4.まとめ

まとめ

報告者が当初示したテーゼは以下のようなものだった

(1)90年代初頭と現在では、「アジア」が開く展望の土台そのものが変化した

(2)土台の変化は、世界的な動向と歩調をあわせる形で日本の美術界に顕在化した

(3)2000年代初頭に日本における「アジア・ブーム」は、より大きな動向の中に解消した


いまや本報告の結論として、以下のように表現し直すことが可能である

90年代初頭、アジアの現代美術は、近代主義の行き詰まりに対する打開策として 大きく期待され、日本の現代美術界においては「古い欧米」対「新しいアジア」という新旧の二項対立図式において理解されていた。しかし、2001年に開催された横浜トリエンナーレが、中東欧、中南米、アフリカ、中東の作家をもバランスよく含み込んでいたことが象徴するように、2000年代に入った日本の現代美術界の問題意識は「グローバリゼーション」というキーワードで読み解かれるべき状況へと変化した。このグローバリゼーションの枠組みの中で、「古い欧米」対「新しいアジア」という図式は、「旧来の美術先進国」対「それ以外の全ての国々」というより包括的な構図の内に据え直され、考察される必要がある。