芸術論特殊講義 二〇〇六


期末試験問題概略告知

一、講義で紹介した展覧会について基礎的な知識を問う/○×問題/十問/各二点(二〇点)

二、浮世絵について述べた文章の空欄に適切な用語を選んで文を完成させよ/穴埋め問題・選択肢あり/五問/各二点(一○点)

三、「日本におけるドイツ年」について述べた文章の空欄に適切な用語を選んで文を完成させよ/穴埋め問題・選択肢あり/五問/各二点(一○点)

四、「回顧展」、「テーマ展」、「コレクション展」のそれぞれについて展覧会の構成上の違いについて論述せよ/論述問題・主題指定/字数制限なし/三〇点

五、 「雪舟への旅」展(山口県立美術館)、「若冲と江戸絵画」展(九州国立博物館)、「日本のダダ」展(中原中也記念館)のうち、いずれか一つを選び、解答者が「展覧会会場で発見したこと」を主題として自由に論述せよ/論述問題・ 主題指定/字数制限なし/三〇点


芸術論特殊講義(後期)試験問題

実施日時 二〇〇七年一月三十日(火)
14
30分〜16時(90分)

 

(各二点、計二〇点)

一、次に示される(1)〜(10)の短文のうち、内容の正しいものに○印を、誤ったものに×印をそれぞれ解答用紙の各欄に記せ。

 (1)藤田嗣治は、一九四九年、戦争協力に対する批判を受けて日本を去り、五五年にフランス国籍を取得、六八年、スイスに没した。

 (2)伊藤若冲の名品を数多く含むプライスコレクションは、戦後蒐集されたものである。

 (3)雪舟は山口に生まれ、岡山で亡くなった。

 (4)雅/俗」展は、「国民文化祭・やまぐち二〇〇六」の開催を記念して企画された。

 (5)柄澤齊の「肖像」シリーズは、マリリン・モンローや毛沢東などの五〇―六〇年代を代表する著名人を描いたものである。

 (6)ケーテ・コルヴィッツは、ゲーテの「種を粉に挽いてはならない」を引用して、軍隊志願を若者に促した文章に反論した。

 (7)ホルスト・ヤンセンは、喜多川歌麿や葛飾北斎など日本の浮世絵に大きな関心を寄せていた。 

 (8)東京―ベルリン/ベルリン―東京」は、都市の文化に焦点を当てた展覧会。絵画や彫刻のほか、建築、写真、工芸、デザインなど多岐にわたる造形表現が展観された。 

 (9)カルティエ現代美術財団のコレクションは国際性に富んでおり、松井えり菜、森山大道、川内倫子などの日本人作家の作品も含んでいる。

 (10アフリカ・リミックス」展は、パリを拠点に活躍するフランス人美術評論家シモン・ンジャミによって企画された。

  

(各二点、計一〇点)

二、次の文を読み、空欄となっている( A )〜( E )に、のちに記されている(1)〜(15)のうち最も適当と思われる言葉を補い、文を完成せよ。解答用紙には、( A )〜( E )の各欄に該当する言葉を(1)〜(15)の番号で記すこと。

  浮世絵版画には、江戸時代の人々の生活や美意識が細やかに映し出されている。二〇〇六年六月十日〜七月三十日に山口県立萩美術館・浦上記念館で開催された「雅/俗―浮世絵に見る風雅と風俗」展では、江戸時代の浮世絵の流れをたどるにあたり、前期・中期・後期の三つの時代区分を設定していた。その際、前期と中期を区分する画期を示す出来事が、明和二年(一七六五)頃の( A )誕生であった。この頃より、美人画の分野で人気を博する( B )や喜多川歌麿、役者絵において革新的な表現を開拓した( C )が登場し、黄金期を迎える。一八〇四年に始まる文化・文政期から幕末までにかけての後期は「浮世絵の爛熟期」と位置づけられたが、私たちにとって親しい( D )による「富嶽三十六景」や、( E )による「東海道五十三次」などの名作が生まれたのは、この時期である。

(1)柱絵  (2)紅摺絵  (3)錦絵  (4)眼鏡絵  (5)開国絵
(6)池大雅  (7)伊藤若冲  (8)歌川広重  (9)葛飾北斎  (10)狩野常信
11)司馬江漢  (12)鈴木春信  (13)月岡芳年  (14)東洲斎写楽  (15)円山応挙

 

(各二点、計一〇点)

三、次の文を読み、空欄となっている( ア )〜( オ )に、のちに記されている(a)〜(o)のうち最も適当と思われる言葉を補い、文を完成せよ。解答用紙には、( ア )〜( オ )の各欄に該当する言葉を(a)〜(o)の小文字アルファベットで記すこと。

  FIFAワールドカップのドイツ大会が開催された二〇〇六年とその前年の二年にまたがって、「日本におけるドイツ年2005/2006」が設定され、ドイツの文化、経済、科学などを日本に紹介する企画が全国各地で開催された。山口では、( ア )で二〇〇五年に開催されたニナ・フィッシャー&マロアン・エル・サニ「ラジオソラリス」や( イ )といった企画がこの「日本におけるドイツ年」関連事業であった。
  美術展では、二年にまたがって全国の美術館を巡回するような展覧会も開催された。「ケーテ・コルヴィッツ展」もそうした巡回展の一つで、二〇〇五年七月の茨城県つくば美術館での開催を皮切りに、新潟県立近代美術館、姫路市立美術館、熊本県立美術館を巡回し、二〇〇六年四月〜六月の( ウ )が最終会場となった。
  また、日本とドイツの二国間を巡回する大規模な企画展も実現した。( エ )は、二〇〇六年一月〜五月の東京会場での開催ののち、翌六月から、ベルリンの国立新美術館へと巡回した。第二次世界大戦中、同盟国であった両国の歴史を振り返るに当たり、日本の( オ )や戦後復興期の社会を見つめた作品が、展示に含められていたことの意義は大きい。

(a)山口県立美術館  (b)山口情報芸術センター  (c)秋吉台国際芸術村
(d)カールステン・ニコライ「シンクロン」  (e)「時間旅行」展  (f)「雪舟への旅 」展
(g)森美術館  (h)町田市立国際版画美術館  (i)東京都写真美術館
)「アフリカ・リミックス」  ()「カルティエ現代美術財団コレクション展」
(l)「東京―ベルリン/ベルリン―東京」展  ()報道写真  ()前衛芸術  ()戦争画

 

(三〇点)

四、「回顧展」、「テーマ展」、「コレクション展」のそれぞれについて展覧会の構成上の違いについて論述せよ(字数制限なし)。

 

 

(三〇点)

五、「雪舟への旅」展(山口県立美術館)、「若冲と江戸絵画」展(九州国立博物館)、「日本のダダ」展(中原中也記念館)のうち、いずれか一つを選び、解答者が「展覧会会場で発見したこと」を主題として自由に論述せよ(字数制限なし)。

 

 

評価基準は、優=一〇〇〜八〇(学年によって秀=一〇〇〜九〇)、良=七九〜七〇、可=六九〜六〇、不可=五九〜〇である。本試験の結果をもとに各自の出席数による調整点等を加算したものを評点とする。また、四、五の解答のうち優れたものは、試験問題を蓄積し、今期以後の学生の参考に供するため、ウェブ上で公開する予定である。