世界のビエンナーレとトリエンナーレ


1.ビエンナーレ化現象

「1990年代を通してビエンナーレやトリエンナーレの新設が地球規模で増大し、それらに招待される作家の顔ぶれが似通ってしまったことを指して数年前からハウプトが使用し始めた」(2004年の記事)

  ≒2000年頃

ゲルハルト・ハウプト(Gerhard Haupt)「ユニヴァーシズ・イン・ユニヴァース(Universes in Universe)」

ビエンナリゼーション(biennalization)

グローバリゼーション(globalization)

Caravan(隊商)」:キュレーター率いるアーティスト集団が世界中のビエンナーレ会場を巡回する様子を評して、2007年頃までのユニヴァーシズ・イン・ユニヴァースの「ビエンナーレ・カレンダー」のページのトップに表示され、その後削除された。

 ◆ビエンナーレの設立史

1895 ヴェネツィア市国際美術展(のちのヴェネツィア・ビエンナーレ)
1896 カーネギー・インターナショナル
 …
1951 サンパウロ・ビエナウ 
1952 日本国際美術展(90年に廃止)
1955 ドクメンタ
1959 パリ・ビエンナーレ(〜85年、2006, 08-10年)
1961 宇部市野外彫刻展(2008年よりUBEビエンナーレ)
1968 インド・トリエンナーレ
1973 シドニー・ビエンナーレ/ホイットニー・バイエニアル
1977 ミュンスター彫刻プロイエクテ
1979 アジア美術展(福岡、1999年より福岡アジア美術トリエンナーレ)
1981 バングラデシュ・アジア・ビエンナーレ
1984 ハバナ・ビエナル/カイロ・ビエンナーレ 
1987 国際イスタンブール・ビエナリ 
1990 ダッカールト―現代アフリカ美術ビエンナーレ
1991 リヨン・ビエンナーレ
1992 台北雙年展(98年より国際展化)
1993 アジア太平洋現代美術トライエニアル/シャルジャ・バイエニアル
1995 ヨハネスブルグ・ビエンナーレ(97年で中止) / サイト・サンタフェ/光州ビエンナーレ
1996 マニフェスタ欧州現代美術ビエンナーレ/上海双年展(2000年より国際展化)
1997 メルコスール・ビエナウ
1998 ベルリン・ビエンナーレ/モントリオール・ビエンナーレ
1999 リヴァプール・バイエニアル
2000 大地の芸術祭 越後妻有アート トリエンナーレ
2001 横浜トリエンナーレ/ティラナ・ビエンナーレ/バレンシア・ビエンナーレ/オークランド・トリエンナーレ/ヨーテボリ・ビエンナーレ
2002 釜山ビエンナーレ/広州三年展/南京三年展
2003 プラハ・ビエンナーレ/中国北京国際美術双年展/CPオープン・ビエンナーレ
2004 セビーリャ現代美術国際ビエナル
2005 モスクワ現代美術ビエンナーレ/トリノ・トリエンナーレ/ブカレスト・ビエンナーレ
2006 シンガポール・ビエンナーレ
2007 アテネ・ビエンナーレ/テサロニキ現代美術ビエンナーレ/神戸ビエンナーレ/北九州国際ビエンナーレ
2008 プロスペクト
2009 チリ・トリエナル
2010 瀬戸内国際芸術祭/あいちトリエンナーレ

1890-1970年代

1980年代

1990年代

2000年代

開催都市の分布図


2.ビエンナーレに見られる多文化主義

 ◆多文化主義

【多文化主義】(multiculturalism)一つの国・社会に複数の民族・人種などが存在するとき、それらの異なった文化の共存を積極的に認めようとする立場。(『広辞苑』第六版、1755頁)

2−1.2008シドニー・ビエンナーレ

シドニーの街並み

ニューサウスウェールズ美術館

1. マイケル・ラコウィッツ( アメリカ合衆国)《白人は夢想しない》、2008年

2. ドリーン・リード・ナカマーラ(オーストラリア)《無題》(部分)、2008年

3. ヴェルノン・アー・キー(オーストラリア)《視線 Gaze》(部分)、2008年

2−2.チリ・トリエナル2009

サンティアゴ・デ・チリの街並み

国立美術館

4. 「国家の領土―19世紀チリの風景画と地図製作」展(国立美術館)

5. 「アイウィン―陰のイメージ」展(1)(2)、(現代美術館)

6. ホセ・バリエントス・ピチュヌアル《ウィトゥルンコの人々》

7. 「ポリロキオ」展(アメリカ大衆美術館)

8. ルフィナ・アルマダ(プエルト・カサド在住)

2−3.第9回ダッカールト―現代アフリカ美術ビエンナーレ

ダカールの街並み

ダニエル・ソラノ国立劇場

開幕式のセネガル大統領アブドゥライ・ワッドと同夫人

テオドール・モノ・アフリカ美術館別館

第1部 「展望」展 会場風景

9. ムナ・ジュマル・シアラ(チュニジア)《運命》、2009年

第2部 「回顧」展 会場風景

10. マンスール・シス・カナカシー(セネガル)《アフリカ合衆国紙幣50アフロ》

11. ンダリー・ロ(セネガル)(1)(2)


3.まとめ

 ・ビエンナーレ化現象

― 1980年代以降、国際美術展の開催が非欧米圏へ拡大

―文化における世界に対する存在感

―現代美術のグローバリゼーション

―人、モノ、情報の地球規模的な移動

 ・現代美術における多文化主義

―各開催地が地域独自の文化を発信

―現代美術に於ける欧米中心主義が反省される(脱欧米中心主義)

―「現代美術/伝統美術」、「現代美術/民族芸術」の二分法への反省


 ◆参考図書

岡林洋ほか編『アートを学ぼう』(ランダムハウス講談社、2008年)

暮沢剛巳、難波祐子編著『ビエンナーレの現在』 (青弓社、2008年)

サラ・ソーントン『現代アートの舞台裏』(ランダムハウス講談社、2009年)

 ◆参考URL

  ・Universes in Universe

http://universes-in-universe.org/eng/index.html