プラド美術館所蔵 ゴヤ―光と影
◆授業の目標
・「近代絵画の父」について理解する。
・展覧会企画における美術史の役割について考察する。
1.「ゴヤ―光と影」展の概要 会場写真
企画展/回顧展/個展/コレクション展(国内所蔵作品を追加)/単館開催
会場:国立西洋美術館
会期:2011年10月22日〜2012年1月29日
主催:国立西洋美術館、国立プラド美術館、読売新聞社
◆「プラド美術館所蔵 ゴヤ―光と影」展の章立て
T かくある私―ゴヤの自画像
U 創意と実践―タピスリー用原画における社会批判
V 嘘と無節操―女性のイメージ:<サンルーカル素描>から私室の絵画へ
W 劇画、夢、気まぐれ―<ロス・カプリーチョス>の構想段階における自由と自己検閲
X ロバの衆:愚鈍な者たち―<ロス・カプリーチョス>における人間の愚行の風刺
Y 魔物の群れ―<ロス・カプリーチョス>における魔術と非合理
Z 「国王夫妻以下、僕を知らない人はいない」―心理研究としての肖像画
[ 悲惨な成り行き―悲劇への眼差し
\ 不運なる祭典―<闘牛技>の批判的ヴィジョン
] 悪夢―<素描C>における狂気と無分別
Ⅺ 信心と断罪―宗教画と教会批判
Ⅻ 闇の中の正気―ナンセンスな世界の幻影
XIII 奇怪な寓話―<ボルドー素描帖G>における人間の迷妄と動物の夢
XIV 逸楽と暴力―<ボルドー素描帖H>における人間たるものの諸相
2.作品紹介
T かくある私―ゴヤの自画像
1. 《マルティン・サパテール宛書簡「今の僕はこんな風だ」》、1800年8月2日(原文通り)、※実際は1794年8月2日? ペン、インク・紙、20.8×15.3 cm(二つ折)、プラド美術館
2. 「ロス・カプリーチョス」1番(扉絵)、《画家フランシスコ・ゴヤ・イ・ルシエンテス》、1797-98年制作/1799年初版、エッチング、アクアティント、ドライポイント、エングレーヴィング・簀目紙、21.9×15.2 cm、長崎県立美術館
3. 《普遍的言語》(「ロス・カプリーチョス」43番のための準備素描)、1797年、ペン、没食子インク・簀目紙、銅板の跡、24.7×17.2 cm、プラド美術館
4. 「ロス・カプリーチョス」43番、《理性の眠りは怪物を生む》、1797-98年制作/1799年初版、エッチング、アクアティント・簀目紙、21.8×15.2 cm、国立西洋美術館
5. 《自画像》、1815年、油彩・カンヴァス、46×35 cm、プラド美術館館
U 創意と実践―タピスリー用原画における社会批判
6. 《日傘》、1777年、油彩・カンヴァス、104×152 cm、プラド美術館
7. 《マハとマントで顔を覆う男たち》、1777年、油彩・カンヴァス、275×190 cm、プラド美術館
8. 《マドリードの祭り》、1778-79年、油彩・カンヴァス、258×218 cm、プラド美術館
9. 《目隠し鬼》、1788年、油彩・カンヴァス、41×44 cm、プラド美術館
V 嘘と無節操―女性のイメージ:<サンルーカル素描>から私室の絵画へ
10. 《往来のマハたち》、「素描帖B」28番、1795-97年、筆、淡墨・簀目紙、23.7×15 cm、プラド美術館
11. 「夢」19番、《男が文無しであることを知って笑いを抑え切れぬ老女たち》、(「ロス・カプリーチョス」5番のための準備素描)、1796-97年、ペン、没食子インク、筆、淡墨・簀目紙、銅板の跡
24.6×18.6 cm、プラド美術館12. 「ロス・カプリーチョス」61番、《彼女は飛び去った》、1796-98年制作/1799年初版、エッチング、アクアティント、ドライポイント・簀目紙、21.7×15.2 cm、国立西洋美術館
13. 《魔女たちの飛翔》、1797-98年、サンギーヌの下描き、赤淡彩およびサンギーヌ淡彩・簀目紙
20.6×13.3 cm、プラド美術館14. 「ロス・カプリーチョス」2番、《娘たちはハイと承諾して最初に来た男と婚約する》、1797-98年制作/1799年初版、エッチング、アクアティント、バーニッシャー・簀目紙、21.5×15.0 cm、国立西洋美術館
15. 「ロス・カプリーチョス」19番、《みんなひっかかるだろう》、1797-98年制作/1799年初版、エッチング、アクアティント、バーニッシャー・簀目紙、21.9×14.5 cm、国立西洋美術館
16. 「ロス・カプリーチョス」20番、《むしり取られて追い出され》、1797-98年制作/1799年初版、エッチング、アクアティント、バーニッシャー、ドライポイント・簀目紙、21.7×15.2 cm、国立西洋美術館
17. 《着衣のマハ》、1800-07年、油彩・カンヴァス、95×190 cm、プラド美術館
参考:《裸のマハ》、1795年、油彩・カンヴァス、98×191cm、プラド美術館
Y 魔物の群れ:<ロス・カプリーチョス>における魔術と非合理
18. 《魔女たちの飛翔》、1798年、油彩・カンヴァス、43×30.5 cm、プラド美術館
Z 「国王夫妻以下、僕を知らない人はいない」―心理研究としての肖像画
19. 《赤い礼服の国王カルロス4世》、1789年、油彩・カンヴァス、127.3×94.3 cm、プラド美術館
20. 《スペイン王子フランシスコ・デ・パウラ・アントニオの肖像》、1800年、油彩・カンヴァス、74×60 cm、プラド美術館
21. 《アブランテス公爵夫人》、1816年、油彩・カンヴァス、92×70 cm、プラド美術館
[ 悲惨な成り行き―悲劇への眼差し
22. 《可哀そうなお母さん!》、1812-14年、(「戦争の惨禍」50番のための準備素描)、サンギーヌ(2種の赤チョーク)・簀目紙、17.1×21.9 cm、プラド美術館
23. 「戦争の惨禍」5番《やはり野獣だ》、1810-14年制作/1863年初版、エッチング、アクアティント、バーニッシャー、ドライポイント・網目紙、15.8×21.0 cm、国立西洋美術館
24. 「戦争の惨禍」37番《これはもっとひどい》、1810-14年制作/1863年初版、エッチング、ラヴィ、ドライポイント、プレート・トーン・網目紙、15.7×20.8 cm、国立西洋美術館
\ 不運なる祭典―<闘牛技>の批判的ヴィジョン
25. 《同じ闘牛場で彼が見せたもうひとつの愚挙》、1815年、(「闘牛技」19番のための準備素描)、サンギーヌ(2種の赤チョーク)・網目紙、18.8×31.5 cm、プラド美術館
26. 《マドリード闘牛場の無蓋席で起こった悲劇と、トレホーン市長の死》、(「闘牛技」21番のための準備素描)、1814-16年、サンギーヌ(2種の赤チョーク)・網目紙、18.5×30.2 cm、プラド美術館
27. 「闘牛技」21番、《マドリード闘牛場の無蓋席で起こった悲劇と、トレホーン市長の死》、 1814-16年制作/1816年初版、エッチング、アクアティント、ラヴィ、ドライポイント、エングレーヴィング、バーニッシャー・簀目紙、24.7×35.3 cm、国立西洋美術館
Ⅺ 信心と断罪―宗教画と教会批判
28. 《無原罪のお宿り》、1783-84年、油彩・カンヴァス、80.2×41.1 cm、プラド美術館
29. 《聖フスタと聖ルフィーナ(下絵)》、1817年、油彩・板、80.2×41.1 cm、プラド美術館
30. 《地球の自転を発見した咎により》、「素描帖C」94番、1808-14年頃、筆、淡墨、セピア淡彩・簀目紙、ピンク色の台紙、20.5×14.4 cm、プラド美術館
31. 《なんと残虐な》、「素描帖C」108番、1808-14年頃、筆、淡墨、セピア淡彩・簀目紙、ピンク色の台紙、20.5×14.2 cm、プラド美術館
XIV 逸楽と暴力―<ボルドー素描帖H>における人間たるものの諸相
32. 《合図(テレグラーフォ)》、「素描帖H」54番、1825-28年頃、黒チョーク、石版用クレヨン・緑灰色の簀目紙、ピンク色の台紙、19.1×15.2 cm、プラド美術館
◆ゴヤ 関連年譜
1746 3月30日、サラゴーサ近郊フエンデトードス村に生まれる
1759 ジョセフ・ルサーンの工房に入り、絵画修業する
1775 マドリードへ移住
1780 王立サン・フェルナンド・アカデミー正会員となる
1793 聴覚を失う
1798 《裸のマハ》
1799 「ロス・カプリーチョス」出版。首席宮廷画家となる
1804 《着衣のマハ》
1815 《裸のマハ》《着衣のマハ》の件で異端審問所に召喚される
1816 「闘牛技」出版
1828 4月16日、ボルドーにて死去
◆3人の「近代絵画の父」
・ポール・セザンヌ(1839-1906)
・エドゥアール・マネ(1832-1883)
・フランシスコ ・デ・ゴヤ(1746-1828)
「現代美術の祖」:
・マルセル・デュシャン(1887-1968)
「色彩の魔術師」:
・ピエール・ボナール(1867-1947)、アンリ・マティス(1869-1954)、ラウル・デュフィ(1877-1953)
3.まとめ
・「近代絵画の父」
―首席宮廷画家としての社会的地位と当時の政治、宗教、民衆を見つめる眼
―「戦争の惨禍」:フランス啓蒙主義への共感とナポレオン軍に対する幻滅
―“理性の眠りは怪物を生む”
・展覧会企画と美術史
―美術史=美術家と作品と社会についての歴史研究
―美術史の知識を共有する場としての展覧会、記念講演会
―人と美術をつなぐ美術史