フランス国立クリュニー中世美術館所蔵 貴婦人と一角獣展
◆貴婦人と一角獣展の概要 会場写真
企画展/巡回展/テーマ展
会期・会場:
2013年4月24日〜7月15日 国立新美術館
2013年7月27日〜10月20日 国立国際美術館
◆巡回展
・海外等からの借用によって集められた作品の集合(=展覧会)を、2つ以上の離れた地域に存在する美術館で順次紹介する展覧会の形式
・海外所蔵先と日本との間の往復の輸送費や保険料、カタログ印刷費等を「共通経費」として開催館同士で分担することにより、一館あたりの経済的負担を軽減することが可能
・同程度の会場規模を持つこと、他の展覧会の会期とのスケジュール調整が必要
・会場によって出品作品に変更がある
・大手新聞社が参加し、海外との連絡調整を行うことがある
◆作品スライド
1. 《触覚》《味覚》《嗅覚》《聴覚》《視覚》《我が唯一の望み》
2. 《触覚》、1500年頃、羊毛、絹、高さ 369-373cm、幅 352-358cm、国立クリュニー中世美術館
3. 《味覚》、1500年頃、羊毛、絹、高さ 374-377cm、幅 458-466cm、国立クリュニー中世美術館
4. 《嗅覚》、1500年頃、羊毛、絹、高さ 367-368cm、幅 318-322cm、国立クリュニー中世美術館
5. 《聴覚》、1500年頃、羊毛、絹、高さ 368-369cm、幅 290cm、国立クリュニー中世美術館
6. 《視覚》、1500年頃、羊毛、絹、高さ 311-312cm、幅 330cm、国立クリュニー中世美術館
7. 《我が唯一の望み》、1500年頃、羊毛、絹、高さ 311-312cm、幅 330cm、国立クリュニー中世美術館
8. 《婚約用あるいは結婚用の小箱》、16年世紀初頭、木、74×13.6×7.7cm、国立クリュニー中世美術館
9. 《聖女バルバラ》、1515-20年、木、彩色、31×3×6cm、国立クリュニー中世美術館
◆一角獣
額に長い角を持つ馬に似た伝説上の動物。英語で「ユニコーン」ともいう。処女にしか捕らえられないとされ、処女の膝に抱かれた一角獣の姿は、特にゴシックのタペストリーで好まれた。この情景は聖母マリアの処女懐胎を象徴する一方で、純潔の寓意として結婚祝いの家具や記念品にも描かれた。
出典:『岩波 西洋美術用語辞典』(岩波書店、2005年)、31頁。
◆タペストリー
「敷物」という意味のギリシア語tapetionに由来。染めた糸で図柄を織りだした厚手の壁掛け。装飾だけでなく保温という用途もあり、特に中世において領主の館などで好んで用いられた。「綴織(つづれおり)」と訳される。フランス語で「タピスリー」ともいう。
出典:『岩波 西洋美術用語辞典』(岩波書店、2005年)、192頁。
◆貴婦人と一角獣 関連年表
1340年 リヨンで紡毛織物業を営んでいたル・ヴィスト家の始祖バルテルミー死去、長子ジャン1世が当主となる
1489年 ジャン4世、シャルル8世の治下で租税法院の院長となる
1498頃 彩飾写本《アンヌ・ド・ブルターニュのいとも小さき時禱書》が制作される
1500年頃 アントワーヌ2世・ル・ヴィストが《貴婦人と一角獣》を注文(?)。下絵は上記彩飾写本の画家(?)
1814-15年 郷土史家ジョゼフ・ジュリエットンが、《貴婦人と一角獣》を「トルコのタピスリー」として紹介
1844年 ジョルジュ・サンド、連載小説『ジャンヌ』で《貴婦人と一角獣》に言及
1882年3月 ブサック市議会、《貴婦人と一角獣》を25,500フランで国に売却することを提案。同年6月、売却を決定
参照: 宮島綾子編「関連年表」、『フランス国立クリュニー美術館所蔵
貴婦人と一角獣展』図録(NHK、2013年)、150-
◆まとめ
・巡回展
―「共通経費」による予算圧縮と事業内容の充実
―学芸員のネットワークと新聞社のネットワーク
―異なる会場で展示の工夫を比較して見る楽しみ
―パッケージングとカスタマイズ
―美術館の規模(予算、展示面積)と専門性
・五感
―西欧には「五感のヒエラルキー」があった
―物質から精神へ
―触覚、味覚、嗅覚、聴覚、視覚
―写真や映像に囲まれた現代=視覚中心
―視覚以外の感覚の活躍する機会は?