中間まとめ
近年の国際美術展動向とベルゲン・ビエンナーレ会議


授業の目標

講義内容を整理し体系的に理解する。

国際美術展を横断的に捉える視点を持つ。


1.中間まとめ

 ・第1講〜第4講の共通テーマ=多文化主義と国際美術展

第1講 チリ・トリエナル2009――サンティアゴ、バルパライソ(チリ)

第2講 第11回国際イスタンブール・ビエナリ――イスタンブール(トルコ)

第3講 第6回アジア太平洋現代美術トライエニアル――ブリスベン(オーストラリア)

第4講 第16回シドニー・ビエンナーレ――シドニー(オーストラリア)

欧州、米国、日本以外の事例紹介


 ・第1講〜第4講の授業目標

第1講 国際美術展の概要を理解する/現代美術の表現方法の多様性に接する

第2講 開催都市の歴史的・文化的背景に着目する/現代美術と現代社会の関係について理解する

第3講 多文化主義の歴史的背景を理解する/展覧会の政治性について問題意識を持つ

第4講 多文化主義における今後の課題を理解する/国際美術展を歴史的に捉える視点を持つ


1−1.現代美術について

 ・第1講 現代美術の表現方法の多様性に接する

 インスタレーション、映像、写真、彫刻、絵画、資料展示、「映像、写真、資料」などからなるインスタレーション

 ・第2講 現代美術と現代社会の関係について理解する

 社会問題をテーマとする現代美術、現代作家は多い。現代美術の複雑さは現代社会の複雑さに由来する。マス・メディアで報じられない社会の暗部や実態を取材して、―視覚表現を通して鑑賞者の知性と感情の両方に訴える。


作品紹介

1. アリシア・ビラリール《領土の記録》 2009年

2. アレハンドロ・サルミエント+ルハン・カンバリエレ《液体の愛》 2009年

3. マリオ・ナバッロ《磁力の木のパビリオン》 2009年

4. サラDUCの展示風景

5. トレヴォル・パグレン《天体(イスタンブール)》 2009年

6. アヴィ・モグラビ《Z32》 2008年


1−2.国際美術展について

 ・第1講 国際美術展の概要を理解する

 複数の会場で開催される。会期が比較的長い。現代美術が中心。

 ・第2講 開催都市の歴史的・文化的背景に着目する

 (ヨーロッパとアジアが出会う場所)。(現代の国際紛争との歴史的なつながり)。世界遺産を擁する国際観光都市。国際文化は国際都市の必要条件。

 ・第3講 展覧会の政治性について問題意識を持つ

 (アジア太平洋地域の文化的リーダーを目指すオーストラリア)。情報の編集作業は権力性をおびている。何に注目し、それをどこに配置し、どのように語るか。展示室には「いい場所」と「そうでもない場所」がある。

 ・第4講 国際美術展を歴史的に捉える視点を持つ

 開始の背景を理解する。各回ごとの企画趣旨を理解し、その推移を考察する。


作品紹介

1. 複数の会場で開催

2. アヤソフィア博物館(ハギア・ソフィア)

3. スボード・グプタ(インド)《停戦ライン(1)》 2008年

4. 第16回展のテーマ:革命―倒立するかたち


1−3.多文化主義について

 ・第3講 多文化主義の歴史的背景を理解する

 1970年代にカナダとオーストラリアで政策化された。思想、運動、政策の3つのレベルを相関させて理解しなければならない。その内実は各国ごとに多様である。「人種のるつぼ」から「サラダボウル」へ。

 ・第4講 多文化主義における今後の課題を理解する

 文化の一体性(通じ合うこと)を共同体の前提にしない。すなわち、文化的雑種性・混交性を純粋性に対置して「欠落」と指弾しないこと。多文化主義を、「純粋な文化同士が複数共存する状態」と誤解しない。文化はもともと異種混交的(=相互浸透的)であるという前提に立って、多文化主義の可能性を拡張していくこと。
 


作品紹介

ミシェル・ランジー《マグ・ヌ・イウィル》 2005年頃

パシフィック・レゲェ展示風景

アルフレド&イザベル・アキリザン(オーストラリア) アーティスト・トーク

ネドコ・ソラコフ(ブルガリア)《生活(黒と白)》 1998年

マイケル・ラコウィッツ(USA)《白人は夢想しない》 2008年

レオン・フェラーリ(アルゼンチン)《西洋キリスト文明》 1965年

ナターシャ・サドル・ハギーギーアン(イラン)《塔》 2008年

ヴェルノン・アー・キー(オーストラリア) 題不詳(部分)


〜まとめのまとめ〜

現代美術について

 ・第1講&第2講

現代美術の主題や表現を現代社会と関連させて考える

国際美術展について

 ・第1講〜第4講

国際的な文化発信とその政治性、課題、歴史的経緯

多文化主義について

 ・第3講&第4講

文化的な純粋主義に後退する危険性を意識しつつ多文化主義の可能性を開拓していく必要性


2.近年の国際美術展動向

 ・今年開催の国際美術展(主なもの)

第9回ダッカールト―現代アフリカ美術ビエンナーレ  (2010年5月7日〜6月7日)

第17回シドニー・ビエンナーレ  (2010年5月12日〜8月1日)

第6回ベルリン・ビエンナーレ  (2010年6月11日〜8月8日)

あいちトリエンナーレ2010  (2010年8月21日〜10月31日)

光州ビエンナーレ2010  (2010年9月3日〜11月7日)

第7回台北雙年展  (2010年9月4日〜11月14日)

第29回サンパウロ・ビエンナウ  (2010年9月21日〜12月12日)

 ・近年の動向まとめ


3.ベルゲン・バイエニアル会議

 ・ベルゲン

 ・ベルゲン・バイエニアル会議

公式サイト: http://www.bbc2009.no/

日程

 ・9月17日(木)―公式開幕


 ・9月18日(金)―歴史

Historical Origins by Caroline A. Jones

The Global Art World by Charlotte Bydler

Discussion

 ・9月19日(土)―実践

Biennial Species by John Clark

Biennial / Institution by Maria Hlavajova

The impact of Biennials on curating by Paul O’Neill

Discussion

 ・9月20日(日)―未来

Discursive models by Bruce W. Ferguson

Curatorial responsibility by Shuddhabrata Sengupta

Biennial format by Ranjit Hoskote

To Biennial or Not... and Bergen? by Rafal Niemojewski

Panel discussion


4.まとめ

 ・講義内容を整理し体系的に理解

―項目ごとに整理(現代美術、国際美術展、多文化主義)

―時系列で整理し、歴史的に理解する

―どのような点で前進し、今後なおどのような課題が残されているかを考える

 ・国際美術展を横断的に捉える

―ひとつひとつの国際美術展を歴史的に理解した上で、さらに複数の国際美術展を横断的に把握する

―縦糸(国際美術展の歴史)と横糸(各時代性―70年代、80年代、90年代、2000年代)

―「ビエンナーレ化現象」「バイエニアル文化」


現代社会を「本」に喩えると……

―ひとつひとつの美術作品=一文字一文字

―展覧会=文章(センテンス)

―時代=節や章など文章のまとまり

ひとつの作品に反映されている現代社会

―たったひとつの文字でその本全体を予感させるようなもの