芸術論特殊講義 二〇〇五


期末試験問題概略告知

一、講義で紹介した展覧会について基礎的な知識を問う/○×問題/十問/各三点(三〇点)

二、展覧会カタログについて述べた文章の空欄に適切な用語を選んで文を完成させよ/穴埋め問題・選択肢あり/五問/各二点(一○点)

三、東アジアの現代美術について述べた文章の空欄に適切な用語を選んで文を完成させよ/穴埋め問題・選択肢あり/五問/各二点(一○点)

四、巡回展と単館開催による展覧会、二つの企画展のあり方を比較してそれぞれの長所と短所を論じなさい/論述問題・テーマあり/字数制限なし/二〇点

五、美術館等で実際に自分の目で作品を見ることと、講義や画集等で作品を鑑賞することの違いについて自由に論述せよ/論述問題・自由形式/字数制限なし/三〇点


成績評価方法

試験:一〇〇点満点×〇・八(計八〇点)

出席:十二回=十二点(一回欠席毎にマイナス一点 ex.欠席三回=出席点九点)

※最初の二回をカウントしない

授業態度等の調整点:全回出席者にプラス二点

そのほか授業への参加度をオピニオン・シートの回答等をもとに七〜九点の範囲で加算


芸術論特殊講義(後期)試験問題

実施日時 二〇〇六年一月三十一日(火)
一四時三〇分〜一六時(九〇分)

 

(各三点、計三〇点)

一、次に示される(1)〜(10)の短文のうち、内容の正しいものに○印を、誤ったものに×印をそれぞれ解答用紙の各欄に記せ。

 (1) 「ガンダム―来たるべき未来のために」展は、「機動戦士ガンダム」を紹介する展覧会。セル画の展示やTV版、劇場版などのアニメーション作品が上映された。

 (2) 東京美術学校長と帝国博物館美術部長を兼ねていた岡倉天心は、竹内久一たちに古典美術の模写・模造を指示した。

 (3) 一九八九年のベルリンの壁崩壊以後、東欧の若手作家が西欧の現代アート・シーンを席巻した。

 (4) マシュー・バーニーとビョークは夫婦。映画『拘束のドローイング9』で共演した。

 (5) 福岡アジア美術トリエンナーレは、二〇〇五年で第三回目を迎えたアジアの伝統美術を紹介する国際美術展である。

 (6) 横浜トリエンナーレは三年毎の開催を目指したが、第一回展を二〇〇一年に開いたのち、第二回展の開催は一年遅れてしまった。

 (7) 「秘すれば花―東アジアの現代美術」展では、日本、韓国、中国、台湾、モンゴル、ベトナムで活躍する現代作家が紹介された。

 (8) 「アジアのキュビスム―境界なき対話」展は、東京国立近代美術館で開催されたのち、徳壽宮美術館(韓国)とシンガポール美術館へ巡回する。

 (9) 「瀧口修造―夢の漂流物」展は、瀧口が現代作家から贈られた作品や、自ら制作したデカルコマニー作品、生涯を通して収集した日用品やオブジェ等を展示した。

 (10) 「愛と孤独、そして笑い」展は、女性アーティストによる作品のみで構成された展覧会である。

 

(各二点、計一〇点)

二、次の文を読み、空欄となっている( A )〜( E )に、のちに記されている(1)〜(15)のうち最も適当と思われる言葉を補い、文を完成せよ。解答用紙には、( A )〜( E )の各欄に該当する言葉を(1)〜(15)の番号で記すこと。

 展覧会へ出掛けた記憶も時が経てば薄れてしまう。特に数多くの作品が展示される絵画展等の場合、心の琴線に触れた作品が会場出口で販売されている絵葉書にはない場合も多い。そうした際の備忘録の代わりになるのが各企画展の際に刊行される展覧会図録である。展覧会図録は一般に( A )では販売されない。増刷されることは少なく、部数も限られているので人気の展覧会では会期中に売り切れることもある。また( B )に所蔵される例も少ない。展覧会図録を収集し公開しているライブラリーは、東京国立近代美術館、東京都現代美術館、横浜美術館、愛知県美術館、兵庫県立美術館など大都市圏の美術館付属のものが中心である。平成十八年(二〇〇六)年度開館予定の( C )では「美術情報の収集と提供」が活動の柱に位置づけられており、展覧会図録等の収集・公開が従来の施設以上に積極的に展開される予定であると言われている。展覧会図録には展覧会で展示された作品の図版のほかに、展覧会を企画した( D )による論文等が掲載される。そうした展覧会図録は研究書としても活用される。
 美術館の展示には、右のような企画展以外に、その館の所蔵作品を公開する常設展示がある。美術館の所蔵作品を図録のかたちで刊行したものが( E )や所蔵品目録である。

(1)書店  (2)古書店  (3)画廊  (4)美術館  (5)図書館  (6)公民館
(7)山口県立美術館  (8)青森県立美術館  (9)国立新美術館  (10)新聞社  (11)アーティスト
(12)学芸員  (13)研究紀要  (14)コレクション選  (15)年報

 

(各二点、計一〇点)

三、次の文を読み、空欄となっている( ア )〜( オ )に、のちに記されている(a)〜(o)のうち最も適当と思われる言葉を補い、文を完成せよ。解答用紙には、( ア )〜( オ )の各欄に該当する言葉を(a)〜(o)の小文字アルファベットで記すこと。

 東アジアにおける近代化とは、「西欧化」や「欧米化」を意味していたと考えられる。しかし、この西欧化や欧米化がヨーロッパやアメリカ合衆国そのものになることでないことは言を俟たない。日本に和魂洋才という言葉があるように、同じ頃、中国や韓国でも( ア )や( イ )といった言葉が生まれ、独自の文化と先進の文明との融和の道が模索された。
 近代美術の分野における西欧文明移入の代表的な事例がキュビスムである。キュビスムは二〇世紀初頭のパリで( ウ )とジョルジュ・ブラックの二人の画家によって創始され、美術雑誌等の印刷物やヨーロッパへの留学生たちの見聞などを通じてアジアにも広まった。特に( ウ )の評価の高さはキュビスムの芸術理論としての理解以上に、単に画風としての追従者を生んだ面も否めない。
 一九八〇年代以降の現代アート・シーンにおいて、欧米追従型の作家が表舞台に登場する余地はほとんどなくなったと言ってよい。アジア地域における国際美術展の開催も美術館の設立も増えた。光州ビエンナーレやアジア・パシフィック・トリエンナーレ、( エ )といった国際美術展がアジア作家の紹介に比重を置いていることは、ヨーロッパの国際美術展と異なる文化機軸の構築に貢献している。そうした中でも一九八〇年頃までの前衛芸術に対する国家的な否定の時代を経て、近年の民主化とともに先進文化の一端として後押しされるようになった( オ )の現代美術の今後が特に注目される。

(a)勢力伯仲  (b)馬耳東風  (c)東道西器  (d)愚公移山  (e)中體西用  (f)東奔西走
(g)マーガレット・バーク=ホワイト  (h)マルセル・デュシャン  (i)パブロ・ピカソ
(j)横浜トリエンナーレ  (k)ヴェネツィア・ビエンナーレ  (l)ドクメンタ  (m)東ティモール
(n)タイ  (o)中国

 

 

(二〇点)

四、巡回展と単館開催による展覧会、二つの企画展のあり方を比較してそれぞれの長所と短所を論じなさい(字数制限なし)。

 

 

 

(三〇点)

五、美術館等で実際に自分の目で作品を見ることと、講義や画集等で作品を鑑賞することの違いについて自由に論述せよ(字数制限なし)。

 

 

評価基準は、優=一〇〇〜八〇(学年によって秀=一〇〇〜九〇)、良=七九〜七〇、可=六九〜六〇、不可=五九〜〇である。本試験の結果をもとに各自の出席数による調整点等を加算したものを評点とする。また、四、五の解答のうち優れたものは、試験問題を蓄積し、今期以後の学生の参考に供するため、ウェブ上で公開する予定である。