モローとルオー 聖なるものの継承と変容
私は、君を、私の絵画教義の代表者だと見なしています。君が(美術学校のコンクールで)成功しない最大の理由はそこにあります
――モロー
◆モローとルオー展の概要 会場写真
企画展/巡回展/二人展/テーマ展
会期・会場:
2013年9月7日〜12月10日 パナソニック汐留ミュージアム
2013年12月20日〜2014年3月23日 松本市美術館
東京会場組織構成:
主催:パナソニック汐留ミュージアム、NHK、NHKプロモーション、東京新聞
後援:外務省、在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本、港区教育委員会
協賛:大日本印刷
協力:エールフランス航空、NCA
特別協力:ギュスターヴ・モロー美術館、ジョルジュ・ルオー財団
◆出品歴とは
・作品が出品された展覧会を時系列で整理したリスト。所蔵美術館にとっては「貸出履歴」
・美術史研究において、後の時代に広く影響を及ぼした作品については、制作年と発表年の確認が重要な手続きとなる
・国内で開催される展覧会の図録に出品歴が掲載される事例が増えてきている(研究の進展の反映)
・海外所蔵作品の場合、「初公開/過去に来日」の確認が可能。そうした確認を通して「借用しやすい作品/あまり貸し出されない作品」、「人気の高い作品/あまり知られていない作品」、「保存状態の良い作品/移動困難な作品」、「保険料の過多」などを読み解く手掛かりとなる
◆作品スライド
1. ギュスターヴ・モロー
1. ギュスターヴ・モロー《自画像》、墨・カンヴァス、41×32 cm、ギュスターヴ・モロー美術館
2. ジョルジュ・ルオー《自画像》、1895年木炭、チョーク・紙(カンヴァスで裏打ち)、73×53.7 cm、ジョルジュ・ルオー財団
3. モロー《ピエタ》、1854年、油彩・カンヴァス、75×96 cm、岐阜県美術館
4. モロー《聖セバスティアヌスと天使》、1876年頃、油彩・板、27×15 cm、岐阜県美術館
5. モロー《サロメ》のための習作(洗礼者ヨハネの斬首)、油彩・カンヴァス、40×32.6 cm、ギュスターヴ・モロー美術館
6. モロー《ヘラクレスとレルネのヒュドラ》、油彩・カンヴァス、155×132 cm、ギュスターヴ・モロー美術館
7. モロー《ユピテルとセメレ》、油彩・カンヴァス、141.5×110 cm、ギュスターヴ・モロー美術館、出品歴:1964 国立西洋美術館/2005 島根県立美術館ほか
8. モロー《一角獣》、油彩・カンヴァス、78×40 cm、ギュスターヴ・モロー美術館
9. モロー《パルクと死の天使》、1890年頃、油彩・カンヴァス、110×67 cm、ギュスターヴ・モロー美術館、出品歴:1964 国立西洋美術館ほか/1974 天満屋岡山店ほか
10. モロー《トミュリスとキュロス または トミュリス女王》、油彩・カンヴァス、57.5×87 cm、ギュスターヴ・モロー美術館、出品歴:1984 山梨県立美術館ほか/2008 東京ほか
2. ジョルジュ・ルオー
11. ルオー《石臼を回すサムソンン》、1893年、油彩・カンヴァス、146.68×113.98 cm、ロサンゼルス・カウンティ美術館
12. ルオー《ウォルスキ王トゥルスの館のコリオラヌス》、1894年、油彩・カンヴァス、46×38 cm、パリ、国立高等美術学校
13. ルオー《死せるキリストとその死を悼む聖女たち》、1895年、木炭、黒チョーク、白チョークによるハイライト・賽の目線入り紙(カンヴァスで裏打ち)、112×143 cm、ジョルジュ・ルオー財団
14. ルオー《法廷》、1909年、油彩・厚紙、75×105.3 cm、パナソニック汐留ミュージアム
15. ルオー《モデル、アトリエの思い出》、油彩、インク、グワッシュ・カンヴァス、81.3×65.1 cmパリ、個人蔵
16. ルオー《クマエの巫女》、1947年、油彩・紙(格子状の桟の付いた板で裏打ち、)53.2×37.8 cm、パリ、個人蔵
17. ルオー《我らがジャンヌ》、1948-49年、油彩・紙(格子状の桟の付いた板で裏打ち)、66.7×48 cmパリ、個人蔵
◆モローとルオー展図録の構成
ごあいさつ/展覧会によせて/メッセージ
マリー=セシル・フォレスト「ギュスターヴ・モローの名誉を保ち彼を擁護したジョルジュ・ルオー」
後藤新治「ギュスターヴ・モローとジョルジュ・ルオーの往復書簡」
カタログ
ギュスターヴ・モローのアトリエ
裸体表現
聖なる表現
マティエールと色彩
コラム:増子美穂「ギュスターヴ・モロー―夢の美術館計画」
特別セクション―幻想と夢
解説:細萱禮子「幻想と夢―受け継がれる精神―」
エマニュエル・シュワルツ「美術学校教授としてのギュスターヴ・モロー―芸術と詩情を追い求めて」
エマニュエル・マセ「ジョルジュ・ルオーの初期サロン作品(1895-1897)」
レミ・ラブリュス「夢見た共同体 ジョルジュ・ルオーと『アトリエ・モロー』という神話」
ギュスターヴ・モロー/ジョルジュ・ルオー略年譜
欧文文献目録/主要邦文文献目録
出品作品の参考文献・展覧会歴
作品リスト
◆モロー/ルオー 略年譜
1826年 モロー、パリに生まれる
1849年 ローマ賞歴史画部門最終試験まで進み受賞を逃す。国立美術学校を退学
1869年 サロンで3度目のメダルを獲得。以後、無審査となる
1871年 ルオ−、パリに生まれる
1892年 ルオー、モローの教室に入り、弟子となる
1895年 モロー、自邸を美術館にする改装工事に着手/ルオー、2度目のローマ賞に挑戦し受賞を逃す。モローに退学を勧められる
1897年 モロー、遺言書でルオーに5,000フランを遺贈
1898年 モロー、胃癌のため死去(72歳)
1903年 ギュスターヴ・モロー美術館開館。ルオーが初代館長
1914年 第一次大戦により疎開。キリスト像への関心高める
1926年 福島繁太郎の別荘のあるスイスのシエールに滞在、交流
1948年 未完成作315点を焼却
1958年 ルオー、死去(87歳)、フランス政府による国葬
参照: 「ギュスターヴ・モロー/ジョルジュ・ルオー 略年譜」、モローとルオー
聖なるものの継承と変容』展図録(淡交社、2013年)、
◆まとめ
・出品歴
―美術史研究の基礎的情報
―「日本初公開作品/過去に来日した作品」を確認
―作品や展覧会の「裏側」を読み解く手掛かり
―「お気に入り作品」を見つける展覧会鑑賞とは別の見方
・モローとルオー
―66歳のモロー(死の6年前)と45歳年下の21歳のルオーとの出会い
―ルーヴル美術館での模写、色彩とマティエールの重視
―美学上の自由主義と生徒の資質を伸ばす指導
―「最高の指導者であり偉大なる父」(ルオー)