芸術論特殊講義2004
◆●マニフェスタ1-4紹介●◆
●マニフェスタ=「動きを起こす」
ラテン語の動詞manifestareに由来。レネ・ブロックにより命名。
三木あき子「マニフェスタ4 欧州現代美術ビエンナーレ レポート」 『美術手帖』 2002年8月号 pp.76-79
●各回毎に開催地を変えるノマド型国際現代美術展
マニフェスタ1 1996年 ロッテルダム(Rotterdam:オランダ)
マニフェスタ2 1998年 ルクセンブルグ(Luxembourg:ルクセンブルグ)
マニフェスタ3 2000年 リュブリアナ(Ljubljana:スロヴェニア)
マニフェスタ4 2002年 フランクフルト(Frankfurt/Main:ドイツ)
マニフェスタ5 2004年 ドノスティア=サン・セバスティアン(Donostia-San Sebastián:スペイン)
●ヘンリー・メイリック・ヒューズ「マニフェスタ小史」
・オランダ主導による汎ヨーロッパ地域に関する国際現代美術展。
・オランダと西ヨーロッパ諸国の美術関係者の間で、1989年のベルリンの壁崩壊後の東・中央ヨーロッパの政治的重要性の変化について議論された結果として生まれた。
・ドクメンタやヴェネツィア・ビエンナーレ等、歴史ある大規模国際美術展の行き詰まりに対する打開策としての期待も担っている。
A Short History of Manifesta
Henry Meyric Hughes
Manifesta was a Dutch initiative for a new, pan-European Biennial of Contemporary Art, whose concept was developed from initial discussions between representatives of the Netherlands Office for Fine Arts and a number of colleagues from West European countries. It was conceived in response to dramatic political changes in Central and Eastern Europe, in the aftermath of the fall of the Berlin Wall (November 1989), and to the perceived inability of traditional large-scale events, such as documenta and the Venice Biennale to respond adequately to the new circumstances.
Source: A Short History of Manifesta
(5/31/04)
●マニフェスタ5より参加作家の活躍都市
◆マニフェスタ1 1996年 ロッテルダム(オランダ)◆ 6/9-8/19
●キュレーター・チーム
◆チーフ・キュレーター
カタリン・ネレイ(Katalyn Neray) ブダペスト、ルートヴィッヒ美術館館長。
◆共同キュレーター
ローザ・マルティネス(Rosa Martinez) 1955年生まれ。バルセロナ在住。バルセロナ・ビエンナーレ、地中海ビエンナーレ等の企画に参加。
ヴィクトル・ミサーノ(Viktor Misiano) 1957年生まれ。モスクワ在住。元モスクワ現代美術センター所長。
アンドリュー・レントン(Andrew Renton) 1963年生まれ。イギリス在住。インディペンデント・キュレーター。
ハンス=ウルリッヒ・オブリスト(Hans-Ulrich Obrist) 1968年生まれ。フランス、スイス、オーストリア在住。現パリ市立美術館キュレーター。
●ヨーロッパの30都市から72作家が参加
◆マニフェスタ2 1998年 ルクセンブルグ(ルクセンブルグ)◆ 6/28-10/11
●キュレイター
ロバート・フリック(Robert Fleck パリ/ウィーン)
マリア・リンド(Maria Lind ストックホルム)
バーバラ・ヴァンダーリンデン(Barbara Vanderlinden ブリュッセル)
嘉藤笑子「マニフェスタ2:ヨーロッパの各都市を巡るノマド型ビエンナーレを開催」 『美術手帖』 1998年10月号 pp.183-190
pp.183-184 "こうしたノマド型のビエンナーレが各国を開催ごとに巡るといのは、単独の力では経済的にも経験的にも難しい状況にある国々にとってリスクを最小限に抑えた(原文:押さえた)開催へのチャンスが与えられているわけだ。"
p.184 "...ヨーロッパを中心にくまなく調査したというのは、まんざら嘘ではなく、まったく知られていない地域や東ヨーロッパからの作家が選ばれていたことは、マニフェスタの存在意義ともいえる特徴だろう。"
p.184 "...物語的(フィクション)な作品は、今回の展覧会では多く見られた。"
◆マニフェスタ3 2000年 リュブリアナ(スロヴェニア)◆ 6/23-9/24
●テーマ:ボーダーライン・シンドローム―防御のエネルギー
●キュレイター
フランチェスコ・ボナーミ(Francesco Bonami )
オレ・ボーマン(Ole Bouman )
マリア・ウラヴァヨハ(Maria Hlavajova )
キャサリン・ロンバーグ(Kathrin Rhomberg)
大友恵理「マニフェスタ3」(世界の国際美術展最新レポート) 『美術手帖』 2000年9月号 pp.114-117
p.116 "この西欧と東欧、そしてバルカン半島を結ぶ中継地点での開催は、現代ヨーロッパを探る意欲的な試みとなった。"
p.116 "過去二回の開催では、特定のテーマは設けず、従来のビエンナーレの在り方に対する問題提起、キャリアの若い作家へ作品発表の機会を提供、アートの国際的なネットワークを築くなど、マニフェスタの存在自体が主張されたきらいがあった..."
p.116 "...私たちがヨーロッパと一括りにして呼ぶ地域がじつに多種多様な国家の集合体であり、その再編成が一筋縄ではいかないことがうかがえる。"
(5/31/04)
◆マニフェスタ4 2002年 フランクフルト(ドイツ)◆ 5/25-8/25
●テーマ/キーワード:住居、流動、旅、言語、歴史
●キュレイター
ヌリア・エンギー・マヨ(Nuria Enguita Mayo 1967- スペイン)
ステファニー・モアドン・トランブレー(Stéphanie Moisdon Trembley 1967- フランス)
イアラ・ブブノヴァ(Iara Boubnova 1961- ブルガリア)
●会場
フランケンシュタイナー・ホフ
フランクフルター・クンストフェライン
シュタデルシュ・クンストインスティチュート
ポルティクス
シルン・クンストハーレ前庭、中央駅、フランクフルト空港内、ほかフランクフルト市内各所三木あき子「マニフェスタ4 欧州現代美術ビエンナーレ レポート」 『美術手帖』 2002年8月号 pp.76-79
p.77 "...シャープな白壁空間と、女性的というと語弊があるかもしれないが、微妙な日常の事象への視線、緻密に計算された構成、美しい展示への配慮などが特徴的だった。"
p.77 "その淡々とした語りの先に見えるのは、ゆっくりと少しずつだが確実に動く世界であり、その当事者としてのわれわれ一人一人の存在だ。"
pp.77-78 "だが、気になるのは、そこにわれわれの住む環境・日常に異なる視点を提供するという以上のアートの想像力・創造性の余地があまり残されていないように感じることである。前回より格段に注意深く構想・作品選択がなされ、全体的に上手くまとめられた企画であるだけに、「作品」よりも「組織化」が主役である「交流展」の限界のようなものを垣間見てしまった気がしたのは私だけだろうか。"