soh-jin kaikain, Ube, Yamaguchi
March 20th, 2009

Program

9:00-9:05  Welcome message

Teruo Nishida

Session I. Basic Science

Chairperson:,Kazuhiro Kimura, Ji-ae Ko

9:05-9:25 Up-Regulation of ZO-1 in Cultured Human Corneal Epithelial Cells by re-oxygenation

Ryoji Yanai, Teruo Nishida

9:25-9:45 Effect of IKK-2 inhibitor on the expression of chemokines and adhesion molecules in corneal fibroblasts

Yukiko Kondo, Teruo Nishida

9:45-10:05 Detection of subepithelial fibrosis associated with corneal stromal edema by second harmonic generation imaging microscopy

Naoyuki Morishige, Teruo Nishida, Jun Takahara

10:05-10:20 Expression of cytokines and adhesion molecules through NF-κB activation in Poly(I:C) exposed human corneal fibroblasts

Tomoko Orita, Kazuhiro Kimura, Teruo Nishida

Session Ⅱ. Clinical Science

Chairperson: Tai-ichiro Chikama

10:20-10:35 Relation of specific structures at the corneal limbus detected by laser-scanning confocal biomicroscopy to the palisades of Vogt detected by slitlamp microscopy

Norihisa Takahashi, Tai-ichiro Chikama, Ryoji Yanai, Teruo Nishida

10:35-10:50 Macular corneal dystrophy in a compound heterozygote for the novel P186R mutation and the E274K mutation of CHST6

Naoyuki Yamada, Naoyuki Morishige, Tai-ichiro Chikama,
Teruo Nishida, Noriko Okayama, Yuji Hinoda

10:50-11:05  A new mode of treatment for lattice corneal dystrophy type I: corneal epithelial debridement and fibronectin eye drop

Yukiko Morita, Tai-ichiro Chikama, Teruo Nishida

11:05-11:30  Coffee Break

11:30  Special Lecture

hairperson: Teruo Nishida

De-differentiation of Corneal Epithelial Cells After Basement Membrane Injury

Professor Ray Jui-Fand Tsai (Taipei)

12:30  the closing

Organized by :

Department of Ophthalmology Yamaguchi University Graduate School of Medicine

Department of Ocular Pathophysiology Yamaguchi University School of Medicine


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