山口大学大学院医学系研究科眼科学

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研究会・講演会記録


特別講演印象記
第130回山口県眼科医会秋季総会並びに集談会

日時:平成29年11月19日(日) 9:00~15:00

場所:翠山荘

一般演題

座長:布 佳久(下関医療センター)

  1. 「眼球破裂後に生じた交感性眼炎の一例」
    野田 健,永井 智彦,東島 史明,播磨 希,寺西 慎一郎,内 翔平,柳井 亮二,木村 和博(山口大学)
  2. 「ぶどう膜炎続発緑内障におけるリパスジル点眼薬による眼圧下降効果の検討」
    内 翔平,永井 智彦,寺西 慎一郎,柳井 亮二,木村 和博(山口大学)
  3. 「長門病院眼科の現状について-常勤化3年目を迎えて」
    新井 栄華,新井 恵子(長門総合病院)

座長:柳井 亮二(山口大学)

  1. 「当院の涙道内視鏡手術」
    石田 康仁,廣田 篤(広田眼科)
  2. 「遷延性の漿液性網膜剥離に対してエプレレノン錠内服が有効であった2症例」
    湧田 真紀子1,2,山城 知恵美,能美 なな実,福村 美帆,木村 和博
    (1.宇部興産中央病院,2.山口大学,3.下関医療センター)
  3. 「診断と治療に苦慮した頻回交換SCL装用者の感染性角膜炎」
    村田 晃彦,緒方 惟彦,能美 典正,芳野 秀晃(徳山中央病院)

座長:芳野 秀晃(徳山中央病院)

  1. 「Excelを用いた感染性角膜炎の原因微生物診断シートの作成と使用経験」
    山田 直之,東島 史明,吉本 拓矢,守田 裕希子,木村 和博(山口大学)
  2. 「診断に苦慮した結膜炎の3症例」
    熊谷 直樹(くまがい眼科)
  3. 「2017年の流行性角結膜炎の臨床像について」
    鈴木 紘子,鈴木 克佳,鈴木 栄太郎,鈴木 泰生
    (1.鈴木眼科,2.鈴木小児科)

特別講演:

座長:山口大学大学院医学系研究科眼科学 教授 木村 和博

『この網膜疾患は何?』
岡山大学大学院医歯薬総合研究科 
機能再生・再建科学専攻生体機能再生・再建学講座 教授
白神 史雄 先生


特別講演印象記

野田 健

 平成29年11月19日に第130回山口県眼科医会秋季総会が開催されました。今回の特別講演は岡山大学教授の白神史雄先生に「この網膜疾患は何?」というテーマでご講演いただきました。眼底写真、OCTを中心に様々な網膜疾患の画像を提示していただき、疾患概念、手術適応や治療、鑑別疾患などを詳細に解説していただき教育的な内容が多く非常に勉強になりました。印象記に残したいことは数多くあるのですが特に興味深かった内容を書き留めたいと思います。
 まずは、糖尿病黄斑浮腫(diabetic macular edema : DME)に対する薬物治療について。DMEは糖尿病網膜症のどの段階からでも発生し、高度の視力低下をもたらすため、その治療は臨床上非常に重要です。DMEは毛細血管瘤による局所性DMEと、網膜血管床からの漏出によるびまん性DMEとに大別されます。局所性浮腫に対しては毛細血管瘤への網膜光凝固術が有効です。一方、びまん性浮腫に対しては格子状光凝固術も行われてきましたが治療後の瘢痕拡大など課題が残されていました。しかしDME患者の硝子体内に血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)や炎症性サイトカインが分泌されていることが判明し、現在では抗VEGF薬が主に薬物治療に用いられるようになりました。眼科領域では一般にラニビズマブ、アフリベルセプトの二者が広く用いられています。その浮腫を引かせる効果は劇的ですが、一方で我々はびまん性DMEの中でも抗VEGF薬に抵抗性のある症例をしばしば経験します。白神先生はその理由のひとつとして、薬理効果の経時的な減弱や耐性形成が生じている可能性があり、従ってラニビズマブ、アフリベルセプトをそれぞれ別の薬剤へ変更してみることも重要であると述べられました。難治性びまん性DMEに対して手術考慮もひとつの手ですが、薬剤を変更することでその治療効果が得られるのであれば患者への無駄な侵襲も減ることになります。早速、明日からの診療に役立てていこうと思いました。
 また、特に印象に残ったのは黄斑前膜(epi-retinal membrane : ERM)に対する手術適応のお話でした。ERMとは後部硝子体剥離の完成または進行に関与して黄斑部の網膜表面に生じる検眼鏡的に明らかな膜状物を言います。眼底に網膜襞や網膜肥厚を生じて視力障害や変視症を来たします。細隙灯顕微鏡で放射状の網膜襞やセロハンのように透明な光沢のある膜を認めることで診断は可能です。しかし、光干渉断層計(optical coherence tomography : OCT)の登場により我々はERMを含む網膜の立体的構造、ERMの詳細な範囲、後部硝子体剥離が中心窩に及んでいるかどうかまで詳細に確認できるようになりました。OCTはERMの診断技術を高め、硝子体手術によるERM剥離を施行することで視力低下と変視症を認める患者の症状改善に貢献してきました。しかし、白神先生はOCTの登場により手術加療の必要性がないERMまで硝子体手術が施行されてきた可能性があると述べられました。おそらくERMによる視力低下と思われている症例の中に、視力低下の原因が白内障である症例が相当数存在するという知見でした。患者の中には、硝子体手術の前に白内障手術を施行することで「変視症は残ってはいるがよく見えるようになったので我慢できる」という方も確かに存在し、このような症例ではERMは経過観察でよいことになります。ERMへの硝子体手術は適応をよく見極め、患者としっかり話し合ったうえで適応を判断することが重要であると感じました。
 このほかにも、黄斑円孔、網膜分離症、黄斑円孔網膜剥離、若年性黄斑分離症、網膜中心動脈閉塞症、特発性黄斑部毛細血管拡張症など数多くの疾患の概念、診断、治療に関して画像を交えながら詳しく解説してくださいました。先生独特の語り節で会場は終始和み、非常に良い雰囲気で午前の総会は閉幕しました。
 今回ご教授いただいたことを、明日からの診療に役立てていこうと思います。この度はご講演いただき誠にありがとうございました。




第64回山口眼科手術懇話会

日時:平成29年10月26日(木) 17:30~20:30

場所:山口大学医学部霜仁会館3階

一般口演 (17:30~19:00)

座長:永井 智彦(山口大学)

  1. 「山口大学における角膜移植眼に対する硝子体手術の成績」
    吉本 拓矢,守田 裕希子,寺西 慎一郎,山田 直之,柳井 亮二,木村 和博(山口大学)
  2. 「硝子体手術後の眼圧上昇」
    太田 真実,平野 晋司(山口県立総合医療センター)

座長:藤津 揚一朗(ふじつ眼科)

  1. 「新たに考案したマッシュルーム型全径全層角膜移植術を施行した二例」
    東島 史明,守田 裕希子,山田 直之,木村 和博(山口大学)
  2. 「難治性モーレン角膜潰瘍に対しチューブシャント手術併用強角膜移植を再施行した一例」
    永井 智彦1,寺西 慎一郎1,野田 健1,播磨 希1,守田 裕希子1, 山田 直之1,鈴木 克佳1,2,木村 和博1(1:山口大学,2:鈴木眼科)
  3. 「硝子体内注射歴のある症例に対する白内障手術」
    岩本 菜奈子1,2,芳川 里奈2,3,小林 正明2,波多野 誠2,湧田 真紀子2,4, 柳井 亮二2,木村 和博2(1:下関市立豊田中央病院,2:山口大学,3:周東総合病院,4:宇部興産中央病院)

特別講演(19:00~20:30)

座長:木村 和博(山口大学)

『感染性角膜炎に対する治療的角膜移植』
福岡大学医学部眼科学教室 教授 内尾 英一 先生

特別講演印象記

吉本 拓矢

 今回の特別講演では福岡大学医学部眼科学教室教授の内尾英一先生に「感染性角膜炎に対する治療的角膜移植」というテーマでご講演いただきました。
 角膜移植術は病的な角膜を透明で健康な提供角膜と置き換える手術です。その内訳として、光学的角膜移植術、治療的角膜移植術、整形的角膜移植術、美容的角膜移植術の4つに分けられます。その中でも、治療的角膜移植は炎症性疾患の瘢痕治療以前に根治的に行う角膜移植とされています。中には角膜穿孔例ないし切迫例に対して施行される場合もあります。
 感染性角膜炎の外科治療における問題点としては、薬物治療をどこまで行うか、術式はどうするか、視力予後を上げるにはどうしたらよいかという点が挙げられます。そのような中で、内尾先生にはカンジダやフザリウム、アスペルギルスといった真菌性角膜炎やアメーバ性角膜炎に加え、ヘルペスに代表されるウイルス性の角膜炎に対して、それぞれの特徴や治療方針などを、両手の指では数えきれない数の手術動画と共に解説していただきました。
 その中で、角膜移植前には充分に薬物治療を行い消炎を図ることや、上皮化された膿瘍の治療は外科的に行うこと、内皮に達する潰瘍や角膜穿孔時には術式として全層角膜移植術を選択するということを学びました。
 また一方で、術式選択としての表層角膜移植術(DALK)の利点についても語っていただきました。その中で、内皮を温存し、前房より内部への感染の波及を軽減でき、なおかつ術後の拒絶反応の軽減が期待できるDALKは、感染性角膜炎に対する大きなカードと成り得るということを学ぶことができました。先生に熱く語って頂いた『「ぬるぬる(感染巣)」は取りきる』という格言と共に、今回ご講演頂いた内容を今後の感染性角膜炎の診療に役立てていただきたいと思います。
 この度はご講演いただき誠にありがとうございました。



第63回山口眼科手術懇話会

日時:平成29年7月8日(土) 17:00~20:00

場所:山口大学医学部霜仁会館3階

一般演題 (17:00~18:30)

座長:折田 朋子(山口大学)

  1. 「角膜移植を併施した硝子体手術症例の臨床像」
    吉本 拓矢,折田 朋子,寺西 慎一郎,山田 直之,柳井 亮二,木村 和博(山口大学)
  2. 「谷戸氏ab internoトラベクロトミーマイクロフックの使用経験」
    野田 健1,寺西 慎一郎1,永井 智彦1,播磨 希1,徳久 佳代子1,2,木村 和博1
    (1:山口大学,2:山陽小野田市民病院)
  3. 「ab interno トラベクロトミー用手術器具の使用経験」
    鈴木 克佳(鈴木眼科)

座長:布 佳久(下関医療センター)

  1. 「マッシュルーム型全径全層角膜移植術を施行した一例」
    東島 史明,守田 裕希子,山田 直之,木村 和博(山口大学)
  2. 「当院における白内障手術後の屈折誤差に対するタッチアップ症例の検討」
    川本 晃司1,山下 順1,舩津 浩彦2(1:かわもと眼科,1:ふなつ眼科)

特別講演(18:30~20:00)

座長:木村 和博(山口大学)

『とことん緑内障手術』
東京医科大学臨床医学系眼科学分野 講師 丸山 勝彦 先生

特別講演印象記

野田 健

 平成29年7月8日に第63回山口眼科手術懇話会が開催されました。今回の特別講演は東京医科大学講師の丸山勝彦先生に「とことん緑内障手術」というテーマでご講演いただきました。先生のご経験に基づいた大変貴重なお話を拝聴させていただきました。
 まず、手術のタイミングは眼底所見、GCC菲薄部位から将来的に顕在化する視野異常を予測して決定すべきであると強調されました。他にもMD slopeが-0.8 dB/Yより速いことは手術を考慮する視標の1つとなり得ること、視野病期分類から目標眼圧を正しく設定することが治療選択に役立つことを学びました。しかし、ここには注意すべき点があると述べられています。予測される視野異常が完全に顕在化しているのか、あるいはこれからさらに顕在化していくのかを正しく判断し、十分に説明を行った上で手術を行うことが重要であると述べられました。確かに、視野異常の顕在化の過程で手術を施行した場合、術後のMD slopeが予想以上に悪化する可能性も十分考えられ、患者が理解した上で手術に臨むことが重要であると感じました。
 続いて主な術式の選択について分かりやすくお話いただきました。発達緑内障では角膜が透過性良好で隅角手術が可能であれば隅角切開術、角膜が混濁していて隅角手術が不可能であれば流出路再建術を選択されることが多く、加えてチューブシャント手術が選択されることがあるということ、落屑緑内障やステロイド緑内障には線維柱帯切開術(TLO)が良い適応であることなど、病型や病期以外の問題点についても配慮した術式選択を説明してくださいました。
 また、近年は様々な術式が考案されており、中でも谷戸式ab interno トラベクロトミーマイクロフックを用いた眼内法は従来のS-LOT ab internoよりも低侵襲なだけでなく手術時間が大幅に短縮されるという特徴があると説明され、今後この術式は広まっていくと感じました。従来、緑内障手術は薬剤による眼圧コントロール不良例に施行されてきました。しかし、iStentやTLO眼内法等の低侵襲手術(MIGS)は薬剤による眼圧良好な症例であったとしても点眼数を減らすために施行されるようになり、白内障手術を施行するついでに施行するような症例も増えてくるのではないかと述べられました。高齢化が益々進行していく中で点眼薬だよりの緑内障診療は医療経済の崩壊を招く可能性があり、安全かつ確実な眼圧下降を約束できるMIGSの開発によって、点眼ではなく手術で眼圧を下げる時代にシフトしていくのではないかというご意見に共感しました。
 丸山先生ご自身が施行された線維柱帯切除術(TLE)のデータも供覧されました。術後合併症の統計では脈絡膜剥離や低眼圧黄斑症が0件ということに驚きました。丸山先生は過剰濾過部位に対して経結膜強膜弁直接縫合を適宜施行されており、低眼圧に対する他の追加処置と比較して過剰濾過部位に対し直接アプローチしているという点で有効性が高いと主張されました。細隙灯顕微鏡下で行うことができ、今後当院でも実践する機会が増えそうです。
 また、丸山先生はTLE症例の実に4割もの症例にニードリングを施行されているとのことでした。その方法は開瞼器装着後、27G針を用いて細隙灯顕微鏡下で行うという驚くべきものでした。細隙灯顕微鏡下で行うほうが濾過胞の奥行きが分かり安全に施行できる利点があり、感染に関しても房水は外部に流出していくので殆ど心配ないと説明してくださいました。
 最後に術後惹起乱視をトピックにお話してくださいました。TLE後、特に白内障併施時の屈折異常は多く、平均して0.6D程度の乱視量が増え、年齢が若いほど直乱視が増悪する傾向にあるとのことでした。若年者に緑内障手術を施行する前にはこの点についてもしっかり説明を行う必要があると感じました。
 今回の講演で緑内障診療は点眼による眼圧下降が第一選択ですが、眼底観察やOCT、視野検査を駆使して顕在化する視野異常を予測し、緑内障手術のタイミングを逃さないことに加え、目標眼圧や病態などにより最適な手術選択を行うことが非常に重要であると感じました。緑内障診療の第一線でご活躍されている丸山先生が実際に行われている処置も学習でき非常に実りのある時間を過ごすことができました。今回ご教授いただいたことを、明日からの緑内障診療に役立てていこうと思います。この度は大変貴重なご講演をありがとうございました。



第129回山口県眼科医会春季総会

日時:平成29年5月28日(日) 9:00~15:00

場所:翠山荘

一般演題

座長:平野 晋司(山口県立総合医療センター)

  1. 「原発開放隅角緑内障眼の白内障術後に発症した悪性緑内障に対する治療経験」
    芳川 里奈,山本 和隆(周東総合病院)
  2. 「広範囲な網膜病変がみられたHLA-B51陽性のAPMPPEの一例」
    西本 綾奈1,内 翔平1,波多野 誠1,折田 朋子1,原田 大輔1,2,柳井 亮二1,木村 和博1
    (1.山口大学,2.大阪府済生会富田林病院)
  3. 「ムンプスによる角膜内皮炎の一例」
    小林 由佳1,守田 裕希子1,藤津 揚一朗2,山田 直之1,木村 和博1
    (1.山口大学,2.ふじつ眼科)

座長:柳井 亮二(山口大学)

  1. 「点眼防腐剤によるテノン嚢線維芽細胞の角膜上皮細胞との共培養時における筋線維芽細胞への転換」
    寺西 慎一郎1,徳田 和央1,徳久 佳代子1,白石 理江1,守田 裕希子1,山田 直之1,木村 和博1,徳田 信子2,鈴木 克佳1,3
    (1.山口大学,2.山口大保健学科,3.鈴木眼科)
  2. 「下関市立市民病院で行った白内障手術59眼の成績」
    石村 良嗣(下関市立市民病院)
  3. 「小郡第一総合病院におけるロービジョン外来実施状況と取り組みについて」
    吉村 佳子1,横峯 弘隆1,稲田 裕子1,常信 恵理1,小林 由佳2,榎 美穂1,長谷川 奈津江3
    (1.小郡第一総合病院,2.山口大学,3.長谷川眼科琴芝クリニック)

座長:芳野 秀晃(徳山中央病院)

  1. 「強度近視眼の緑内障診断と評価におけるen-Face画像の有用性」
    鈴木 克佳(鈴木眼科)
  2. 「八味地黄丸によるIFISと思われる症例」
    熊谷 直樹(くまがい眼科)

特別講演

座長:小林 元巳(山口県眼科医会会長)

『トランスレーショナルリサーチと実践眼科医療への展望 』
山口大学大学院医学系研究科眼科学 教授 木村 和博 先生


特別講演印象記

野田 健

 平成28年秋に木村和博先生が山口大学医学部眼科学教室の教授に就任されて約半年が経ちました。今回の講演は木村先生が今後、教室をどのような方向性で牽引して進まれるのか、また、地域医療そして日本、世界の医療にどのように貢献していこうと考えておられるのか、それが分かる非常に良い機会となりました。
 さて、「トランスレーショナルリサーチ(以下TR)」とは“橋渡し研究”とも言われ、臨床上の問題点を抽出して、それをもとにデザインした基礎研究で得られた成果を臨床へフィードバックしていくまでの一連の研究過程のことです。講演では木村先生が目指すTRから眼科医療への貢献をこれまでの研究業績を例に、分かりやすく解説していただきました。
 増殖性糖尿病網膜症に対する現在の治療法は硝子体手術を中心とした外科的治療で、未だに確立された根治的薬物治療法はありません。木村先生は根治的薬物治療のためには増殖組織形成の進行を抑制する治療薬が必要であると述べられました。慢性炎症が持続すると、本来創傷治癒に正常に作用するはずの筋線維芽細胞のリモデリング異常が生じます。網膜色素上皮(RPE)からTGF-βなどリモデリングを促進する因子が誘導され、α-SMAなどの分子マーカーや異常な細胞外基質が発現することで線維化が促進されます。この線維化のメカニズムに着目して研究された結果、RPEのリモデリング抑制因子としてRAR-γagonistであるレチノイン酸誘導体を発見されました。
 TRの実現には、ここからさらに創薬に結びつけなければなりません。そのためには、最も副作用が少なく、かつ細胞毒性が低く特異性の高い物質を見出すことが必要です。リード化合物を検索した結果、「RAR-γ agonist:R667」という化合物が、網膜瘢痕形成を抑制して最も汎用性のある治療薬になりうることをin vitroとin vivoによる研究で解明されました。
 現在、R667に関する研究は、海外の製薬会社とライセンス契約を締結し、研究支援・海外特許取得支援を受けています。最終的には山口大学で臨床研究を行い、実用化を目指す方向で話が進んでいるそうです。山口大学という地方大学から世界へ向けて情報を発信し、支援してくれる行政・海外企業と連携することで、効率よく短期間で創薬へ結びつけるTRを実践されていることに感銘を受けました。
 木村先生は大学を中心とした診療・教育・連携システムの構築にも力を注いでおられます。大学、関連病院を中心に診断・治療法を統一し、より連携が取りやすい体勢を確立したいと述べられました。これは非常に画期的なことです。例えば糖尿病黄斑浮腫では、ステロイドによる薬物治療のみでは再発・遷延化する症例も多く、抗VEGF薬硝子体注射単独、あるいは局所レーザー併用、硝子体手術など、様々な治療法を検討しなければなりません。したがって、治療法の選択に悩む場合が多々あります。そこに県内で統一された治療プロトコールがあれば、大学病院や関連病院だけでなく、開業医の先生方とも治療の方向性が一致し、診療連携が取りやすくなります。
 講演の最後に「Get action. Seize the moment.」という言葉を頂戴しました。「行動せよ。その瞬間を掴みなさい。」やりたいと思ったことは積極的に行動に移し、それを重ねて行くことで最終的に点が線になり役に立つことが将来必ずあるという内容でした。木村先生ご自身も大学院時代の研究で線維化のマーカーであるα-SMAがどういう機序で発現が制御されているのかを突き止め、その転写因子であるMSSP-1/RBMS-1を発見されています。木村先生のこの発見がなければR667もきっと発見されなかったでしょうし、もちろん創薬へも繋がらなかったと思います。この言葉を聞いて、今与えられた環境で興味をもったこと、ぶつかった課題には積極的に取り組み、ひとつひとつ確実にクリアしていくことで大きく成長し、またそれが未来の自分の糧になると信じて頑張っていこうと気持ちを新たにしました。今後の木村先生の更なるご活躍に期待しつつも、足を引っ張らないよう日々精進していく所存です。それが山口県のため、日本のため、そして世界のために少しでもなればと思います。素晴らしいご講演、誠にありがとうございました。




第28回やまぐち眼科フォーラム

日時:平成29年5月27日(土) 18:00~20:00

場所:セントコア山口

特別講演1:『術中網膜機能評価』
埼玉医科大学眼科 教授 篠田 啓 先生

特別講演2:『角膜の外科治療と白内障手術』
日本大学医学部視覚科学系眼科学分野 主任教授 山上 聡 先生

特別講演印象記

吉本 拓矢


篠田先生

 今回の特別講演では埼玉医科大学眼科教授の篠田啓先生に「術中網膜機能評価」というテーマでご講演いただきました。
硝子体手術中の網膜には、眼圧変動、眼内照明、明順応変化、眼内還流や温度変化など生理的な眼内環境とは異なる、物理的な侵襲が加えられます。「術中網膜機能評価」は、ERGを用い、手術中の網膜への影響を評価するものです。
 そして、還流液の温度低下、眼圧の変化、還流液の組成変化により、ERGの一過性の潜時延長が認められ、それらの変化が術中における網膜機能の一時的な低下に関わっている可能性についてお示しいただきました。
 また、硝子体内注射における網膜機能評価についても試みておられ、患眼のみならず、僚眼にも注射後の一時的な網膜機能低下が生じている事や、薬剤によっては注射後2時間以上経過してから機能低下が生じる場合があることが判明しました。私達が日常的に行っている硝子体内注射という手技も、網膜に対する侵襲を加えるものであるという事実は、驚きと同時に施行時には細心の注意を図る必要があることについて改めて認識させられるものでした。
 講演の最後にはDigital macrosurgeryの可能性についてもお示しいただき、3D映像技術を用いたHeads-up surgeryなど、将来的な眼科分野における手術様式の変化に対する展望についてご紹介していただきました。術者や術式、疾患、患者に合わせたシステムカスタマイズや術前、術中バイオメトリーを勘案した術式提案、果ては合併症や術後経過予測など、これから到来するであろう最新の技術は大きな期待がもてるものとして映り、今後の手術の進歩について大変興味がわきました。
 この度はご講演いただき誠にありがとうございました。

 

東島 史明


山上先生

 第28回やまぐち眼科フォーラムが平成29年5月26日に山口市のセントコア山口にて開催されました。特別講演は、日本大学医学部視覚科学系眼科学分野主任教授の山上聡先生に「角膜の外科治療と白内障手術」というテーマでご講演頂きました。
 講演内容としては、「1.水疱性角膜症の治療」、「2.フックス角膜変性症に対する治療」、「3.結膜を用いた眼表面再建法」、「4.角膜混濁症例の白内障手術」の4つの内容に関してお話し頂きました。実際に山上先生が御経験された症例やその手術動画を織り交ぜ、実臨床に即した形で発表頂きました。オリジナリティ溢れる発表スライド、山上先生の話し方の巧みさも相まり、非常に引き込まれるご講演であり、あっという間の1時間でした。
 <1.水疱性角膜症の治療>
 現在、水疱性角膜症の治療としては角膜内皮移植術が第一選択となっています。角膜内皮移植術は、全層角膜移植術に比べて、術後早期の視力回復、透明治癒率の高さ、拒絶反応の頻度、強さの点で優れています。角膜内皮移植術では約60%が術後1ヶ月以内に視力0.5まで回復し、透明治癒率も術後2年経過時で80-85%と高い透明治癒率を保たれるとの報告があります。拒絶反応も、持ち込む抗原量が少ないことと抗原認識様式の違いによりPKPと比べて約12-14%と頻度が低いことが判ってきています。こうしたメリットがあり、水疱性角膜症の治療として角膜内皮移植術が広がってきています。しかしながら、角膜実質混濁の強い症例では、角膜内皮移植の適応は慎重にする必要があります。
 <2.フックス角膜変性症に対する治療>
 本邦では稀な疾患であるフックス角膜変性症ですが、海外ではpopularな疾患です。海外の報告では、フックス角膜変性症に対してDMEKを施行し、移植片が生着しなかったにもかかわらず、治癒した報告などがあります。これらは周辺部の正常な内皮細胞が移動することにより治癒したものと考えられます。山上先生の自験例としてフックス角膜内皮変性症の患者さんに対して白内障手術と同時に中央部のデスメ膜剥離を施行した症例を呈示いただきました。術後2ヶ月で角膜厚は正常化し、術後12ヶ月で良好な視力と中央部に正常な角膜内皮細胞を認めました。フックス角膜変性症に対しては中央部デスメ膜剥離のみで治癒する可能性が示唆されました。
 <3.結膜を用いた眼表面再建法>
 化学外傷後などの角膜輪部機能不全に対して羊膜による培養上皮細胞シートを用いて眼表面再建を行う方法があります。僚眼の角膜輪部細胞や自己口腔粘膜を使用し培養をする方法が一般的ですが、山上先生らのグループでは自己結膜上皮を用いて羊膜細胞シートを作成し、眼表面再建するという治療方法を実践されていました。近年、再生医療に関する法律の改正に伴い、培養上皮細胞シートを用いた治療が限られた施設でしか行えなくなりました。ある欧米の報告で、僚眼の角膜輪部移植を採取し、患眼の侵入結膜を切除したのちに羊膜移植術を施行し、その上に角膜輪部を裁断したものをフィブリン糊で固定することで眼表面再建に成功したというものがありました。それらを踏まえて、山上先生らのグループは両眼角膜輪部機能不全症例に対して羊膜上に僚眼の自己結膜上皮を裁断したものを固定することで眼表面再建が行えるのではないかと考えられました。現在のところ7症例に対し、その手術を施行し、概ね眼表面再建に成功していると報告されていました。両眼角膜輪部機能不全症例に対して自己結膜上皮細胞移植は一つの有効な選択肢となる可能性があります。
 <4.角膜混濁症例の白内障手術>
 角膜が混濁した患者様に対して白内障手術を施行する場合、眼内の視認性が悪く、非常に難渋する場合があります。そうした場合、
 前嚢を染色する
 部屋を暗くし顕微鏡照明を絞り気味にする
 ライトガイドで角膜の辺縁部から照らす
 シャンデリア照明を設置する
 角膜上皮を切除する
などの工夫をすることで少しでも視認性を向上させて手術を行うことが肝要となります。シャンデリア照明を用いて先に白内障手術を施行し、その後に角膜内皮移植術を施行した水疱性角膜症の症例の手術動画を供覧頂きました。さらに、上記の工夫を施行し、クローズドの状態で先に白内障手術を施行した全層角膜移植術トリプルの症例や、深層前部層状角膜移植術を途中まで施行した段階で白内障手術を完遂し、その後に深層前部層状角膜移植術を完遂した症例もご紹介頂きました。
 角膜混濁を有する白内障手術症例で、ライトガイドやシャンデリア証明を用いる方法が有用であり、白内障手術と同時に全層角膜移植術、深層前部層状角膜移植術を施行する際も少し工夫することで有利に手術を施行できます。
 以上の内容を発表頂きました。どのセッションも興味深く、示唆に富む内容であり、今後の日常診療に大きく活用できる内容でした。山上先生、改めてご講演頂き誠にありがとうございました。




第27回やまぐち眼科フォーラム

※クリックでPDFを表示

日時:平成29年1月14日(土)18:00~20:00

会場:翠山荘

特別講演1
『ドライアイの日常診療戦略:知って得する+αのポイント』
慶応義塾大学医学部眼科学教室特任講師 川島 素子 先生

特別講演2
『疫学調査から考える白内障の危険因子とその臨床応用』
金沢医科大学眼科学講座教授 佐々木 洋 先生

特別講演印象記

筒井 紗季


川島先生

 ドライアイは日常診療でよく遭遇する疾患です。視力は良好でも患者さんの自覚症状は多く、また重度のドライアイでは点眼加療にも限界があります。今回は慶應義塾大学特任講師の川島素子先生による「ドライアイの日常診療戦略:知って得する+αのポイント」という講演でした。2016年にドライアイの定義が変わったとのことですが、今回の講演で改めてドライアイの定義を学ぶことができました。また疫学研究としてOsaka study(VDT作業をメインとするオフィスワーカーを対象)やTokyo study(タクシー運転手を対象)ではBUT短縮型のドライアイが多いことがわかりました。ドライアイの治療に関してですが、私たちがよく使用する眼局所治療(点眼)、環境因子における治療、全身治療の大きく分けて3つになります。今回は全身治療に着目し、サプリメントの効果についての内容でした。今までラクトフェリンがドライアイに効果があるといわれているものの、涙液や血清中に検出はされていないため相関性については不明なところもありました。そこでマウスを用いて腸内細菌を調査したところ、クロストリジウム属の細菌叢が増加し短鎖脂肪酸の産生が増加し更には優位にBUTの回復を認めたとのことでした。逆にバンコマイシンの投与で腸内細菌叢を殺して短鎖脂肪酸を抑制すると、BUT回復の効果は消失するとの結果でした。以上から、涙液や血清中から検出できなくても、腸内細菌叢がドライアイ改善に関係していることが判明しました。また乳酸菌の中でもWB2000株のみが用量依存性に涙液低下を抑制しており、複合型サプリメントにおいては低用量で効果が発揮されるようでした。
今回の講演でサプリメントによる全身投与という新たな治療の観点を聞くことができ、とても興味深く有意義な時間になりました。点眼との併用で今後のドライアイの更なる改善が期待できるのではないかと思いました。

 

緒方 惟彦


佐々木先生

 第27回山口眼科フォーラムが、平成29年1月14日に翠山荘にて開催されました。2つ目の特別講演では、私の母校である金沢医科大学眼科学講座教授の佐々木洋先生に、「疫学調査から考える白内障の危険因子とその臨床応用」とういテーマで御講演いただきました。水晶体混濁を皮質白内障、核白内障、後嚢下白内障、Retrodots、Watercleftsの5病型に分け、疫学調査から判明した、それぞれの混濁が生じる危険因子、混濁のパターンから推定できる全身疾患等について大変分かりやすく御教示いただきました。今後の日常診療に役立ててゆきたいと思います。御講演の終わりの方で、近年、若年層での近視患者が増えており、長眼軸の眼に生じやすい核白内障の患者の増加と発症年齢の低下が危惧されるということをお話しされました。選択される眼内レンズや手術術式の傾向が、これから変わってくるかもしれませんね。
 この度は、御講演いただきました佐々木先生、誠にありがとうございました。今後、山口で御講演していただく機会がございましたら、是非、よろしくお願い申し上げます。



第128回山口県眼科医会秋季総会

日時:平成28年11月13日(日) 9:00~15:00

会場:翠山荘

一般演題

座長:山田 直之(山口大学)

  1. 「診断に苦慮した両眼性角膜炎の一例」
    筒井 紗季,森 賢一郎,岩本 菜奈子,内 翔平,守田 裕希子,山田 直之(山口大学)
  2. 「サルコイドーシスによる視神経乳頭肉芽腫の1例」
    野田 健,山城 知恵美,平野 晋司(山口県立総合医療センター)
  3. 「当院における非感染性ぶどう膜炎3例に対するアダリムマブの使用経験」
    内 翔平1,波多野 誠1,原田 大輔1,2,藤津 揚一朗1,3,柳井 亮二1,木村 和博1,園田 康平4
    (1.山口大学,2.豊田中央病院,3.ふじつ眼科,4.九州大学)

座長:湧田 真紀子(山口大学)

  1. 「みんなで始めよう、ロービジョンケア~「やまぐちロービジョン勉強会」始めました~」
    福村 美帆1,能美 なな実1,布 佳久1,河野 清美2(1.下関医療センター,2.下関市立市民病院)
  2. 「クロロキン・ヒドロキシクロロキンによる網膜症の予防スクリーニングの実際」
    柳井 亮二,内 翔平,岩本 菜奈子,西本 綾奈,森 賢一郎,波多野 誠,木村 和博(山口大学)
  3. 「当院におけるエタンブトール視神経症の発症状況について」
    中山 昌子(済生会下関総合病院)

座長:鈴木 克佳(鈴木眼科)

  1. 「人は血管と供に老いる 然るに、人は血管と供に進化した!」
    川田 礼治(川田クリニック)
  2. 「IOL縫着とdouble needle IOL強膜内固定の比較」
    廣田 篤,石田 康仁,熊野 けい子,礒村 俊也,村川 誠(広田眼科)
  3. 「日本網膜色素変性症協会(JRPS)研究推進とユース活動」
    島袋 勝弥(宇部工業高等専門学校物質工学科)

特別講演

座長:木村 和博(山口大学)

『緑内障診療の質を高めるために』
北里大学医学部眼科学 主任教授 庄司 信行 先生


特別講演印象記

山口大学 西本 綾奈

 平成28年11月13日、山口市の翠山荘で第128回山口県眼科医会秋季総会が開催されました。特別講演として、北里大学医学部眼科学主任教授の庄司信行先生に「緑内障診療の質を高めるために」というテーマでご講演いただきました。初めに緑内障の定義について確認した後に、大きく分けて①眼底検査、②視野検査、③治療の導入の3つの観点からお話しいただきました。
 まず、眼底検査については、検眼鏡や眼底写真において緑内障性変化が分かりにくい症例(特に近視眼)ではOCTが有用で、カラーマップも参考にすべきとの事でした。OCTは機能変化(視野障害)前の構造変化をより早く判定することが可能となる便利なツールですが、機種によって測定範囲や判定方法が異なる点に注意が必要であるということを学びました。OCTの測定では同一患者でも結果が全く異なる場合があるため、OCTによる緑内障診断にあたっては質の高い画像での判定が重要となります。 次に、視野検査については、「検出できない」=「異常なし」を意味するものではなく、視野計が測定していない場所、検出できていない場合があることに留意するよう示されました。緑内障早期検出にはW/Wでは限界があること(視野異常が検出できない症例ではSWAPやFDTなどで精査する必要がある)、HFAでは測定点間隔の違いから視野障害領域の連続性が途絶えてみえる場合があるため、10-2が有用であることを示されました。
近年、視野障害の進行判定に、トレンド解析やイベント解析が利用されるようになりましたが、それぞれの特性を医師自身が十分理解して選択する必要があり、同一症例でも判定方法によって結果が異なることを知っておくべきであると強調されました。
 最後に、治療の導入については、日内変動の再現性の低さやNTGを中心に解説され、必要最小限の薬剤で最大の眼圧下降効果を得る重要性をお話いただきました。また、PG関連薬による視野障害進行抑制を報告したUKGTSにおいても、治療群の15%で視野障害の進行を認めており、眼圧以外の治療オプションの必要性を指摘され、今度の研究課題であることを示唆されました。
 今回の講演で、緑内障診断は検眼鏡による視神経乳頭観察が基本で、OCTはあくまで補助診断ツールであり、構造異常と機能異常が一致するか総合的に判断しなければならないことを再認識しました。また、視野検査の際は目的をもって測定することの大切さ、そして治療においては、副作用が少なく、患者のアドヒアランス向上に配慮した、24時間眼圧下降が期待できる薬剤が有効であることをお話していただきました。今回教えていただいたことを、明日からの緑内障診療に役立てていこうと思います。



第62回山口眼科手術懇話会

日時:平成28年10月8日(土) 17:00~20:00

場所:山口大学医学部霜仁会館3階

一般演題 (17:00~18:30)

座長:守田 裕希子(山口大学)

  1. 「治療的角膜移植の治療成績について」
    森 賢一郎,守田 裕希子,山田 直之,森重 直行(山口大学)
  2. 「バルベルト緑内障インプラントの両眼入れ替えを行った角膜移植眼の一例」
    芳川 里奈1,寺西 慎一郎2,山田 直之1,緒方 惟彦1,白石 理江1,徳久 佳代子1,2,折田 朋子1,木村 和博1,鈴木 克佳1,3(1:山口大学,2:山陽小野田市民病院,3:鈴木眼科)
  3. 「小児Marfan症候群の水晶体亜脱臼の一例」
    西本 綾奈1,芳川 里奈1,緒方 惟彦1,徳久 佳代子1,2,寺西 慎一郎1,木村 和博1 (1:山口大学,2:山陽小野田市民病院)

座長:平野 晋司(山口県立総合医療センター)

  1. 「小児の下涙小管断裂に対するナイロン糸留置法」
    岩本 菜奈子,西本 綾奈,緒方 惟彦,波多野 誠,柳井 亮二,木村 和博(山口大学)
  2. 「当院における有水晶体眼内レンズ(ICL)挿入術の術後成績」
    川本 晃司1,山下 順1,舩津 浩彦2(1:かわもと眼科,2:ふなつ眼科)

特別講演(18:30~20:00)

座長:木村 和博(山口大学)

『破嚢しない超音波チップの研究から』
 大木眼科 院長 大木 孝太郎 先生

特別講演印象記

緒方 惟彦

 今回の特別講演は、大木眼科院長の大木孝太郎先生に「破嚢しない超音波チップの研究から」というテーマで御講演いただきました。
 破嚢する原因として、超音波チップによるもの、チップ以外が原因のもの、宿命的なものに分けて、それぞれについて御教示いただきました。その中で特に印象的だった内容が、超音波チップによる破嚢はチップの切れ味が大きくかかわっており、解決策として先端がdullなチップがよいのではないかという話でした。先端がsharpなチップと比較して、dullなチップは吸引圧を高くしても、誤吸引の回数が多くても破嚢しにくいという実験動画とデータを拝見したとき、とても驚きました。私を含め、白内障手術をこれから始められる眼科医師の方々にとって、破嚢することへの恐怖を意識しすぎることなく手術に臨めるという点でとても有用なのではないでしょうか。

 この度は、白内障手術を始めたばかりの私にとって、目から鱗のことばかりで大変勉強になりました。御講演いただきました大木先生、ありがとうございました。今後、山口で御講演していただく機会がございましたら、是非、よろしく御願い致します。



第61回山口眼科手術懇話会

日時:平成28年6月18日(土) 17:00~20:00

場所:山口大学医学部霜仁会館3階

一般演題 (17:00~18:30)

座長:寺西 慎一郎(山口大学)

  1. 「遷延性角膜上皮欠損に対する外科的療法」
    太田 真実1,守田 裕希子2,山田 直之2,森重 直行2(1:周東総合病院,2:山口大学)
  2. 「新生血管緑内障に対する緑内障チューブシャント-硝子体トリプル同時手術の一例」
    芳川 里奈,緒方 惟彦,白石 理江,徳久 佳代子,寺西 慎一郎,木村 和博(山口大学)
  3. 「強膜内陥術後に眼窩・皮下に迷入したMIRgelを眼内内視鏡を用いて除去した一例」
    波多野 誠1,柳井 亮二1,折田 朋子1,近本 信彦2,木村 和博1
    (1:山口大学,2:近本眼科)

座長:平野 晋司(山口県立総合医療センター)

  1. 「眼部帯状疱疹後に急性網膜壊死を来した一例」
    山城 知恵美1,岩本 菜奈子2,内田 哲也3,折田 朋子2,柳井 亮二2,木村 和博2
    (1:山口県立総合医療センター,2:山口大学,3:うちだ眼科)
  2. 「内視鏡硝子体手術と下方バックリングの併用」
    山内 一彦(山口赤十字病院)

特別講演 (18:30~20:00)

座長:木村 和博(山口大学)

『私のチャレンジ硝子体手術』

大阪労災病院 副院長 恵美 和幸 先生

特別講演印象記

波多野 誠

 平成28年6月18日に第61回山口眼科手術懇話会が開催され、特別講演は大阪労災病院副病院長恵美和幸先生に「私のチャレンジ硝子体手術」を御講演頂きました。
 重症眼外傷や複数回手術歴のある症例の手術動画を交えながら、増殖膜の適切な処理の方法や、最周辺部の牽引解除のコツなどを分かりすく御教示頂きました。現在、硝子体手術の進歩により、手術施行の目的はより良好な機能回復・保持にシフトしつつありますが、本来の目的は失明予防にあると思います。恵美先生の手術により失明を免れた患者さんは数多く、恵美先生がそのような患者さんと2ショットで撮られた写真の笑顔には胸をうたれました。
 繊細かつダイナミックな手術手技はもちろん、患者さんとの関わり方に至るまですべてに感銘を受けました。御講演頂きました恵美先生、ありがとうございました。



第26回やまぐち眼科フォーラム

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日時:平成28年5月21日(土) 18:00~20:00

場所:ホテルかめ福『紅梅の間』

特別講演1
『最近の緑内障薬物治療update』
東京大学大学院医学系研究科外科学専攻眼科学 本庄 恵 先生

特別講演2
『眼科社会保険の見方・考え方(Ver.21)』
日本眼科医会副会長 山岸 直矢 先生


特別講演印象記

芳川 里奈

 H28年5月21日、山口市湯田のホテルかめ福で、第26回やまぐち眼科フォーラムが開催され、特別講演として東京大学院医学系研究科外科学専攻眼科学講師の本庄恵先生にお越しいただき、「最近の緑内障薬物治療update」というテーマでご講演いただきました。
 まずは緑内障診療についてお話ししてくださいました。緑内障の診断や、視野障害の進行状況を正確に診断するにはベースライン眼圧測定や定期的な(できれば毎月の)眼圧測定、視野検査、OCTを組み合わせて判断する必要があり、少なくとも2年間の観察期間が必要となるため、短期間での視野障害の進行判定は難しいとのことでした。
 また平均眼圧の上昇に伴い日内変動も大きくなるため、眼圧だけを緑内障の治療指標としても効果が十分かどうかを判断することは難しく、OCTで変化がなかった場合でも視野障害が急に進行することもあるため、1つの検査パラメーターだけで経過を見るのではなく、眼圧、OCT、視野検査を組み合わせて総合的に評価をしていく必要があると例を示しながらお話しいただきました。
 続いて点眼治療についてお話しされました。緑内障で唯一エビデンスのある治療が眼圧下降であり、「長期間」「安定して」「しっかり」眼圧を下げることが大切であり、そのためにも患者さんの点眼コンプライアンスは極めて重要な問題となります。コンプライアンス向上のために、薬剤の作用時間や副作用、さらに点眼回数などのバランスを考えながら点眼治療薬を選択する必要があるとお話しされました。


本庄先生

 また本庄先生が研究され、市販化されるに至ったROCK阻害薬についてもお話しいただきました。ROCK阻害薬は細胞骨格アクトミオシン系の活性を抑え、血管収縮や細胞遊走、細胞形態変化を阻害する、新しい作用機序の薬剤です。そのため治療強化のための追加使用による眼圧下降作用の増強が期待できます。さらに細胞形態変化阻害のため細胞外マトリックスに徐々に変化が現れ、長期使用により眼圧下降が得られる可能性があり、眼圧の漸減を示す使用後調査の結果を示されました。またROCK阻害薬は濾過手術後の創傷治癒において瘢痕形成を抑制する効果を有することを示され、眼圧下降作用に加え濾過胞機能維持にも寄与する可能性を示唆されました。
今回は緑内障診療の基本から、最近の点眼治療についてお話しいただきました。今後の緑内障診療に役立てていきたいと思います。




第127回山口県眼科医会春季総会

日時:平成28年5月22日(日) 9:00~15:00

会場:翠山荘

一般演題

座長:寺西 慎一郎(山口大学)

  1. 「ぶどう膜炎続発緑内障に対する治療方法の検討」
    緒方 惟彦1、柳井 亮二1、小林 由佳1、小林 正明1、内 翔平1、波多野 誠1、庄田 裕美1、原田 大輔1、寺西 慎一郎1、木村 和博1、鈴木 克佳1、園田 康平2(1.山口大学、2.九州大学)
  2. 「多施設における新規緑内障眼の現況の解析」
    鈴木 克佳1、相良 健2、大西 徹3、森 繁広4、平野 晋司5、石田 康仁6、廣田 篤6、小林 元巳7、熊谷 直樹8、芳野 秀晃9、中山 昌子10 (1.鈴木眼科、2.さがら眼科クリニック、3.大西眼科、4.森眼科、5.山口県立総合医療センター、6.広田眼科、7.小林眼科、8.くまがい眼科、9.徳山中央病院、10.済生会下関総合病院)
  3. 「緑内障点眼薬多剤投与眼に対するリパスジルの使用経験」
    相良 健 (さがら眼科クリニック)
  4. 座長:山田 直之(山口大学)

  5. 「白内障手術後前嚢収縮に対する治療経験の検討」
    原田 大輔 (下関市立豊田中央病院)
  6. 「眼内レンズ強膜内固定術の短期成績」
    能美 典正、村田 晃彦、芳野 秀晃 (徳山中央病院)
  7. 「ICLを摘出した1症例」
    小林 元巳(小林眼科)
  8. 座長:新井 栄華(長門総合病院)

  9. 「円錐角膜におけるコラーゲン線維束構造の解析」
    大田 裕晃、守田 裕希子、山田 直之、森重 直行(山口大学)
  10. 「パクリタキセルで黄斑浮腫をきたした症例」
    能美 なな実1、太田 真実2、福村 美帆1、布 佳久1、柳井 亮二3、木村 和博3(1.下関医療センター、2.周東総合病院、3.山口大学)
  11. 「加齢黄斑変性に対するアフリベルセプト投与の黄斑部血流への影響と網脈絡膜厚との関連」
    湧田 真紀子1,2、福村 美帆3、能美 なな実3、播磨 希2、折田 朋子2、柳井 亮二2、木村 和博2、園田 康平4(1.宇部興産中央病院、2.山口大学、3.下関医療センター、4.九州大学)

特別講演

座長:小林 元巳(山口県眼科医会会長)

『 糖尿病黄斑浮腫の治療 』
滋賀医科大学眼科学講座 教授 大路 正人 先生


特別講演印象記

山口大学 内 翔平

 今年の春季総会の特別講演では、滋賀医科大学の大路正人教授に糖尿病黄斑浮腫(以下DME)の治療について御講演いただきました。糖尿病網膜症(以下DR)は、普段我々が診察している後眼部疾患で最も多い疾患であり、近年はDMEに対しての治療の選択にも幅が広がっているところです。再度基礎からDRの治療を見つめなおす良い機会となりました。
 導入部ではVEGFの重要性について説明がありました。PDRもDMEも病態がVEGFと深く関連しており、VEGFにより血管新生が起きればPDRに、血管透過性亢進が生じればDMEを生じ、各々の活動性や浮腫の程度に応じてVEGF濃度も上昇していることが判明しています。RVOと異なり、DMRではVEGF以外に炭酸脱水素酵素も上昇しているため、治療にダイアモックス®を使用することがあるというのは興味深い話でした。また「近視眼では眼内VEGF濃度が低いため、近視眼でDRが少ない」というのは全く知りませんでした。近視の数少ないメリットの一つなのでしょうか。
 次に治療の説明がありました。DMEに対するレーザーはMAへのfocal PCにおいてはやはり効果があります。僕はまだDMEの治療歴が浅いですが、眼科医全体として、抗VEGF剤やSTTAなどの台頭により、DMEのレーザー治療への敷居が高くなったのは事実ではないでしょうか。MAによるDMEを見つけても、「黄斑近くをレーザー打つの怖いし、注射に反応するから注射でいっか」で治療している方もいらっしゃると思います。僕も今一度focal PCの重要性を見つめなおすいい機会となり、講演後にfocal PCを施行した患者がおります。症例の選択をきちんと行えば有効な治療だと再認識しました。
DMEに対する注射加療については周知のとおり、現在抗VEGF剤がfirst choiceとなっています。視力予後良好に関連する因子は若年、DR軽度、網膜表面がwrinkingでない(新生血管がない)例の3つとのことでした。DA VINCI試験の結果よりDMEに対する硝子体注射は導入期は5回毎月投与が推奨されていますが、滋賀医科大学の自験例では抗VEGF剤を導入時から2か月に1回としているとのことで、今後も抗VEGFの投与間隔については議論の余地のあるところなのかなと感じました。視力0.4以下に低下している症例については、アイリーア®がルセンティス®、アバスチン®と比べ視力改善効果が高いことが示されておりました。また無硝子体眼でも抗VEGF硝子体注射は有硝子体眼同様に効果を呈することが示され、「無硝子体眼であっても抗VEGF薬が効く」ことがtake home messageと大路先生も仰っていました。IVTAやSTTAについても、ステロイド白内障さえ手術でクリアすれば十分選択になりうるとのことでした。
DMEに対する硝子体手術については、有効とする報告はほとんど日本の著者によるものであり、滋賀医科大学では浮腫改善+視力改善が70%, 浮腫改善+視力悪化が16%であったのに対し、海外の報告DRCR netでは54%, 32%であったとのことでした。やはり日本人は硝子体手術が上手いのでしょうか?手術選択のポイントとしては、SRDを認める症例、抗VEGF剤3回投与時点で効果のない症例、重症例、来院困難例などにおいて選択の余地があるようでした。
とても分かりやすい内容の御講演でした。明日から使える知識として、診療に役立てていきたいと思います。大路先生ありがとうございました。




第25回やまぐち眼科フォーラム

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日時:平成28年1月16日(土) 18:00~20:00

場所:ホテル松政 2階 芙蓉の間

特別講演1
『緑内障における眼圧下降治療エビデンスのいろいろ』
鈴木眼科 院長 / 山口大学大学院医学系研究科眼科学 特命准教授 鈴木 克佳 先生

特別講演2
『知っておきたい眼形成の知識』
慶應義塾大学医学部眼科学 講師 野田 実香 先生


特別講演印象記

太田 真実

 第25回やまぐち眼科フォーラムの特別講演一つ目は、鈴木眼科院長ならびに山口大学大学院医学系研究科眼科学特命准教授の鈴木克佳先生に「緑内障における眼圧下降治療エビデンスのいろいろ」というテーマでご講演いただきました。
 まず初めにいくつかの症例を提示され、voting systemを利用しながら、日常診療における治療の選択肢や緑内障の進行のリスクファクターなどを説明されました。緑内障診療において眼圧下降を図る必要性は言うまでもありませんが、緑内障は超慢性の経過を辿る症例があったり、経過中において治療方針の見直しが必要になることもあり、眼圧下降により緑内障の発症や進行をどれほど抑制できるのかは実感しにくいところがあります。そこでEBM(Evidence Based Medicineエビデンスに基づく医療)の重要性へとお話が進みました。
 エビデンスレベルの高いスタディとして無作為化比較試験(Randomised Controlled Trail以下RCT) があります。これまで眼圧下降治療を評価したRCTについてはAGIS(The Advanced Glaucoma Intervention Study)、CITGS(Collaborative Initial Glaucoma Treatment Study)、CNTGS(Collaborative Normal Tension Glaucoma Study)、EMGT(Early Manifest Glaucoma Trial)、OHTS(The Ocular Hypertension Treatment Study)、EGPS(European Glaucoma Prevention Study)があり、それぞれのスタディの特徴や結果についてお話しいただきました。
 そして、鈴木先生が英国留学中に携わられたというUKGTSについてのお話が今回の講演のメインテーマでした。UKGTSとはUK Glaucoma Treatment Studyの略で、未治療の早期緑内障患者を対象に、ラタノプロストによる視野障害抑制効果について検討した無作為化三重盲検試験です。結論から言うと、ラタノプロスト群とプラセボ群の比較において、ラタノプロストは眼圧を下降させ、緑内障進行を抑制するということです。具体的には、24か月時点での平均眼圧下降値はラタノプロスト群で-3.8mmHgでプラセボ群では-0.9mmHgであり、視野障害が進行した患者の割合はラタノプロスト群で15.2%、プラセボ群で25.6%、視野障害の進行抑制については12か月の時点で両群間の進行率に有意差を認めたという結果でした。日頃私たちが臨床をする上では、緑内障診療においてPGを第一選択薬として使用しており、その結論だけ聞くと当たり前の話のように感じてしまいますが、今まで薬物治療単独で緑内障進行を抑制するという研究報告がなかった理由や、なぜUKGTSが可能であったのかというお話をしていただきました。日本とは異なるNHSという医療体制や、臨床研究における患者リクルートの方法、緑内障研究チームには医者以外にも統計学者や数学者、生理学者なども参加していたこと、過去のRCTのデータを参考にしてデザインを組んだ(具体的にはUKGTSでは患者、治療者、評価者の3重盲検が可能であった)こと、ラタノプロストは有害事象が少なく副作用による中止例が少なかったこと、そして鈴木先生が実際にされたデータ収集の旅の裏話など大変興味深いお話しを聞きました。


鈴木先生

 最後はEBMの実践として、①目の前の患者についての問題の定式化、②定式化した問題を解決する情報の検索、③検索して得られた情報の批判的吟味、④批判的吟味した情報の患者への適用の重要性の4点を強調されていました。緑内障診療に限ったことではなくとも、私たちが日常診療を行ううえで、EBMの重要性はもちろんですが、目の前の患者さんにあった情報やデータを適切に収集し、その患者さんの診療の還元していく姿勢は常に心に留めておく必要があると感じました。ご講演いただき誠にありがとうございました。

 

波多野 誠


野田先生

 第25回やまぐち眼科フォーラムが2016年1月16日ホテル松政にて開催されました。特別講演2に慶應義塾大学医学部眼科学教室講師の野田美香先生がお越し頂き、上眼瞼の解剖と眼瞼下垂の原理、さらに下眼瞼の解剖と下眼瞼牽引筋腱膜逢着術、眉毛下皮膚切除のデザインのポイントと、皮膚が障害されている小児の霰粒腫の処置についてご講演いただきました。
 挙筋機能は眉毛を抑えて下方視から上方視までの距離を瞳孔の位置で図ること、挙筋短縮術の際には術創をむやみに持ち替えないこと、眉毛下皮膚切除のIndian method、小児の霰粒腫は皮膚が薄いため早めに切開すべきなど、すぐにでも日常診療に役立つようなご講演をいただきました。
 また、「天然」の二重瞼は筋の緊張によって生じているので、閉瞼時には消失するが、「人工」の二重瞼では閉瞼しても消失しないということも、日常診療に生かしていこうと思いました。
 眼瞼疾患は、眼科医が日常診療で遭遇する疾患のうち、見逃しがちな疾患と言われています。野田先生のご講演を生かしてしっかりと診療にあたっていきたいと思います。



第36回西中国眼疾患フォーラム

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日時:平成27年11月26日(木) 18:30~20:15

場所:ANAクラウンプラザホテル宇部 3F 万葉の間

講演 18:45~19:15
『形態学的評価から疾患へのアプローチ~眼科における顕微鏡~』
山口大学大学院医学系研究科 眼科学 森重 直行 先生

特別講演 19:15~20:15
『iPS細胞による視神経の研究』
国立成育医療研究センター 眼科医長 東 範行 先生

特別講演印象記

永井 智彦

第36回西中国眼疾患フォーラム
「iPS細胞による視神経の研究」
国立成育医療研究センターの東範行先生に上記タイトルにてご講演いただきました。
最初にズラッと並べられた小児眼底疾患画像に目を奪われたかと思うと、そのままの流れで成育医療研究センターでの検査についてお話しされました。小児に対する眼科検査の苦労はみなさん散々身に染みてるとは思いますが、成育医療センターでは全身麻酔の上、ERG、OCT、FAG、Ret cam(広画角眼底カメラ)と流れ作業で二時間ほどで検査をやり切ってしまうそうです。
 講演の内容は次第に網膜へと移り、流行りの視細胞から視神経節細胞(RGC)のほうへフォーカスされていきます。神経細胞の分化に重要な転写調整因子としてPax6が挙げられます。Pax6は上流に位置する神経前駆細胞の分化に重要なマスターコントロール遺伝子で、ハプロ不全により無虹彩症に、ミスセンス変異でPeters 奇形、若年性白内障、中心窩低形成などを生じるとされています。
 また次に実験モデルに関しても言及されました。例として、高眼圧・PACの緑内障モデル、グルタミン酸による神経障害モデル、Siverer mice(ミエリン障害モデル)、実験的自己免疫性疾患モデルなど多数あげられますが、結局はどれもマウスを使用した実験系です。動物とヒトでは異なる部分が多く、可能であればヒト細胞を使用したモデルで実験を行うことが望まれます。そこで重要となるのがiPS細胞などの人工多能性幹細胞です。ES細胞は胚細胞を使用するため実験で使用するには文科省を通さなければならないため、iPS細胞が実験モデルの使用に適しています。ES細胞からの眼杯や網膜の誘導はすでに報告されており、東先生の研究によりiPS細胞においても外的な形態形成遺伝子の導入なくaxonを持つRGCの誘導に成功されました。この誘導されたRGCは特異的なBrn3bやMath5を発現しているほか、patch clamp法にて軸索流を認め、機能的な面も示されています。このaxon伸長モデルを使用することによって評価したい特定の薬物(保護薬や再生薬など)のヒトの軸索への影響を調べることができます。このヒトaxonモデル使用することにより例えば神経ガイダンス因子として知られているSemaphorin3Aやslit1はaxon伸長に対しrepellentに働くことを、二次元培養上に示すことができます。またBaxやcaspase-8を調べることによりBrain-derived neurotrophic factor (BDNF)やCiliary neurotrophic factor (CNTF)が軸索のアポトーシスを抑制していることがわかります。

 今回のご講演で、スライド上に実に美しく手を伸ばしている軸索を持った視神経節細胞塊を拝見させていただくと、ついもうこれを移植してしまえばいんじゃないかと思ってしまいますが、再生医療に利用するにはまだまだ様々な課題があるようです。眼科というだけで同窓会や患者さんからiPS細胞について話題を振られることがたまにありますが、医療従事者でない方はiPS細胞=再生医療という認識(期待?)が出来上がっているように思います。今回のご講演でもiPSの本領はまずは実験モデルや疾患モデルの構築であることを再認識しました。



第126回山口県眼科医会秋季総会

日時:平成27年11月1日(日) 9:00~15:00

会場:翠山荘

一般講演

座長:湧田 真紀子 (宇部興産中央病院)

  1. 「アブラキサン®投与により両眼黄斑浮腫を来した一例」
    川本 晃司1、舩津 浩彦2 (1.かわもと眼科、2.ふなつ眼科)
  2. 「グルタミン酸による神経前駆細胞誘導時のラット網膜のタンパク質解析」
    徳田 和央1、藏滿 保宏2、中村 和行2、園田 康平1,3 (1.山口大、2.山口大プロテオーム・蛋白機能制御学、九州大)
  3. 「当院での滲出型加齢黄斑変性に対するafliberceptのTreat and extend法による1年治療成績」
    能美 なな実1、福村 美帆1,2、湧田 真紀子1,3、播磨 希1、折田 朋子1、柳井 亮二1、木村 和博1、園田 康平1,4 (1.山口大、2.下関医療センター、3.宇部興産中央病院、4.九州大)

座長:中山 昌子 (山口県済生会下関総合病院)

  1. 「対光反応が診断に有用であった視神経髄膜腫の一例」
    松永 道男1、能美 なな実1、播磨 希1、折田 朋子1、山本 和隆1,2、柳井 亮二1、木村 和博1、園田 康平1,3 (1.山口大、2.周東総合病院、3.九州大)
  2. 「当院でのHCLによる眼瞼下垂の症例」
    小林 由佳、横峯 弘隆、榎 美穂、吉村 佳子、常信 恵理、稲田 裕子 (小郡第一総合病院)
  3. 「リパスジル点眼液の眼圧下降効果」
    緒方 惟彦、村重 高志、平野 晋司 (山口県立総合医療センター)

座長:芳野 秀晃 (徳山中央病院)

  1. 「色覚に関する進路相談について」
    新川 邦圭、新川 佳代 (新南陽市民病院)
  2. 「術中虹彩緊張低下症候群 (IFIS)のあたらしい対策法」
    廣田 篤、石田 康仁、安田 佳守臣、熊野 けい子 (広田眼科)
  3. 「新しきを知り、故を郷愁む-脳心腎連関とStrain Vessel Vasopathy-」
    川田 礼治 (川田クリニック)

山口県眼科医会賞受賞講演
「格子状角膜ジストロフィⅠ型に対する新しい治療法:角膜上皮掻爬とフィブロネクチン点眼」
山口大学 守田 裕希子 先生

特別講演

座長:小林 元巳 (山口県眼科医会会長)

『トラベクレクトミーを徹底検証する-日本の現状と将来への展望-』
 金沢大学 眼科学教室 教授 杉山 和久 先生


特別講演印象記

太田 真実

 第126回山口県眼科医会秋季総会の特別講演は、金沢大学眼科学教室教授の杉山和久先生をお招きして、「トラベクレクトミーを徹底検証する~日本の現状と将来への展望~」との演題でご講演をいただきました。
 まず、緑内障手術の適応と術式の選択、トラベクレクトミーの手術手技について教えていただきました。緑内障手術は病型や病期、目標眼圧や患者さんのライフスタイルなどを考慮し術式を決定することになりますが、実際にその具体例を示されました。手術手技については、有血管のdiffuse blebが形成されやすいという観点から最近では円蓋部基底結膜切開が選択されることが多くなりました。円蓋部基底結膜切開と輪部基底結膜切開を比較した金沢大学でのデータを示され、術後眼圧には有意差はありませんが、濾過胞の丈、広がりともに円蓋部基底結膜切開の方が優れているという結果でした。円蓋部基底結膜切開の80%が有血管濾過胞であるのに対し、輪部基底結膜切開では75%が無血管濾過胞であったという結果は大変興味深いものでした。
 次に、日本におけるトラベクレクトミーの成績と合併症について、多施設共同前向き研究の結果をお話しいただきました。手術成功率(眼圧下降薬使用も含め眼圧が4~13mmHgに保たれているもの)は、初回あるいは2回目の手術では5年で30%であり、術後成績が落ちるため、3回目以降はチューブシャント手術が望ましい事を示されました。また、トラベクレクトミーの重篤な合併症の一つである濾過胞感染について重点的にお話しいただきました。濾過胞感染の累積発症率は2.2%/5年で、白内障同時手術と単独手術では発症率に差はなく、術後5年の時点では円蓋部基底結膜切開と輪部基底結膜切開においても発症率に差はありませんでした。濾過胞感染最大のリスクファクターは房水漏出で、発症率は1.93%でした。
 最後に合併症克服への道というテーマで、金沢大学で取り組まれておられる研究についてお話しいただきました。緑内障濾過手術において良好な濾過胞形成が手術成績に大きな影響を与えます。有血管濾過胞を存続させるために、ハニカムフィルムという生体材料を濾過胞の内壁にパッチする方法や、結膜瘢痕化抑制のための抗癌剤をハニカムフィルムに設置し徐放させるというドラッグデリバリーシステムなど、新しい研究内容についてもお話しいただきました。

 ご講演の演題名の通り、トラベクレクトミーの現状から将来の展望まで分かりやすく解説していただき、大変勉強になりました。ご講演ありがとうございました。




第60回山口眼科手術懇話会

日時:平成27年10月3日(土) 17:00~20:00

場所:山口大学附属病院2病棟6階カンファレンス室

一般演題 (17:00~18:30)

座長:折田 朋子(山口大学)

  1. 「バルベルト緑内障インプラント手術における前房内挿入型チューブの硝子体腔内 留置法の経験」
    太田 真実,寺西 慎一郎,白石 理江,徳久 佳代子,折田 朋子,鈴木 克佳,園田 康平(山口大学)
  2. 「角膜移植後眼球破裂の検討」
    岩本 菜奈子,守田 裕希子,山田 直之,森重 直行,園田 康平(山口大学)
  3. 「黄斑円孔,および黄斑円孔網膜剥離に対しInverted ILM flapping法を用いた2症例」
    松永 道男,柳井 亮二,折田 朋子,湧田 真紀子,播磨 希,波多野 誠,木村 和博,園田 康平(山口大学)

座長:山本 和隆(周東総合病院)

  1. 「フェムトセカントレーザーを用いた全層角膜移植の手術成績」
    森重 直行,岩本 菜奈子,守田 裕希子,山田 直之,園田 康平(山口大学)
  2. 「ソリューションチップ®の使用経験と水晶体核破砕力の検討」
    川本 晃司1,舩津 浩彦2(1.かわもと眼科,2.ふなつ眼科)

特別講演 (18:30~20:00)

座長:柳井 亮二(山口大学)

『涙道内視鏡検査』
医療法人 鈴木眼科クリニック 院長 鈴木 亨 先生

特別講演印象記

波多野 誠

 山口眼科手術懇話会は今回で60回を迎えた。記念すべき60回目にご講演頂いたのは鈴木眼科クリニックの鈴木亨先生であった。鈴木先生は宇部市黒石地区に開業されているくろいし眼科の永谷建先生の産業医科大学での同期という話や、水中撮影のご趣味などのお話も交え、涙道内視鏡について大変わかりやすくご講演頂きました。
 ご講演の内容は

  • ・涙道内視鏡は胃カメラなどとは信号出力の形式が異なるので、解像度が全く異なる
  • ・やはり涙嚢洗浄が効果を示す病態は存在し、非常に有効である
  • ・実はチューブ留置は長期成績でみるとあまり良いとはいえず、今後は検査的な意味や診断的治療としての重要性が問われている
  • ・アジア人は骨格の解剖学上、内視鏡が入れやすい
  • ・涙嚢腫瘍の存在
  • ・アレルギー結膜炎と涙点閉塞の関係
  • ・涙小管炎は以前に比べて減っており、内視鏡で涙石、肉芽、充血を確認しないとわからない
  • ・TS-1は涙嚢洗浄のみで鼻涙管閉塞を防げるだろう

など大変興味深いものでした。
 Take home messageとしては、やはりDCRの治療成績の方が勝っていることついて強調されておられました。しかし、患者さんの段階に応じた治療ができるのは内視鏡であり、その段階を検査により調べることができるもの内視鏡の強みだと私は感じました。
 貴重なご講演を頂いた鈴木先生に改めて感謝申し上げます。



第8回Grand Rounds

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日時:平成27年7月18日(土) 16:00~19:00

場所:湯田温泉ユウベルホテル松政2F「芙蓉の間」

一般講演

座長:木内 良明(広島大学)
園田 康平(山口大学)

  1. 「難治性角膜潰瘍の一例」
    岩本 菜奈子 (山口大学)
  2. 「なぜか両眼の視力が進行性に低下した症例」
    坂田 創 (広島大学)
  3. 「緑内障を合併したSturge-Weber症候群 若年者の一例」
    太田 真実 (山口大学)
  4. 「白内障手術後、日本刀を鑑定できなくなった1例」
    三好 庸介 (広島大学)

特別講演

座長:園田 康平(山口大学)

『オキュラーサーフェス疾患に対する治療戦略』
 東邦大学医療センター大森病院眼科 教授 堀 裕一 先生


特別講演印象記

岩本 菜奈子

特別講演は東邦大学医療センター大森病院眼科教授堀裕一先生に「オキュラーサーフェス疾患に対する治療戦略」というテーマでご講演いただきました。講演前に堀先生とお話できる機会がありましたが、誰にでもきさくに話してくださいました。 講演の最初は東邦大学医療センター大森病院の紹介から始まり、大きく分けて5つの内容を話してくださいました。

<ヘルペスorアカントアメーバ?>
Focusを形成しない角膜炎として角膜ヘルペスとアカントアメーバの鑑別の仕方を教えてくださいました。臨床所見からの鑑別として、アカントアメーバは病変が細く弱い印象であり、コンタクトレンズ装用者であること、眼痛が強いことが特徴です。角膜ヘルペスでは病変が太く、terminal bulb、フルオレセイン染色にて病変部位の周りに薄く抜ける部分を認めることが特徴であり、角膜知覚が低下します。このように両者ともに特徴的な病変はあるものの臨床所見だけからでは診断に苦慮し、PCR検査により確定診断に至った症例を提示されました。アカントアメーバ角膜炎と角膜ヘルペスの鑑別にPCR検査が有効であることがわかります。

<サイトメガロウイルス角膜内皮炎>
CMV角膜内皮炎では2006年にKoizumiらが報告しました。これまで原因不明の続発性緑内障や水疱性角膜症として認識されていました。堀先生が提示してくださった症例ではDSAEK後内皮型拒絶反応とCMV角膜内皮炎との鑑別に苦慮された症例であり、両者の鑑別が重要と考えます。臨床所見の違いはDSAEK後内皮型拒絶反応では角膜後面沈着物はわずかでありステロイドに反応し、眼圧は正常範囲内です。CMV角膜内皮炎では角膜後面沈着物はホストとドナー両方に確認され、ステロイド抵抗性であり、眼圧は高いことが特徴です。PCR検査は鑑別診断に有用であり、原因不明の続発性緑内障、水疱性角膜症に対してPCR検査は重要であると再確認しました。

<ドライアイと精神疾患>
ドライアイの診断基準(2006年)では角結膜上皮の異常、涙液の異常、自覚症状の3つの項目が必要ですが、自覚症状のみ定量的に測ることができません。最近ではこの自覚症状を点数化したDEQSスコアがあります。DEQSスコアは点数が高いほどドライアイで困っていることを表しますが、臨床所見と相関関係がないことが報告されています。日頃の診療においてドライアイ患者さんは数多くいらっしゃいますが、患者さんの訴えと眼症状との解離に、診断や治療の難しさを教えていただきました。

<Lid-wiper Epitheliopathy(LWE)>
Lid-wiper Epitheliopathyに関連した解剖、ドライアイの病態、病態に対する治療を提示してくださいました。昔に比べると現在はドライアイに対する治療薬も増え、多くの選択肢があります。その中でどのような病態か理解し、病態に合った治療をするか、教科書では知ることができない内容であり、私自身とても知りたかった知識でした。臨床現場に即しており大変勉強になりました。

<薬剤毒性角膜症>
最後は各薬剤とその眼症状を提示したうえで、ドライアイとの鑑別の重要性を教えてくださいました。ドライアイでは角膜上皮障害と同等の障害を眼球結膜も受けており、薬剤毒性では角膜上皮障害の割に眼球結膜には障害を受けていないことが大きな違いであると言えます。また薬剤毒性では問診が重要であり、忙しい診療の中でも問診で聞き逃さないことが大切といえます。

大変内容の濃い講演でしたが、若手の先生にもわかるように噛み砕いてあり、私自身ぐいぐいと引き込まれていきました。日常診療の中で身近な問題から診断に苦慮する難しい問題まで幅広い症例を提示してくださり大変勉強させていだだきました。ご講演頂き誠にありがとうございました。






第59回山口眼科手術懇話会

日時:平成27年7月2日(木) 17:30~20:30

場所:山口大学医学部霜仁会館3階

一般講演 (17:30~19:00)

座長:寺西 慎一郎(山口大学)

  1. 「山口大におけるEx-PRESS術後成績の検討」
    太田 真実,寺西 慎一郎,内 翔平,白石 理江,徳久 佳代子,鈴木 克佳,園田 康平 (山口大学)
  2. 「角膜内皮移植術後の角膜実質構造の変化」
    守田 裕希子,岩本 菜奈子,山田 直之,森重 直行,園田 康平 (山口大学)
  3. 「Pit-macular症候群に対して硝子体手術を施行した一例」
    小林 正明1,山城 知恵美2,白石 理江1,折田 朋子1,寺西 慎一郎1,柳井 亮二1,木村 和博1,鈴木 克佳1,園田 康平1 (1:山口大学,2:周東総合病院)

座長:湧田 真紀子(宇部興産中央病院)

  1. 「水晶体の前房内脱臼」
    平野 晋司,村重 高志,緒方 惟彦(山口県立総合医療センター)
  2. 「両側の結膜被覆術を行った角膜穿孔両眼同時発症の1例」
    村田 晃彦1,能美 典正1,新川 邦圭2,芳野 秀晃1,狩野 有加莉3,長門 晋平3,遠藤
    史郎3 (1:徳山中央病院眼科,2:新南陽市民病院眼科,3:徳山中央病院耳鼻咽喉科)

特別講演 (19:00~20:30)

座長:園田 康平(山口大学)

『眼の形成外科アラカルト 眼瞼・眼窩・涙道疾患の基礎と治療』
 愛知医科大学眼科学教室・特任教授 柿崎 裕彦 先生

特別講演印象記

森重 直行

 第59回山口眼科手術懇話会が平成27年7月2日に開催されました。教室員の一般講演の後の特別講演は,愛知医科大学の柿崎裕彦先生による「眼の形成外科アラカルト 眼瞼,眼房,涙道疾患の基礎と治療」でした。柿崎先生はとても山口県にゆかりの深い先生で,ご講演にも心地よい山口弁の雰囲気が混ざっているように感じました。
 最初の15分は,怒涛の「自己紹介」でした。日本眼形成外科学会の理事長であることやアジア眼形成外科学会の理事長であることだけでなく,宇部ふるさと大使であられること,ベンチプレスの日本記録保持者であったことなど,アグレッシブで型破りなお人柄をお伺いする事ができました。
 ここまででもインパクト十分だったのですが,本題の眼形成に関するご講演は,圧巻の一言でした。眼瞼下垂ひとつをとっても,さまざまな原因で起こること,それらをいかに適切に診断していくことの重要性を,テンポよく,流れるように,そしてしっかりと心に残るようにご教示くださいました。下眼瞼内反症の治療についても,ご自身のご研究から発展したオリジナルの手術をご提示いただきました。実際に眼瞼下垂や内反症の手術を行うようになって,自分の手術のどこが正しかったのか,どこが間違っていたのかを認識する事ができました。甲状腺眼症や眼瞼悪性腫瘍の再建術なども,豊富な症例の治療経験に裏づけされた理論は,一つの学問体系として確立されたものであることを認識する事ができました。涙嚢鼻腔吻合術のお話は,膨大な基礎研究のデータに裏づけされた病態生理と,その病態生理に基づいた治療ストラテジーをご提示いただきました。90分間ぶっ続けのご講演でしたが,柿崎先生のインパクトに圧倒され,満腹になりました。
 この1ヶ月で,私は柿崎先生に3度もお会いする事になりました。6月5日の箱根ドライアイクラブ,6月27日の小郡第一病院での手術,そして今回の手術懇話会。角膜・前眼部を担当する以上,眼瞼や涙道とは切っても切れない立場にいますので,柿崎先生とこれだけ濃厚に(?)ご一緒させていただけたのは何かの巡り合わせかもしれません。柿崎先生は今後も小郡第一病院で手術をご執刀されるとのことですので,引き続きご指導賜ろうと思っております。柿崎先生,どうぞよろしくお願いします。



第125回山口県眼科医会春季総会

日時:平成27年5月24日(日) 9:00~15:00

場所:翠山荘

一般講演 (09:00~11:00)

座長:山田 直之(山口大学)

  1. 「ラット緑内障濾過手術モデルにおける全トランス型レチノイン酸受容体作動薬R667の効果」
    森 拓也1、鈴木 克佳1、寺西 慎一郎1、青木 一将1、劉 洋1,2、折田 朋子1、木村 和博1、園田 康平1(1.山口大学 2.吉林大学)
  2. 「正常角膜実質のコラーゲン線維束の解剖学的特徴」
    新行内 龍太郎、安積 陽也、大田 裕晃、森重 直行、園田 康平(山口大学)
  3. 「角膜実質創傷治癒過程における筋線維芽細胞の発現とPalladinの共局在」
    安積 陽也、新行内 龍太郎、守田 裕希子、森重 直行、園田 康平(山口大学)

座長:平野 晋司(山口県立総合医療センター)

  1. 「光学式眼軸長測定装置 OAー2000の使用経験」
    礒田 結真、佐藤 洋一、谷川 絵理子、村上 紗和子、山田 未奈、福田 夏美、園田 康平(山口大学)
  2. 「超音波画像診断装置におけるB-Axial機能の信頼性と検査施行した後部ぶどう腫の一症例」
    横峯 弘隆、稲田 裕子、常信 恵理、小林 由佳、吉村 佳子、榎 美穂(JA山口厚生連小郡第一総合病院)

座長:柳井 亮二(山口大学)

  1. 「視神経炎で発症した眼トキソカラ症の1例」
    近藤 由樹子、德田 あゆみ、湧田 真紀子(宇部興産中央病院)
  2. 「ロボット支援下根治的前立腺切除術中の眼圧上昇」
    村田 晃彦1、能美 典正1、新川 邦圭1、芳野 秀晃1、田原 正則2、三角 拓2、福田 昌史2、荒巻 和伸2、 土田 昌弘2、三井 博2、那須 誉人2、林田 重昭2、坂本 誠史3、山下 唯可3、吉村 学3、福田 志朗3、 鳥海 岳3、松本 洋明4(1.徳山中央病院眼科 2.徳山中央病院泌尿器科 3.徳山中央病院麻酔科 4.山口大学医学部泌尿器科)
  3. 「脈管の進化からみる、現在・過去・未来 -脈管学上における網膜血管の役割-」
    川田 礼治(川田クリニック)

特別講演 (11:00~12:00)

座長:園田 康平(山口大学)

『網膜色素変性の診療が変わる』
 千葉大学大学院医学研究院眼科学 教授 山本 修一 先生

特別講演印象記


小林 正明

 第125回山口県眼科医会春季総会の特別講演は、千葉大学大学院医学研究院眼科学教授の山本修一先生をお招きして、「網膜色素変性の診療が変わる」との演題でご講演をいただきました。
 導入の話題として、千葉大学病院の外来棟新築などからはじまり、診療報酬改定や消費税増税による全国的な国立大学病院の収支悪化など、現在の大学病院を取り巻く状況をわかりやすくお話しになりました。また、ベトナムでの病院視察の報告は、1床のベッドを2人で使うことが常態化しているなど、設備やサービス面も含めて、日本の医療水準との隔たりを実感するものでした。
 本題では、有効な治療法のない眼科疾患である網膜色素変性について、病態や検査、新しい治療など、多彩な切り口でお話し頂きました。ご存じのとおり、網膜色素変性は遺伝子異常による杆体細胞障害により夜盲と視野狭窄を来たし、失明に至る疾患で、その原因遺伝子は90個が同定されています。
 一般に網膜色素変性のフォローアップとして行われる、視力検査、眼底検査、動的量的視野検査では変化を検出できず、自覚症状のみ増悪している症例では、静的量的視野検査(HFA)による平均網膜感度の測定や、OCTによるIS/OSラインの評価、自発蛍光眼底写真(FAF)による評価が有用であるとのことでした。HFAやOCTは導入している医療機関も多く、とくにOCTは、IS/OSラインの長さだけでなく、黄斑浮腫(CME)等の黄斑病変についても簡便に評価できるため有用です。本症に合併するCME治療の留意点として、ドルゾラミド点眼やアセタゾラミド内服などCAIが第一選択であり、アバスチンの投与は無効という点が挙げられました。今後はトリアムシノロンやVEGF阻害薬ではなくCAIを第一選択に使うよう心がけます。
 また、最近の新しい治療法として、遺伝子治療が紹介されました。欧米で臨床治験が進んでいるものとして、Leber先天盲やコロイデレミアに対する遺伝子治療が挙げられました。本邦では、日本人における原因遺伝子の大規模な統計がとられていないため、網膜色素変性では遺伝子治療の応用が進んでおらず、現在、日本人患者を対象とした大規模スタディが検討されているとのことでした。欧米の治験では、投与群全例で視力改善が見られ、良好な結果が得られているとのことで、本邦でも臨床応用が期待される分野のひとつです。
 その他にも、新しい治療法として、ウノプロストンが網膜色素変性の黄斑機能を改善する可能性や、世界の人工網膜研究の現状、iPS細胞による網膜再生の可能性等についてお話しがありました。人工網膜は、我が国では阪大での研究が有名ですが、世界的には米独が先行しているとのことでした。各国とも未だ技術面での課題が残り、実用化に至っていないのが現状です。しかし、工学技術の進歩次第で伸び代があるとのお話があり、今後に期待が持てる分野という印象を受けました。また、網膜色素変性患者に対する白内障手術の是非についても言及され、術後視力について過剰な期待を持たせないなどの注意点をご自身の経験からお話しになりました。
 今回、山本修一先生のお話を拝聴して、不治の疾患という網膜色素変性のイメージが少しずつ変わってきていることを知り、大変勉強になりました。ご講演ありがとうございました。
 最後に、網膜色素変性患者の団体について紹介がありましたので、本稿でも備忘録代わりに記載させていただきます。残念ながら、山口県には支部がないようです。
一般社団法人 日本網膜色素変性症協会(Japanese Retinitis Pigmentosa Society; JRPS)
〒140-0013 東京都品川区南大井2-7-9 アミューズKビル4F
TEL:03-5753-5156、FAX:03-5753-5176、E-mail info@jrps.org


山本先生


第24回やまぐち眼科フォーラム

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日時:平成27年5月23日(土) 18:00~20:00

場所:ホテルニュータナカ 2階 平安の間

特別講演1
『原発閉塞隅角緑内障の病態と治療』
琉球大学医学部附属病院眼科 講師 酒井 寛 先生

特別講演2
『小児眼科疾患知恵袋』
産業医科大学眼科学教室 教授 近藤 寛之 先生

特別講演印象記

内 翔平

 第24回やまぐち眼科フォーラムの特別講演では琉球大学の酒井寛先生に原発閉塞隅角緑内障(PACG)についてご講演いただきました。
 まずはPACGの疫学をご教授いただきました。全世界的には、閉塞隅角緑内障と開放隅角緑内障(POAG)の患者割合は1:4で、失明に至る患者群の割合は3:1とされていますが、計算上はPACGの方がPOAGよりも約5倍失明するということでした。PACGは手術にて根治可能な病態にもかかわらず、依然として失明率が高い事を確認できました。PACGのリスクとしては遠視、短軸眼、角膜厚、女性、高齢、高眼圧などがあり、1歳の加齢で7.1%リスクが上昇するとのことでした。
 次に、PACGの診断の難しさです。症例として、細隙灯顕微鏡で前房深度が深く、隅角鏡でもPASがなく、POAGとして治療されており、超音波生体顕微鏡検査(UBM)施行したところ隅角閉塞を確認し、PACGの診断で緊急隅角癒着解除施行となった例を提示いただきました。角膜径が小さいと、浅前房でも前房が深く見えるため注意が必要ということでした。先述のリスクを持った症例や、進行の早いPOAGは、今一度診断を再考しなければならないことを再認識しました。
 PACGにはUveal effusion(UE)が潜在しているという話も印象的でした。もともとUEは小眼球に多く、毛様体および脈絡膜の浮腫や剥離がみられることから、PACGとの合併が考えられ、調査したところ高頻度に合併するようでした。急性緑内障発作眼は特にUEの合併が多く、発作が起きることでeffusionが惹起され、毛様体前方回旋の結果浅前房を呈するとのことでした。これらの検査にもUBMが有用であり、普段積極的に施行していないUBMの重要性をご教授頂き大変勉強になりました。

 最後に治療のお話で、PACGの治療にはレーザー虹彩切除術(LI)と白内障手術があり、水疱性角膜症の発症リスク等もあり、現在は半数以上が白内障手術を施行され、予後も明らかに白内障手術群のほうが良いことがわかりました。PACG例はチン小帯脆弱や散瞳不良を高率に合併しますが、LI後の白内障手術は難しくなることもあり、手術が難症例と予想されていても、縫着レンズや硝子体手術ができる準備のうえ、積極的に白内障手術をすることが理想とのことでした。思わず敬遠してしまう高リスク症例であっても、視力予後のためにはしっかり手術しなければならないなと思いました。


酒井先生

 

松永 道男

 講演の初手から笑いを誘う大変楽しい講演でした。
 Ya○oo知恵袋形式での斜視、眼底疾患、黄斑低形成の3つを重点的に幅広く御講演いただきました。以下に講演ノートを記します。
 子供の斜視を見たら網膜芽細胞腫、頭蓋内腫瘍、網膜(変性)疾患が隠れていないかどうかを念頭に置かなければなりません。弱視の種類は屈折性、斜視性、視性刺激遮断弱視の3種類があり、カバーアンカバーテスト、微小角斜視弱視の鑑別、1%サイプレジン下屈折検査後に治療介入していくことが重要です。
 斜視の治療としては器質的疾患の除外、交代固視のチェック、0.5%アトロピン点眼下屈折検査での屈折矯正、健眼遮蔽を施行していきます。回旋斜視では斜頚に注意し、head tilt testやdouble Maddox test等で調べる方法があり、微小角弱視では4⊿Base out testを施行することも必要となります。
 小児の眼底疾患を診断するコツとしては、小眼球、弱視、斜視、眼振、羞明、全身合併症などの随伴症状、家族歴が重要であり、鑑別診断として心因性視力障害、視神経炎等も重要です。子供は自ら症状を訴えないこともあるので、夜間動かない、つまずく、眼振、斜視、羞明、小眼球、角膜混濁などの徴候にこちらが気付くことが重要です。
 診断方法としては、屈折、視力・視野・色覚、ERG、EOG、OCT等あります。
 遠視では若年網膜分離症、Leber先天盲(錐体型)、近視では家族性滲出性硝子体網膜症、先天停在性夜盲等があります。診断の難しい疾患としては正常な眼底所見で、網膜機能も正常に近く緩徐に進行する疾患で、全色盲、白子症、網膜分離症、Stargardt病などがあります。
 白子症はメラノサイトの異常が原因で、眼球振盪や黄斑低形成を生じる。
 若年網膜分離症では黄斑部車軸状嚢胞形成、下方網膜分離、ERGでのb波の振幅低下及び陰性ERGを示し、アセタゾラミド点眼が有効という報告もあります。
 Stargardt病(黄色斑眼底)では、リポフスチンの蓄積を認め、FAでのdark choroidと黄斑萎縮、錐体ERG減弱、OCTで網膜外層の菲薄化などが起こります。
 総じて眼底疾患の診断のポイントは徴候をつかむことが何よりも大事であり、疑うことが第一であり、最新の検査機器を駆使することも有効です。
 黄斑低形成を起こすものは白子症、先天無虹彩、特発性黄斑低形成、全色盲などがあります。
 眼白子症では視力の良い症例もあります。保因者(母)はモザイク様眼底を示し、色素はそれほど薄くはなく注意が必要です。
 先天無虹彩は眼形成のマスターコントロール遺伝子であるPAX6遺伝子が原因遺伝子であり、無虹彩、瞳孔変異、先天白内障、角膜ジストロフィ、Peters奇形、黄斑低形成を引き起こします。
 全色盲(桿体1色覚)では視力は0.1を切ります。錐体細胞の機能障害(桿体機能は正常)、眼底は正常所見を示し、非進行性で遺伝形式は常染色体劣性遺伝です。
 診断が難しい小児の疾患をわかりやすく診断法、特徴を含め御解説いただきました。私自身も含め、小児疾患を難しいと感じているドクターも多い中、大変有意義で楽しい講演会でした。非常に勉強になりました。御講演頂き、誠にありがとうございました。


近藤先生


アイリーア発売記念2周年記念講演会in山口

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日 時:平成27年3月12日(木) 19:00~

場 所:山口グランドホテル3階 末広

特別講演:『加齢黄斑変性診療のトレンド』
関西医科大学眼科学教室 主任教授 髙橋 寛二 先生

特別講演印象記

柳井 亮二

 特別講演は関西医科大学 眼科学教室 主任教授 高橋 寛二 先生に『加齢黄斑変性診療のトレンド』というテーマでご講演頂きました。
 高橋先生は昨年 NHKの「ためしてガッテン」の「1200万人! 目の現代病 ~ 危険な目ヤニ 発見ワザ」に出演され,大反響がありました。患者さんだけでなく,一般の方へ病気について知っていただくことが,加齢黄斑変性AMDの予防や早期発見につながるということで,今週末にもテレビ出演の予定があるとのことでした(チョイス@病気になったとき「モノがゆがんで見えるとき」3/14 (土) 20:00 ~ 20:45 NHKEテレ1)。今回はそんなご多忙の中,初めて山口までお越しいただくことが出来ました。

 診断におけるトピックとしては「新しい前駆病変:reticular pseudodorusen RPD網状偽ドルーゼン」が治療をしても悪化する前駆病変で,今後の外来診療で重要な所見となるようです。光干渉断層計OCTの進歩もあり,最近の数年でますます研究が進展している分野で,色素上皮の下に沈着する「軟性ドルーゼン」とは異なり,RPDは網膜下に沈着物が発生し,徐々に数が増えてくるとのことです。RPDの特徴としては,ドルーゼンと同様の物質で,女性,高齢者に多く見られ,眼底の上方,脈絡膜(中心窩)や網膜外層が薄くなる(outer retinal dystrophy),経過中に消失することがあるとのことです。

 「萎縮型AMD」は日本人の有病率が0.1%(約5万人)の眼疾患ですが,今後増加する可能性があると危惧されていました。滲出型AMDに移行することもあり,現在までに有効な治療法は開発されていません。軽症の萎縮型AMD治療は予防が大切で,最近の研究結果から薬物治療の可能性が模索されているようです。

 「地図状萎縮は病変部」が250μm以上で境界線明,脈絡膜の中大血管が透見可能で,網膜自家蛍光FAFとOCT(脈絡膜信号の増強)による検査・経過観察が重要です。重症化の指標としては中心窩を含むものと含まないものが,視力に大きく影響するとのことでした。興味深いことに,萎縮型AMDにみられるouter retinal tubulation ORT 網膜外層チューブ形成があると地図状萎縮の進行が遅いということでした。網膜色素上皮細胞と網膜視細胞の関係はなかなか複雑ですが,このような現象のメカニズム解明することが,AMDの病態の解明につながっていくのでしょう。
 「AMDの脈絡膜厚」についても研究されており,ポリープ状血管腫,典型AMD,網膜血管腫状増殖RAPの順に脈絡膜が薄くなっている傾向があることを示されました。ポリープ状血管腫では脈絡膜深部血管の拡張がみられますが,そのメカニズムは脈絡膜毛細血管板が萎縮・狭小しているのか,間隙の繊維が組織の密度が低下しているのかについては未だ明らかにされていないようです。近年,AMDの治療の主要な位置を占めている抗VEGF療法によっても,脈絡膜が菲薄化することが知られており,抗VEGF薬の種類によっても菲薄化の程度が異なるようです。菲薄化は脈絡膜間質の容積の減少や脈絡膜血管径の狭小化によって起こるのではないかと考察されていました。

 「治療」AMDの治療指針は2012に発表されましたが,既に古くなっているとのことです。ガイドラインの改定は,なかなか時間のかかる作業とのことですが,治療方法が次々と開発実用化されているため,最新の治療方法についていくことが大切なようです。AMDは多因子疾患なので,経過観察を行うときにもライフスタイルに注意することが重要です。世界中で遺伝マーカー,環境因子,行動因子,遠視などのその他の因子についての研究が進んでおり,予防的治療法を確立することが現在の重要課題となっているようです(Lancet 2012)。

 「食生活とAMD発症リスク」以前からAMDの発症には食生活が重要な因子であることが知られていましたが,昨年の報告で東洋パターンの食事のほうが西洋パターンの食事よりもAMD発症のオッズ比を早期でも後期でも低くする効果があることが明らかにされました(AJO 158: 118-127, 2014)。
 AMDに対する治療法は日進月歩で,その変化に対応することは眼科医の使命となっています。高橋先生の特別講演は現在のAMD診療に必要な最新の知見についてわかりやすく解説していただきました。講演後の情報交換会においても,質疑応答に対丁寧にご返答いただき、大変有意義な特別講演でした。


第14回高次統合感覚器医療研究会

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日時:平成27年3月11日(水) 19:00~

場所:国際ホテル宇部3F「パール」

特別講演:『網膜疾患の病因と病態機序の解明』
独立行政法人国立病院機構東京医療センター分子細胞生物学研究部 部長 岩田 岳 先生

特別講演印象記

永井 智彦

 東京医療センター臨床研究センターの岩田岳先生に「網膜疾患の病因と病態機序の解明」という題でご講演いただきました。内容は、加齢黄斑変性症・緑内障・オカルト黄斑ジストロフィのそれぞれの原因遺伝子の機能解析について、最後に網膜変性疾患における全エクソーム解析プロジェクトについてお話いただきました。

 原因遺伝子の網羅的な解析において、「次世代シーケンサー」が非常に重要なキーワードとなっています。20年前では、180万塩基の配列解析に、キャピラリー電気泳動法にて1年以上の期間と100万ドル以上のコストが必要でした。初めてヒトゲノムが解析されたのは2003年のことで、当時は配列解析に13年間、コストも30億ドルほどもかかっていました。2003年のゲノム解析の対象は数人のゲノムが混じったものでしたが、2007年に初めて個人一人の全ゲノムが解析されました。その際に投入された次世代シーケンサーは、わずか2ヶ月間、100万ドル以下のコストで読み切っています。さらに2012年には1回のランで解析できるデータ量が2007年のシーケンサーの1,000倍まで飛躍、2014年に登場したシーケンサーでは3日間で16人分の全ゲノム配列を決定できるなど、ムーアの法則をはるかに超えるスピードでの技術躍進がみられます。(2014年にIllumina社が発売したHiSeq X Tenは上記の性能の機器10台分をひとまとめとしているため、その10倍の量の解析が可能です。これは1年間ではおよそ18,000人分以上のゲノムデータ量に相当します。)コスト面では、2014年のシーケンスの登場により一人あたりのゲノム解析がついに1,000ドル(約12万円)を切るようになりました。(これは私のおよそ1年間分のおこづかいに相当します。)

 このように以前はできなかった大量シークエンシングにより、疾患原因遺伝子の検索様式も大きな変貌を遂げています。岩田先生は、次世代シーケンサーを用いたエクソーム解析を行い、疾患と関連の高い遺伝子の特定、さらに発生機序に踏み込んで解析をされています。 加齢黄斑変性(AMD)においては、ARMS2/HTRA1というハプロタイプが疾患関連遺伝子として取り上げられました。これらの遺伝子多型は連鎖不平衡を有しており、欧米人で強く相関すると言われているCFHよりも高い疾患相関性を示しています。ARMS2/HTRA1は染色体10番にローカスがあり、ARMS2のエクソン1番、2番、HTRA1のエクソン1番が存在します。AMD患者では途中から塩基配列が欠損しており(insertion/deletion:indel)、indel領域がある人はない人に比べてAMDのリスクが5-6倍と高くなることがわかっています。RGC5(神経視細胞由来の株)にてHTRA1の発現が確認され、またAMD患者のiPS細胞では健常人と比べHTRA1の発現が上昇していることがわかりました。HTRA1のトランスジェニックマウスを作成したところ、網膜切片より脈絡膜からの血管新生を確認しました。免疫染色においても血管新生であることが確認でき、これらのTGマウスが血管新生モデルとしても利用できるのでは、とのお話でした。今後は治療戦略としてHRTA1がターゲットとなるのでしょうか。

 次に緑内障の関連遺伝子についてお話されました。緑内障に関しては20年以上ゲノム相関解析が行われていますが、複数の遺伝子領域の関連が示唆されているものの、未だ遺伝子は特定されていません。2007年に発表された緑内障関連遺伝子に関する論文では、特にMYOC(染色体1番)、OPTN(染色体10番)の二つの遺伝子に再現性がみられています。岩田先生はOPTNの、特にE50K(グルタミン酸→リジンへの変異)に注目されました。OPTN E50Kの緑内障家系が特定され、解析がしやすかったことが理由の一つです。OPTN に関しては、現在、NF-kB、ミオシンⅥ・Rab8と関連するゴルジ体からの生体分子の移動、オートファジーに関与していることがわかっています。また2010年にはOPTNが筋萎縮性側索硬化症と関与していることも報告されました。ユビキタスなプロモーターを使ってOPTN変異体を発現するマウスを作製したところ、外網状層が変性し薄くなっていることが確認されました。HEK293にOPTNと変異体のOPTNをそれぞれトランスフェクションしたところ、発現量の減少を認めました。そこで細胞に E50K の変異体と正常体をそれぞれ発現させ、それらをbaitとして結合するタンパクを質量分析計で解析したところ、TBK1というタンパクが浮上してきました。Bx795(TBK1阻害剤)にて確認したところOPTN変異体との結合抑制(沈殿の抑制)を認めました。TBK1がE50K患者において治療のターゲットとなる可能性が示唆されました。

 オカルト黄斑ジストロフィー(OMD)に関しては、RP1L1(染色体8番)という遺伝子の変異(R45W、アルギニン→トリプトファン)が原因として挙がっています。RP1L1は、色素変性症の原因遺伝子である RP1 と相同性が高くRP1にlikeな遺伝子で、マイルドな色素変性を引き起こすそうです。RP1L1はヒトでは反復配列が多く、マウスではみられないようです。マウスはヒトと違い黄斑部が存在しないため、そのような構造の違いもRP1L1が関わっているという可能性が頭をよぎりましたがどうでしょうか。OMDの診断にRP1L1遺伝子の解析が有用である可能性が示唆されました。

 最後に網膜変性疾患のエクソーム解析についてお話しされました。網膜変性疾患の原因遺伝子として200以上の遺伝子が発見されています。現時点でも発見された遺伝子数は増加し続けておりプラトーに達する気配がないため、網膜色素変性をはじめとした網膜変性疾患の原因遺伝子を解析する研究班を立ち上げたそうです。また解析のため、担当医と情報をやり取りできるオンライン症例登録システムを採用しています。日本人の遺伝性網膜疾患家系における既知遺伝子変異は17%、既知遺伝子ではあるが未知の遺伝子変異が発見された家系が14%でこれを合わせても約30%であるため、その他の70%の家系は新規原因遺伝子である可能性が示唆されます。耳鼻科疾患では遺伝性のものが多く7割ほどはすぐ原因遺伝子が見つかるそうで、遺伝子解析分野では眼科とは様子が異なるようです。

 岩田先生のお話をお聞きして、火炎放射器のような荒業とも言える広く網羅的な全エクソーム解析と、狙いすましたライフルのようなピンポイントでの遺伝子の機能解析・疾患機序の解明と、対照的な研究手腕が非常に印象的でした。私も、マウスが逃げないようにと段ボールの囲いを完成させて喜んでいる場合ではなく、研究内容をより広く検討し、より深く研究することを目標に精進していきたいと思います。


ロンドン大学山口大学スペシャルセミナー2015

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日時:平成27年2月24日(火) 18:00~

場所:山口大学医学部総合研究棟8階 多目的室

特別講演:『The mechanism and potential treatment of Prominin1-mediated photoreceptor degeneration』
University College of London 教授 大沼 信一 先生

特別講演印象記

折田 朋子

 平成27年2月24日に開催された、ロンドン大学山口大学スペシャルセミナー2015にて、ロンドン大学の大沼信一教授による、”The mechanism and potential treatment of Prominin1-mediated photoreceptor degeneration”という演題を拝聴した。

 近年、長州ファイブによるロンドン大学留学150周年記念を迎え、日英学術交流がさらに盛んになっているなかで、ロンドン大学から山口大学へ来ていただき、大変感慨深いものがあった。

 Prominin-1は5回膜貫通型の膜糖タンパク質で、細胞表面に発現する造血幹細胞や前駆細胞のマーカーとして知られている。このタンパクは、幹細胞の特性維持や細胞増殖に関与しているほか、網膜の視細胞死をひきおこす遺伝病の発症にもかかわっており、その変異のパターンによって網膜色素変性症になったり、Stargardt病になったりする。これらの遺伝病は現在のところ治療法もなく、また家系によって進行の度合いに差がある。今回はProminin-1の変異によって引き起こされる網膜変性疾患の分子メカニズムについてご講演頂いた。
 まずC57BL/6という遺伝的背景をもつwild typeとProm1 KO mouseを用いて、網膜の組織構造を免疫染色で検討した。Prom1 KO mouseでは生後14日(p14)の時点では視細胞外節層の厚みは変わらないが、p20になると視細胞外節層は消失した。純粋なC57BL/6のKOマウスの交配が困難なため、C57BL/6とCBA/NSlcを掛け合わせたハイブリッドマウスで検討したところ、ハイブリッドProm1 KOマウスでは、同様にp14の時点で視細胞外節層の変性が始まるが、p20の時点で純粋なC57BL/6のKOマウスと比べてみると、外網状層やIS/OS lineは比較的保たれていることがわかった。このことから、Prominin1欠損による表現型は、遺伝的背景によるところが大きいことが示唆された。
 電子顕微鏡でp20のKO mouseの視細胞を観察すると、視細胞外節の部分がかなり変形しているのが認められた。また免疫染色にてロドプシンとM-Opsinの局在を検討したところ、wild typeとは異所性にその発現が認められた。
 視細胞の変性が、マウスの開眼するp14以降で認められることから、Prom1による視細胞変性に光が関与していると考えた。そこで、mouseを暗闇で飼育すると、prominin-1 KO mouseではp20の時点で、視細胞外節が障害されていないことがわかった。またERGにて網膜機能をみてみると、やはり暗闇で飼育したKOマウスの網膜機能は、普通の明暗サイクルで飼育されたKOマウスに比べて保たれていることがわかった。
 光障害による網膜変性には様々な要因が知られているが、視サイクルが大きく関与していると言われており、Prom1 KOマウスでは視サイクルに必要なAbca4とRdb12の発現が著名に低下していることがわかった。
 もともと抗腫瘍作用をもつことで知られているビタミンA誘導体のFenretinideは、視サイクルを遅らせることでリポフスチン形成を阻害する。そこでこのFeniretinideをProm1 KOマウスに投与しその作用をみてみると、p30の時点でも網膜の構造が保たれていることがわかった。

 

 遺伝性網膜変性疾患の分子メカニズムについて、動物モデルを用いて非常にわかりやすく説明していただいた。また現在、治療法のない網膜変性疾患に、少しでも変性を遅らせる可能性のある薬剤についての話もあり、研究の醍醐味のつまった、大変有意義な講演であった。


第23回 やまぐち眼科フォーラム

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日時:平成27年1月17日(土) 18:00~20:00

場所:ホテル松政 2F 芙容の間


特別講演1
『緑内障からQOLを守るための視野の管理』
新潟大学大学院医歯学総合研究科視覚病態学分野 教授 福地 健郎 先生

特別講演2
『最近の眼科医療におけるいくつかの話題について』
日本眼科医会 会長 高野 繁 先生


特別講演印象記

下関医療センター 眼科 福村 美帆

 第23回やまぐち眼科フォーラムの特別講演では、新潟大学の福地健郎教授をお招きして、『緑内障からQOLを守るための視野の管理』というテーマでご講演を頂きました。
 まず、『視野障害の進行速度からみた視野と眼圧の管理』というテーマで話されました。冒頭で、ハンフリー視野検査ができるようになって25年経つが、視野の取り方はまだ色々あり、私たちは視野というものを理解しきれていなくて、まだ確定的な方法は確立されていないと話されました。改めて視野検査の奥深さに驚き、同時に私はどこまで視野検査や解析を含めて理解し駆使できているのだろうかと思いました。
 視野進行の判定方法として、MDスロープをみるトレンド解析のほうが、多数回の検査は必要であるが、進行速度判定ができて、治療効果や予後評価ができるとのことでした。また、POAGの治療戦略として、平均眼圧値と眼圧変動のいずれも進行速度に関係するが、その中でも眼圧により2群にわけて考える必要があり、高眼圧群(HTG)は絶対眼圧値で評価し、正常眼圧群(NTG)は、眼圧下降率で評価し管理をすることがポイントであると述べられました。ただ、NTGの中には、進行速度が遅い人もいるから、一概に眼圧に対する視野予測はできず、個々の差を見極める必要があるのではとのことでした。
 二つ目の話題としては、『視野領域とQOL(生活の質),QOV(視覚の質)』でした。日本の眼科2014年9月号に福地先生が書いておられますので参照されたらよいと思います。緑内障患者は、自覚症状のないような時期からも、実は運転や読書能力などが低下し始めているとのことです。いかに自覚症状のない人に、自分の視野欠損を自覚してもらうかが大事なことだと思います。アンケート調査で眼科的自覚症状を数値化してQOVを評価する方法として、NEI VFQ-25があります。このスコア値とハンフリーのMD値には相関がみられ、その中でbetter eyeはMD‐15~‐17dB未満に、worse eyeはMD‐20~‐25dB未満に生涯の治療目標を設定したほうがよく、それには年齢を考えると早い段階から積極的に治療が必要になることもあります。また、QOL/QOVは特にbetter eyeに強く依存しているので、いかにbetter eyeを守るかが大切であるとのことでした。また、視野障害の領域の中で下側の視野がQOL/QOVでは大事ではあるが、運転能力にとっては信号を見落とさないためには特にbetter eyeの上側の視野が必要であり、こういった観点からも私たちは治療方針や患者指導をしていくべきだと思いました。

 最後に、中心視野や視力の管理として、SS-OCT(網膜神経線維層を詳細に観察することができる)の利用や、ハンフリー10-2の大切さ(QOL/QOVにかかわる領域をみるのに必要である)、ハンフリーの中心窩閾値をonにして測定する(中心窩閾値は視力に相関する)といったポイントも教えて頂きました。
 今回の福地先生のご講演はとても内容が濃く、日常診療に大変役立つ内容でありました。緑内障診療で、点眼の変更や手術に踏み切るタイミングなど迷うことがありますが、今回の講演を参考に視野の予後評価や治療をし、患者さんの生涯視野を守りたいと思いました。


福地先生

 

山田 直之

特別講演2は日本眼科医会会長の高野繁先生に『最近の眼科医療におけるいくつかの話題について』という題でご講演頂きました。本稿では日本眼科医会会長としてお話し頂いた多くの話題の中から2つを選んでご紹介させて頂きます。
≪眼科サマーキャンプ≫
我々眼科医の直面する問題として,近年眼科医を目指す若い医師が減ってきていることがあげられます。平成16年4月に2年間の「新医師臨床研修(スーパーローテイト)の義務化」が始まって以降,眼科医を志望する若い医師が減少してきており,東京のような都市部と山口のような地方との眼科医数の格差は増々広がってきています。この眼科医の減少という問題は,我々眼科医にとってのみならず,国民にとっても重要な問題と言えます。我々山口大学眼科でも医学生達の少しでも多くが将来眼科医を目指してくれるよう,日々教育にあたっています。こういった問題に対して全国レベルでの対応として日本眼科医会は全国の初期研修医,医学部生(5・6年生)を対象とした「眼科サマーキャンプ」を2012年より共催しています。実際にこの眼科サマーキャンプに参加して我々の教室の門を叩く研修医達も年々増えてきています。眼科サマーキャンプのプログラムは白内障手術体験,先輩医師との懇親会,最先端の眼科医療についての講演など非常に魅力的なものとなっています。高野先生から眼科サマーキャンプでのお話しを伺い,改めて日本眼科医会の尽力により我々の同僚となる若い医師が増えてきていることを実感いたしました。この眼科サマーキャンプがこれからも若い医師の夏の貴重な体験となるよう願っています。
≪ビジョンバン≫
東日本大震災の時,被災地において十分な医療の提供が行えないという問題が浮き彫りとなりました。眼科医療もその例外ではなく,電源が確保できなければ細隙灯顕微鏡一つでさえ使用できず,まともな眼科医療は何も行えなかったと思います。東北大震災の時,被災地では米国から借りてきたVISION VANが大活躍したとのことでした。VISION VANとは簡単に言えば移動式の眼科で,眼科診療や様々な眼科検査を車内で行えます。この米国版VISION VANは3か月間で約3500人の被災者の眼科診療を行い,大変有用であったとのことでした。この時の経験を基に日本でもオリジナルのVISION VANを日本眼科医会が中心となり作成しました。平成26年2月にはフィリピンにおける台風被害に対して,日本版VISION VANを派遣しました。現地の眼科医が中心になって日本版VISION VANで約2000人の被災者の眼科診療にあたったとのことでした。国レベルでのこういった助け合いに我々眼科医も関われているという現状を初めて知り,大変興奮いたしました。
その他にも,我々眼科医が知っておくべき有益なお話しを多く伺いました。講演終了後に,高野先生と福地先生を囲み,先生方との多岐に渡る話題を肴に美味しい料理に舌鼓を打ちました。高野先生,山口に来て頂き本当にありがとうございました。


高野先生


第35回 西中国眼疾患フォーラム

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日時:平成26年11月20日(木)

場所:ANAクラウンプラザホテル宇部

特別講演:『糖尿病網膜症に対する硝子体手術とサイトカイン』
九州大学大学院医学研究院眼科学分野 講師 吉田 茂生 先生

特別講演印象記

折田 朋子

「糖尿病網膜症に対する硝子体手術とサイトカイン」について、九州大学大学院医学研究院眼科学分野、講師の吉田茂生先生にご講演頂いた。
 糖尿病網膜症(DR)と糖尿病黄斑症(DME)は、糖尿病眼合併症の中でも視力低下をきたす頻度の高い疾患である。これらの病態の責任因子はVEGFで、血管新生と血管透過性亢進に寄与している。
 DMEの成因は複数あり、硝子体内サイトカインの貯留、静水圧・浸透圧勾配の変化、網膜血管内皮細胞や網膜色素上皮細胞のバリア破綻、後部硝子体による牽引などがある。これらが複雑に絡み合って黄斑症を発症するが、症例毎にどの因子が首座なのかを見極めて治療法を選択する必要がある。現在黄斑症の治療法には①網膜光凝固、②抗VEGF抗体やステロイドの薬剤局所投与、③硝子体手術の3つの選択肢があり、それぞれ長所と短所がある。
網膜光凝固は確立した治療法であり、比較的安価だが、効果が乏しく、黄斑近くにレーザーをうつとのちにアトロフィッククリープが問題となる。抗VEGF抗体は即効性があるが、高価で脳梗塞などの既往がある症例には使いにくい。ステロイド局所投与は安価で、炎症性サイトカインやVEGFを抑制することで抗VEGF抗体とほぼ同等の効果をもつが、白内障や緑内障などの合併症に気を付けなければならない。後部硝子体牽引が原因のDMEには硝子体手術が適応だが、術後抗VEGF抗体の効きが悪くなる。
 実際の症例では、眼内のVEGF, MCP-1, IL-6, IL-8などの濃度が上がっており、VEGF以外の3者には相関があることがわかっている。硝子体術後4か月ではVEGFとIL-8の濃度は下がっていたが、IL-6とMCP-1に関しては上昇していた。またDMEに対する硝子体術後に、浮腫が再発した症例と再発しなかった症例で比較すると、MCP-1のみ相関していることがわかった。これらのことから、DMEにはVEGFだけではなくMCP-1などの他のサイトカインも関与していることが示唆された。
 現段階ではDMEに対する治療は抗VEGF抗体が第一選択になりつつあるが、ホメオスターシスを阻害することで網膜萎縮をきたしたり、線維化亢進により牽引が増悪するなどの弊害もある。そこでこれに代わる新しい治療薬を開発するために、PDR, PVR共通の因子でゲノムワイド関連解析を行った結果、ペリオスチンというたんぱく質が浮かび上がってきた。ペリオスチンは細胞外マトリックスの構成要素で、骨組織の再生、心筋梗塞後の組織の修復など創傷治癒に関与している。PDRでは血管新生、PVRでは増殖膜形成にかかわっている可能性があり、現在ペリオスチンをターゲットに治療薬を作成している。またペリオスチンは組織の線維化、組織リモデリングと密接な関連があることから、PDR, PVRだけでなくAMDに対する治療薬としても期待できる。
 データをもとに現在の治療法の問題点と限界を示され、そこから新たな治療法開発への道筋をクリアカットに講演していただき、大変興味深く拝聴した。

 講演会の後、吉田先生と一緒にお食事会に行きました。この日はちょうどボジョレーヌーボーの解禁日で、ワインを片手にざっくばらんで楽しいお話をたくさんしていただきました。



第124回 山口県眼科医会集談会

日時:平成26年11月9日(日) 9:00~15:00

場所:セントコア山口

一般講演 (09:00~11:00)

座長:湧田 真紀子(宇部興産中央病院)

  1. 「拡大読書器の処方の実際」
    福田 夏美、佐藤 洋一、谷川 絵里子、村上 紗和子、山田 未奈、早川 知里、礒田 結真、園田 康平 (山口大)
  2. 「眼内レンズ(W-60)による白内障手術前後の収差の検討」
    杉原 深夏、平野 晋司 (山口県立総合医療センター眼科)
  3. 「間歇性外斜視の術後成績についての検討」
    横峯 弘隆1、松尾 初代2、田邉 美紗2、常信 恵理1、稲田 裕子1、榎 美穂1、米谷 純子2 (1.小郡第一総合病院眼科、2.米谷眼科)

座長:平野 晋司(山口県立総合医療センター)

  1. 「当院で経験した神経鞘腫の2症例」
    内 翔平、福村 美帆、井上 和香子、石村 良嗣、布 佳久 (下関医療センター)
  2. 「両眼性サイトメガロウイルス角膜内皮炎の1例」
    近藤 由樹子、德田 あゆみ、湧田 真紀子 (宇部興産中央病院眼科)
  3. 「当院におけるサイトメガロウイルス角膜内皮炎症例の検討」
    山田 直之、小林 由佳、守田 裕希子、森重 直行、園田 康平 (山口大)

座長:木村 和博(山口大)

  1. 「ω-3脂肪酸による実験的自己免疫性ぶどう膜炎に対する炎症抑制効果」
    庄田 裕美1, 3、柳井 亮二1、永井 智彦1、堀尾 祐太1、木村 和博1、吉村 武2、Kip M.Connor2、池田 恒彦3、園田 康平1 (1.山口大学大学院医学系研究科眼科学2.Angiogenesis Laboratory, Department of Ophthalmology, Massachusetts Eye and Ear Infirmary, Harvard Medical School3.大阪医科大学眼科学教室)
  2. 「脳・心・腎連関の病態と、そのサロゲートマーカー」
    川田 礼治 (川田クリニック)

特別講演 (11:00~12:00)

座長:園田 康平(山口大)

『目とごきげんのアンチエイジングサイエンス』
慶應義塾大学医学部眼科学教室 教授 坪田 一男 先生

特別講演印象記

山口大学大学院医学系研究科眼科学 山田 直之

 今回の特別講演は慶應義塾大学医学部眼科学教室教授の坪田一男先生に『 目とごきげんのアンチエイジングサイエンス 』という題でご講演頂きました。
坪田先生自身,14,5年前からアンチエイジングに着目し研究し始め,ご自身も涙液分泌量(シルマー値)が増加したとのことでした。 まず,カロリス仮説と酸化ストレス仮説のお話をされました。前者はカロリーを制限することで健康長寿を達成するというもので,後者は酸化ストレスをコントロールすることで健康長寿を達成するというものでした。サルを用いた研究にカロリーを制限したグループのサルが若返るというものがあり,サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子),IGF/インスリンシグナル,mTORなどが関与しているであろうとのことでした。
 「何事も適度が大事」ということは日頃我々のような凡人でも感じていることです。これを坪田先生は「HORMESIS仮説」を用いて非常にクリアカットに説明されました。許容できる小容量のストレスによって生体防御反応が起こり結果的に生体にプラスになる。しかし許容量を超えると生体に不利なものとなる。運動,光,活性酸素,熱,放射線,紫外線,ストレス全般などがこのHORMESIS仮説が成り立つもので,運動であれば30分程度,お酒なら2杯までが良いとのことでした。そう言えば,前日に坪田先生と夕食をご一緒させて頂いた際,飲み物は途中からずっとPerrierにされており,ちゃんと研究成果を身をもって実践されているのだと講演を聞きながら改めて感心いたしました。
 また,私事ですが,最近夜トイレに起きることがあり年のせいか(41歳)と思っておりましたが,坪田先生の講演で原因がはっきりいたしました。私は寝る前にベッドで必ずiPadを見るのですが,実はこれが良くないとのことです。寝る時にスマホやPCを見るとブルーライトで脳が覚醒し,寝つきが悪くなったり,睡眠の質が悪化し,途中でトイレに起きてしまうとのことでした。これからはiPadをベッドで見るのは止めようと心に誓いましたが,先生のようにちゃんと実践できるでしょうか?!。目にはカメラの役割と体内時計の役割があり後者にはメラノプシン発現網膜神経節細胞が関与しているとのことでした。
 「ごきげんのmolecular mechanismを証明する」ということで2005年Cell誌と2011年Science誌に載った研究を紹介されました。前者は「遊んでいるマウスはアルツハイマーにならない」という衝撃的なもので,βアミロイドが分解できないマウスを遊ばしておくとアルツハイマー発症までに約2倍の時間がかかるというものでした。後者はHappy peopleは7.5~10年寿命が長いというものでした。人間は健康だから幸せなのではなく,ごきげんだから長寿であるという先生の持論を証明する研究でした。
 また,既に証明されたごぎげんなアプローチとして①ごきげんな人と付き合う,②よく笑う,③少し経済的に豊かになる(年収800万円以上),④体調を良く保つ,よく寝る,⑤自分の強みを新しい方法で生かす(何かクリエイティブなことをする),⑥Three Good Things(寝る前に,その日に良かった3つのことを書き出す)があることをお示しされました。
 最後に,目から若返るということで①JINS PC(ブルーライトをカットする眼鏡),②白内障手術(白内障が強いと昼間十分にブルーライトが入らないため目の時計としての機能が落ちる),③JINSモイスチャー(ドライアイ用の眼鏡),④アイシャンプーのお話しをされました。
 坪田先生はアンチエイジングに関する様々な研究成果を,実際に自分自身で実践されていました。本日のお話しは我々が常日頃,日常生活の中で疑問に思っていることに対して,初めてサイエンティフィックにアプローチし,道標を与えてくれるものでした。
 坪田先生,山口に来て頂き本当にありがとうございました。



第58回 山口眼科手術懇話会

日時:平成26年10月18日(土)

場所:山口大学医学部霜仁会館3階

一般演題(17:00~18:30)

座長:柳井 亮二(山口大学)

  1. 「周辺部虹彩切除術を施行した急性緑内障発作の小児の一例」
    小林 由佳,寺西 慎一郎,白石 理江,徳久 佳代子,鈴木 克佳,園田 康平(山口大学)
  2. 「両眼性先天白内障に対して、PPL+IOLを施行した一例」
    内 翔平1,2,小林 正明1,白石 理江1,寺西 慎一郎1,鈴木 克佳1,園田 康平1
    (1.山口大学,2.下関医療センター)
  3. 「線維柱帯切除術施行眼に対する角膜内皮移植術の術後成績の検討」
    守田 裕希子,小林 由佳,山田 直之,森重 直行,寺西 慎一郎,鈴木 克佳,園田 康平(山口大学)

座長:新井 栄華(下関市立豊田中央病院)

  1. 「黄斑下出血に対する組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)の使用経験」
    能美 典正,村田 晃彦,新川 邦圭,芳野 秀晃(徳山中央病院)
  2. 「OCT付手術顕微鏡、RESCANTM 700の使用経験」
    山城 知恵美,木村 和博,寺西 慎一郎,小林 由佳,園田 康平(山口大学)

特別講演(18:30~20:00)

座長:園田 康平(山口大学)

「緑内障インプラント手術について」
日本赤十字社松江赤十字病院眼科部長 谷戸 正樹 先生 

特別講演印象記

山口大学大学院医学系研究科眼科学 白石 理江

 平成26年10月18日に第58回山口眼科手術懇話会が開催され、特別講演は日本赤十字社松江赤十字病院眼科部長谷戸正樹先生に「緑内障インプラント手術について」を御講演頂きました。
 緑内障シャント手術は1876年の金の糸から始まり1959年にはチューブ移植手術が行われていたようで想像よりもはるか昔から存在した手術です。現在のチューブシャント手術は輪部濾過としてEx-Press、赤道部濾過としてバルベルト、アーメドバルブを用いた手術があります。
 EX-Pressの適応はほぼ従来のトラベクレクトミーと同じであり手術成績も変わりませんが、術後の網脈絡膜剥離や低眼圧が起こりにくいため、視力回復はトラベクレクトミーでは術後6か月はかかるのに対してEX-Pressは術後1か月で回復します。しかし血管新生緑内障に対するEX-Pressは術後1年の手術成績は38%と低く、結膜瘢痕化が早いことや出血がEX-Pressの内腔を詰まりやすくするために成績が悪いと考えられます。またEX-Press挿入により角膜内皮の減少が指摘されており、角膜内皮減少眼への使用は注意が必要です。
 バルベルト、アーメドバルブは無水晶体眼、硝子体脱出眼に良い適応です。プレートが大きいほど濾過胞の体積が大きくなるため、より眼圧下降効果が得られます。
 谷戸先生は手術後の眼圧上昇の対策として術中にチューブに穴を開ける処置、チューブを7-0ナイロンで結紮する処置、3-0ナイロンでのステント留置を行っていました。術後2週間はチューブの穴から房水が流れることで眼圧は下がり、約6週間後に7-0ナイロンの結紮糸が緩み眼圧下降が得られます。3-0ナイロンのステントは術後3か月で抜去しチューブからの房水漏出を増やすことで再度眼圧下降を得ることが出来ます。
 御講演のあとの質疑応答では当院での手術方法と違う所もあり使用する糸や手技についての質問が多く大変盛り上がりました。
 明日からの臨床に大変役に立つお話をして頂き時間が過ぎるのを忘れる程の大変有意義な御講演でした。


アゾルガ発売1周年記念講演会in山口

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日 時: 平成26年10月9日(木曜日)19:00~20:30
場 所: ホテル松政 2階 芙蓉の間



特別講演印象記

寺西 慎一郎

 2014年10月9日に開催された「アゾルガ発売1周年記念講演会in山口」で、吉川眼科クリニック院長の吉川啓司先生による特別講演「中期緑内障のマネージメント ~アラ探しは“粘入り”に~」を拝聴しました。吉川先生は、学会や研究会で大変お忙しくご活躍されている先生で、本年6月には第3回日本視野学会学術集会を主催されました。吉川先生の演題名は一目見て「吉川流」とわかる、味のあるネーミングが多く、大変面白く思わず聞き入ってしまう講演をされる先生です。

 今回の特別講演では、中期緑内障マネージメントにおいて、眼科医は「念入り」ではなく、むしろ「粘入り」に、「粘って診ていく(=アラ探しをする)」ことが重要であることを解説されました。緑内障診療の基本は、現状と危険因子を把握することであり、緑内障は「乏症状」疾患であるため、眼科医の評価が重要な役割を担っている。特に中期緑内障から後期緑内障の患者では視野障害進行がQOL低下に直結するため、粘入りにアラ探しする必要があり、そのためには「ベースライン眼圧測定」と「ベースライン視野測定」が不可欠であることを示されました。

 具体的には、年10回(ネンテン)眼圧を測定すれば眼圧変動を把握することができ、年2回(ネンニ)視野の計測を推奨されました。眼圧測定値は「変動」と「変化」を区別し、異常値が検出された場合は再検査で確認すべきと強調されました。さらに、視野検査の3連続悪化は、視野悪化の予想因子になりうる事を示され、あらためてベースライン視野や年多数回視野検査の重要性を再認識する機会となりました。また、正常眼圧緑内障において視野障害進行を生じる乳頭出血の臨床的意義と、乳頭出血見逃し防止のため定期的な眼底写真撮影の重要性についてお教えいただきました。

 角膜透過性に着目され、点眼薬を「内用薬」としての視点から薬剤作用機序について解説いただき、炭酸脱水素酵素阻害薬(CAI)点眼製剤化の経緯についてお教えいただきました。また、点眼薬による全身副作用の影響は小さいものではない点について指摘され、驚きとともに高齢者に対する処方は慎重に検討すべきであると再認識しました。β/CAI配合剤の使用上の注意、後発医薬品の実際とその注意点についても触れられ、アドヒアランスを考慮して点眼数最少化を目指すことが粘入り治療になるとお話されました。

 中期緑内障においても症例毎に多様性・多彩さがあることについても言及され、各症例を粘り強くアラ探しする診療=Personalized medicineが中期緑内障のマネージメントにおいて必要であることを強く実感しました。

 講演内容以外に関するお話では、Big dataを解析した論文の増加や単独施設での臨床研究が難しくなっている状況、統計学的解析で世界と競争しにくい日本の現状について懸念を示されました。今回ご提示いただいたスライドはversion 50を超えると伺いました。長年蓄積されたデータを元に作成され、吉川先生のこれまでのご経験が濃縮されたもので、まさに「明日からの診療に役立つ」実践的な講演でした。講演後の質疑応答に対しても丁寧にご返答いただき、大変有意義な特別講演でした。


第7回 Grand Rounds

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日時:平成26年7月26日(土) 16:00~19:00

場所:ホテルグランヴィア広島 4階「悠久の間」

一般演題

座長:木内 良明(広島大学)
園田 康平(山口大学)

  1. 「これはほんとに緑内障!?」
    佐田 幾世(広島大学)
  2. 「Traumatic intrastromal epithelial ingrowthが疑われた一例」
    小林 正明(山口大学)
  3. 「若年性特発性関節炎様眼科所見を呈した小児ぶどう膜炎の一例 」
    津田 康史(広島大学)
  4. 「チューブシャント術後の眼圧コントロールは?」
    山城 知恵美(山口大学)
  5. 「両眼性の急性網膜壊死」
    小松 香織(広島大学 )
  6. 「シリコンオイルが網膜下に迷入した一例」
    小林 由佳(山口大学)

特別講演

座長:木内 良明(広島大学)

「硝子体手術の最近の話題について」
鹿児島大学眼科学 教授 坂本 泰二 先生

特別講演印象記

柳井 亮二

 2014年7月26日に開催された第7回広島大学・山口大学眼科Grand Roundsで「硝子体手術の最近の話題について」の鹿児島大学 坂本 泰二 教授に特別講演をいただきました。

 講演内容は,黄斑円孔手術,ヘビーシリコーン,上脈絡膜バックル,Soft shell technique,硝子体手術に関する多施設前向きランダム化試験の経験など多岐に渡っていました。特に黄斑円孔手術は過去20年で最も進歩した手術で,治療成績が向上していることは日々実感していますが,ガス下でのOCT撮影法によって術後のうつ伏せ姿勢が不要な症例を選別できるということには大変驚きました。網膜剥離に対する強膜内陥術は確立された術式ですが,近年,強膜内陥術数が減少しており,後継者不足も問題となっています。その解決方法の一つとしては,広角システムを用いた強膜内陥術が手術教育に有用であるということです。さらに,硝子体手術時に人工的脈絡膜剥離を作成してバックルの代替にするSuprachroidal bucklingが,強膜内陥術に代わる手術術式となる可能性があるとのことでした。また,白内障手術におけるSoft shell techniqueが硝子体手術においても可能で,ヒアルロン酸を用いることによりHistonなどの細胞障害成分を吸収して網膜障害を抑制できることを実験データを交えながらお話いただきました。このように坂本教授は様々なアイデアで手術の改良を試みられており,まだまだ手術方法が進歩していく可能性があることを自らのデータでお示し頂いた講演でした。今後の眼科学の展望としては統計学の進歩を活用することが重要であるとのことでした。自らの経験を踏まえて日本でランダム化比較試験を実施することの難しさとその対策や今後の展望ついてお話いただきました。

 今回の特別講演では坂本教授の博識と先見性のある視点を切り口に,硝子体手術の最新の知見をわかりやすく解説していただき,あっという間の1時間でした。明日からの診療や研究のヒントもたくさんお示し頂き,現状の硝子体手術に関連した問題点や改善点などを内観することもできた有意義な特別講演でした。


症例討論会座長の木内良明先生と園田康平先生


特別講演講師の坂本泰二先生


スキアスコープ講習会での成績が優秀で、
表彰された岡村菜奈子先生と内翔平先生


第57回 山口眼科手術懇話会

日時:平成26年6月26日(木)

一般講演 (17:30~19:00)

座長:守田 裕希子(山口大学)

  1. 「化膿性脊椎炎に併発した内因性細菌性眼内炎の1例」
    緒方 惟彦,波多野 誠,折田 朋子,柳井 亮二,藤津 揚一朗,木村 和博,園田 康平(山口大学)
  2. 「バルベルトインプラントを用いた緑内障チューブシャント術後眼圧上昇の2例」
    山城 知恵美、寺西 慎一郎、白石 理江、徳久 佳代子、鈴木 克佳、園田 康平(山口大学)

座長:折田 朋子(山口大学)

  1. 「25G twin-duty-cycle cutterを用いた裂孔原性網膜剥離に対する硝子体手術」
    播磨 希、小林 由佳、原田 大輔、折田 朋子、柳井 亮二、木村 和博、園田 康平(山口大学)
  2. 「経Tenon嚢球後麻酔針の使用経験」
    川本 晃司1、舩津 浩彦2 (1:かわもと眼科、2:ふなつ眼科)
  3. 「落ちたCTRの取り出し方」
    廣田 篤(広田眼科)

特別講演 (19:00~20:30)

座長:園田 康平(山口大学)

『角膜移植と再生医療』
 慶応義塾大学医学部眼科学教室准教授 榛村重人 先生

特別講演印象記

山口大学大学院医学系研究科眼科学 守田 裕希子

平成26年6月26日に開催された第57回山口眼科手術懇話会では、「角膜移植と再生医療」をテーマに慶應義塾大学眼科学教室准教授の榛村重人先生に特別講演をいただきました。
榛村先生は臨床から研究の分野まで幅広く活躍されており、毎回様々な学会で講演を聴くのを楽しみにしていた先生です。 講演の前半では、角膜上皮、実質、内皮と順序立てて各疾患や治療についてお話をいただきました。 角膜上皮については、上皮幹細胞移植や輪部移植の適応について、実際に症例を提示していただきました。現在大学で角膜外来を担当させてもらっていますが、幹細胞疲弊症は治療に難渋する疾患であるのが現状です。幹細胞移植はそういった患者さんたちにとって、とても有用な治療法であることが、治療経過を通して実感することが出来ました。 角膜実質については表層角膜移植(LKP)や深層層状角膜移植(DALK)の適応についてお話をいただきました。榛村先生が執刀されたDALKの手術動画をみることができましたが、やはり手術って美しいものだと再認識をし、とても感銘を受けました。 角膜内皮については、デスメ膜非剥離角膜内皮移植術(nDSAEK)と角膜内皮移植術(DSAEK)とを対比してお話をいたただきました。 講演の後半では再生医療についてもお話をいただき、iPS細胞など最先端の研究内容を惜しむことなく話していただきました。
この特別講演を通して、榛村先生の手術に対するこだわり(より低侵襲で美しい手術を目指す)、なるべくなら角膜移植はせずに治すという考え方を学ぶことが出来ました。講演時間は1時間半とたっぷりありましたが、時間が経つのを全く感じさせることのない、とても刺激的な講演でした。


講演会後の榛村先生と医局員での食事会



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