エル・グレコ展
1.エル・グレコ展の概要 会場写真
企画展/巡回展/回顧展/個展
会期・会場:
10月16日〜12月24日 国立国際美術館
2013年1月9日〜4月7日 東京都美術館大阪会場の展覧会組織
主催:国立国際美術館、NHK大阪放送局、NHKプラネット近畿、朝日新聞社
後援:外務省、スペイン大使館
協賛:損保ジャパン、DNP大日本印刷、Kindenきんでん、竹中工務店
協力:スペイン政府観光局、エールフランス航空、全日本空輸、ダイキン工業現代美術振興財
◆主催・後援・協賛・助成・協力
・主催は、展覧会全体に責任を持つ。美術館単独の場合もあれば、行政組織や企業などが名を連ねる場合もある。また、共催という位置づけで、中心的に責任を担う組織とは別立てで、同等の実施責任を担う場合もある。
・後援は、展覧会の実施にあたり便宜をはかる。政府機関や地方自治体、教育委員会など。さまざまな認可手続きの際に、他の競合事業との調整を行う。
・協賛は、物理的な支援や業務上の協力を行う企業等。
・助成は、経済的支援を行う財団や基金。
・協力は、そのほかさまざまな形での支援を行う機関や団体。個人も含む。
◆エル・グレコ展の章立て
T-1. 肖像画家エル・グレコ
T-2. 肖像画としての聖人像
T-3. 見えるものと見えないもの
U. クレタからイタリア、そしてスペインへ
V. トレドでの宗教画:説話と祈り
W. 近代芸術家エル・グレコの祭壇画:画家、建築家として
◆作品紹介
T-1. 肖像画家エル・グレコ
1. 《芸術家の自画像》、1595年頃、油彩・カンヴァス、55.7×46.7cm、メトロポリタン美術館、ニューヨーク
2. 《聖母を描く聖ルカ》、1563-65年頃、卵黄テンペラ・板(布貼りの上に下地)、41.5×33.2cm、ベナキ美術館、アテネ
3. 《修道士オルテンシオ・フェリス・パラビシーノの肖像》、1611年、油彩・カンヴァス、112.1×86.1cm、ボストン美術館
4. 《燃え木で蝋燭を灯す少年》、1571-72年頃、油彩・カンヴァス、60×49cm、コメロール・コレクション
T-2. 肖像画としての聖人像
5. 《枢機卿としての聖ヒエロニムス》、1600年頃、油彩・カンヴァス、59×48cm、ナショナル・ギャラリー、ロンドン
6. 《福音書記者聖ヨハネ》、1607年頃、油彩・カンヴァス、97×77cm、エル・グレコ美術館、トレド
T-3. 見えるものと見えないもの
7. 《悔悛するマグダラのマリア》、1576年頃、油彩・カンヴァス、156.6×121cm、ブダペスト国立西洋美術館
8. 《フェリペ2世の栄光》、1579-82年頃、油彩・カンヴァス、140×109.5 cm、エル・エスコリアル修道院
U. クレタからイタリア、そしてスペインへ
9. 《受胎告知》、1600年頃、油彩・カンヴァス、114×67cm、ティッセン=ボルミネッサ美術館、マドリード
V. トレドでの宗教画:説話と祈り
10. 《十字架のキリスト》、1610-14年頃、油彩・カンヴァス、95.5×61cm、国立西洋美術館、東京
W. 近代芸術家エル・グレコの祭壇画:画家、建築家として
11. 《巡礼者としての聖ヤコブ》、1585-1602年頃、油彩・カンヴァス、138×39cm、サン・ニコラス教区聖堂(サンタ・クルス美術館寄託)、トレド
12. 《十字架のキリスト》、1600-10年頃、油彩・カンヴァス、82.6×51.6cm、ゲッティ美術館、ロサンゼルス
13. 《無原罪のお宿り》、1607-13年頃、油彩・カンヴァス、347×174cm、サン・ニコラス教区聖堂(サンタ・クルス美術館寄託)、トレド
◆エル・グレコ 略年譜
1541年 ギリシア、クレタ島のカンディア(現イラクリオン)に生まれる。本名:ドメニコス・テオトコプーロス
1563年 22歳 この頃、イコン画家として活躍していたと推測される
1567年 26歳 おそらくこの年の中頃、ヴェネツィアへ渡り、ティツィアーノの工房かその周辺で西欧絵画の技法を習得
1570年 29歳 ローマへ赴く。ファルネーゼ家に寄寓
1572年 31歳 聖ルカ・アカデミー、「細密画家」として入会を許可
1576年 35歳 おそらくこの頃、スペインに渡る
1579年 38歳 《聖衣剥奪》の支払い額でトレド大聖堂と訴訟に発展
1582年 41歳 エル・エスコリアル修道院に納入した《聖マウリティウスの殉教》が国王の意に沿わず、撤去される
1588年 47歳 《オルガス伯爵の埋葬》の支払い額でサント・トメ聖堂と訴訟に発展。
1614年 73歳 4月7日、サント・トメ聖堂の死亡者名簿に記載あり
◆エル・グレコの書き込み
良き比例を備えた美しい人物像とは、立っている場合と馬に乗っている場合とでは同じではない……。というのも、馬に乗っている時には、彼は我々の視点よりも高い位置にいるからである……。その時はどうしても人物の比例を変更することが必要である……。必ず対象に完全な比例を与えるようにし、皮相な解決法は避けなければならない。
形態や色彩などすべてのものを判断し得るのは、唯一絵画だけである。なぜならば、絵画の目的はそれらすべての模倣であるから。一言でいえば、絵画は「思慮(プルデンシア)」の地位を占めているのであり、それは目に見えるすべての物象の形成者(モデラドーラ)〔調停者?〕なのである。そしてもし画家の「見る」という行為がどのようなものであるか言葉で表せるのであれば、視覚というものが特に多様な機能を有するが故に、それはまず一見して奇妙なものと映ずるであろう。しかしながら、かくも普遍的なものであるからには、絵画は思索的な作業となる。そこには常に何か「見得るもの」が存在するがために、常に思索の満足が存するのである。というのも、人は薄暗がりの中においてさえ、見、楽しみ、かつ模倣せねばならないのだから……。
越川倫明「エル・グレコとヴェネツィア」、『エル・グレコ展』(国立西洋美術館ほか、1986年)、51-52頁。
/『エル・グレコ展』図録(NHKほか、2012)、167-168頁に再録。
2.まとめ
・展覧会の開催組織
―美術館とメディア、行政との協力関係を読み解く
―助成団体、協賛企業に展覧会組織の特性が見えてくる
―展覧会の社会的意義の裏書き
―学芸員の構想力と組織構成力
・工房作を見分ける目
―図版ではなく、実作品を見る経験を増やす
―感じたことを言葉に置き換える
―ちょっとした違いが何に由来するのかつきとめる
―探究心と行動力