美学・美術史特殊講義二〇一二


期末試験問題概略告知

一、講義で紹介した展覧会について基礎的な知識を問う(但し、第九講を除く)/○×問題/一〇問/各二点(二〇点)

二、回顧展について述べた文章の空欄に適切な用語を選んで文を完成させよ/穴埋め問題・選択肢あり/一〇問/各二点(二〇点)

三、展覧会の図録について、指定される五つの用語を適切に用いて論述せよ/論述問題・用語指定/字数制限なし/二〇点

四、企画展の課題(問題点や期待されること)について、この講義で学んだ内容に言及しつつ、自由に論述せよ。/論述問題・自由形式/字数制限なし/四〇点


成績評価方法

試験:一〇〇点満点×〇.七(計七〇点)

課題レポート:一〇点

出席:一〇回=一〇点(欠席毎マイナス一点 例:欠席三回=出席点七点)

※最初の一回をカウントしない

授業態度等の調整点:全回出席者にプラス二点

そのほか授業への参加度をオピニオンシートの回答等をもとに六〜一〇点の範囲で加算


美学・美術史特殊講義(後期)試験問題

実施日時 二〇一三年二月五日(火)
12時50分〜14時20分(90分)

(各二点、計二〇点)

一、次に示される(1)〜(10)の短文のうち、内容の正しいものに○印を、誤ったものに×印をそれぞれ解答用紙の各欄に記せ。

(1)第六十六回山口県美術展覧会は、日本画、洋画、彫刻、工芸、版画、写真、映像の七部門で構成された公募展として開催された。

(2)一八九〇年、ボストン美術館に日本美術部が設立された際、初代部長には岡倉天心が就任した。

(3)二〇一二年に国内二会場を巡回したベルリン国立美術館展の目玉作品は、フェルメール《真珠の耳飾りの少女》だった。

(4)松本竣介は三十六歳で亡くなった夭折の画家である。

(5)萩焼茶碗は、江戸後期には約十種の他産地陶磁器との混交が指摘され、多様な造形性を包含した国焼として認識されていた。

(6)シュルレアリスムは。ジークムント・フロイトの「無意識」を思想的背景として、人間が意識によって捉えられる現実世界を超えたものを追求する芸術運動であるが、ポール・デルヴォー自身は「自分が形式的な意味でシュルレアリストだと思ったことはない」と語っている。

(7)マウリッツハイス美術館展に出品された《四季の精から贈り物を受け取るケレス、それを取り巻く果実の花輪》は、人物をヘンドリック・ファン・バーレンが、果物をヤン・ブリューゲル(父)が描いたとされている。

(8)クレタ島出身のエル・グレコは、ヴェネツィア、ローマで修業し、スペインのマドリードで活躍した。

(9)会田誠の《ポスター(全十八連作)》は、小中学生が授業の課題として描くポスター風の作品を、二十八歳の時に描いた作品で、作家は「僕らしいシミュレーションアートが作れた」と語っている。

(10)ニシコは、被災地で壊れたものを収集し、それらを修復する「地震を直すプロジェクト」を行い、その成果をブログで公開している。

(各二点、計二〇点)

二、次の文を読み、空欄となっている( A )〜( J )に、のちに記されている(1)〜(30)のうち最も適当と思われる言葉を補い、文を完成せよ。解答用紙には、( A )〜( J )の各欄に該当する言葉を1〜30の番号で記すこと。

 振り返ってみること。過去のことを思い出すこと。これが「回顧」の辞書的な意味であるが、( A )で開催される回顧展には、それ以上の意味や役割がある。回顧展は何を振り返るのか。先ず、画家の場合は、( B )である。彫刻家の場合も、彼/彼女が過去に発表してきた作品を一堂に介することによって、( B )に相当するものを振り返るねらいがある。画家なり彫刻家なり現代美術家なり、それぞれの活動歴を振り返ると言い換えてもよい。その活動歴を( C )によって振り返る点に回顧展の大きな意味がある。もちろん、画集や作品集によっても、そうした役割をいくらかは果たすことができる。しかし、実際に会場に( C )を並べることによって得られる知覚や知見に、印刷物や記録写真をはるかに超え出る領域があることは確実である。そして、過去の( C )を一堂に並べる機会というものは、そうそう簡単には実現しえないものでもある。なぜならば、一般にそれぞれの( C )は、個々ばらばらに( D )されているからである。したがって回顧展を企画する際、( E )は、まず何がどこに( D )されているかをしっかりと把握していなければならない。( D )情報については、キャリアの長い作家であれば、過去に開催された回顧展の( F )が調査の手掛かりとなりえる。ただし、公立の( A )の( D )であれば、「パーマネント・コレクション」と呼ばれる通り、ほぼ永久にその情報に変化の可能性はないが、個人や( G )が( D )する( C )の場合、売却等による( D )先移転の可能性がありえる。よって、過去の( F )が出発点となるとはいえ、つねに情報の確認と更新が必要となる。そこに定期的に回顧展が開催される意義が求められる。更新されるのは、( C )の( D )情報に限らない。作家の( H )もまた、時代によって推移する。新たな( C )の発見によって、作家像が刷新される可能性もないとは言えない。美術館や展覧会が制度化する近代以前の画家や彫刻家等については、現在でもそうした新発見のニュースがメディアを賑すことがある。一般には、作家の生誕○○周年、没後○○周年という機会を捉えて回顧展が準備され、その時点での最新の研究成果が企画内容に盛り込まれる。したがって、回顧展が何度も開催されている作家であれば、その( F )に掲載されている( I )を通覧することで、作家の研究史や( H )の推移を振り返ることも可能となる。また、そうした意味では、回顧展の企画は作家個人を対象とするものに限定されえない。印象派や一九六〇年代など、美術家のグループや時代を回顧する展覧会の企画も盛んに行われている。これらの場合にも、現在の視点で、それらのグループや時代をどのように再( H )するのか、という企画者の視点が重要となってくる。展覧会の開催には相応の経費と労力とを要する。ばらばらに( D )されている( C )を一堂に介するために、( E )は、評価額と状態を調査し、( J )と保険料を見積もり、出品交渉を行う。( F )のために、写真撮影をする場合もある。こうして、( A )で開催される回顧展には、単に振り返る作業以上に、現在を確認・記録し、未来を展望するという積極的で文化的な意義があり、そうした意義が認められてこそ実現可能となると言えるのである。

 

(1)絵画  (2)彫刻  (3)版画  (4)画業  (5)略歴  (6)受賞歴  (7)評価  
(8)評伝  (9)評論  (10)注文  (11)論文  (12)作品  (13)寄贈  (14)購入  
(15)所蔵  (16)学芸員  (17)館長  (18)人気  (19)知名度  (20)入館者数  
(21)傑作  (22)巨匠  (23)図録  (24)絵ハガキ  (25)広告費  (26)輸送費  
(27)印刷費  (28)企業  (29)美術館  (30)ミュージアム・ショップ

 

(二〇点)

三、展覧会の図録について、次の五つの単語を適切に用いて論述せよ(字数制限なし)。

現代美術     学芸員     企画趣旨     出品歴     販売

 

 

(四〇点)

四、企画展の課題(問題点や期待されること)について、この講義で学んだ内容に言及しつつ、自由に論述せよ(字数制限なし)。

※本授業終了後(二〇一三年一月二十五日)に提出された「森美術館への抗議文」(別紙)を読んで、授業で紹介された「会田誠―天才でごめんなさい」展をめぐって自らの考えを述べる課題に挑戦することも可とする。

 

 

 

評価基準は、秀=一〇〇〜九〇、優=八九〜八〇、良=七九〜七〇、可=六九〜六〇、不可=五九〜〇である。本試験の結果をもとに各自の出席数による調整点等を加算したものを評点とする。また、三、四の解答のうち優れたものは、試験問題を蓄積し、今期以後の学生の参考に供するため、ウェブ上で公開する予定である。