ポール・デルヴォー展―夢をめぐる旅―


授業の目標

・シュルレアリスムについて理解する。

・企画展の歴史について考察する。


1.ポール・デルヴォー展の概要 会場写真

企画展/巡回展/回顧展/個展

会期・会場:

 7月20日〜9月2日 鹿児島市立美術館
 9月12日〜11月11日 府中市立美術館
 11月17日〜1月14日 下関市立美術館
 2013年1月22日〜3月24日 埼玉県立近代美術館
 4月6日〜5月26日 岡崎市立美術館
 7月20日〜9月1日(予定) 秋田市立千秋美術館


作品紹介

1. 《窓辺の若い娘》、1920年、油彩・板、27.3×19 cm、ポール・デルヴォー財団

2. 《女友だち(ダンス)》、1930年、墨、水彩・紙、64×48 cm、個人蔵

3. 《夜明け》、1944年、油彩・カンヴァス、80×100 cm、個人蔵

4. 《会話》、1944年、油彩・厚紙、50×61 cm、サイモン・コレクション(パトリック・デロム・ギャラリー)

5. 《「磔刑」(1953年)のための習作》、1953年、油彩、墨、水彩・紙、55.5×73.5 cm、個人蔵

6. 《「エペソスの集い」(1967年)のための習作》、1967年、墨、水彩・紙、52×52 cm、ポール・デルヴォー財団

7. 《「アテネの気まぐれ娘たち」(1968年)のための習作》、1968年、墨、水彩・紙、75×105 cm、ポール・デルヴォー財団

8. 《ダニエルの習作》、1969年、墨・紙、57×79 cm、ポール・デルヴォー財団

9. 《「純潔な乙女たち」(1972年)のための習作》、1972年、墨、水彩・紙、29.5×41.5 cm、ポール・デルヴォー財団

10. 《エペソスの集いU》、1973年、油彩・カンヴァス、150×240 cm、ポール・デルヴォー財団

11. 《キャロルの習作》、1974年、墨、淡彩・紙、70×52 cm、ポール・デルヴォー財団

12. 《デッキU(「トンネル」(1978年)のための習作)》、1977年、墨、水彩・紙、67×101 cm、ポール・デルヴォー財団

13. 《トンネル》、1978年、油彩・カンヴァス、150×250 cm、ポール・デルヴォー財団

14. 《カリュプソー》、1986年、油彩・カンヴァス、120×90 cm、ポール・デルヴォー財団

15. 《無題》、1988年、墨、水彩・紙、105.5×74.5 cm、ポール・デルヴォー財団


シュルレアリスム

「現実」と「超える」という意味のフランス語 réel と sur に由来。「超現実主義」と訳す。詩人ギョーム・アポリネールの形容詞としての造語に基づき、アンドレ・ブルトンの1924年の「宣言(第一宣言)」で、広く知られるようになった。ジークムント・フロイトの「無意識」を思想的背景として、人間が意識によって捉えられる現実世界を超えたものを追求する芸術運動で、文学、美術はもちろん思想的にも大きな影響力を持った。運動そのものはダダを継承するかたちで始まったが、無意識の層を引き出すために、オートマティスムを重視し、デペイズマン、フロッタージュ、デカルコマニー、コラージュといった技法を駆使して理性的な意味や認識の体系を破壊しようと試みた。グループ自体は、ブルトンの交友関係や政治性をめぐって分離・拡散したが、運動は世界的な広がりを見せた。主な画家にハンス・アルプ、マックス・エルンスト、サルバドール・ダリ、ルネ・マグリットなど。

『岩波 西洋美術用語辞典』(岩波書店、2005年)、151頁。


ポール・デルヴォーの言葉

「自分が形式的な意味でシュルレアリストだと思ったことはない[…]むしろナチュラリストでありたい。」

「私は現実をある種の『夢』として描き出そうとしてきました。事物が本物らしい様相を保ちながらも詩的な意味を帯びている、そんな夢として。作品は、登場する事物の全てが必然性を持った虚構の世界となるのです。」

「私が創造したいのは、その中に自分が生きている、生きることができる寓話的な絵画なのです。」

「即興的な素描は、墨やペン、淡彩や鉛筆を使って感じとったままさっと写し取ることに意義があります。そこには、油彩画のように完成までの長い時間や下準備が介在しません。即興的な作品には明快な価値があります。なぜなら、そのプロセスは時に多くの興味深い発見をもたらすからです。」

「人は自分の状態を常に冷静に見つめなければならないが、これはときとして難しいことです。たとえば私には以前ほどの視力はありませんが、これが現状であり、現実です。こうした状態を前向きにとらえるようにし、常に愚痴をこぼすようなことは避けるべきだと考えています。以前と同じように自分の作品を見ることができないという、さらに深刻な問題もありますが、人生の楽しみは他にもたくさんある。おいしい1杯のワインもその一つ。目は見えなくてもワインは味わえるのですよ。」

『ポール・デルヴォー展―夢をめぐる旅―』図録(「ポール・デルヴォー展―夢をめぐる旅―」実行委員会、2012年)、12、16、52、53、97頁。


ポール・デルヴォー 略年譜

1897年  0歳 9月23日、ベルギーのリエージュ州アンティに生まれる
1919年 22歳 ブリュッセル美術アカデミーに入学
1929年 32歳 アンヌ=マリー・ド・マルトラール(愛称タム)との結婚を両親に反対される
1935年 38歳 ブリュッセルのマグリットの自宅を訪ね、シュルレアリストたちを紹介される
1946年 49歳 ニューヨークのジュリアン・レヴィ画廊で個展。猥褻を理由に税関に2点押収される
1947年 50歳 タムと偶然再会する
1950年 53歳 ブリュッセル国立美術建築学校の絵画部門教授となる
1965年 68歳 ベルギー王立アカデミー会長を務める
1986年 89歳 最後の油彩《カリュプソー》制作
1989年 92歳 タム死去。以後、筆を置く
1994年 96歳 7月20日、フュルヌの自宅にて死去

渡邉祐子編「ポール・デルヴォー 年譜」、『ポール・デルヴォー展―夢をめぐる旅―』図録(「ポール・デルヴォー展―夢をめぐる旅―」実行委員会、2012年)、109-113頁。


ポール・デルヴォー展年表

1975年
「ポール・デルボー展」(東京国立近代美術館、京都国立近代美術館)
1983-84年
「ポール・デルボー展」(大丸ミュージアム・梅田、姫路市立美術館、伊勢丹美術館、富山県立近代美術館)
1987-88年
「ポール・デルボー展―妖しい神秘な夢の王国」(熊本県立美術館、福岡市美術館、ほか岡山、仙台等を巡回)
1989-90年
「ポール・デルボー展」(大丸ミュージアム・梅田、大丸ミュージアムKYOTO、伊勢丹美術館、姫路市立美術館、横浜美術館)
1996-97年
「ポール・デルボー展」(大丸ミュージアム・梅田、下関大丸・7階文化ホール、佐倉市立美術館、大丸ミュージアムKYOTO、伊勢丹美術館)
2004-05年
「ポール・デルヴォー展―その生涯と人物像―」(新潟市美術館、宮崎県立美術館、福岡県立美術館、松坂屋美術館、福島県立美術館)
2012-13年
「ポール・デルヴォー展―夢をめぐる旅」(鹿児島市立美術館、府中市立美術館、下関市立美術館、埼玉県立近代美術館、岡崎市立美術館、秋田市立千秋美術館)


2.まとめ

 ・シュルレアリスム

―超(シュル)現実主義(レアリスム) ※フランス語

―フロイトの「無意識」に創造の可能性を見出す

―理性的な世界観の乗り越え

―アポリネール、ブルトン、ダリ、マグリット

 ・企画展の歴史

―過去に紹介された作品/「日本初公開」作品

―巡回会場の重なりや新規の参加

―数年、数十年を経て見る企画展(コレクション展/回顧展)

―作品と再会する楽しみ(=時の経過を味わう)