第十講 ルノワール―伝統と革新


 ◆授業の目標

ルノワールの画業変遷を追う。

作品の所蔵先情報から展覧会を読み解く。


1. 「ルノワール―伝統と革新」展

 ◆概要

・企画展/個展/回顧展/巡回展 ※ブロックバスター

・会期:2010年4月17日〜6月27日

・会場:国立国際美術館

・主催:国立国際美術館、読売新聞社、読売テレビ

会場写真1

 ◆巡回先

・国立新美術館 2010年1月20日-4月5日

・国立国際美術館  2010年4月17日-6月27日

会場写真2


2. ルノワールの画業

 時代区分

・第1期 1860年-1878年 修業時代と印象主義の時代

・第2期 1879年-1891年 模索と試作の時代 (サロンでの成功、アルジェ旅行、イタリア旅行)

・第3期 1892年-1919年 豊饒の時代 (作品の国家購入、様式を集大成した晩年)

参照: 荒屋鋪透「画家ルノワールの芸術的資質」、 『ルノワール―伝統と革新』展図録(読売新聞大阪本社、2010年)、23頁。

 ◆略年譜

1841年 2月25日、フランス中西部の町リモージュに生まれる
1861年 スイス人画家シャルル・グレールのアトリエに入り、そこでモネ、シスレーらと出合う
1874年 第1回印象派展に出品
1876年 第2回印象派展に出品
1877年 第3回印象派展に出品
1879年 《シャルパンティエ夫人と子どもたち》がサロンで高い評価を得、上流社会とのつながりができる
1881年 アルジェリア、イタリアへ旅行。印象派から離れる
1892年 《ピアノの前の少女たち》が国費で購入される
1912年 この頃よりリューマチが悪化し、不自由な手で制作
1919年 12月3日、コレット荘で78年の人生を閉じる

参照: 「ルノワールの生涯とその時代」、 『週刊西洋絵画の巨匠3 ルノワール』(小学館、2009年)、11頁。


3.作品紹介

 第I章 ルノワールへの旅

1. 《パリ郊外、セーヌ河の洗濯船》、1871年、油彩・カンヴァス、46.4×55.9cm、諸橋近代美術館

2. 《新聞を読む、クロード・モネ》、1872年、油彩・カンヴァス、61.0×51.0cm、マルモッタン美術館

3. 《アンリオ夫人》、1876年、油彩・カンヴァス、65.9×49.8cm、ワシントン・ナショナル・ギャラリー

4. 《読書するふたり》、1877年、油彩・カンヴァス、32.8×24.8cm、群馬県立近代美術館

5. 《麦わら帽子を被った女》、1880年、油彩・カンヴァス、50.0×61.0cm、北九州市立美術館

6. 《団扇を持つ若い女》、1879-80年頃、油彩・カンヴァス、65.0×54.0cm、クラーク美術館

7. 《アルジェリアの娘》、1881年、油彩・カンヴァス、50.8×40.6cm、ボストン美術館

8. 《ブージヴァルのダンス》、1883年、油彩・カンヴァス、181.9×98.1cm、ボストン美術館

9. 《ジュリー・マネの肖像》、1894年、油彩・カンヴァス、55.5×46.5cm、マルモッタン美術館

10. 《胸に花を飾る少女》、1900年頃 油彩・カンヴァス 55.0×46.7cm 熊本県立美術館

11. 《エッソワの風景、早朝》、1901年、油彩・カンヴァス、46.8×56.3cm、ポーラ美術館

12. 《モーリス・ドニ夫人》、1904年、油彩・カンヴァス、54.0×45.0cm、諸橋近代美術館

13. 《カーニュのメゾン・ド・ラ・ポスト》、1906年頃、油彩・カンヴァス、46.2×55.2cm、和泉市久保惣記念美術館

14. 《闘牛士姿のアンブロワーズ・ヴォラール》、1917年、油彩・カンヴァス、103.0×83.0cm、日本テレビ放送網株式会社

作品比較《新聞を読む、クロード・モネ》 1872年/《ブージヴァルのダンス》1883年/《闘牛士姿のアンブロワーズ・ヴォラール》 1917年


 第II章 身体表現

15. 《岩の上に座る浴女》、1882年、油彩・カンヴァス、54.0×39.0cm、マルモッタン美術館

16. 《麦わら帽子の少女》、1885年、油彩・カンヴァス、48.0×37.0cm、呉市立美術館

17. 《水のなかの裸婦》、1888年、油彩・カンヴァス、81.3×65.4cm、ポーラ美術館

18. 《水浴する女》、1891年、油彩・カンヴァス、80.9×65.6cm、川村記念美術館

19. 《読書する女》、1900年頃、油彩・カンヴァス、56.0×46.0cm、東京富士美術館

20. 《花飾りの女》、1906-19年、油彩・カンヴァス、53.0×45.5cm、和泉市久保惣記念美術館

21. 《帽子の娘》、1910年、油彩・カンヴァス、52.0×39.5cm、損保ジャパン東郷青児美術館

22. 《泉》、1910年頃、油彩・カンヴァス、91.5×73.8cm、岐阜県美術館

23. 《泉による女》、1914年、油彩・カンヴァス、92.0×73.5cm、大原美術館

作品比較《泉》 1910年頃 岐阜県美術館/《泉による女》1914年大原美術館

24. 《すわる水浴の女》、1914年、油彩・カンヴァス、55.0×44.2cm、石橋財団ブリヂストン美術館

25. リシャール・ギノとの共作《勝利のヴィーナスのトルソ》、1916年、ブロンズ、57.0×41.0×50.0cm、呉市立美術館

26. 《三人の浴女》、1917-19年、油彩・カンヴァス、50.3×61.3cm、埼玉県立近代美術館

27. 《ヴェールをまとう踊り子》、1918年、ブロンズ、63.6×44.5×25.2cm、ポーラ美術館

28. 《裸婦》、制作年不詳、油彩・カンヴァス、113.2×85.3cm、ポーラ美術館

作品比較《アンリオ夫人》 1876年/《水浴する女》 1891年/《泉による女》 1914年頃


 第III章 花と装飾画

29. ルーベンス作「神々の会議」の模写、1861年、油彩・カンヴァス、45.8×83.5cm、国立西洋美術館(梅原龍三郎氏より寄贈)

30. 《花瓶の花》、1866年頃、油彩・カンヴァス、81.3×65.1cm、ワシントン・ナショナル・ギャラリー

31. 《テレーズ・ベラール》、1879年、油彩・カンヴァス、55.9×46.8cm、クラーク美術館

32. 《縫い物をする若い女》、1879年、油彩・カンヴァス、61.5×50.3cm、シカゴ美術館

33. 《アネモネ》、1883-90年、油彩・カンヴァス、46.2×38.1cm、ポーラ美術館

34. 《葉と果実の飾りのある若い裸婦》、1905年頃、油彩・カンヴァス、131.0×41.3cm、アサヒビール株式会社

35. 《薔薇》、1910年、油彩・カンヴァス、46.5×55.5cm、MOA美術館

36. 《ローヌの腕に飛び込むソーヌ》、1915年、油彩・カンヴァス、102.3×84.8cm、松岡美術館

作品比較《花瓶の花》1866年頃/《縫い物をする若い女》1879年/《薔薇》 1910年


 第IV章 ファッションとロココの伝統

37. 《横たわる半裸の女(ラ・ローズ)》、1872年頃、油彩・カンヴァス、29.5×25.0cm、オルセー美術館

38. 《青い服を着た若い女》、1876年頃、油彩・カンヴァス、42.9×31.0cm、三重県立美術館

39. 《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)》、1880年、油彩・カンヴァス、65.0×54.0cm、E. G. ビューレー・コレクション

40. 《水浴の女》、1887年、油彩・カンヴァス、81.9×53.0cm、ポーラ美術館

41. 《髪かざり》、1888年、油彩・カンヴァス、81.4×57.3cm、ポーラ美術館(ポーラ・コレクション)

42. 《ムール貝採り》、1888-89年頃、油彩・カンヴァス、56.0×46.4cm、ポーラ美術館

43. 《レースの帽子の少女》、1891年、油彩・カンヴァス、55.1×46.0cm、ポーラ美術館(ポーラ・コレクション)

44. 《赤い服の女》、1892年頃、油彩・カンヴァス、65.4×54.5cm、東京富士美術館

45. 《バラ色の服を着たコロナ・ロマノの肖像》、1912年頃、油彩・カンヴァス、41.0×33.5cm、鹿児島市立美術館

46. 《水浴の後》、1915年、油彩・カンヴァス、38.8×50.5cm、ポーラ美術館

作品比較《ラ・ローズ》1872年頃/《髪かざり》1888年/《水浴の後》1915年


4. 画業の変遷

 ◆第1期(1860-1878)

《花瓶の花》 1866年頃/《パリ郊外、セーヌ河の洗濯船》 1871年/《青い服を着た若い女》 1876年頃

 ◆第2期(1879-1891)

《団扇を持つ若い女》 1879-80年頃/《可愛いイレーヌ》 1880年/《水のなかの裸婦》 1888年

 ◆第3期(1892-1919)

《花飾りの女》 1906-19年/《薔薇》 1910年/《ローヌの腕に飛び込むソーヌ》 1915年


5. まとめ

 ・ルノワールの画業変遷

―第1期 同世代の画家たち、光の探究

―第2期 富裕層のパトロン、古典絵画に倣った構図の探究

―第3期 有力画商、バラ色の色彩の探究

 ・所蔵先情報から見えてくるもの

―公立、私立の美術館と企業コレクション

―国内におけるルノワール作品購入の蓄積

―海外のどの美術館から借用しているか