美術鑑賞と作品記述二〇一〇


授業の概要

 美術作品を見て、読み取られる情報を言葉に置き換えること、感じた印象を言葉で表現すること、そして書き出した言葉をもとに考察することを学びます。「モナ・リザ」は、イタリア・ルネサンスを代表するレオナルド・ダ・ヴィンチが生涯手元に置いていた絵です。そこには黒い服を着た髪の長い女性の半身像が描かれており、彼女は左肩を心持ち前に出して首から上を正面へ向け、左手の上に右手を重ねて、微笑んでいます。その微笑みが謎めいている、と言う人もいれば、眉毛が描かれていないことに気がついて「不気味だ」という感想を述べる人もいます。このように図像を文字に置き換えることの意義を学びます。
 登録学生は100名までとします。超過の場合、第一週目4月12日のオリエンテーションでくじ引きとします。 第一週目のオリエンテーション時に100名に満たない場合は、第二週目からの聴講希望にも応じます。


授業の一般目標

一、美術作品を細部まで時間をかけて観察できる。
二、美術作品に表現されている内容を適切な言葉で表現できる。
三、美術作品を見て自分が感じ取った内容を適切な言葉で表現できる。
四、美術作品から読み取られた内容をもとに考察し、文章にまとめることができる。


授業の到達目標

知識・理解の観点

 一、美術作品を語るための基本的な語彙を習得している。
 二、美術作品を読み解く観点に習熟している。

思考・判断の観点

 美術用語を適切に使用して自分の考えを文章にまとめることができる。

関心・意欲の観点

 できるだけ多くの鑑賞経験をつむことに努め、関連書籍を読んで語彙を豊かにすることが習慣となっている。

 

 

授業計画

期末試験は実施せず、ちょっと変わった方法で成績評価を行います。講義を通してそれぞれが獲得し、熟達したスキルに見合った点数を自己申告してもらい、基準点とします。各自から提出された自己採点の点数に対し、出席点や普段の取り組み具合に応じた調整点を加減したものを評点とします。 自己申告は、5つに分かれた各段階の最終週ごとにコメントシートの提出とともに行います。各段階での欠席は1回しか認めません。

受講登録した学生は、課題図書一覧(要認証)から一冊を読み、6月14日 (月)の24時までにレポートを提出してください。【第4段階】の「美術評論を読む」は、提出レポートをもとに行います(今期の【第4段階】は振替授業日を含むため、シラバスに記載されている「第9-11週目の「美術評論を読む」は、自宅で各週新書1冊程度の文章を読み、学習成果を発表してもらいます」から変更しました)。→提出レポート一覧

四・十二

   <零>    オリエンテーション

四・十九

<第一講> 観察力をつける(1) さかさまの絵を写し取る【第1段階】 

四・二十六

<第二講> 観察力をつける(2) グラデーションの幅を広げる【第1段階】

五・三

 (休講) 憲法記念日

五・十

 (休講) 第9回 ダカッールト―アフリカ現代美術ビエンナーレ調査

五・十七

<第三講> 観察力をつける(3) 描くこと=見ること【第1段階】

五・二十四

<第四講> 見えているものを言葉に(1) 名指す【第2段階】

五・三十一

<第五講> 見えているものを言葉に(2) 様子を表す【第2段階】

六・七

<第六講> 感じたことを言葉に(1) 外に向かう【第3段階】

六・十四

<第七講> 感じたことを言葉に(2) 内に向かう【第3段階】

六・二十一

<第八講> 美術評論を読む(1)主観的観点と客観的観点【第4段階】

六・二十八

<第九講> 美術評論を読む(2)書き手の視点で読む【第4段階】

七・二(月振)

<第十講> 美術評論を読む(3)「私」を作る本棚【第4段階】

七・五

<第十一講> 実践編(1) 作品解説を書こう【第5段階】

七・十二

<第十二講> 実践編(2) 展覧会紹介を書こう【第5段階】

七・十九

 (休講) 海の日

七・二十六

<第十三講> 実践編(3) 美術紀行文を書こう【第5段階】

 

 

リンクシラバス


参考図書

 高橋源一郎『13日間で「名文」を書けるようになる方法』(朝日新聞出版、2009年)

 杉原賢彦ほか編『アートを書く! クリティカル文章術』(フィルムアート社、2006年)

 齋藤孝『三色ボールペン情報活用術』(角川書店、2003年)

 齋藤孝『三色ボールペンで読む日本語』(角川書店、2002年)

 橋本治『人はなぜ「美しい」がわかるのか』(筑摩書房、2002年)

 フィルムアート社編『アート・リテラシー入門―自分の言葉でアートを語る』(フィルムアート社、2004年)

 ジョセフ・ダラコット『美術批評入門』、篠田達美訳(スカイドア、1995年)

 ベティ・エドワーズ『脳の右側で描け』、北村孝一訳(エルテ出版、初版1981年、第3版2002年)

 ベティ・エドワーズ『内なる画家の眼―創造性の活性化は可能か』、北村孝一訳(エルテ出版、1988年)

◆評論・作品研究

 中村敬治『現代美術巷談』(水声社、2004年)

 ジャン=クレ・マルタン『物のまなざし―ファン・ゴッホ論』、杉村昌昭、村沢真保呂訳(大村書店、2000年)

 ダニエル・アラス『なにも見ていない』、宮下志朗訳(白水社、2002年)

 クレメント・グリーンバーグ『グリーンバーグ批評選集』、藤枝晃雄編訳(勁草書房、2005年)

◆紀行文・評論

 和辻哲郎『イタリア古寺巡礼』(岩波文庫)(1991年、岩波書店) ※和辻哲郎『イタリア古寺巡禮』(要書房、1950年)

 中山公男『西洋の誘惑』(1968年、新潮社、新版:2004年、印象社)

 伊藤誠『気になる世界の美術館』(神戸新聞総合出版センター、2006年)

 朽木ゆり子『フェルメール全点踏破の旅』(集英社新書ヴィジュアル版) (集英社、2006年)

◆洋書

 Henry M. Sayre, Writing about Art (Upper Saddle River, NJ: Prentice Hall, 2002)