美学・美術史講読二〇一〇


講読テキスト

古田亮『狩野芳崖・高橋由一―日本画も西洋画も帰する処は同一の処』(ミネルヴァ日本評伝選)(ミネルヴァ書房、二〇〇六年)

副読本

宮崎克己『西洋絵画の到来―日本人を魅了したモネ、ルノワール、セザンヌなど』(日本経済新聞社、二〇〇七年)

小山ブリジット『夢見た日本―エドモン・ド・ゴンクールと林忠正』、高頭麻子、三宅京子訳(平凡社、二〇〇六年)

馬渕明子『ジャポニスム―幻想の日本』(ブリュッケ、一九九七年/新装版二〇〇八年)


授業予定

十・四

   <零>   オリエンテーション (本の紹介/「序章 二人の画家、二つの近代」「第一章 狩野芳崖の生涯」配布)

十・十一

 (休講) 体育の日 (休講)

十・十八

<第一講> 「第一章 狩野芳崖の生涯」

十・二十五

<第二講> 「第二章 高橋由一の生涯」(前半)

十一・一

<第三講> 「第二章 高橋由一の生涯」(後半)

十一・八

<第四講> 「第三章 芳崖、由一、狩野派から近代絵画へ」

十一・十五

<第五講> 「第四章 スケッチブックに見るひとつの近代」

十一・二十二

<第六講> 「第五章 由一、油絵による近代画の創始」

十一・二十九

<第七講> 「第六章 芳崖の絶筆『悲母観音』をめぐって」 /「終章 二つの近代、その後」

十二・六

<第八講> 副読本の紹介と討議 宮崎克己『西洋絵画の到来』 ザビエルから鎖国へ

十二・十三

<第九講> 副読本の紹介と討議 宮崎克己『西洋絵画の到来』 高橋由一の時代

十二・二十

<第十講> 関連資料の紹介と討議 北澤憲昭『眼の神殿』 序章/第1章1-5

十二・二十七

 (休講) 冬期休業

一・三

 (休講) 冬期休業

一・十

 (休講) 成人の日

一・十三(月振)

<第十一講> 秋吉台レジデンス・アーティスト紹介

一・十七

<第十二講> 関連資料の紹介と討議 北澤憲昭『眼の神殿』 第1章6-10

一・二十四

<第十三講> 総括

 

 

リンクシラバス


講読テキストの構成

序章 二人の画家、二つの近代

フェノロサの翻然/『美術真説』の真意/日本画家芳崖と洋画家由一

第一章 狩野芳崖の生涯

 1 誕生

《悲母観音》の画家/文政十一年、長府/長府の狩野家/父晴皐/母について/長府での成長/江戸遊学まで

 2 絵師として

木挽町狩野家入門/画塾での修業生活/佐久間象山/三村晴山/江戸、長府の往復/安政四年の帰郷、結婚/幕末の長州人として/芳崖となる

 3 維新後の辛酸

長府での維新/生活苦/上京/東京での苦闘/文明開化の世に/島津家雇い

 4 フェノロサとともに

フェノロサの来日/芳崖、フェノロサとの出会い/龍池会と展覧会時代の幕開け/鑑画会

 5 終焉

岡倉天心と図画取調掛/伊藤博文への建白と《大鷲図》/芳崖の美術論/妻よしとその死/新出史料、息子廣崖の手記/東京美術学校開校を前に

第二章 高橋由一の生涯

 1 誕生

洋画道の開拓者/一八二八年、江戸/佐野藩と堀田家/幕末の大都市、江戸/『履歴』にみる前半生/佐野藩の教育と武道/佐久間象山

 2 洋製石版画体験の謎

嘉永か文久か/武道と画道/何を見たのか

 3 油画事始

画学局に入学/絵事は精神のなす業なり/ゼロからの挑戦/外国人教師を求めて/ワーグマンに師事/上海使節団/上海にて
 

 4 維新、そして好機到来

自画像と人相書き/由一を名乗る/維新後の困窮/岸田吟香の援助/博覧会時代の幕開け/活躍の場

 5 洋画拡張への道

画塾天絵社/油絵展観会/フォンタネージとの出会い/美術館建設計画

 6 逆風

フェノロサのいた夏/明治十四年の異変/洋画風凪ぐ

 7 東北へ

三島通庸/東北を歩く

 8 終焉

晩年/洋画沿革展/銀盃の授与/実際院真翁由一居士

第三章 芳崖、由一、狩野派から近代絵画へ

 1 狩野派―近世日本の規範

江戸の規範/「学画」と「質画」/粉本主義の功罪

 2 芳崖、狩野派からの脱皮

画塾での憤懣/模索の時代/写生の重視/古典回帰/南画の流行/幕末明治の画家たちとの関連

 3 由一、伝統画法からの出発

由一の狩野派時代/最初の師、狩野洞庭と探玉斎/狩野派との決別/江戸の洋画体験/博物図を描く/画学局的言/的言と江漢の『西洋画論』/模写と実写

 4 晩期芳崖作品―狩野派から近代日本画へ

近代日本画の萌芽/フェノロサ理論/フェノロサが芳崖に求めたもの/自作を改変する意志/実験作品の数々/《仁王捉鬼》

第四章 スケッチブックに見るひとつの近代

 1 スケッチという原点

日本画・洋画以前/スケッチとは何か

 2 由一の風景スケッチ

《上海日誌》/構図法/パノラマ風景/明治五年の風景スケッチ/写生帖と鉛筆/明治五年スケッチの特徴/ピーター・ガラシ説/ヘンリー・スミス説

 3 芳崖とスケッチ

十三歳のスケッチ/嘉永年間のスケッチ/安政四年のスケッチ/安政四年スケッチの特徴/鉛筆と芳崖/鉛筆の入手方法/鉛筆か毛筆か/芳崖スケッチに見る視覚の変容

第五章 由一、油絵による近代画の創始

 1 油絵とは何か

西洋の油絵/由一の油絵初学/油絵には永久保存の功あり/若きライバル五姓田義松/見世物としての油絵

 2 肖像画・人物画

《丁髷姿の自画像》/自画像の意味/《花魁》/《花魁》は傑作か/林文雄/土方定一論争/肖像画家として/肖像の権威

 3 風景画

《国府台真景図》の見直し/名所を描く/前期風景画と広重/浮世絵的構図と水墨画的細部/江漢を超えて/茜の空/写真と後期風景画/静止する人々/都市の肖像

 4 静物画―《鮭》を中心に

身近な物を描く/広重、再び/《鮭》とは何か/《鮭》を切る/《鮭》のテクニック/動かぬ世界

第六章 芳崖の絶筆『悲母観音』をめぐって

 1 《悲母観音》制作の過程

《悲母観音》とは何か/第一の《観音》制作/《悲母観音》着想の時期について/改変の数々/面貌の変化/彩色方法/フェノロサの関与について

 2 原画存在の可能性

次々現れる原画の数々/《魚籃観音》について/《魚籃観音》原画説/《魚籃観音》の謎/実見と科学調査の上での結論

 3 主題にまつわる議論

作画の動機/日本の聖母子/裸婦下図の意味/《悲母観音》に込められたもの

終章 二つの近代、その後

芳崖の近代/由一の近代/時代の子/芳崖・由一以後/菱田春草の画論/日本画と洋画のはざまに


講読テキスト、副読本の図書館所蔵情報

1.古田亮『狩野芳崖・高橋由一』……山口県立図書館、山口市立図書館

2.宮崎克己『西洋絵画の到来』……山口大学総合図書館、山口市立図書館

3.小山ブリジット『夢見た日本』……山口県立図書館

4.馬渕明子『ジャポニスム』……山口大学総合図書館、山口県立図書館


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 第一部 要旨

第一章 狩野芳崖の生涯
   前半()/後半(鳥屋原

第二章 高橋由一の生涯(前半)
   前半(藤山)/後半(横田

第二章 高橋由一の生涯(後半)
   前半(石井)/後半(田中

第三章 芳崖、由一、狩野派から近代絵画へ
   前半(馬原)/後半(河野

第四章 スケッチブックに見るひとつの近代
   前半(馴松)/後半(安永

第五章 由一、油絵による近代画の創始
   前半(武鑓)/後半(熊谷

第六章 芳崖の絶筆『悲母観音』をめぐって/終章 二つの近代、その後
   前半(下山)/後半(山本

 副読本

◆宮崎克己『西洋絵画の到来』より

 T―1 ザビエルから鎖国へ(pp.13-40.)
   前半(原田)/後半(久保

 T―2 高橋由一の時代(pp.41-70.)
   前半(石井)/後半(小川

 関連資料

◆北澤憲昭『眼の神殿―「美術」受容史ノート』(ブリュッケ、2010年)より

序章 状況から明治へ

第1章 「螺旋展画閣」構想

 1 洋画史の舞台―高橋由一の画業=事業

 2 快楽の園の螺旋建築― 「螺旋展画閣」構想

 3 水と火の江戸―建設地について

 4 武家の美術―江戸的なものと近代

 5 螺旋建築の系譜―影響源【一】

 6 未遂の博覧会計画―影響源【二】

 7 時代の孕むちから―幕末明初の文化的混乱

 8 二人のF―「螺旋展画閣」構想の背景【一】

 9 明治一四年の意味― 「螺旋展画閣」構想の背景【二】

 10 反近代=反芸術―美術という制度

序章/第1章1-5
   前半(横田)/後半(藤山

第1章6-10
   前半(原田)/後半(馬原

 第二部 感想

馬原鳥屋原西澤熊谷田中横田安永藤山山本馴松久保