<第四講> 西洋美術史(四)現代
0.現代と同時代
<第三講>近代で説明した通り、本講義では世紀で区切ることの利便性を採って、十九世紀を狭い意味での近代、二十世紀を現代、二十一世紀を同時代とそれぞれ呼ぶこととする。また、同時代美術については一九九〇年代以降の作例を紹介する。キュビスムのピカソは私自身の感覚ではすでに近代美術の域にあるものだが、本講義では現代美術に分類しておく。
二十世紀は前半と後半、そして二十一世紀と連続している部分、という大きく三つに分けて考える。西洋美術史では世紀前半の文化的中心地をパリと考え、第二次大戦後、その中心地はニューヨークへ移ったと理解する。そして一九八〇年代の新表現主義の台頭とともに、ニューヨークの先進性は相対的に弱まり、ただ一つの中心など存在しない多中心の時代を迎える。この多中心の時代が私たちが生きている同時代である。
九〇年代には、日本やアジアの現代美術が欧米から注目されるようになり、二十一世紀に入っては、中国の現代美術の動向が熱く注目されている。
多中心の時代とは、西洋美術史の視点が西洋人の視点のみでは形成されえない時代が到来したことを意味している、と私は考えている。端的に言えば、西洋美術史を世界美術史へと書き換える時代が到来したという認識である。
1.二十世紀前半―美術運動の時代、パリ
1−1.フォーヴィスム
・アンリ・マチス《赤い部屋(赤い調和)》、1908年、油彩・カンヴァス、180.5×221cm、モスクワ、国立近代美術館
・アンドレ・ドラン《ロンドン、テムズ河から見たセント・ポールズ大聖堂》、1906年、油彩・カンヴァス、99.7×81.9cm、ミネソタ州、ミネアポリス美術研究所
1−2.表現主義
・エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナー《モデルのいる自画像》、1910/26年、油彩・カンヴァス、150.4×100cm、ハンブルク、美術館
1−3.キュビスム
・パブロ・ピカソ《アンブロワーズ・ヴォラールの肖像》、1910年、油彩・カンヴァス、92.0×65.0cm、モスクワ プーシキン美術館
・ジョルジュ・ブラック《コンポートとトランプ》(クラブのエースのコンポジション)、1913年、油彩、グアッシュ、木炭・カンヴァス、81×60cm、パリ、国立近代美術館
1−4.抽象主義
・ヴァシリー・カンディンスキー《コンポジション VII》、1913年、油彩・カンヴァス、200×300cm、モスクワ、トレチャコフ美術館
・ピート・モンドリアン《ニューヨーク・シティ》、1942年、油彩・カンヴァス、119.3×114.2cm、ニューヨーク、個人蔵
1−5.ダダ
・マルセル・デュシャン《泉》、1917/1964年、、サンフランシスコ近代美術館
・マン・レイ《破壊されるべきオブジェ》、1923/1965年、ニュー・ジャージー、ニューアーク美術館
1−6.シュルレアリスム
・ジョアン・ミロ《カタルーニャの風景》、1923-24年、64.8×100.3cm、ニューヨーク、近代美術館
・マックス・エルンスト《花嫁の化粧》、1940年、油彩・カンヴァス、129.6×96.3cm、ヴェネツィア、ペギー・グッゲンハイム美術館
・ルネ・マグリット《光の帝国》、1953–54年、油彩・カンヴァス、195.4×131.2cm、ヴェネツィア、ペギー・グッゲンハイム美術館
・サルバドール・ ダリ《記憶の固執》、1931年、油彩・カンヴァス、24.1×33cm、ニューヨーク、近代美術館
2.第二次大戦後―ニューヨーク
2−1.抽象表現主義
・ジャクソン・ポロック《青(白鯨)》、1943年頃、
Source: Artchive・ジャクソン・ポロック《熱の中の眼》、1946年、
Source: Artchive・ジャクソン・ポロック《5尋の深み》、1947年、油彩、くぎ、ボタン、鍵、びょう、硬貨、タバコ、マッチ、くしなど・カンヴァス、129.2×76.5cm、ニューヨーク近代美術館
Source: Artchive・ジャクソン・ポロック《ナンバー8》部分図、1949年、油彩、エナメル、アルミニウム・ペイント・カンヴァス、86.6×180.9cm、ロチェスター、ニューヨーク州立大学ヌーベルガー美術館
Source: Artchive・ジャクソン・ポロック《ラベンダー・ミスト ナンバー1》、1950年、油彩、エナメル、アルミニウム・ペイント・カンヴァス、221×299.7cm、ワシントン・ナショナル・ギャラリー
Source: Artchive・ジャクソン・ポロック《秋のリズム ナンバー30》、1950年、油彩・カンヴァス、266.7×525.8cm、ニューヨーク、メトロポリタン美術館
Source: Artchive・モーリス・ルイス《ベータ・カッパ》、1961年、262.3×439.4cm、ワシントン・ナショナル・ギャラリー
Source: Artchive
2−2.ポップ・アート
・アンディ・ウォーホル《エルヴィス I ・ II 》、1964年、208.3 x 208.3 cm (each panel)、オンタリオ・アート・ギャラリー
・アンディ・ウォーホル《多色による4つのマリリン》、1979-86年 、アクリル絵具、シルクスクリーン・カンヴァス 92.0×70.8 徳島県立近代美術館
・レイ・ジョンソン《ジェームス・ディーン》 1957年
・ロイ・リキテンシュタイン《ワーム!》、1963年、172 x 269 cm (two canvasses)、ロンドン、テート・ギャラリー
・メル・ラモス《タバコ・ローズ》(『11人のポップ・アーティスト』 II) 1965年 シルクスクリーン・紙 71.2×56.0 徳島県立近代美術館
・トム・ウェッセルマン《グレート・アメリカン・ヌード #30》 1962年
・トム・ウェッセルマン《静物 #24》 1962年
・ミンモ・ロテラ《コカコーラ》 1961年
・ジャスパー・ジョーンズ《塗られたブロンズ II:エール缶》 1964年
・ロバート・ラウシェンバーグ《コカコーラ・プラン》 1958年
・クレス・オルデンバーグ《ペーストリー・ケース》 1961-2年
・アンディ・ウォーホル《白いブリロの箱》 1964年
・リチャード・ハミルトン《一体何が今日の家庭をこれほど違わせ、これほど魅力的にするのか?》 1956年
・リチャード・ハミルトン《いったい何が今日の家庭をこんなに変えたのだろう》、1994年、ed.25
2−3.コンセプチュアリズム
・ジョセフ・コスース《1つの、そして3つの椅子》、1965年、ニューヨーク、近代美術館
Source: 『カラー版 20世紀の美術』・ジョセフ・コスース《1つと3つの鏡》、1965年、 キャンベラ、オーストラリア・ナショナル・ギャラリー
Source: 同ギャラリー・サイト・ジョセフ・コスース《時計(1つと5つ) 英語/ラテン語編》、1965年、テート・コレクション
Source: 同テート・コレクション・サイト・ジョセフ・コスース《1つと8つ―表記》、1965年、 キャンベラ、オーストラリア・ナショナル・ギャラリー
Source: 同ギャラリー・サイト・マルセル・ブロータース《詩的世界地図》、1968年、(部分)
Source: 『ハピネス』展図録(森美術館)、2003年・マルセル・ブロータース《美術館、子供不可》、1968-69年、2枚組、各83.0×120.0cm、アイントホーフェン、市立ファン・アッベ美術館
Source: 『レボリューション/美術の60年代』展図録(東京都現代美術館)、1995年・ヨーゼフ・ボイス《無題(4枚の黒板)》、1972年、テート・コレクション
Source: 同テート・コレクション・サイト・ヨーゼフ・ボイス《聖処女》、1979年、グッゲンハイム美術館
Source: 同美術館サイト・ヨーゼフ・ボイス《7,000本の樫の木》、1982年、カッセル、ドクメンタ7
Source: Joseph Beuys: Documenta Arbeit, Museum Fridericianum, Kassel, 1993.・ハンス・ハーケ《MOMA=投票》、1970年
Source: Hans Haacke: Obra Social, Fundacio Antoni Tapies, Barcelona, 1995.・ハンス・ハーケ《レンブラントの必修科目》、(部分)
Source: 『美術手帖』第615号、1989年10月・河原温《1968年8月9日》、フランクフルト現代美術館での展示風景
Source: 撮影:藤川・河原温《100万年》、2002年、カッセル、ドクメンタ11
Source: 撮影:藤川・松沢宥《消滅の幟と》、1970年、第10回日本国際美術展
Source: 『戦後文化の軌跡』展図録(目黒区美術館ほか、朝日新聞社)、1995年・荒川修作《分離した連続性》、1966年、油彩、鉛筆・カンヴァス
Source: 『荒川修作展』図録(西武美術館)、1979年・杉本博司《劇場》(4点)、2000年
Source: eyestormサイト・イチハラヒロコ《万引きするで。》、1998年、(別図版)
Source: 『横浜トリエンナーレ:ハンディガイド』、2001年/ナディフ・サイト・イリヤ・カバコフ《翼》
Source: 『イリヤ・カバコフ:シャルル・ローゼンタールの人生と創造』(水戸芸術館現代美術センター)、1999年
2−4.新表現主義
・サンドロ・キア《カフェ・ティントレットの出来事》、1981年、油彩・カンヴァス、256.5×340.3cm
Source: The Art of Sandro Chia・サンドロ・キア《盲目の犬》、1984年、油彩・カンヴァス、221.0×200.6cm
Source: The Art of Sandro Chia・フランチェスコ・クレメンテ《鋏と蝶》、グッゲンハイム美術館
Source: Guggenheim Museum / Francesco Clemente・エンツォ・クッキ《Sia per mare che per terra》、1980年、214.5×292.0cm、バーゼル、美術館
Source: Kunstmueum Basel / Enzo Cucci・ニコラ・デ・マリア《Nel paese delle speranze con gli angeli》、1987年、50.0×40.0cm
Source: Galerie Iris Wazzau / Nicola de Maria・ニコラ・デ・マリア 題不詳?
Source: galleria Cardi / Nicola de Maria・ミンモ・パラディーノ《7》、1991年、299.72×379.73cm、オルブライト=ノックス・アート・ギャラリー
Source: Albright-Knox Art Gallery, Buffalo, New York / Mimmo Paladino・ゲオルグ・バゼリッツ《男性ヌード》、1975年、ノースキャロライナ、美術館
Source: North Carolina, Museum of Art / Georg Baselitz・ゲオルグ・バゼリッツ《無題》、1982年、バーゼル、美術館
Source: Kunstmueum Basel / Georg Baselitz・アンゼルム・キーファー《セラフィム》、1983-84年、グッゲンハイム美術館
Source: Guggenheim Museum / Anselm Kiefer・アンゼルム・キーファー《西洋の黄昏》、1989年、400.0×380.0×12.0cm、オーストラリア、ナショナル・ギャラリー
Source: National Gallery of Australia / Anselm Kiefer・A. R. ペンク《Standart-Bild》、1971年、287×287cm、バーゼル、美術館
Source: Kunstmueum Basel / A. R. Penck・キース・ヘリング「地下鉄駅構内で制作中のヘリング1」、「同2」、「地下鉄駅構内に発表された作品」、「愛をテーマにした作品」
Source: Kieth Haring Foundation・ジャン=ミシェル・バスキア《無題》、1981年、ロサンゼルス、現代美術館
Source: Museum of Contemporary Art, Los Angeles / Jean-Michel Basquiat・ジャン=ミシェル・バスキア《無題(カドミウム)》、1984年、167.6 x 152.4cm、ハイ美術館
Source: High Museum of Art, Georgia / Jean-Michel Basquiat・ジュリアン・シュナーベル《剣を持つ青いヌード》、1979/80年
Source: Rupertinum / Julian Schnabel・ジュリアン・シュナーベル《アンディの影とともにある自画像》、1987年
Source: The Broad Art Foundation / Julian Schnabel・デイヴィッド・サーレ《喜劇》、1995年、グッゲンハイム美術館
Source: Guggenheim Museum / David Salle・エリック・フィシュル《悪童》、1981年
Source: The Eric Fischl Website・エリック・フィシュル《誕生時の姿の少年》、1983年
Source: The Eric Fischl Website
3.同時代
3−1.一九九〇年代以降
・フェリックス・ゴンザレス=トレス(キューバ生まれ)《無題(公衆の意見)》、1991年、キャンディ、グッゲンハイム美術館
Source: Guggenheim Museum / Felix Gonzalez-Torres・有限会社ナウィン・プロダクション(タイ生まれ)《パーカウマーの旅(腰巻布と梱包用ボックス)》、(商標)1997年、「東南アジア1997」展(東京都現代美術館)
Source: 『東南アジア1997』展図録、東京都現代美術館、1997年・リクリット・ティラヴァニャ(アルゼンチン生まれ)《無題(若い男、もし私の妻がそれを成すなら)》、1999年、プラスチック
Source: GALLERY SIDE 2 / Rirkrit Tiravanija・リクリット・ティラヴァニャ 題不詳(1)、(2)、(3)、(4)、2003年、第50回ヴェネツィア・ビエンナーレ
Source: 撮影:藤川・スラシ・クソンウォン(タイ生まれ)《ハッピー・ベルリン(無料マッサージ)》、2001年、第2回ベルリン・ビエンナーレ
Source: 2nd berlin biennale / Surasi Kusolwong・奈良美智《山羊飼いの子供たち―カブール市郊外[ポスター]》、2003年 、「ハピネス」展(森美術館)
Source: 『ハピネス』展図録、森美術館、2003年