2002後期期末試験

実施日時:2003年1月30日(木) 14:30〜16:00(90分)


1 以下に示される各論文の著者を記せ。著者がクレメント・グリーンバーグの場合は“G”、ロザリンド・E・クラウスの場合は“K”を解答用紙の各欄に記せ。

(各5点、計15点)

  (A) 「アヴァンギャルドのオリジナリティ」(The Originality of the Avant-Garde)
  (B) 「抽象表現主義以後」(After Abstract Expressionism)
  (C) 「モダニズムの絵画」(Modernist Painting)

 

2 以下に示される(イ)〜(ヌ)の短文のうち、内容の正しいものに○印を、誤ったものに×印をそれぞれ解答用紙の各欄に記せ。人名のカタカナ表記については異同があるが、これは誤りとしない。(例:グリーンバーグ、グリンバーグなど)

(各3点、計30点)

 (イ) グリーンバーグは、1909年生まれ、1994年没。戦後アメリカを代表する批評家である。

 (ロ) グリーンバーグによる初期の代表的な論文「アヴァンギャルドとキッチュ」は、雑誌『オクトーバー』に発表された。

 (ハ) グリーンバーグの主著『芸術と文化』は、アメリカで1961年に刊行され、「当時の美術界に大きな影響を与えた」と評される。

 (ニ) グリーンバーグは、ポップ・アートを高く評価し、ウォーホル、リキテンスタイン、ウェッセルマンらの作品を、モダニズムの正統な発展史の中に位置づけた。

 (ホ) フォーマリズムは、アーティストの意図や社会背景よりも、視覚上の形式的特性によって作品を分析する方法論である。

 (へ) クラウスは、1940年生まれ、現在コロンビア大学美術史教授。ハーヴァード大学でグリーンバーグの講義を受けた。

 (ト) クラウスが仲間とともに1976年創刊した批評雑誌『パーチザン・レヴュー』は、ポスト・モダニズムの理論展開において重要な役割を果たした。

 (チ) クラウスは、自らが主宰する雑誌に発表した論文、およびそれらをまとめた著書によって、「アメリカにおける美術批評、美術史研究が長い間立脚してきた『歴史主義』と『実証主義』に挑戦状を叩きつけた」と評される。

 (リ) クラウスは、グリーンバーグ流のフォーマリズムを批判するにあたり、バルト、フーコー、レヴィ=ストロース、デリダ、ラカンらフランスの構造主義、ポスト構造主義者たちの著作を参照する。

 (ヌ) クラウスは、作品、作家、オリジナリティといった諸概念を、自明で、超歴史的な概念として定義する。

 

3 次の文を読み、空欄となっている( A )〜( F )に、文の下に記されている(1)〜(17)のうち最も適当と思われる言葉を補い、文を完成せよ。解答用紙には、( A )〜( F )の各欄に該当する言葉を(1)〜(17)の番号で記すこと。

(各5点、計30点)

 グリーンバーグは、( A )を最初のモダニストと考える。( A )によって始められたこの自己-批判的傾向の強化、いや殆ど激化というべきものが( B )である。( B )は内側から、つまり批判されている当の諸手順それ自体を通して自らを批判する。そこで、芸術において呈示され明らかにされなければならないことは、独自のまた( C )し得ないようなものは何か、ということになった。別の芸術の( D )から借用されていると思わしき、または別の芸術の( D )が借用していると思わしきどんな効果でも、ことごとく各々の芸術の諸効果から除去することが自己-批判の仕事となった。絵画の( D )を構成している諸々の制限―平面的な表面、支持体の形態、顔料の特性―は、過去の巨匠たちによっては潜在的もしくは消極的な要因として扱われていた。( E )の絵画が最初の( B )の絵画になったのは、絵画がその上に描かれる表面を率直に宣言する、その率直さの効によってであった。( B )のもとで絵画芸術が自らを批判し限定づけていった過程で、最終的に、最も基本的なものとして残ったのは、支持体の不可避の( F )を強調することであった。( F )だけが、絵画にとって独自のものであり独占的なものであった。

 (1)プラトン  (2) ヘーゲル  (3)カント  (4)モダニズム  (5)ポスト・モダニズム  (6)説明  (7)追加 (8)削減  (9)巨匠  (10)批評  (11)メディウム  (12)マネ  (13)モネ  (14)ポロック  (15)色彩  (16)再現性  (17)平面性

 

4 グリーンバーグのフォーマリズムとクラウスのフォーマリズム批判。両者の考えの違いに留意し、以下の言葉のうち5つ以上をクラウスの論点に沿って的確に使用し、対比的に論述せよ(字数制限なし)。

(15点)

 方法  価値  歴史主義  ポスト構造主義  美的有機体  超歴史的形式  作者  作品  オリジナリティ   深さ  浅さ  実体項  差異  モダニズム芸術  ポスト・モダニズム芸術

 

5 美術作品はどのようなものとして語られるべきか。自由に論述せよ(字数制限なし)。

(10点)

 

評価基準は、優:100〜80、良:79〜70、可:69〜60、不可:59〜0である。本試験の素点に各自の出席数による調整点を加算したものを評点とする。