<第四講> 彫刻家エル・アナツイのアフリカ
◆授業の目標
巡回展開催の背景を理解する。
アフリカ現代美術に親しむ。
1. 「彫刻家エル・アナツイのアフリカ」展
◆概要
・企画展/個展/回顧展/巡回展
・会期:9月16日〜12月7日
・会場:国立民族学博物館
・図録編集:川口幸也、竹沢尚一郎、松本尚之、水沢勉、朝木由香、中村誠、渋谷拓
・会場写真
◆巡回先
・国立民族学博物館 2010年9月16日-12月7日
・神奈川県立近代美術館 葉山 2011年2月5日-3月27日
・鶴岡アートフォーラム 2011年4月23日-5月22日
・埼玉県立近代美術館 2011年7月2日-8月28日
2.作品紹介
第1章 記憶を彫る
1. 《ミスター&ミセス》、1980年代末〜1990年代初、木、ミスター:177×53×32cm ミセス:164×45×32cm 作家蔵
2. 《1 コボ》、1988年、木 150×30×39cm、作家蔵
3. 《父と子》、1991年、木、金属、彩色、201×35×38cm、作家蔵
4. 《イイダ(櫛)》、1994年、木、62.4×197×2.2cm、作家蔵
5. 《川》、1997年、木、彩色、62.3×316.9×2.2cm、作家蔵
◆アナツイ略年譜
1944 イギリス領ゴールドコースト南東部の港町アニャコで生まれる。父は漁師として働く傍ら、ケンテクロスの高名な職人でもあった。
1948 母が逝去。ケタ州のアンロガに暮らす長老派教会の牧師のおじに引き取られ、従兄たちと一緒に少年時代を過ごす。
1957 ゴールドコーストがイギリスから独立。国名をガーナと改める。
1959 ケタの高校へ通う。主に、ペインティングを制作。
1964 クマシのンクルマ科学技術大学、美術学部に入学。彫刻を専攻。
1965 O.A.U. アクラ・コンフェランスにより6人の彫刻家に選ばれる。ガーナ・ナショナル・カルチャーセンター(クマシ)に通い、ガーナの伝統文化に触れる。アジンクラの技法を学ぶ。
1969 彫刻科、および美術教育学科で学び、最優秀の成績により卒業。本格的に作家活動を始める一方で、ウィネバ大学の美術教育学部の教職につく(〜75年)。
1975 ナイジェリアのンスカに移り、ナイジェリア大学で彫刻を教え始める。
1978 第10回国際彫刻カンファレンス(トロント、カナダ)で自作のスライドが上映される。
第2章 歴史を紡ぐ
6. 《大地の皮膚》、(部分)、2008年、アルミニウム、銅線、作家蔵
7. 《移動する大陸》、(部分)、2009年、アルミニウム、銅線、幅209cm、作家蔵
8. 《グリ(壁)》、2009年、アルミニウム、銅線、作家蔵
9. 《排水管》、2010年、錫、銅線、作家蔵
10. 《ピーク》、2010年、錫、銅線、作家蔵
11. 《レッド・ブロック》、(部分)、2010年、アルミニウム、銅線、(510×334)×2p.、作家蔵
12. 《重力と恩寵》、2010年、ボトルキャップ(アルミニウム)、銅線、500×1120、作家蔵
第3章 創造のプロセス
・《習作》 インク・紙、左上25.5×36.2 cm、右上21.6×39.6 cm、左下9.2×16 cm、右下10.1×14.3 cm
・映像資料(部分) 左上:酒工場で入手した瓶のふたやシール、右上: ンスカの工房で働く助手たち、左下: ンスカにあるアナツイの工房、右下: 工房で働く助手
第4章 作品の背景―社会、歴史、文化
・ケンテクロス、綿、国立民族学博物館蔵
・玩具(鞄、トラック、乗り合いバス、もの売りの自転車) 空き缶、国立民族博物館蔵
・Tシャツ、綿 ※アジンクラ文様によるデザイン
3.まとめ
・巡回展開催の背景
―読売新聞社と美術館連絡協議会
―単館では開催困難な予算規模の展覧会が「分担金」によって開催可能に
―長期間の展示が可能な作品に向いている=全国巡回
―貸出期間の長短、展示空間の大小によって展示作品が変化
・アフリカ現代美術
―伝統と現代の融合:ケンテクロス、アジンクラ
―植民地としての歴史=独立後、国家文化の独自性を求める動き
―「民族学博物館」での展示/「現代美術館」での展示