2002前期期末試験

実施日時:2002年7月18日(木) 14:30〜16:00(90分)


1 本講義で扱ったテキストとその著者名の組み合わせを正しく線で結ぶことによって示せ。

(各5点、計15点)


  『美術史の基礎概念 近世美術における様式発展の問題』      ・     ・ アーウィン・パノフスキー
  『イコノロジー研究 ルネサンス美術における人文主義の諸テーマ』 ・     ・ E. H. ゴンブリッチ
  『芸術と幻影』                                ・     ・ ハインリヒ・ヴェルフリン

 

2 以下に示される短文のうち、内容の正しいものに○印を、誤ったものに×印をそれぞれ文頭の□の中に記せ。テクスト名は略称で示されるが、このことは誤りとしない。

(各3点、計30点)


 □『美術史の基礎概念』の初版は1915年。以来、重版、改版を続け、1991年に第18版が出た。外国語訳は10以上。

 □『美術史の基礎概念』において展開される作品の形式分析に主眼を置く立場は、「人名による美術史」と呼ばれる。

 □イタリア語cinquecento(チンクエチェント)は、日本語で「1500年代」と訳され、美術史では特にクラシック美術の興隆した盛期ルネサンスを指す。

 □『イコノロジー研究』の初版は1939年。ナチスの台頭はあったが著者はドイツを離れることなく、ハンブルクにてドイツ語で出版された。

 □イコノグラフィーは「深い意味におけるイコノロジー」とも呼ばれ、形象の寓意的象徴的意味、時代や国家の神学的、哲学的、政治的等の概念との関連なども解釈の対象としている。

 □中世の最盛期には、古典の「モティーフ」は古典の「テーマ」を表現するのに用いられず、古典の「テーマ」は古典の「モティーフ」によって表されることはなかった。

 □20世紀におけるイコノロジー発展の基礎を築いたのはアビ・ヴァールブルクであり、彼が設立した「ヴァールブルク研究所」は、のちにロンドンへ移されロンドン大学付属研究所となった。

 □『芸術と幻影』は、視覚的知覚と伝達に関する科学的理解の必要性から、社会学の領域における成果を導入し、美術の社会学的基礎づけを行った著作である。

 □ゴンブリッチはウォーバーグ研究所の所長を務めた。

 □イリュージョンは、発見することはあっても、記述したり分析したりするのが難しい対象である。なぜなら、イリュージョンの渦中にある自己を見つめることが困難だからである。

 

3 フランチェスコ・マッフェイによる「侍女とともに、左手に剣を、右手に斬られた男の首を載せた盆を持つ美しい若い女性の絵」の主題は《サロメ》か、《ユディト》か。以下に示される短文のうち、正しい記述を1つだけ選び○印を文頭の□の中に記せ。

(5点)

 □サロメは、自らの手でヨハネの首を斬った。そしてヨハネの首は盆に載せられて運ばれてきたのであるから、主題は《サロメ》である。

 □ユディトは、自らの手でホロフェルネスの首を斬った。そしてホロフェルネスの首は盆に載せられて運ばれたのであるから、主題は《ユディト》である。

 □サロメは、見事な踊りの褒美として、ヘロデ王にヨハネの首を所望した。王は兵にヨハネの首を切らせ、サロメにとらせた。したがって主題は《サロメ》である。

 □ユディトは、侍女を連れて敵地に乗り込み、将軍ホロフェルネスを酒に酔わせ、眠り込んだところで首を切り、袋に入れて持ち帰った。したがって主題は《ユディト》ではない。

 □サロメの両親が一緒に描かれていれば、サロメであることに間違いなく、両親とともに描かれ剣を持ったサロメの作例が他にもあることから、主題は《サロメ》である。

 □ユディトの侍女が一緒に描かれていれば、ユディトであることに間違いなく、侍女とともに描かれ男の首を盆に載せた作例が他にもあることから、主題は《ユディト》である。

 

4 ゴンブリッチが問題とした「イリュージョン」とは何か。具体例を挙げて説明せよ(字数制限なし)。

               (10点)

 

5 ティントレットの《キリストの哀悼》とレオナルド・ダ・ヴィンチの《最後の晩餐》。この2作品をヴェルフリンの観点に沿って、先ずどちらがクラシックの作例で、どちらがバロックの作例であるかを明記したのち、以下の言葉をできるだけ全て使用してそれぞれの作品の特徴を対比的に論ぜよ(字数制限なし)。

               (30点)


ティントレットの《キリストの哀悼》

レオナルド・ダ・ヴィンチの《最後の晩餐》

 線的 絵画的 平面的 深奥的 閉じられた形式 開かれた形式 多数的なもの 統一的なもの 絶対的明瞭性 相対的明瞭性

 

6 美術史とは何か。自由に論述せよ(字数制限なし)。

               (10点)

評価基準は、優:100〜80、良:79〜70、可:69〜60、不可:59〜0である。本試験の素点に各自の出席数による調整点を加算したものを評点とする。