美術史2005


期末試験問題概略告知

1.講義で紹介した作品と作者の正しい組み合わせについて、選択肢の記号により回答する。/選択問題/10問/各2点(20点)

2.西欧美術史学の歴史について基礎的な知識を問う/○×問題/10問/各2点(20点)

3.美術史学の現在について解説した文章の空欄に適切な用語を選んで文を完成させよ/穴埋め問題・選択肢あり/10問/各3点(30点)

4.ポストコロニアリズムについて、この講義を通して得られた知見をもとに自由に論述せよ/論述問題・自由形式/字数制限なし/30点


成績評価方法

試験:100点満点×0.6(計60点)

課題:20点(3つの課題の総点)

出席:8回=8点(1欠席毎-1点 ex.欠席3回=出席点5点)

※最初の2回をカウントしない

授業態度等の調整点:全回出席者に+2点

そのほか授業への参加度をオピニオンシートの回答等をもとに7〜10点の範囲で加算


美術史(前期)試験問題/講師:藤川哲

実施日時:2005年7月28日(木) 12:50〜14:20(90分)

 

(各2点、計20点)

1 以下に示される(1)〜(10)の作品について,問題用紙の(ア)〜(ト)の選択肢より作者名を選び解答用紙に記すことにより、正しい組み合わせを完成させよ.

 (1) 最後の晩餐        (2) グランドオダリスク  (3) 印象 日の出     (4) モーゼの発見

 (5) ラヴェンダーの霧:第1番 (6) 浦島図        (7) 炎舞         (8) 麗子

 (9) 群像           (10) 肖像(双子)
 

 (ア) 鏑木清方    (イ) 速水御舟    (ウ) 高村光太郎   (エ) 黒田清輝    (オ) 山本芳翠

 (カ) 萬鉄五郎    (キ) 岸田劉生    (ク) 河鍋暁斎    (ケ) 森村泰昌    (コ) 李快大

 (サ) 金煥基     (シ) エドゥアール・マネ    (ス) クロード・モネ    (セ) パブロ・ピカソ

 (ソ) ミケランジェロ・ブオナローティ  (タ) レオナルド・ダ・ヴィンチ   (チ) ローレンス・アルマ=タデマ

 (ツ) ラファエロ・サンツィオ   (テ) ジャン・オーギュスト・ドミニク・アングル   (ト)ジャクソン・ポロック

 

(各2点、計20点)

2 以下に示される(1)〜(10)の短文のうち,内容の正しいものに○印を、誤ったものに×印をそれぞれ解答用紙の各欄に記せ.

 (1) ヴァザーリの代表的な著作は『美術史の基礎概念』である.

 (2) ヴェルフリンの五対概念によれば,クラシック期の美術は平面的であり,ゴシック期の美術は深奥的である.

 (3) パノフスキーは『イコノロジー研究』をドイツで発表したため,ナチスによる迫害を受けた.

 (4) ゴンブリッチは『芸術と幻影』で,視知覚とイメージ表現の関係を探求した.

 (5) ハスケルは『パトロンと芸術家』で,美術作品の注文,受容,評価などの問題に初めて本格的に取り組んだ.

 (6) 美術作品の意味を受容者の側から考える視点を「受容美学」,制作者の側から考える視点を「生産美学」と呼ぶ.

 (7) グリンバーグは,クラウスのフォーマリズムを批判的に継承することでポスト・モダンアート批評を打ち立てた.

 (8) スピヴァクは,フェミニズムの立場から美術史学のパラダイム転換を目指した.

 (9) 美術史学が,様式論やイコノロジーの台頭によって学問的枠組みの基礎を築いたのは19世紀後半のことである.

 (10) 20世紀後半,伝統的な美術史学を乗り越えようとする「ニュー・アート・ヒストリー(新しい美術史学)」が台頭した.

 

(各3点、計30点)

3 次の文を読み、空欄となっている( A )〜( J )に,文の下に記されている(1)〜(30)のうち最も適当と思われる言葉を補い,文を完成せよ.解答用紙には,( A )〜( J )の各欄に該当する言葉を(1)〜(30)の番号で記すこと.

20世紀の後半,美術作品の考え方・捉え方は,( A )した.すでに,ヴェルフリン以来の( B )的な観点では,作品のコンテクスト批判を内容とするような( C )の実践を説明することは不可能になっていた.美術史学においても,隣接領域の成果の導入や方法論の刷新,新たな研究領域の開拓などによって,従来の美術史学の限界を乗り越える努力が行われてきた.

例えば,( D )は,知覚心理学を援用したイメージ分析の対象に,マンガや写真など,日常生活で私たちの生活環境を取り巻いている視覚イメージを導入することをためらわなかった.また,画家組合,工房,( E )など,その時代の芸術家のあり方に密接に関係する社会制度の研究も進んだ.さらに,20世紀の美術史学の主流を成してきた( F )が,イタリア・ルネサンス絵画を主たる研究対象としてきた点において限界性を持つことは,17世紀オランダ絵画に特有の芸術観を考察したアルパースの『描写の芸術』の中で指摘され,広く支持されている.

「芸術の価値は普遍」ということは口にされやすいが,西洋で生まれた美術史学が,西欧中心主義,( G )的な観点に立脚してきたことは否めない.白人=キリスト教社会を中心とし,他を「周縁」化する( H )に対する批判的な再考察が現在進められている.美術史によって芸術家が天才として語られるとき,そのイメージ・モデルは全能の創造者としてのキリスト教的な男性の唯一神であり,またその反社会的なイメージが性に対する放埓さとして描かれ,賞賛されるとき,書き手は男性中心主義な価値観に根ざしていると指摘する( I )の視点は,私たちに「芸術」の偏向性に気づかせてくれる.

日本語の「美術」は,ウィーン万国博覧会への参加をきっかけに新たに造られた訳語である.江戸から明治への転換期に,日本はさまざまな制度や技術を輸入して西洋化=近代化を果たした.大学制度もそこで学ばれる学問も多くが西洋から輸入されたものである.( J )の知識を身につけている者を教養人と呼ぶような時代はとうに過ぎた.西洋美術史を学ぶ意義は,西洋に関する知識を得ること自体ではなく,「美術」をめぐる考えの広がりを自らの思索の糧とする点にある.

(1)単純化  (2)一元化  (3)多様化  (4)審美主義  (5)形式主義  (6)博物学  (7)ポスト・モダンアート

(8)ポスト・アート  (9)ポスト・コンテクスト  (10)ゴンブリッチ  (11)ヴァザーリ  (12)グリンバーグ

(13)グラミー (14)アカデミー  (15)アナトミー  (16)エスノグラフィー  (17)イコノグラフィー

(18)イコノロジー  (19)民族自決主義  (20)自民族中心主義  (21)多文化共生主義  (22)数の論理

(23)認識の暴力  (24)中華思想  (25)フェミニズム  (26)ダンディズム  (27)アフォリズム  (28)舶来

(29)先祖伝来  (30)門外不出

 

(30点)

4 ポスト・コロニアリズムについて,この講義を通して得られた知見をもとに自由に論述せよ(字数制限なし).







評価基準は,優:100〜80,良:79〜70,可:69〜60,不可:59〜0である.本試験の素点の8割に各自の出席数による調整点等を加算したものを評点とする.また,4の解答のうち優れたものは,試験問題を蓄積し,今期以後の学生の参考に供するため,Web上で公開する予定である.