美術史二〇〇五


期末試験問題概略告知

一、メディア・アートについて基礎的な知識を問う/○×問題/十問/各二点(二〇点)

二、山口情報芸術センターの設立経緯について、選択肢の記号により回答せよ/埋め問題・選択肢あり/五問/各二点(一〇点)

三、ニュー・テクノロジーについて解説した文章の空欄に適切な用語を選んで文を完成させよ/穴埋め問題・選択肢あり/一〇問/各二点(二〇点)

四、ダムタイプの作品について、自由に論述せよ/論述問題・自由形式/字数制限なし/二〇点

五、「カールステン・ニコライ:シンクロン」(山口情報芸術センター、〜二月十九日)を題材に、テクノロジーと表現について論述せよ/論述問題・テーマあり/字数制限なし/ 三〇点


成績評価方法

試験:一〇〇点満点×〇・七(計七〇点)

課題:レポート=八〜一〇点

出席:一〇回=一〇点(一回欠席毎にマイナス一点 ex.欠席三回=出席点七点)

※最初の二回をカウントしない

授業態度等の調整点:全回出席者にプラス二点

そのほか授業への参加度をオピニオン・シートの回答等をもとに七〜一〇点の範囲で加算


美術史(後期)試験問題

実施日時 二〇〇六年二月二日(木)
一二時五〇分〜一四時二〇分(九〇分)

 

(各二点、計二〇点)

一、次に示される(1)〜(10)の短文のうち、内容の正しいものに○印を、誤ったものに×印をそれぞれ解答用紙の各欄に記せ。

 (1) 明和電機は独自に開発した楽器を演奏するメディア・アート・ユニット。二〇〇三年にはパリでライブを行った。

 (2) デジスタはデジタル・スタジアムの略。デジタル・アートの若手作家を発掘する民放の番組。

 (3) 「フィッシャー&エル・サニ」展関連で上映された「TOKYO STAR」は 日本のアイドル・スターのドキュメンタリー。デビュー前の中島美嘉の様子が収録されている。

 (4) 「MobLab―日独メディア・キャンプ2005」は、日本とドイツの若手アーティストがバスで日本国内を移動しながらモバイル技術を駆使するプロジェクト。YCAMはその出発地点だった。

 (5) ヴィジュアル・カルチャー・スタディーズをあえて訳せば「視覚文化諸研究」。従来からある「美術史」に対して研究対象と研究方法を拡張したものと考えられる。

 (6) 「メディアはメッセージである」とは、『メディア論』の著者ウォルター・ベンヤミンの有名な言葉。

 (7) ロンドンのICAギャラリーで一九六八年に開催された「サイバネティック・セレンディピティ」はコンピュータ・アートを取り上げた先駆的な展覧会。

 (8) コンピュータ・グラフィックスやテレビ・ゲームを取り上げた「デジタルアート・スプラッシュ!」は、一九九八年、山口県立美術館で開催された。

 (9) コンピュータ技術による人工的、模擬的な三次元世界をヴァーチャル・リアリティと呼ぶ。

 (10) ラディカル・サイバー・フェミニズムは、サイバースペースに女性専用空間を創出した。

 

 

(各二点、計一〇点)

二、次の文を読み、空欄となっている( A )〜( E )に、のちに記されている(1)〜(15)のうち最も適当と思われる言葉を補い、文を完成せよ。解答用紙には、( A )〜( E )の各欄に該当する言葉を(1)〜(15)の番号で記すこと。

山口情報芸術センターは( A )年十一月一日に開館した。翌年の十二月十二日に来館者( B )万人を突破し、開館前に疑問視されていた「一部の市民にしか利用されない施設」というイメージを払拭したかに見えるが、合併新市のスタートや指定管理者制度の導入など、人員と予算を削減する「改革」が進行するなか、まだまだ困難な局面が待ち受けている。
同センター設立は、中央高校跡地の利用をめぐる『山口市における情報ゾーン事業化基礎調査』(一九九〇年三月)に端を発する。その後九二年六月、やまぐち情報文化都市基本計画策定委員会によって『やまぐち情報文化都市基本計画案』が提出される。当時の構想には、( C )や3Dシアターなど現在ではすでに時代遅れの感のある技術が見られる。「文化交流プラザ」と呼ばれていた当初の形態は、文化機能と交流機能を併せ持ち、情報技術を中心とした文化面に加え、自動車総合展示場、観光物産センター、コンベンションホールなどの機能も期待されていた。九四年三月には、山口市図書館計画協議会が独立したかたちで発足。現在のメディア+シアター部門が山口市文化振興財団、図書館部門が山口市教育委員会の管轄となっている相乗り体制の出発点と見られる。九六年五月には、交流機能を生活文化情報センターや展示ギャラリー等の市民プラザに集約した『文化交流プラザ基本構想』が発表。同年十一月の設計業者決定を経て、九八年五月に基本設計が提出されるが、ここから市を二分する論争へと発展する。同七月の商工会議所議員三〇人を対象としたアンケート調査で、半数から「計画全体を見直すべき」という結果が出たことを受けて、八木宗十郎商工会議所会頭(当時)は、佐内正治市長(当時)に対し経済効果を理由に五千人収容規模のホール建設を提言。市側は奥津聖山口大学教授を座長とする文化交流プラザソフト研究会を設置。その後も商工会議所側は市長との意見交換の場を持ち、「市民の理解が得られるまで凍結」を訴える。二〇〇〇年二月、( D )山口大学学長(当時)を会長とする中園文化施設企画運営協議会が設置され、議論は続けられたが、〇二年四月の市長選で建設見直しを訴えた合志栄一が当選。新市長は五月に建設工事中断を指示。市側の指名五〇人、抽選公募五〇人からなる( E )が発足し、議論は紛糾したが、専門スタッフの削減と予算の縮小、コンセプトの軟化と建設事業者への補償金支払いを経て、当初の予定通りの期日に開館した。

(1)二〇〇一  (2)二〇〇二  (3)二〇〇三  (4)一〇  (5)一〇〇  (6)二〇〇
(7)レーザー・シアター  (8)パノラマ劇場  (9)ハイビジョン劇場  (10)広中平祐
(11)山崎正和  (12)岩田啓靖  (13)見直し市民委員会  (14)出直し市民委員会  (15)凍結委員会

 

 

(各二点、計二〇点)

三、次の文を読み、空欄となっている( ア )〜( コ )に、のちに記されている(a)〜(x)のうち最も適当と思われる言葉を補い、文を完成せよ。解答用紙には、( ア )〜( コ )の各欄に該当する言葉を(a)〜(x)の小文字アルファベットで記すこと。

ニュー・テクノロジーが拓く未来を( ア )的な契約にたとえる者もいる。それは良い面と同時に悪い面もあるからである。ニュー・テクノロジーに対する反応を四つのカテゴリーに分けると、テクノロジーを新たな可能性と捉え、それをマスターしようとするメディア・アーティストなどの( イ )。既存の新技術には批判的であるが、もっと使用者にやさしく、環境にもやさしい、より新しいかたちのテクノロジーを望んでいる( ウ )。新技術の進歩に抵抗し古い技術の保存を訴える( エ )。そして技術依存そのものからの脱皮を唱える( オ )というように分類できるだろう。それぞれがテクノロジーの一長一短を反映している。現在の機械に依存する表現と過去の手仕事に依存する芸術との違いが、( カ )の区別である。現代の芸術家たちは一生をかけてひとつの芸術に習熟するのではなく、月単位で新しい技術をマスターしなければならない。こうした現状は、テクノロジーこそが( キ )を握っているような気分にさせる。かつて最新の機械や発明は産業や大企業と密接に関係していたので、ニュー・メディアを使用するアーティストたちは、必死で( ク )や技術的な援助を求めたものである。しかし、近年のインターネットの普及やコンピュータの低価格化は、テクノロジーを(北半球に住む)人びとにとっては身近なものにした。身近なものとなったテクノロジーの助けを得て、かつてないほど多くの人々の表現意欲が満たされることとなった。こうした状況を指して、ニュー・テクノロジーの発展がヴィジュアル・カルチャーの( ケ )をもたらしたという者もいる。また同時に、ヴィジュアル・イメージの量的な増大が、私たちの驚きの感覚を鈍磨させ、( コ )を失わせつつあるという観察もある。メディア・テクノロジーの歴史を理解し、批判的に活用していくことが私たちの課題である。

(a)メフィストフェレス  (b)ファウスト  (c)アマデウス  (d)高踏派  (e)反テクノロジー派
(f)潜在的肯定派  (g)熱狂派  (h)印象派  (i)手仕事派  (j)インサイダー/アウトサイダー
(k)ハードウェア/ソフトウェア  (l)プロ/アマチュア  (m)車のハンドル  (n)運命の扉の鍵
(o)国家権力  (p)コレクター  (q)スポンサー  (r)キュレイター  (s)グローバル化
(t)民主化  (u)前衛化  (v)耐久力  (w)集中力  (x)企画力

 

(二〇点)

四、ダムタイプの作品について論じなさい(字数制限なし)。

 

 

(三〇点)

五、「カールステン・ニコライ―シンクロン」を題材に、テクノロジーと表現について論述せよ(字数制限なし)。

 

 

評価基準は、優=一〇〇〜八〇(学年によって秀=一〇〇〜九〇)、良=七九〜七〇、可=六九〜六〇、不可=五九〜〇である。本試験の結果をもとに各自の出席数による調整点等を加算したものを評点とする。また、四、五の解答のうち優れたものは、試験問題を蓄積し、今期以後の学生の参考に供するため、ウェブ上で公開する予定である。