ノンセクト・ラディカル 現代の写真III
7/17-9/20 横浜美術館
アハラム・シブリ
アンリ・サラ
スティーヴ・マックィーン
高嶺格
ダヴィッド・クレルボ
奈良美智
米田知子
露口啓二
石川真生
あいさつ 雪山行二
場への眼差し 天野太郎
作家略歴
出品リスト
◆展示の分類
常設展示…ルーヴル美術館、大英博物館、ヴァチカン美術館など
企画展示…ニューヨーク近代美術館など ※日本の公立美術館は企画展中心
・個展、回顧展
・グループ展、テーマ展、コレクション展 ※展覧会企画=キュレーター、学芸員など
cf. 公募展←→企画展
巡回展←→単館開催
◆企画のねらい
雪山行二「あいさつ」より
"本展の「ノンセクト・ラディカル"は、60年代末から70年代の初めにかけての我が国で盛んに使用された和製英語です。当時激化していた学生運動をはじめとする政治運動の中にあって、運動組織=セクトに属さず、かといって政治に無関心ではないばかりか、むしろラディカルな=根源を問う姿勢で社会問題に取り組んでいた人びとを指しています。ここでは、そうした現実への取り組みの姿勢を9名の参加作家の作品を通して今一度捉え直そうとするものです。"
天野太郎「場への眼差し」より
"…シリーズとしての本展覧会は、この回をもって一応の締めくくりとなる。その背景には、こうしたグループ展と称する展覧会のあり方そのものを考え直す時期を今迎えているのではないかという美術館としての課題もある。"
◆「木村さん」の展示中止をめぐって
photo: Fujikawa Satoshi (8/22/04)
お知らせ
高嶺格氏の作品「木村さん」については、
本展にふさわしい作品として
公開の努力をしてまいりましたが、
現在の日本では、
上映が法に触れる恐れがあると
判断しましたので中止いたします。
来館者並びに関係者には
大変ご迷惑をおかけしました。
横浜美術館館長
雪山行二高嶺格
「木村さん」
木村さんは森永砒素ミルクの被害による一級障害者で、一人暮らしを始めて今年で14年目になる。僕は京都に住んでいる間、月1、2回のペースで5年間、彼の自宅介護のボランティアを務めていた。そもそも彼が劇団やバンドをやっている人で、その表現欲に触発されて以前にも二人でパフォーマンスを作った事がある。僕と木村さんは元々似た人種なのだと思う。この作品は、僕が介護に行った時にたまたま撮ったビデオが元になっている。事の成りゆきからカメラのアングルに至るまで完璧で、ラストの木村さんの満面の笑顔たるやこの世のものとは思えぬ程で、何とかこれを公開できぬものかと、長い間画索していた。
最終的にネックとなったのは、これが「ビデオ」である事実であって、これは僕が基本的に、ビデオを見ている状態の人間の心理を信用していない事による。ビデオの限界は、眼とテレビ画面の距離ほどに、すぐ手の届く近くにあるのであって、僕と木村さんの間にある思いなど、なんにも見えはしないだろう。その意味で、この作品はパフォーマンスという形態をとろうとも、僕の「独白」であり、一方的な「愛の告白」であり、ノスタルジックなプライベートビデオに過ぎないのだ。僕が「発見」した(コロンブスのアメリカ大陸「発見」と同じ意味合いで)木村さんの「性」は、強烈なインパクトで僕の体を射抜いていったし、人間を平等化する「性」というものについて、畏怖の念すら抱くようにもなった。ただ、この作品のラストで「わははは」と高笑いする木村さんの笑顔は圧巻で、ビデオというメディア、又は性に対する挑戦がこの作品にあるとしたら、この笑いの高みが表現できたかどうか、その一点に尽きる。
底抜けのものに、勝手に底を作ってしまっていた自分を戒めるようにして、この作品が出来上がった。
*木村さんは常時介護ボランティアを募集しています。関西地方にお住まいの方、是非お電話してみて下さい。
木村年男(tel:075-415-xxxx) ※図録には電話番号は完全なかたちで掲載されています。(「現代の写真III」図録、pp.200-1.)
◆関連記事
『アサヒカメラ』2004年9月号、p.226.
『朝日新聞』2004年8月11日、p.147.
『週間朝日』2004年8月6日号
『読売新聞』夕刊、2004年7月22日
『ARTiT』第4号、2004年夏秋号、p.13.
『High Fashion』298号、2004年8月、
REAL TOKYO / 横浜美術館の失態 I, 横浜美術館の失態 II
(10/5/04)