市内各所の展示と国際企画展部門
1.第54回展(2011年)の市内展示(地図 )
ジャルディーニやアルセナーレに国別展示スペースを持たない国は市内各所の教会や建物を借りて展示を行う。
◆国別展示と併催展
・国別展示(National Participations)=後発参加国による展示
・併催展(Collateral Events)=市内で開催される国別展示以外の公認企画展
◆作品紹介
4. イタリア館2011 ジーノ・デ・ドミニチス展(手前)/ラトビア館(左奥)への案内
5. グルジア館:「タマラ・クヴェシタゼ―表現手段を選ばず」展
6. 併催展:「朦朧」展(四方当代美術館、南京)、(会場風景)
7. リトアニア館:「ダリウス・ミクシス―白いカーテンの背後で」展(展示風景1)、(2)、(3)
8. 併催展:「聞かれたものと聞かれなかったもの―台湾の音の風景」(台北市立美術館)(展示風景1)、(2)
◆市内展示の問題点
・会場が一定しない
・場所がわかりづらい
・ヴェネツィア訪問者の滞在期間が短い
◆国別展示と併催展の近年の動向
・台湾、パレスチナ、クルディスタンなど「国家」として公認されていない地域を代表する企画が併催展の枠で紹介されている
・ヤン・ファーブルは3回連続して(2007, 09, 11年)独立した個展を開催
2.国際企画展部門
・ジャルディーニの中央館および、アルセナーレのコルデリエとアルティッリエリエの南半分で開催(会場図面)、(中央館図面)
・テーマ:照明/国家群(ILLMInations)
・総合監督:ビーチェ・クリーガー(チューリッヒ市立美術館のキュレーター、美術雑誌『パーケット(Parkett)』創設者)
◆作品紹介
10. ティントレット《動物の創造》、1550-53年
11. ティントレット《聖マルコの遺体の運搬》、1562-66年
12. ティントレット《最後の晩餐》、1591-94年
・ゲデウォン(エチオピア)/アシエル・メンディサバル(バスク)展示風景
15. アシエル・メンディサバル《ハード・エッジ》、2011年
16. ゲデウォン《護符》、1995年
17. ノーマ・ジーン(?)《誰が自由な表現を恐れているのか?》(1)、(2)、(3)、(4)
18. ギュイ・ド・コワンテ(フランス) /カール・ホルムクヴィスト(スウェーデン)ほか 展示風景
19. カール・ホルムクヴィスト(スウェーデン)《無題(記念碑的な)》(1)、(2)
20. ダヴィッド・ゴールドブラット(南アフリカ共和国)「諸地域」シリーズ展示風景
21. ダヴィッド・ゴールドブラット《ヨハネスブルグ北西への家族ピクニック 2009年8月15日》
22. ダヴィッド・ゴールドブラット《女性用宿泊所、アレクサンドリア、ヨハネスブルグ 2009年6月26日》
23. ダヴィッド・ゴールドブラット《コスモ・シティ、ヨハネスブルグ 2009年8月15日》
24. ダヴィッド・ゴールドブラット《ディープスルートの非公認居住区、ヨハネスブルグ 2009年8月15日》
26. ライアン・ガンダー(イギリス)《誰も知らない美術作品》(1)、(2)、(3)
◆参考資料
ヴェネツィア・ビエンナーレ第54回国際美術展図録より
ビーチェ・クリーガー
第54回国際美術展監督「照明/国家群」。これが2011年のヴェネツィア・ビエンナーレ国際美術展のために選ばれたタイトルです。刺激的であると同時に切迫したものであることを意図しています。このタイトルの参照元は明白ですが(アルチュール・ランボーの光をテーマにした詩やヴァルター・ベンヤミンの著述群に始まって、ビエンナーレ自身の国別の展示方法に至るまで)、それ以外にも美術の特性の一つ――唯一かけがえのないものであることと明るく照らし出す経験――を表現することも意図しています。
展覧会は、従来通り、ビエンナーレ公園にある中央館の中とアルセナーレの刺激的な通路に沿って展開され、とびきり濃密な瞬間や広範囲な出会いで構成されています。まさに詩と同じように、リズムを生み出そうと努めました。またそれだけでなく、異なる文化の地平からやって来て、異なる基準の下で活動している美術家たちのさまざま作品同士の間に、まったく思いもよらなかったいくつもの出会いを生み出すことを目指しました。それは私たちが、美術の世界が単に孤独に活動する個人たちの集まりであるのみならず、本来的にさまざまな意志の共同体であると信じるからです。
これが、現代美術展の文脈にティントレットの作品を挿入することを選んだ理由です。おそらく、予想外の選択でしょう。しかしビエンナーレの感情および歴史的な背景を探ると、展覧会全体の中心テーマである光について、ティントレットが光の画家であるという事実を超越するような興味深い見通しが切り開かれるのです。
美術展とその展覧会図録の準備作業は、いつも長くて大変で冒険に満ちた旅のようなものです。ヴェネツィア・ビエンナーレの場合、それだけにとどまらず、途方もなく、また全体的に容易でない歴史的で都市的な背景のために、まったく独自の経験としての面もあります。最初に誰よりも先ず、私の深い感謝の気持ちをパオロ・バラッタ理事長に捧げます。彼の先見性ある支援と、そして私たちの間に持続的で建設的な対話が続いたことに感謝します。そして立案、組織化、実現にあたって、この刺激的な冒険を私とともに歩んでくれたすべての人びとに感謝を申し上げます。最初に、すべての美術家たちに対して。そしてビエンナーレ事務局の専門スタッフたちへ。また、ユーモアのセンスと批評に富む知性によっていつも刺激を与えてくれたジョヴァンニ・カルミネ、そして粘り強くかつ高い実現力を持った仲間ティナ・シュナイダーに対しては、特に感謝しています。
これらの文章を書いている今、展覧会の開幕はほんの1か月と少し先に迫っています。この冒険はじきに新しい章を完成するでしょう。そして公衆との直接的な対面と、議論とがそれに続くでしょう。そのとき初めて旅は完了します。新しさと驚きに富んだ「照明/国家群」として。
3.まとめ
・市内各所の展示
―国別展示(後発参加国)、併催展、独自企画展
―教会や建物を借用=開催のたびに会場が変わる場合も
―迷路のようなヴェネツィア市内
―ジャルディーニとアルセナーレの利便性と優位性
・国別企画部門のテーマ
―照明/国家群(ILLUMInations)
―ティントレットと現代美術(予期せぬ出会い)
―パラ・パヴィリオン(建築と美術作品との協働)
―大づかみなテーマ設定=巨視的な俯瞰