坂上桂子「訳者あとがき」 pp.236-239
1. ノックリン自身について
●現代アメリカを代表する美術史家の一人
p.236 "…ヴァッサー・カレッジを卒業後ニューヨーク大学のアート・インスティテュートで博士号を取得し、イェール大学、ニューヨーク市立大学などで教鞭をとりながら、一九世紀美術について数々の刺激的な論文を発表してきている今日を代表するアメリカの美術史家である。"
2. 『絵画の政治学』について
●代表的論文集
p.236 "…本書は二〇年にわたって著者がさまざまな機会に執筆した論文九編を集めたものであり、同じくテームズ・アンド・ハドソン社から出版されている『Women, Art and Power and other essays』(一九八九年)と共に、代表的な論文集となっている。"
●Politics
p.236 "ノックリンが美術史をこのようにとりわけ「政治」的な問題として扱うようになった経緯については、今世紀の近代以降を対象とした美術史が「フォーマリズム」の文脈の中だけで語られていたことに対する強い疑念から生まれたことであることは、…(後略)"
p.236 "…ノックリンは最近の美術史の大きな流れである、いわゆるリヴィジョニズムを形成してきたもっとも中心的な先駆者であるといえる。"
p.237 "「Politics」とはつまるところ、関係性の問題であり、「支配者」と「被支配者」、「強者」と「弱者」、「主体」と「客体」、「中心」と「周辺」の問題であるのだろう。"
p.237 "…「他者性」の視点が基本になっている…"
p.237 "フェミニズムの視点は関係性としての「Politics」の一問題として、もっとも有効な議論を提供してくれるものにほかならない。"
pp.237-8. "…そもそも日常の生活や社会、つまり政治から切り離されたところで何が生み出されるというのか。「芸術」の不当な神格化は、逆にその本質を隠蔽するだけであろう。"
p.238 "ノックリンにとって、政治と美学的な技法とはともに密接な関係のうちに連動したものであり、これは彼女の論考の基本となっている。"
●ノックリンの文体
p.238 "ノックリンの文章は、多様な言葉遣いと長文、挿入を駆使した独特のものであり、決して平易なものとは言えない。"
p.239 "…この間ノックリンのきわめて前向きな学問に対する真摯な取り組みが私にとってたいへん心の励みになった。とりわけ、美術に対する、さらに言うならば生きることに対する彼女の強い思いが、力強い文体の行間からあふれ出ており、私をいつも勇気づけてくれたのである。"
精読1
1 序文の構成把握
1 一九五〇年代アメリカにおける美術史学の状況 pp.5-6
2 クールベとリアリズム、シャピロの論文から受けた示唆 p.7 l.19
3 3つのリヴィジョニズム pp.7 l.20-8
4 リヴィジョニズムの問題点 pp.9-10 l.9
5 フェミニズムの有効性 pp.10 l.10-12 l.15
6 各論文をめぐる覚書 pp.12 l.16-p.21
2 I アヴァンギャルドの創造の構成把握
1 クールベ以前 p.24-p.26 l.17
2 「アヴァンギャルド」の体現者クールベ
2-1 保守派との比較 pp.26 l.18-p.30 l.2
2-2 革新性の手掛かり―ドミニク・パプティ p.30 l.3-p.37 l.4
3 アヴァンギャルドの創始者マネ p.37 l.5-p.41