北九州市立美術館 連続美術講座
講座 現代美術史

  遠近法


<語源>ラテン語の prospectus (prospicere 「前方に見る」、「透かし見る」の完了分詞)

古代から中世にかけて、一貫して視覚の諸問題に関連づけられてきた用語。ギリシアの幾何学書においても、アラブや中世の視覚に関する物理学や生理学のテクストにおいても、同じ意味で用いられた。ルネサンス期になって初めて、この光学研究者たちの「自然遠近法」に対して、画家たちの「技術的遠近法」が生まれ、この言葉の意味とその用法とが、科学的理論から芸術の技法へとはっきり変わってきた。さらに一七世紀以降には、遠近法理論は画法幾何学の一分野として体系化された。それによれば、prospectiva という言葉は「遠近法的に描かれた形が、直接目に写る形と一致するように、三次元の対象を二次元の平面上に表す方法を教える科学」を意味している。

 この定義によると、対象のあらゆる点を、与えられた一点(投影中心)から、ある平面上に投影することを「中心投影」という。この場合、その平面を、それを透かして対象を眺める窓のように透明なものとして、投影中心に目(視点)を置き、それと対象との間にこの平面を置くとすれば、視点から対象の各点に至る視線とこの画面との交点の全体から、画面上に対象の形が求められる。この場合、視点から画面に引いた垂線の長さは、視点と画面との距離を示す。これがルネサンス期に確立された線遠近法(→透視図法)の原理である。

(『世界美術大事典』 全6巻 小学館 1989-90年 1巻 pp.337-40)


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