ハインリヒ・ヴェルフリン
1864-1945
『建築心理学序説』(1886)
『ルネサンスとバロック』(1888)
『古典美術』(1899)
『アルブレヒト・デューラーの美術』(1905)
『美術史の基礎概念』(1915)
『美術史論考』(1940)
『基礎概念』は初版以来、重版・改版を続け、一九九一年に第一八版が出ている。外国語訳は十指に余るそうであるが、われわれは一九三六年(昭和十一)に岩波書店から刊行された、わが師守屋謙二(一八九八―一九七二)訳をあげなければならない。このように息長く出版が続くのは、『基礎概念』がもとより「芸術家の歴史」でなく、また個々の芸術作品の分析を超えて、美術の発展の原理を論じ、結局は美術史方法論という根本問題に取り組んだからである。
(海津忠雄「解説」、ハインリヒ・ヴェルフリン 『美術史の基礎概念』、慶應義塾大学出版会 2000年、p.408)
学としての美術史を方法論的に基礎づけたのがウィーン学派のアロイス・リーグルや、ブルクハルトの弟子ハインリッヒ・ヴェルフリンである。<様式史>と呼ばれる彼らの手法は芸術作品の徹底した<形式化>だった。作品の主題や内容は捨象され、色彩や線といった基本要素への還元が行われる。<様式>とはそのような方法論的還元を通じて取り出された形式言語である。その形式分析は<触覚的/視覚的>(リーグル)、<線的/絵画的>(ヴェルフリン)といった没価値的二項対立を駆使して展開された。美術史はこのフォーマリズムによってはじめて開始され得たのである。(田中純「美術史の曖昧な対象 衰退期について」、『批評空間』1995年臨時増刊号<モダニズムのハード・コア>、太田出版、p.277)