マティス展
9/10-12/12 国立西洋美術館
カタログについて
ごあいさつ
天野知香「過程にある絵画」
イザベル・モノ=フォンテーヌ「アンリ・マティス―色彩についての考察」
田中正之「マティスの彫刻における「プロセス」:《背中》、あるいは「宙吊り」の彫刻」
カタログ
I Variation (ヴァリエーション)
I 同一主題のヴァリエーション/イザベル・モノ=フォンテーヌ
II Prosessus (プロセス)
II-1a 制作の現場:マティスのアトリエ/田中正之
II-1b オダリスクの場景/田中正之
II-2 マーグ画廊におけるマティスの展覧会:1945年12月7日-12月29日/天野知香
II-3 プロセスと表面/天野知香
III Prosessus / Variation (プロセス/ヴァリエーション)
III-1 『テーマとヴァリエーション』 1941-1943年/イザベル・モノ=フォンテーヌ
III-2 切り紙絵/天野知香
マティスに関する同時代文献:1896-1954年[田中正之編]
挿図リスト
◆企画のねらい
「ごあいさつ」より
"マティスの作品が持つ色彩の美しさと装飾性は、人々を魅了してやみません。しかし、一見簡単に描かれたように見える彼の作品も、実は長い熟慮と試行錯誤の賜物です。本展は、マティスが制作という行為に強い関心を示していたことに着目し、作品が生まれるその様相に焦点を当てた、世界初の意欲的な試みとなっています。"
"マティスの大規模な展覧会の開催は、作品の貴重さなどのために容易ではありません。日本でも戦後間もない1951年に東京国立博物館で回顧展が行われて以来、マティスの大きな展覧会は数えるほどで、東京では23年ぶりの開催という貴重な機会となりました。"
天野知香「過程にある絵画」より
"マティスはその制作において、時間性を深く結びついた制作プロセスに意外なまでに目を留めているが、しかもそれは必ずしも明確な方向性と到達点をもって積み重ねられる輪郭のはっきりした諸段階としてではなく、分節不可能で、多様な可能性に開かれた、対象とマチエールにかかわる身体的心理的な動き、あるいはむしろ揺らぎそのものと見なすことができる。その動きはマチエールを通して刻々に形を成してさまざまな変化、すなわちヴァリエーションを展開するが、そのすべてが完全に捨てられることはなく、一つに定まることもない。こうしてプロセスはヴァリエーションと互いに絡み合い、重なり合う。"
"プロセス/ヴァリエーション(過程/変化)という観点を通してマティスの画面をあらためて見る(原文は「見る」に強調の"・"あり)ことは、様式やフォルムにこだわるモダニズムの絵画観が否定したマティスにおける制作の時間性と身体性の問題を引き出し、制作行為における主体と意味の葛藤に満ちた生成と崩壊、係争と転覆の過程を前景化することによって、これまでの規範的な枠組みや見方を撹乱する可能性にその作品を開く一つの契機である。"