「視線と差異〜フェミニズムで読む美術史」
著者 グリゼルダ・ポロック 荻原弘子訳
新水社 1998年刊 ISBN:4915165809
本体価格:4,300円
推薦者 山口大学 人文学部 外山 紀久子(教員)
あなたはフェミニスト?」「…素行が悪すぎて、フェミニストだと言うと、フェミニストの人から怒られます」とかつて答えたものだし、今もそう。だが、フェミニズムには、途方もなく面白く、応用もきく、批判・転覆・発見の道具が溢れている。この本を読むと、その一端がよくわかる。図版も豊富でスリリング、緻密な議論!確かに(苦心の翻訳にもかかわらず)とっつきやすい本ではないし、著者の立場に同意できなくてもよい。美や芸術にまつわるイデオロギー暴きの後でも、子供のころからの信仰が一挙に崩れるわけではない。ただ、美術史や芸術学・美学といった旧態依然とした雰囲気の(?)学問分野にもこの手の「政治学」――権力関係の介在による歪みの摘発-の大波が押し寄せているという認識は快感。