美学・美術史概論W 二〇一〇


期末試験問題概略告知

一、講義で紹介した十五名の画家について基礎的な知識を問う 。/○×問題/一五問/各二点(三〇点)

二、美術用語とその説明について正しい組み合わせを問 う。/選択肢あり/一〇問/各 二点(二〇点)

三、ジョルジョ・ヴァザーリについて解説した文の空欄に、適切な用語を選んで文章を完成させよ。/穴埋め問題・選択肢あり/五問/各二点(一〇点)

四、美術史学とはどのような学問か。先ず、この講義を通して各自が得た1)美術史に関する知見をまとめ、その後、2)それらの知見を批評してまとめよ。/論述問題・課題あり/字数制限なし/四〇点

  ※連絡事項=試験は共通教育棟26番教室で行われます


成績評価方法

試験:一〇〇点満点×〇.八(計八〇点)

出席:一二回=一二点(欠席毎マイナス一点 例:欠席三回=出席点九点)

※最初の二回をカウントしない

授業態度等の調整点:全回出席者にプラス二点

そのほか授業への参加度をオピニオンシートの回答等をもとに六〜一〇点の範囲で加算


美学・美術史概論W試験問題

実施日時 二〇一〇年一月三十一日(月)
1020分〜1150分(90分)

 (各二点、計三〇点)

一、次に示される(1)〜(15)の短文のうち、ヴァザーリの『画人伝』に書かれた内容に照らして、または史実に即して正しいものに○印を、誤ったものに×印をそれぞれ解答用紙の各欄に記せ。
 

(1)チマブーエはギリシア人画工を手本にしたが、彼らの様式の稚拙さを除去し、より高い完成度を与えた。

(2)ジョットは、自然観察に基づく描写を取り入れることによって、チマブーエの様式を凌駕した。

(3)ウッチェルロは遠近法の研究で高い成果を挙げ、晩年は裕福に暮らした。

(4)マザッチョは一四〇一年に生まれたクアトロチェントの画家である。

(5)ピエーロ・デルラ・ フランチェスカの出身地ボルゴ・サンセポルクロの市立美術館には《慈悲の聖母》が展示されている。

(6)フラ・アンジェリコは「天使のような画家」という意味である。

(7)フィリッポ・リッピは、マザッチョの手法を体得し作品も似てきたことから、マザッチョの霊が体内にのりうつったと噂された。

(8)ベルリーニ一族とは、父ヤーコポとその二人の息子ジョヴァンニとジェンティーレを指し、いずれも優れた画家であった。

(9)ボッティチェルリはフィリッポ・リッピに絵を習った。

10)マンテーニャは、人体を描写する際に古代の彫刻よりも生きているモデルを重視した。

11)レオナルド・ダ・ヴィンチは、モナ・リーザの肖像を描いている間、道化をそばにおいて、楽しい雰囲気をつくった。

12)ジョルジョーネとは「大きなジョルジョ」の意味で、彼が寛大な心と大きな体をもっていたためにそのように呼ばれるようになった。

13)ラファエルロは法王ユリウス二世とレオ十世の双方に仕え、彼らの肖像画を描いた。

14)ミケランジェロは、ソデリーニに《ダヴィデ》像の鼻が大き過ぎると指摘され、すぐ言われた通りに修正して彼を満足させた。

15)ティツィアーノはジョヴァンニ・ベルリーニの下で修業したのち、ジョルジョーネの作風を取り入れた。

  

(各二点、計二〇点)

二、次に示される(ア)〜(コ)の説明に適合する美術用語を、のちに記されている(a)〜(z)から選んで解答用紙の各欄に記せ。

 

(ア)ある作品が誰の手になるかという意味。あるいは、人物(多くの場合聖人)を同定する標識となる小道具的なモティーフのこと。

 (イ)「像」と「説明、解釈する」という意味のギリシア語に由来する。二十世紀初頭にアビ・ヴァールブルクによって提唱され、エルヴィン・パノフスキーによって体系化された美術史上の方法論。

 (ウ)絵画の支持体として使われる布。素材としては麻や木綿が多く、ストレッチャーに張って用いられる。

 (エ)古代ギリシアの女神。ゼウスの娘たちで、カリスまたはカリテス(複数形)と呼ばれ、一般にアグライア、エウフロシュネ、タレイアとされる。

 (オ)エッサイの息子でサウルを継ぐイスラエル第二代の王、ソロモンの父。

 (カ)聖なる人物の頭の周囲に円を描き、絵画であれば金に塗ることによって、その人物の聖性を記号的に表現するもの。

 (キ)美術・工芸作品、建築などの注文をし、それにかかる費用を支払う者。または一般的に芸術の庇護者、支援者。

 (ク)ルネサンス期に盛んに行われた諸芸術の優劣比較論。

 (ケ)占星術にたけた三人の賢者が、星の導きによって、降誕したイエスの馬小屋に達する場面。聖母子の前に三人はひれ伏し、黄金、乳香、没薬を贈った。

 (コ)知略をもって敵将ホロフェルネスを誘惑し、その首をはねてユダヤを救った寡婦。

 

(a)アカデミー  (b)アトリビュート  (c)イコノグラフィー  (d)イコノロジー  

(e)イサクの犠牲  (f)ウァニタス  (g)遠近法  (h)オリーブ山の祈り  (i)カンヴァス  

(j)カリグラフィー  (k)擬人像  (l)グロテスク  (m)サロメ  (n)三美神  

(o)十二使徒  (p)聖霊  (q)ダビデ  (r)トンド  (s)ニンブス  (t)ノア  

(u)パトロン  (v)パラゴーネ  (w)マギの礼拝  (x)ムーサ  (y)ユディト  

(z)レビヤタン 

 

(各二点、計一〇点)

三、次の文を読み、空欄となっている( A )〜( E )に、のちに記されている(1)〜(15)のうち最も適当と思われる言葉を補い、文を完成せよ。解答用紙には、( A )〜( E )の各欄に該当する言葉を(1)〜(15)の番号で記すこと。

 

ジョルジョ・ヴァザーリは、十六世紀の( A )で活躍した画家、建築家、著述家である。西洋史上最初の美術史家としても知られる。彼は若い頃、ミケランジェロに弟子入りし、次いで( B )の下で修業を積んだ。

画家としてのヴァザーリは、( A )のサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂の円蓋に( C )の図を制作している。また、建築家としては( D )の設計者として知られる。彼が上梓した『画人伝』は、当初一三三人の芸術家の評伝として( E )年に出版された。このとき、ヴァザーリは一部、ミケランジェロに献呈している。ミケランジェロの死後、新たに三〇人の芸術家を追加し、またミケランジェロ伝にも加筆して第二版を出版した。同書は、ルネサンス期の芸術家に関する基礎史料として、各国語に翻訳されて読み継がれている。

 

(1)ローマ  (2)フィレンツェ  (3)ヴェネツィア  (4)フィリッポ・ブルネルレスキ  

(5)アンドレーア・デル・サルト  (6)コージモ・デ・メディチ  (7)天地創造  (8)楽園追放  

(9)最後の審判  (10)ウフィツィ美術館  (11)パラッツォ・ヴェッキオ  (12)ピッティ美術館  

13)一五五〇  (14)一五六〇  (15)一五七〇

 

(四〇点)

四、美術史学とはどのような学問か。この講義を通して各自が得た美術史に関する知見をまとめた上で、批評的に論ぜよ。

 

 

評価基準は、秀=一〇〇〜九〇、優=八九〜八〇、良=七九〜七〇、可=六九〜六〇、不可=五九〜〇である。本試験の結果をもとに各自の出席数による調整点等を加算したものを評点とする。また、四の解答のうち優れたものは、試験問題を蓄積し、今期以後の学生の参考に供するため、ウェブ上で公開する予定である。

 


一〜三の解答