ボストン美術館―日本美術の至宝


授業の目標

・巡回展について理解する。

・在外日本美術コレクションについて理解する。


1.ボストン美術館展の概要 会場写真

企画展/コレクション展/巡回展

会期・会場:

 3月20日〜6月10日     東京国立博物館

 6月23日〜9月17日(前期) 名古屋ボストン美術館

 9月29日〜12月9日(後期)    〃

 2013年1月1日〜3月17日  九州国立博物館

 2013年4月2日〜6月16日  大阪市立美術館


巡回展

・海外等からの借用によって集められた作品の集合(=展覧会)を、2つ以上の離れた地域に存在する美術館で順次紹介する展覧会の形式

・海外所蔵先と日本との間の往復の輸送費や保険料、カタログ印刷費等を「共通経費」として開催館同士で分担することにより、一館あたりの経済的負担を軽減することが可能

・同程度の会場規模を持つこと、他の展覧会の会期とのスケジュール調整が必要

・会場によって出品作品に変更がある

・大手新聞社が参加し、海外との連絡調整を行うことがある


作品紹介

1. 平櫛田中《岡倉覚三像》、1963(昭和38)年、木、竹、高さ112.0 cm、1963年 平櫛田中氏寄贈

2. 《如意輪観音菩薩像》、12世紀 平安時代、絹本着色、98.8×44.7 cm、1911年寄贈 フェノロサ・ウェルドコレクション

3. 《十一面観音菩薩来迎図》(部分)、13世紀 鎌倉時代、絹本着色、69.5×26.6 cm、1911年寄贈 フェノロサ・ウェルドコレクション

4. 快慶《弥勒菩薩立像》、1189(文治5)年 鎌倉時代、檜、割矧造、漆箔、玉眼、高さ106.4 cm、1920年取得 中国日本特別基金

5. 円慶《地蔵菩薩坐像》、1322(元亨2)年 鎌倉時代、檜、寄木造、漆箔、玉眼、高さ82.6 cm、1905年取得 中国日本特別基金

6. 《吉備大臣入唐絵巻》(部分)、12世紀後半 平安時代、4巻 巻第1 32×674.6 cm、巻第2 32×459.3 cm、巻第3 32×722.3 cm、巻第4 32×599.7 cm、1932年寄贈 ウィリアム・スタージス・ビゲローコレクション

7. 《平治物語絵巻 三条殿夜討巻》(部分)、13世紀後半 鎌倉時代、紙本着色 41.3×700.3 cm、1911年寄贈 フェノロサ・ウェルドコレクション

8. 一山一寧賛《観音図》、14世紀初 中国・元時代または鎌倉時代、絹本着色、105.5×51 cm、1910年 エレン・グリーノウ・パーカー嬢寄贈

9. 文清筆《山水図》、15世紀後半 室町時代、紙本墨画、73.2×33 cm、1905年取得 中国日本特別基金

10. 狩野探幽筆《海棠に尾長図》、17世紀後半 江戸時代、絹本着色、95.5×35.5 cm、1911年寄贈 ウィリアム・スタージス・ビゲローコレクション

11. 土佐光起筆《王昭君図》、17世紀後半 江戸時代、絹本着色、93.7×41.7 cm、1911年寄贈 ウィリアム・スタージス・ビゲローコレクション

12. 尾形光琳筆《松島図屏風》、17世紀後半 江戸時代、六曲一隻 紙本着色、150.2×367.8 cm、1911年寄贈 フェノロサ・ウェルドコレクション

13. 伊藤若冲筆《鸚鵡図》、18世紀後半 江戸時代、絹本着色、106.3×49.1 cm、1911年寄贈 ウィリアム・スタージス・ビゲローコレクション

14. 曽我蕭白筆《風仙図屏風》(部分)、17世紀後半 江戸時代、六曲一隻 紙本墨画、155.8×364 cm、1911年寄贈 フェノロサ・ウェルドコレクション


ボストン美術館と日本美術コレクション

1876年 アメリカ独立100周年を記念して開館
1877(明治10)年 エドワード・モース来日
1878(明治11)年 モースの推薦によってアーネスト・フェノロサ来日
1880(明治13)年 フェノロサ、岡倉天心とともに京都・奈良の古社寺調査を行う
1882(明治15)年 3度目のモースの来日に同行してウィリアム・ビゲローが来日。4万点を超える日本美術コレクションを構築
1885年 フェノロサのコレクションがボストン美術館への寄託を条件としてチャールズ・ウェルドに譲渡される
1890年 ビゲローとウェルドによる寄託を受けて、ボストン美術館に日本美術部が設立され、初代部長にフェノロサが就任
1904年 天心にビゲローコレクションの整理が任される
1905年 天心、ボストン美術館の中国・日本美術部顧問に就任
1910年 天心、同部長に就任(1913まで在職)


2.まとめ

 ・巡回展

―「共通経費」による予算圧縮と事業内容の充実

―学芸員のネットワークと新聞社のネットワーク

―異なる会場で展示の工夫を比較して見る楽しみ

―パッケージングとカスタマイズ

 ・在外日本美術コレクション

―輸出品としての美術工芸

―廃仏毀釈

―文化材保護政策

―収集と研究←→散逸と焼失