美学・美術史概論W 二〇一二


期末試験問題概略告知

一、講義で紹介した十五名の画家について基礎的な知識を問う。/○×問題/一五問/各二点(三〇点)

二、美術用語とその説明について正しい組み合わせを問う。/選択肢あり/一〇問/各二点(二〇点)

三、ルネサンスについて解説した文の空欄に、適切な用語を選んで文章を完成させよ。/穴埋め問題・選択肢あり/五問/各三点(一五点)

四、美術史学とはどのような学問か。各自が受講する以前に抱いていたイメージと、この講義で得られた知見とを対照させながら論じなさい。/論述問題・課題あり/字数制限なし/ 三五点


成績評価方法

試験:一〇〇点満点×〇.八(計八〇点)

出席:一一回=一一点(欠席毎マイナス一点 例:欠席三回=出席点八点)

※最初の一回をカウントしない

授業態度等の調整点:全回出席者にプラス二点

そのほか授業への参加度をオピニオンシートの回答等をもとに七〜一〇点の範囲で加算


美学・美術史概論W試験問題

実施日時 二〇一二年七月二十三日(月)
10時20分〜11時50分(90分)


(各二点、計三〇点)

一、次に示される(1)〜(15)の短文のうち、ヴァザーリの『画人伝』に書かれた内容に照らして、または史実に即して正しいものに○印を、誤ったものに×印をそれぞれ解答用紙の各欄に記せ。

(1)チマブーエは、弟子のジョットが自分よりもはるかに優れた才能を持つことが分かると、以後はジョットに任せて二度と絵筆を持たなかった。

(2)ジョットは、法王ベネディクトス九世にコンパスを使わずに描いた円のデッサンを送って、その力量を認められた。

(3)ウッチェロの《サン・ロマーノの戦い》三部作は、現在、フィレンツェのウフィツィ美術館、ロンドンのナショナル・ギャラリー、パリのルーブル美術館にそれぞれ一点ずつ収蔵されている。

(4)マザッチョが描いたブランカッチ礼拝堂壁画は、完成後、フィリッポ・リッピなど多くの画家たちの手本となった。

(5)ピエーロ・デラ・ フランチェスカは、数学、幾何学および正面体の図学的処理の傑出した大家とみなされていた。

(6)フラ・アンジェリコは、一旦作品を完成させると、その後一切加筆しなかった。それが神のおぼしめしだ、と考えていたからである。

(7)フィリッポ・リッピは、聖母のモデルを務めた貴族の娘と駆落ちした。

(8)ジョヴァンニ・ベリーニは、ジョルジョーネやティツィアーノらとともにヴェネツィア派を代表する画家である。

(9)ボッティチェリの《マギの礼拝》には、コジモ・イル・ヴェッキオを始め、メディチ家の人々の肖像が多数描き込まれている。

(10)マンテーニャの《死せるキリスト》は、短縮法を用いて、キリストの足の裏が観者の方へ向くように描かれている。

(11)レオナルド・ダ・ヴィンチは、アンドレーア・デル・ヴェロッキオの工房で修業した。

(12)ジョルジョーネは、スフマートの手法で描かれたレオナルドの作品を見て、自分でも同じ手法を探究した、と言われている。

(13)ラファエロは、同郷人ブラマンテの紹介によってヴァチカンで仕事をする機会を得た。

(14)ミケランジェロは、「風呂屋か宿屋むきの作品だ」と批判した法王パウルス三世を地獄のミノスの姿にして、《最後の審判》に描きこんだ。

(15)ティツィアーノの初期作品は、近くから見るとわけがわからないが、離れて見ると完璧な姿が浮かびあがってくる、と評された。

 

(各二点、計二〇点)

二、次に示される(ア)〜(コ)の説明に適合する美術用語を、のちに記されている(a)〜(z)から選んで解答用紙の各欄に記せ。

(ア)抽象概念や思想を、人物を中心とするイメージの組み合わせによって表現する方法。

(イ)「像」と「描く、記す」というギリシア語に由来する。人物や主題を同定するための持ち物やモティーフ、象徴など美術作品の意味の約束事の体系とそれを研究する学問のこと。

(ウ)二次元の平面上に三次元の空間や物体を描き表わす方法の総称。

(エ)マクセンティウス帝の弾圧に遭って大釘を打った車輪にかけられるが、天使に救われ、最後は首を切られて殉教した聖女。

(オ)人類の祖であるアダムとエヴァが犯した、神の言いつけに背いて知恵の実を食べた罪。

(カ)ダビデとバテシバの息子で、賢王として知られるイスラエル第三代の王。

(キ)ガラリヤの王ヘロデの後妻ヘロディアの連れ子。牢獄に囚われていた洗礼者ヨハネの首を望み、かなえられる。

(ク)四ラテン教父の一人。ライオンや体を打つ石とともに荒野の苦行僧、学者、枢機卿の姿で描かれる。

(ケ)古代ローマやルネサンス美術に現われる裸体の幼児像。

(コ)「眺めのよい場所」という意味。高台の宮殿や邸宅などの呼び名に用いられた。
 

(a)アトリビュート  (b)アレゴリー  (c)アンブロシウス  (d)イコノグラフィー  
(e)イコノロジー  (f)ウァニタス  (g)遠近法  (h)カタリナ  (i)ガラテイア  
(j)カリグラフィー  (k)カリテス  (l)擬人像  (m)グレゴリウス  (n)原罪  
(o)サロメ  (p)贖罪  (q)ソロモン  (r)トンド  (s)ニンブス  (t)ノア  
(u)ヒエロニムス  (v)プット  (w)ベルヴェデーレ  (x)マギ  (y)ムーサ  
(z)ユディト

 

(各三点、計一五点)

三、次の文を読み、空欄となっている( A )〜( E )に、のちに記されている(1)〜(15)のうち最も適当と思われる言葉を補い、文を完成せよ。解答用紙には、( A )〜( E )の各欄に該当する言葉を(1)〜(15)の番号で記すこと。

 ルネサンスは、ジョルジョ・ヴァザーリが、彼の著作『美術家列伝』の中で用いたリナシタ(再生)に由来する。「リナシタ」から「ルネサンス」へ( A )語化したのは十九世紀になってからである。十五世紀から十六世紀前半のイタリア美術を示す時代概念で、他の地域にも適用される。十五世紀、十六世紀については、日本でもイタリア語の呼び方にならって、それぞれ、( B )、( C )と表記されることがある。また、十五世紀を初期ルネサンス、十六世紀前半を盛期ルネサンスとも呼んでいる。ヴァザーリが活躍した時代は、盛期ルネサンスに続く( D )の時代である。ヴァザーリの『美術家列伝』には、チマブーエに始まり、( E )で頂点に達する美術家たちの栄光の歴史が書かれている。
 

(1)英  (2)フランス  (3)ドイツ  (4)ノヴェッチェント  (5)セイチェント  
(6)クアトロチェント  (7)ドゥエチェンント  (8)トレチェント  (9)チンクエチェント  
(10)ゴシック  (11)バロック  (12)マニエリスム  (13)レオナルド・ダ・ヴィンチ  
(14)ラファエルロ  (15)ミケランジェロ

 

(三五点)

四、美術史学とはどのような学問か。各自が受講する以前に抱いていたイメージと、この講義で得られた知見とを対照させながら論じなさい。

 

 

 

評価基準は、秀=一〇〇〜九〇、優=八九〜八〇、良=七九〜七〇、可=六九〜六〇、不可=五九〜〇である。本試験の結果をもとに各自の出席数による調整点等を加算したものを評点とする。また、四の解答のうち優れたものは、試験問題を蓄積し、今期以後の学生の参考に供するため、ウェブ上で公開する予定である。


一〜三の解答