美術史 二〇〇六


<第六講> 中間まとめ:メディア・アートとは何か

0.典拠

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

→「ニューメディアアート、メディアアート」の項を参照

0−1.構成

(概要)
1 歴史
2 保存方法
3 日本におけるメディアアート
4 メディアアートの例
5 関連のある人物・グループ
6 関連のある組織・活動
7 関連項目
8 外部リンク
9 関連図書

(11/29/06現在)


(概要)

ニューメディアアート、メディアアート(New media art, media art)

“20世紀中盤より広く知られるようになった、芸術表現に新しい技術的発明を利用する、もしくは新たな技術的発明によって生み出される芸術の総称的な用語である。特に、ビデオやコンピュータ技術をはじめとする新技術に触発され生まれた美術であり、またこういった新技術の使用を積極的に志向する美術である。

この用語は、その生み出す作品(伝統的な絵画や彫刻など、古い媒体(メディア)を用いたアートと異なる新しい媒体(ニューメディア)を使う作品群)によってそれ自身を定義している。 ニューメディアアートは、電気通信技術、マスメディア、作品自体が含むデジタル形式の情報運搬方法といったものから生まれ、その制作はコンセプチュアル・アートからインターネットアート、パフォーマンスアート、インスタレーションといった範囲に及ぶ。”


1.歴史

1−1.技術の発展とともに

【起源:19世紀】

ゾエトロープ(zoetrope、1834年)

プラキシノスコープ(praxinoscope、1877年)

エドワード・マイブリッジのズープラキシスコープ(zoopraxiscope、1879年)

【1960年代】

ナムジュン・パイク=ヴィデオ・アート

フルクサス=マルチメディア作品、パフォーマンス作品

【近年】

デジタル・アートと密接に連携

コンピュータ・ベースの芸術制作の理論と歴史に収斂

1−2.思想背景

【影響源】

ハイパーテキスト

データベース

ネットワーク理論

【思想家】

ヴァネヴァー・ブッシュ(Vannevar Bush)

テッド・ネルソン(Ted Nelson)

↑ホルヘ・ルイス・ボルヘス、イタロ・カルヴィーノ、フリオ・コルタサル、ダグラス・クーパーの文学からの影響

【革新性】

物語性・非物語性をめぐる芸術思想・制作の分野において革命的

                        ↓

非直線的でインタラクティブなストーリーの芸術作品が爆発的に生み出されるきっかけに


2.保存方法

初期の技術→時代遅れ

フィルム、カセットテープ、ブラウザ、ソフトウェア、オペレーティングシステム

「いかに時間を超えて保存・修復を行なうか」=深刻な問題

現時点での解決策

古いメディアから新しいメディアへの変換

 参考:Digital Rosetta Stone

メディアのデジタルアーカイブ

 参考:archive.orgとweb.archive.org

エミュレータの使用(ソフトウェアやオペレーションシステム環境に依存した作品に対して)

 参考:リチャード・ラインハート(Richard Rinehart)のRhizome.orgに対するレポート、Preserving the Rhizome ArtBase


3.日本におけるメディアアート

【1990年代前半〜】

コンピュータゲームや電子玩具といった姿での実現(商業芸術、デザイナー、プランナーによる)

【1990年代中盤〜】

インターネットの普及とともに「新しいメディア」をフィールドとしたアートワークを具現化(アーティストと他の専門領域の人々のコラボレーションによる。技術者や、リアルタイムコンピュータグラフィックス、ネットワークの研究者、社会学者など)

電子技術、映像技術やロボティックス、ヒューマンインタフェイス、バーチャルリアリティなどの研究者との共同プロジェクトが盛ん

メディアアーティスト自身が技術を習得・駆使して自らのアイディアを具現化することも

【コンペティション】

文化庁メディア芸術祭

国際学生対抗バーチャルリアリティコンテスト

【テレビ番組】

デジタルスタジアム

【展示施設】

NTTインターコミュニケーションセンター

山口情報芸術センター

東京都写真美術館

日本科学未来館

パナソニックセンター

水戸芸術館

せんだいメディアテーク

金沢21世紀美術館

【特徴】

商業化・産業化の可能性が高い

八谷和彦:「ポストペット」

岩井俊雄:TV番組『ウゴウゴルーガ』、「オトッキー」、「びっくりマウス」、「エレクトロプランクトン」

【代表的な作家など】

明和電機=電気機器製作の中小企業を模したアーティストユニット。数多くの楽器や製品を発表。

岩田洋夫=ロボティクス、ハプティックス、バーチャルリアリティなど機械工学を専門とする先端技術研究者。アルス・エレクトロニカ(オーストリア・リンツ)やSIGGRAPH(米国)にて数多くの受賞、発表を行う。

坂根厳夫=1980年代から国内外のメディアアートを紹介する展覧会を企画。近年はIAMAS(岐阜県大垣市)の名誉学長として、若手アーティストの指導、海外アーティストの日本招聘につとめる。


4.メディアアートの例

インターネット・アート(Internet art)

インタラクティブ・アート(Interactive art)

インフォメーション・アート(Information art)

ヴィデオ・アート(Video art)

ヴィデオゲーム・アート(Video game art)

エレクトリック・アート(Electric art)

オーディオ・アート(Audio art)

コンピュータ・アート(Computer art)

サウンド・アート(Sound art)

ジェネレーティブ・アート(Generative art)

ソフトウェア・アート(Software art)

デジタル・アート(Digital art)

ハックティヴィズム(Hacktivism)

パフォーマンス・アート(Performance art)

メディアテクノロジー・アート(Media technology art)

ロボティック・アート(Robotic art)


5.関連のある人物・グループ

池田亮司/「dumb type "Voyages" インスタレーション」(2004.2.13〜4.4)、「dumb type "Voyage" パフォーマンス公演」(2003.2.20, 21)

岩井俊雄

岩田洋夫

エキソニモ/「メディア・ソケッツ〜多層なる創造圏」(2003.11.1〜12.28)、「MobLab(モブラボ):日独メディア・キャンプ2005」(2005.11.5, 6)、「WORLD B/意識を裏返し、B面をPLAYせよ」(2006.4.22〜7.9)

江渡浩一郎

大石暁規/インタラクティブ・グラフィクス「プティボノム」(2005.7.23〜9.25)

河口洋一郎

クワクボリョウタ/「R/V」(2005.1.8〜2.21)

坂根厳夫

志賀理江子/藤乃家舞+志賀理江子「Jacques」(2004.12.1〜2005.1.31)

渋谷慶一郎/渋谷慶一郎+池上高志 「filmachine」(2006.8.9〜10.9)

ダブルネガティブス

ダムタイプ/「dumb type "Voyages" インスタレーション」(2004.2.13〜4.4)、「dumb type "Voyage" パフォーマンス公演」(2003.2.20, 21)

八谷和彦

平川紀道

藤幡正樹/「モレルのパノラマ」(2004.9.18〜10.24)

前林明次

三上晴子/三上晴子+市川創太「gravicells - 重力と抵抗」(2004.5.15〜6.20)

minim++(ミニムプラプラ)

明和電機

森脇裕之

中居伊織/「メディア・ソケッツ〜多層なる創造圏」(2003.11.1〜12.28)

るさんちまん/「メディア・ソケッツ〜多層なる創造圏」(2003.11.1〜12.28)

澤井妙治

※「メディアアートって何だ?」(特集)、『アートイット』第6号(2005年冬・春)より作家名を増補した上で「/」以下にYCAMにおける参加企画データを追加した。


6.関連のある組織・活動

ZKM

IAMAS

NTTインターコミュニケーションセンター

山口情報芸術センター

日本科学未来館

せんだいメディアテーク


7.関連項目

インターメディア

ニューメディアアートフェスティバル

アルス・エレクトロニカ


8.外部リンク

 


9.関連図書

Paul, Christiane (2003). Digital Art (World of Art series). London: Thames & Hudson. ISBN 0500203679.

Greene, Rachel (2004). Internet Art (World of Art series). London: Thames & Hudson. ISBN 0500203768.

Rush, Michael (1999). New Media in Late 20th-Century Art (World of Art series). London: Thames & Hudson. ISBN 0500203296.