期末試験問題概略告知
1.国際美術展、および現代美術について基礎的な知識を問う/○×問題/10問/各3点(30点)
2.アジア太平洋地域における国際美術展の現状について解説した文の空欄に適切な用語を選んで文章を完成させよ/穴埋め問題・選択肢あり/10問/各2点(20点)
3.横浜トリエンナーレについて、指定される5つの用語を適切に用いて論述せよ/論述問題・用語指定/字数制限なし/20点
4.芸術、美術に対する現在までの関わり方と理解のあり方について、解答者自身の経験に照らして論述せよ/論述問題・自由形式/字数制限なし/30点
成績評価方法
試験:100点満点×0.7(計70点)
課題レポート:10点
出席:10回=10点(1欠席毎-1点 ex.欠席3回=出席点7点)
※最初の2回をカウントしない
授業態度等の調整点:全回出席者に+2点
そのほか授業への参加度をオピニオンシートの回答等をもとに7〜10点の範囲で加算
芸術論特殊講義(前期)試験問題
実施日時 二〇〇八年七月二十二日(火)
16時10分〜17時40分(90分)
(各三点、計三〇点)
一、次に示される(1)〜(10)の短文のうち、内容の正しいものに○印を、誤ったものに×印をそれぞれ解答用紙の各欄に記せ。
(1)ヴェネツィア・ビエンナーレを生んだ十九世紀ヨーロッパは万博とオリンピックを生んだ世紀でもある。一八五一年にロンドンで最初の万国博覧会が、一八九六年には第一回アテネ・オリンピックが開催された。
(2)第七回上海双年展のテーマは「都市の開発は人々を幸せにするか?(快城快客)」。今年開催される北京オリンピックの「より良い街、より良い生活(城市、譲生活更美好)」に対する問いかけとなっている。
(3)シンガポール・ビエンナーレ2006のテーマは「驚き」。旧市庁舎、教会、寺院、ショッピングセンターから元軍用施設まで市内のさまざまな施設が展示会場として使用された。
(4)現代美術の鑑賞や制作における展示環境の重要性を指してサイト・スペシフィシティ (特定の場所性)という。
(5)光州市は、市民が民主化を求めて蜂起した光州事件(一九八〇年五月)によって、韓国における民主化の聖地と見なされている。
(6)光州ビエンナーレは一九九五年の創設。第三回展を一年ずらしてミレニアム・イヤーの二〇〇〇年に開催して以来、現在まで偶数年に開催されている。
(7)横浜トリエンナーレ2008の総合ディレクターは水沢勉。彼の下にダニエル・バーンバウム、フー・ファン、三宅暁子、ハンス・ウルリッヒ・オブリスト、ベアトリクス・ルフら五人からなる国際キュレーター・チームが編成された。
(8)シドニー・ビエンナーレは、オーストラリアの首都シドニーで一九七三年から二年おきに開催されている国際美術展である。
(9)第十六回シドニー・ビエンナーレのテーマは「革命」。日常的な視点を逆転したり転倒させるような作品が集められている。
(10)第十六回シドニー・ビエンナーレに展示された田中敦子、村岡三郎は、一九五〇〜七〇年代に活躍した日本の前衛芸術運動「具体」の代表的な作家である。
(各二点、計二〇点)
二、次の文を読み、空欄となっている( A )〜( J )に、のちに記されている(1)〜(30)のうち最も適当と思われる言葉を補い、文を完成せよ。解答用紙には、( A )〜( J )の各欄に該当する言葉を(1)〜(30)の番号で記すこと。
二〇〇八年六月十八日、第十六回シドニー・ビエンナーレが開幕した。総合監督に( A )を迎え、ニューサウスウェールズ州立美術館、現代美術館(MCA)、アートスペースなどを主会場として九月七日まで開催中である。今回新たに会場に加わった( B )では、映像作品の展示が中心となっており、マイク・パー(濠)やマーク・ブーロス(米)、日本人作家では倉重迅が参加している。
昨年、二〇〇七年は、二年に一度の( C )・ビエンナーレ、五年に一度の( D )と、十年に一度のミュンスター彫刻プロジェクトが重なり、毎年開催されているアートフェア・バーゼルとともに「グランドツアー07」という名称で開幕時期を合わせる連携体制を築いていた。今年のように、最も歴史があり参加国数も多い( C )・ビエンナーレが開催されない「裏」の年は、その他の地域で国際美術展が多数開催される。日本で三年に一度開催されている横浜トリエンナーレは、今回、シドニー・ビエンナーレを始めとするアジア太平洋地域の他の四つの国際美術展とともに「( E )2008」を形成し、広報やツアーの面で連携している。九月五日に開幕する( F )、九日に開幕する( G )、そして十一日には( H )が開幕し、横浜トリエンナーレが十三日に開幕するというように各国際美術展の開幕日は連続しており、この期間、世界の美術関係者や美術記者たちが、各国際美術展の開幕前日に設定された内覧会をまわることになるだろう。
こうした国際美術展では、油絵やブロンズ彫刻、銅版画のように近代までの西洋世界で発展してきた表現技法を用いる作家は少なくなり、写真や映像、( I )、パフォーマンスなどが増えている。かつて油絵を学ぶために多くの日本人がパリを目指したが、表現技法の選択肢が多様化した現代では、「芸術の中心地」も複数化し、地球上のあらゆる地域から優れた美術が生まれてくる可能性が認められるようになってきている。そうした中、特に写真や映像作品では環境問題や民族問題など社会的な問題を主題とする作家が多く紹介される。こうした社会問題は、地域固有の問題であるとともに、世界中のあらゆる地域にも普遍的に共通する側面があるという点で( J )な性格を有しており、国際美術展を開催する社会的意義の一端を示している。
(1)チャールズ・メアウェザー (2)キャロライン・クリストフ=バカルギエフ (3)イザベル・カルロス
(4)フレーザー島 (5)クック島 (6)コッカトー島 (7)サンパウロ (8)ヴェネツィア
(9)イスタンブール (10)マニフェスタ (11)モニュメンタ (12)ドクメンタ
(13)アートキャンパス (14)アートコンパス (15)アートコーパス (16)成都双年展
(17)釜山ビエンナーレ (18)光州ビエンナーレ (19)広州三年展 (20)上海双年展
(21)台北雙年展 (22)シンガポール・ビエンナーレ (23)バングラデシュ・ビエンナーレ
(24)ジョグジャカルタ・ビエンナーレ (25)インキュベーション (26)インスタレーション
(27)インスピレーション (28)ユニバーサル (29)グローカル (30)グローバル
(二〇点)
三、横浜トリエンナーレについて、次の五つの単語を適切に用いて論述せよ(字数制限なし)。
タイムクレヴァス アートサーカス メガウェイヴ 総合監督 国際交流基金
(三〇点)
四、芸術、美術に対する現在までの関わり方と理解のあり方について、解答者自身の経験に照らして論述せよ(字数制限なし)。
評価基準は、優=一〇〇〜八〇(学年によって秀=一〇〇〜九〇)、良=七九〜七〇、可=六九〜六〇、不可=五九〜〇である。本試験の結果をもとに各自の出席数による調整点等を加算したものを評点とする。また、三、四の解答のうち優れたものは、試験問題を蓄積し、今期以後の学生の参考に供するため、ウェブ上で公開する予定である。