第十一講 没後120年 ゴッホ展


 ◆授業の目標

ゴッホの画業変遷を追う。

展覧会を長い目で見る。


1.「没後120年 ゴッホ展」の概要

 ◆概要

・企画展/回顧展/巡回展 ※ブロックバスター

・会期:2011年1月1日〜2月13日

・会場:九州国立博物館

・主催:九州国立博物館・福岡県、西日本新聞社、TNCテレビ西日本、TVQ九州放送

会場写真1

 ◆巡回先

・国立新美術館 2010年10月1日-12月20日

・九州国立博物館  2011年1月1日- 2月13日

・名古屋市美術館  2011年2月22日- 4月10日

会場写真2


2. ゴッホの画業

 時代区分

・第1期 1881年4月-1885年11月 オランダ時代

・第2期 1886年3月-1888年2月 パリ時代

・第3期 1888年2月-1889年5月 アルル時代

・第4期 1889年5月-1890年5月 サン・レミ時代

・第5期 1890年5月-1890年7月 オーヴェール=シュル=オワーズ時代

参照: 「ゴッホ伝 『勝利者』が歩んだ茨の道」、 『週刊西洋絵画の巨匠1 ゴッホ』(小学館、2009年)、8-11頁。

 ◆略年譜

1853年 3月30日、オランダ南部フロート・ズンデルトの牧師の家に生まれる
1877年 アムステルダムで聖職者になるため受験勉強を始めるが、長続きせず
1880年 画家になる決意
1882年 周囲からの孤立と貧困を深める
1886年 パリに出て、テオと同居。ロートレック、スーラらと交流をもつ
1888年 2月、南仏アルルに移住。10月、ゴーギャンと共同生活を始める。12月、耳切り事件。ゴーギャンはアルルを去る
1889年 5月、サン・レミの療養院に入る
1890年 5月サン・レミを去り、北仏オーヴェール=シュル=オワーズに到着。7月27日、拳銃自殺を図り、2日後に死亡

参照: 「ゴッホの生涯とその時代」、 『週刊西洋絵画の巨匠1 ゴッホ』(小学館、2009年)、11頁。


3.作品紹介

1. 《自画像》、1887年3-6月、パリ、油彩・厚紙、41×33cm、ファン・ゴッホ美術館


 I. 伝統―ファン・ゴッホに対する最初期の影響

2. 《秋のポプラ並木》、1884年10月末、ニューネン、油彩・パネルに貼ったカンヴァス、99×66cm、ファン・ゴッホ美術館

3. 《曇り空の下の積み藁》、1890年7月、オーヴェール=シュル=オワーズ、油彩・カンヴァス、63.3×53cm、クレラー=ミュラー美術館

《秋のポプラ並木》と《曇り空の下の積み藁》

4. テオフィール・デ・ボック《河の景観》、1900年頃、油彩・カンヴァス、109×127.3cm、ファン・ゴッホ美術館


 II. 若き芸術家の誕生

5. 《ヤーコプ・マイヤーの娘(バルグの教則本中のホルバインの素描による)》、1880年10月-1881年4月、エッテン 鉛筆・網目紙、42.6×30.5cm、クレラー=ミュラー美術館

6. 《ヤーコプ・マイヤーの娘(ホルバインによる)》との比較、シャルル・バルグ『素描の練習』(1867-70年、パリ)の挿絵(no.10)、ファン・ゴッホ美術館図書室

7. 《掘る人(ミレーによる)》、1880年10月、クエム、鉛筆、チョーク・網目紙、37.5×61.5cm、クレラー=ミュラー美術館

8. ジャン=フランソワ・ミレー 《掘る人》との比較、1855-56年、エッチング、23.5×39.5cm、ファン・ゴッホ美術館

9. アントン・モーヴ《オランダ風納屋と差し掛け小屋》、1875年頃、油彩・カンヴァス、32×44cm、クレラー=ミュラー美術館

10. アントン・モーヴ《フリース近郊》、1880年頃、油彩・板に貼ったカンヴァス、32.2×44.9cm、ハーグ、メスダッハ美術館

11. 《鶏に餌をやる女》、1883年4-5月、ニューネン、鉛筆、灰色の淡彩、筆と薄めた黒の版画用インク、インクと混ぜた白の油絵具、白の不透明水彩・網目紙、61×33.6cm、クレラー=ミュラー美術館

12. 《パースペクティヴ・フレーム(レプリカ)》、48×68.4cm、高さ250cm、ファン・ゴッホ美術館


 III. 色彩理論と人体の研究―ニューネン

13. 《白い帽子を被った女の頭部(ホルディーナ・デ・フロート)》、1884年11月-1885年5月、ニューネン、油彩・カンヴァス、44×35.9cm、クレラー=ミュラー美術館

14. 《籠いっぱいのじゃがいも》、1885年9月、ニューネン 油彩・カンヴァス、44.5×60.5cm、ファン・ゴッホ美術館

15. アントン・ファン・ラッパルト《織工》、1884年、油彩・板に貼ったカンヴァス、26.3×35.3cm、ファン・ゴッホ美術館

参考作品との比較:《はたを織る人》(右向き、3つの窓のある室内)、1884年、ヌエネン、水彩、ペン・オランダの手漉き紙、33.5×45cm、ファン・ゴッホ美術館


 IV. パリのモダニズム

16. 《ひざまずく人体模型》、1886年春、パリ、油彩・カンヴァス、35.5×26.5cm、ファン・ゴッホ美術館

17. 「ひざまずく人体模型」との比較、20世紀前半、石膏、13×22×15cm、ファン・ゴッホ美術館

18. 《花瓶のヤグルマギクとケシ》、1887年夏、パリ、油彩・カンヴァス、80×67cm、トリトン財団

19. アンリ・ファンタン=ラトゥール《静物(プリムラ、梨、ザクロ)》、1866年頃、油彩・カンヴァス、73×59.5cm、クレラー=ミュラー美術館

20. 《ヒバリの飛び立つ麦畑》、1887年6月中旬-7月中旬、パリ 油彩・カンヴァス、53.7×65.2cm、ファン・ゴッホ美術館

21. 《マルメロ、レモン、梨、葡萄》、1887年9-10月、パリ、油彩・カンヴァス、48.9×65.5cm、ファン・ゴッホ美術館

22. クロード・モネ《ヴェトゥイユ》、1879年、油彩・カンヴァス、65×92.5cm、トリトン財団

23. アルフレッド・シスレー《モレ近くのロワン川の土手》、1892年 油彩・カンヴァス、73×92cm、トリトン財団

23. アドルフ=ジョセフ・モンティセリ《女の肖像》、1871年頃 油彩・カンヴァス 46.5×38cm クレラー=ミュラー美術館

24. ギュスターヴ・カイユボット《バルコニー越しの眺め》、1880年、油彩・カンヴァス、65.6×54.9cm、ファン・ゴッホ美術館

26. 《灰色のフェルト帽の自画像》、1887年9-10月、パリ、油彩・綿布、44.5×37.2cm、ファン・ゴッホ美術館

27. 《カフェにて(「ル・タンブラン」のアゴスティーナ・セガトーリ)》、1887年1-3月、パリ、油彩・カンヴァス、55.5×47cm、ファン・ゴッホ美術館

28. ジョルジュ・スーラ《オンフルールの港の入口》、1886年、油彩・カンヴァス、46×55cm、クレラー=ミュラー美術館


 V. 真のモダン・アーティストの誕生―アルル

29. 《じゃがいものある静物》、1888年2-3月、アルル、油彩・カンヴァス、39.5×47.5cm、クレラー=ミュラー美術館

30. 《緑の葡萄畑》、1888年10月3日頃、アルル、油彩・カンヴァス、73.5×92.5cm、クレラー=ミュラー美術館

31. 《アルルの寝室》、1888年10月、アルル、油彩・カンヴァス、72×90cm、ファン・ゴッホ美術館

32. 《ゴーギャンの椅子》、1888年11月20日頃、アルル、油彩・目の粗いジュート布、90.5×72cm、ファン・ゴッホ美術館

33. 《種まく人》、1888年11月、アルル、油彩・カンヴァス、32×40cm、ファン・ゴッホ美術館

34. 《タマネギの皿のある静物》、1889年1月初め、アルル、油彩・カンヴァス、49.6×64.4cm、クレラー=ミュラー美術館

35. ポール・ゴーギャン《ブルターニュの少年と鵞鳥》、1889年、油彩・カンヴァス、92×73cm、エイアイジー・スター生命保険株式会社

36. 歌川国芳《川を渡る女性》、1847-48年、多色刷木版、38×26cm、ファン・ゴッホ美術館


 VI. さらなる探求と様式の展開―サン=レミとオーヴェール=シュル=オワーズ

37. 《蔦の絡まる幹》、1889年7月、サン=レミ、油彩・カンヴァス、49×64.7cm、クレラー=ミュラー美術館

38. 《渓谷の小道》、1889年12月、サン=レミ、油彩・カンヴァス、73.2×93.3cm、クレラー=ミュラー美術館

39. 《草むらの中の幹》、1890年4月後半、サン=レミ、油彩・カンヴァス、72.5×91.5cm、クレラー=ミュラー美術館

40. 《アイリス》、1890年5月、サン=レミ、油彩・カンヴァス 92×73.5cm、ファン・ゴッホ美術館

41. 《療養院の庭の木々》、1889年5月最後の週-6月最初の週、サン=レミ、鉛筆、葦ペンと茶色がかった緑のインク・ピンクの簀の目紙、47.2×61.5cm、ファン・ゴッホ美術館

42. 《麦の穂》、1890年6月、オーヴェール=シュル=オワーズ、油彩・カンヴァス、64.5×48.5cm、ファン・ゴッホ美術館

様式比較:オランダ時代〜オーヴェール=シュル=オワーズ時代


4.まとめ

 ・ゴッホの画業変遷

―オランダ時代:社会の底辺で働く人々への共感

―パリ時代:印象派風の明るい色彩を採り入れる

―アルル時代:「理想の国・日本」と耳切り事件

―サン・レミ時代:発作の合間に絵を描く日々、渦巻く筆致

―オーヴェール=シュル=オワーズ時代:2カ月に70点を制作

 ・長期的視野で見る展覧会

―没後120年→次は、没後150年(2040年) 、生誕200年(2053年)

―近年のゴッホ展:1999年から2005年まで毎年1回。99年と05年はクレラー=ミュラー美術館所蔵品

―1976-77年、「ヴァン・ゴッホ展」(国立西洋美術館、京都国立近代美術館、愛知県美術館)