サイバー・アジア

 メディア・アートの近未来形
 2/18-4/6 広島市現代美術館


カタログについて

 あいさつ

 小松崎拓男「メディア・アートをめぐって〜『亜細亜散歩』異聞」

 図版
  フェン・メンボー(中国)
  八谷和彦(日本)
  岩井俊雄(日本)
  コン・スンフン(韓国)
  クワクボリョウタ(日本)
  minim++(日本)
  鈴木康広(日本)
  高谷史郎(日本)
  ワン・ゴンシン(中国)
  ウ・ティエンチャン(台湾)
  シュ・ビン(中国)
  ユェン・グァンミン(台湾)

 ワークショップ

 作家略歴

 作品リスト


カタログより

 あいさつ

東アジアのデジタルからアナログまで
p.6 "この展覧会では、単に先進的なハイ・テクノロジーにのみに幻惑されることなく、ローテクとも思える技術にも着目し、日本、中国、韓国、台湾の東アジア地域で展開されるデジタルからアナログまでの多彩な技術によって創造されるテクノロジー&メディア・アートの世界を紹介します。"

 小松崎拓男「メディア・アートをめぐって〜『亜細亜散歩』異聞」

メディア・アートの光と影

p.9 "…メディア・アートが社会的に認知を受けているように見える一方、経済的な理由によっていくつかの専門施設では縮小と廃止が行われたり(註5)作品の芸術的内容を問う声が出てきたり(註6)作品の保存性に対する疑問がよせられるなど、けして順風満帆の明るい将来像がそこに描けている訳ではない。"

p.9 "本論では、これまであまり論じられることのなかった、先端的な美術の表現としてもてはやされるメディア・アートの抱える問題点や課題について論及するとともに、本展に出品するアーティストや作品に触れながら東アジアのテクノロジー&メディア・アートの動向を探ることとしたい。"

(註5) キャノンが1991年に設置したキャノン・アートラボが2001年に活動を休止したほか、NTTからNTT東日本に運営が引き継がれたICCも同年に展示の規模を縮小している。

(註6) 中村敬治「メディア・アートの危うさ露呈」『読売新聞』2001.4.11付夕刊

ハイテク・アートからメディア・アートへ

p.11 "…今こうした「ハイテク・アート」あるいは「テクノアート」という言葉を耳にするとき、すでに多くの人にとっては、これらの言葉のもつ「語感」がたとえようもなく古くさいものになっていることを感じるだろう。"

p.11 "…この変化が単なる言葉の上でだけの変化であったというのではなく、メディア・アートを取り巻く環境の変化やその質的な変化を示すものであり、そのことがむしろ逆にその呼称の上にも反映された結果だとみなすべきだろう…"

p.11 "…その新しさは一方で最も先端的だったはずの機器がたちまちに陳腐化していく姿であり、…"

p.11 "メディア・アートの「メディア」とは英語の媒介や手段を意味するmediumの複数形のmediaを意味し、情報処理媒体や通信媒体としてのコンピュータをアート表現の中に使用することから、メディアを通して表現される美術を指してメディア・アートと呼称するようになり(註2)、さらにこれが通信ネットワークや、より高次のアーティフィシャル・ライフ(A-Life=人工生命)やヴァーチャル・リアリティ(VR=仮想現実)などの高度先端テクノロジーに依拠する表現のほか、コンピュータ・グラフィクス(CG)やシングルチャンネル以上の映像表現を含む、かなり広範囲におよぶデジタル・テクノロジーを使用するアートの総称として次第に用いられるようになったといえるだろう。"

p.12 "…ツールとしてのテクノロジーからコンテンツとしてのメディアへという変換が、メディア・アートをめぐる環境の中で起こったことを示しているのではないだろうか。"

(註2) 「いま『メディア・アート』といわれているのは、とくにコンピュータが生まれて以降の通信媒体と情報処理媒体としてのメディアが対象になっているの[ママ]わけですね。」山口勝弘の発言。(茂登山清文、山口勝弘対談「メディアがアートをかえるとき」『BT(美術手帖)』11月号、美術出版社、1993.11. pp.72下段)

メディア・アートの特徴

p.13 "…芸術的な中身と鑑賞者が対峙できる「インターフェイス」と呼ばれる装置を必要とする…"

p.13 "常に主体的に、あるいは一定のインストラクションに従い、能動的に行為することを要求する。"

p.13 "…より隷属的、奴隷的な関係に捕らえられたものともいえるかも知れない。"

p.14 "この作品と鑑賞者の間で交換されるインタラクティビティ(相互作用性)こそ、これまでのアートと異なる最大の特徴とされる。"

追い上げにあう日本

p.14 "1991年にキャノン・アートラボが活動を開始し、1997年4月にNTTインターコミュニケーション・センター[ICC]が開館するなど、日本がメディア・アートの世界で最も先進的な地域であることは間違いない。"

p.14 "…いまや猛烈な勢いで日本以外の東アジア地域からの追い上げにあっているのは、何も経済だけではない。日本以外の東アジア地域でもここ数年、同様に先端テクノロジーの文化、芸術分野への応用についての関心が高まりつつある。"

インタラクティビティの欺瞞

p.21 "メディア・アートのもつ最大の特徴は、そのインタラクティビティ(相互作用性)にあるという。だが、このインタラクティビティ(相互作用性)こそ曲者といわなくてはならない。すなわち、インターフェイスを通して行われる行為自体が、それらは見かけ上はあたかも作品と鑑賞者の間に相互的な関連性を想起させるが、これらはソフトウェア上に書き込まれた、すべてあらかじめ措定されたものにすぎず、このプログラムを逸脱して相互作用が起こることはけしてないのである。メディア・アートの標榜する相互作用性とは、ある意味で欺瞞的とすらいえるかも知れない。"


出品作品紹介


リンク

 ・八谷和彦:Works of Hachiya Kazuhiko

 ・シュ・ビンXuBing

 ・キャノン・アートラボ

 ・NTTインターコミュニケーション・センター[ICC

 ・デジタル・スタジアム

 ・ZKM