ジョン・エヴァレット・ミレイ展

北九州市立美術館 六月七日〜八月十七日
Bunkamura ザ・ミュージアム 八月三十日―十月二十六日


1.回顧展

・図録(論文、年譜、参考文献、作品リスト)

・日英交流150周年記念(UK-Japan 2008)、北九州市政45周年記念、朝日新聞130周年

cf. 源氏物語千年紀、日本ブラジル交流年

生誕100年記念、没後20周年記念

・後援:ブリティッシュ・カウンシル

cf. イタリア大使館、イタリア文化会館、フランス大使館、AFAA(フランス外務省フランス芸術文化活動協会)


2.ラファエル前派(Pre-Raphaelite Brotherhood)

1848年、ロンドンのロイヤル・アカデミーに在学していた若い美術家たちを中心に結成された集団。ルネサンス以来のアカデミズムの保守性に反発。ラファエロ以前の初期ルネサンス美術への回帰を目指した。

詩人・画家のダンテ・ゲイブリエル・ロセッティが中心となり、ジョン・エヴァレット・ミレイウィリアム・ホルマン・ハントが創立同人となった。さらに、ダンテの弟ウィリアム・マイケル・ロセッティのほか、トマス・ウルナー、ジェ イムズ・コリンソン、フレデリック・ジョージ・スティーヴンズが参加した。

ラファエロ以降の美術は様式化されおり、堕落しているという認識から出発したラファエル前派は、慣例化した表現を見直し、初期ルネサンスの素朴で単純な表現を目指した。

また同時に、批評家ジョン・ラスキン『近代画家論』(Modern Painters)で提唱された自然観察も重視した。同書は、ラファエル前派が結成される直前の1843年に第1巻が、1846年に第2巻が刊行されており、 ルネサンス以降の様式化の悪弊から脱して自然観察に還ることを説くものであった。ラスキンはのちに、ラファエル前派の画家たちを養護している(1851年5月13日、30日付けの『タイムズ』誌に寄稿した書簡)。

ラファエル前派は、社会の現実にも真摯な眼を向けた点が特筆される。ハントの《良心の目覚め》は、妾として金持ちの男性に囲われている女性がある音楽をきっかけに、かつての自分の純粋な心を取り戻す場面を描いたものである。またロセッティの《見つかって》は、都会へ出たが仕事がなく、橋のそばで街娼となり果てた女性が、今も村で堅実に暮らしているかつての幼なじみの男性と再会する、という劇的な場面を描いている。

ウィリアム・ホルマン・ハント《良心の目覚め》、1853-54年、76.2×55.9cm、テート・ギャラリー
        Source: Tate Online

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ《見つかって》、1854-1881年、91.4×80.0cm、デラウエア美術館
        Source: Delaware Art Museum/Collections/Found

参考:
木島俊介「ジョン・エヴァレット・ミレイ―芸術家の生涯」、『ジョン・エヴァレット・ミレイ展』図録(朝日新聞社、2008年)、12-17頁。
「ラファエル前派」、『世界美術大事典』第6巻(小学館、1990年)、136-137頁。


3.出品作品紹介

1.《両親の家のキリスト(「大工の仕事場」)》、1849-50年、油彩・カンヴァス、86.4×139.7cm、テート

2.《両親の家のキリスト》のための習作、1849年頃、鉛筆、ペン、インク、淡彩・紙、19.0×33.7cm、テート

3.《木こりの娘》、1850-51年、油彩・カンヴァス、88.9×64.8cm、シティ・オブ・ロンドン、ギルドホール・アート・ギャラリー

4.《マリアナ》、1850-51年、油彩・板、59.7×49.5cm、テート

5.《オフィーリア》のための習作、1852年、ペン、黒インク・紙、上部アーチ型、プリマス市立博物館/美術館

6.《オフィーリア》、1851-52年、油彩・カンヴァス、76.2×111.8cm、テート

7.《1746年の放免令》、1852-53年、油彩・カンヴァス、102.9×73.7cm、テート

8.《地位のための結婚》、1852年、ペン、黒インクとセピアインク・紙、24.7×17.8cm、ニコレット・ワーニック蔵

9.《信じてほしい》、1862年、油彩・カンヴァス、112×77.5cm、ニューヨーク、フォーブズ・コレクション

10.《ため息の橋》、1858年、エッチング・紙、17.7×12.5cm、ジェフロイ・リチャード・エヴァレット・ミレイ・コレクション

11.《なくなった銀貨》(『神のたとえ』のための挿絵、8枚中の1枚)、1864年、木口木版、14.0×10.8cm、テート

12.《北西航路》、1874年、油彩・カンヴァス、176.5×222.2cm、テート

13.《聖ステパノ》、1894-95年、油彩・カンヴァス、152.4×114.3cm、テート

14.《ハートは切り札―ウォルター・アームストロングの娘たち、エリザベス、ダイアナ、メアリーの肖像》、1872年、油彩・カンヴァス、165.7×219.7cm、テート

15.《ヨーロッパアカマツ》、1873年、油彩・カンヴァス、190.5×143.5cm、個人蔵