山口大学医学部附属病院眼科

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新聞掲載記事

目 次

患者自身の血液から抽出 角膜治療に画期的な点眼薬

治りにくい傷も修復 安全な血液製剤を自動精製
西田輝夫教授

西田輝夫教授

角膜は、眼球の一番外側にあり、外部の細菌などから眼球を守るはたらきをしています。角膜障害の治療法として、患者自身の血液から取り出した成分を点眼薬として使用する方法が注目されています。
世界で初というこの治療法を開発した西田輝夫・山口大学医学部附属病院眼科教授(副病院長)に聞きました。


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細菌から眼球を保護
細菌から眼球を保護

角膜は、厚さ約0.5ミリの薄い透明な膜で、細菌など外敵から眼球を保護する役目をしています。西田教授は次のように説明しています。
「角膜の一番外側の上皮細胞層は、角膜細胞が5、6層重なってできています。上皮の欠損が長引くと、上皮細胞層より内側が濁ってきたり、角膜に穴が開き、前眼房から前房水が漏れてきたりして、視力低下や細菌感染の危険性が高まります」
通常、角膜の表面は、傷ついても数時間から長くて1日程度で自然と修復しますが、病気などが原因でなかなか修復しない場合があるのです。
「事故による外傷のほか、角膜ヘルペスへの感染、糖尿病角膜症、三叉神経手術後の視神経の障害、コンタクトレンズの使用などです。欠損した状態が長引けば、視力低下などで角膜移植が必要になることもあります」


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“足場”をつくる物質
点眼薬を精製する機械

採血した血液から自動的にフィブロネクチンを取り出して点眼薬を精製する機械=西田輝夫教授提供

傷ついた角膜が修復する際、まず欠損部に“足場”が広がり、その上に角膜細胞の第1層が平面的に増殖します。その後、第2層、第3層と厚みが増していくといいます。
「角膜が修復する過程で、この“足場”を築くのが、血液中にある『フィブロネクチン』という物質です。これは、細胞と細胞を接着させる作用をもっているタンパク質です。
一方、角膜細胞が増殖する際、細胞にはたらきかけてフィブロネクチンへの感受性を高める作用をもっているのが『サブスタンスP』と『IGF(インスリン様増殖因子)―I』という物質です」
これらの物質に着目して点眼薬として利用する治療法を、西田教授はすでに1980年代はじめに開発。これまで臨床研究として行ってきました。
このうちフィブロネクチンについて、事前に採血した患者自身の血液から自動的に点眼薬を精製する機械が、あるメーカーの協力によって開発されました。


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1日4回 2-4週間

患者から採る血液量は1回10-20ミリリットル。これは一般的な献血の10分の1から20分の1の量です。これで点眼薬1週間分が精製できます。
「時間は採血から約1時間。20ミリリットルあれば、かなり濃いものができます。 タンパク質なので酵素によって分解されてしまうため、一度に大量には作れません。点眼は1日4回。これを2-4週間続ければ、効果がはっきりします」
西田教授によると、これまでの集計で約8割の患者に角膜修復の効果があったといいます。
「どんな薬もそうですが、効果が見られないケースもあります。また障害の原因によっても効果にばらつきが見られ、角膜ヘルペスや糖尿病が原因の場合は、特に効果があります」
現在、山口大病院のほか全国三つの医療機関で、この機械を用いた臨床試験が行われています。


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移植手術を未然に防ぐ
移植手術を未然に防ぐ

患者自身の血液から抽出された成分なので、安心して使用できる血液製剤をめぐっては、提供された血液によって重い感染症にかかるなど、これまでに何度か悲劇が繰り返されてきました。
「フィブロネクチンは、患者自身の血液から取り出して、その成分を患者自身に点眼するわけですから、安心して使用できます」
一方、西田教授は、サブスタンスPとIGF-Iを利用した治療も並行して進めており、フィブロネクチンが効かない患者でも効果があるケースを、すでに確認しています。
角膜上皮欠損をそのまま放置すれば、失明してしまうこともあります。そうなると、移植手術が必要となってきます。
フィブロネクチンなどを利用した点眼薬治療は、移植手術を未然に防ぐものとして期待されています。

(2007年2月9日 聖教新聞)

※この記事・写真等は、聖教新聞社の許諾を得て転載しています。

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