美学・美術史概論W 二〇一四


期末試験問題概略告知

一、 講義で紹介した美術家について、ヴァザーリの記述に即して基礎的な知識を問う。/○×問題/一五問/各二点(三〇点)

二、講義で紹介した 美術用語について基礎的な理解を問う。/○×問題/一五問/各二点(三〇点)

三、ジョルジョ・ヴァザーリについて解説した文の空欄に、適切な用語を選んで文章を完成させよ。/穴埋め問題・選択肢あり/五問/各二点(一〇点)

四、講義で紹介された作品を二点以上挙げ、作者名とともに記した上で、それらの作品を対比させつつイタリア・ルネサンスの特色について論じなさい。/論述問題・課題あり/字数制限なし/ 三〇点


成績評価方法

試験:一〇〇点満点×〇.八(計八〇点)

出席:一三回=一三点(欠席毎マイナス一点 例:欠席三回=出席点一〇点)

※最初の一回をカウントしない

授業態度等の調整点:全回出席者にプラス二点

そのほか授業への参加度をオピニオンシートの回答等をもとに五〜一〇点の範囲で加算


美学・美術史概論W試験問題

実施日時 二〇一四年七月二十八日(月)
10時20分〜11時50分(90分)


(各二点、計三〇点)

一、次に示される(1)〜(15)の短文のうち、ヴァザーリの記述に即して正しいものに○印を、誤ったものに×印をそれぞれ解答用紙の各欄に記せ。

(1)チマブーエの制作中の絵を見ようとしたアンジュー公シャルルは、自分以外には誰にも見せまいとしたので、フィレンツェ中の男女が集まって大騒ぎになった。

(2)ジョットは、戦乱のために長い間廃れていたチマブーエの技法を再興した。

(3)ウッチェルロが緑土を使って描いた騎馬像は、ヴァザーリの時代にこの種の絵で最も美しいものと考えられていた。

(4)マザッチョは、自然をあるがままに、できる限り飾り気なく正確に再現することが絵画の本質であると考えていた。

(5)ピエーロ・デルラ・ フランチェスカの《コンスタンティヌス帝の夢》に描かれた飛来する天使は、前縮遠近法で描かれている。

(6)フラ・アンジェリコは、絵筆をとる前にまず祈りを捧げ、キリストの磔刑図を描くときは泣きながら描いた。

(7)フィリッポ・リッピは、子どもの頃、勉強が嫌いで自分や他人の本に落書きばかりしていた。

(8)ジョヴァンニ・ベルリーニには二人の息子がおり、二人とも画家として活躍した。

(9)ボッティチェルリは隣家の織機の騒音に耐えかねて、自分の家の壁の上に巨大な石を置き、織機の震動でその石が隣の家全体を潰すようにした。

(10)マンテーニャは卑しい家系の出身であったが、才能に恵まれて出世し、騎士の身分を獲得した。

(11)レオナルド・ダ・ヴィンチは、自然の事物について哲学的思索にふけり、天空の動きや月の軌道、太陽の運行などを研究した。

(12)ジョルジョーネは、天馬空を行くような奔放な思いつきで、一人の人間の前後左右、四方向から見た姿を一枚の絵の中に表現した。

(13)ラファエルロが、ある女性に夢中になっていたためにキージの開廊の装飾の仕事が手につかなくなった際、周りの人びとは、その女性を仕事場に連れてきて同棲できるよう取りはからい、仕事の完成を促した。

(14)ミケランジェロがシスティーナ礼拝堂の天井画制作を依頼された際、フレスコ画の経験がなかったのでフィレンツェからやって来た職人の仕事ぶりを見たが彼はそれに満足できず、結局すべて一人でやりとげる決心をした。

(15)ティツィアーノはジョルジョーネの作風をよく真似たので、ジョルジョーネの作品と勘違いされることもあった。

 


(各二点、計三〇点)

二、次に示される(ア)〜(ソ)の説明に適合する美術用語を、のちに記されている(a)〜(z)から選んで解答用紙の各欄に記せ。

(ア)古代の学芸の再生を意味する。ヴァザーリが『美術家列伝』で用い、十九世紀にジュール・ミシュレによってフランス語化された。

(イ)旧約聖書に登場するユダヤ民族の指導者。杖、石版、巻物などがアトリビュート。

(ウ)旧約聖書に登場する正しい人物。人間の悪徳に怒った神が大洪水で人類を滅ぼした際に、家族とともに救われた。

(エ)旧約聖書に登場する族長。神によって信仰心を試され、一人息子を犠牲に捧げようとしたが、間一髪のところで天使が止めに来た。

(オ)「憐れみ」を意味し、キリストの遺体に聖母マリアがすがりつくなどして悲しむ情景を指す。

(カ)父なる神と子なるキリスト、聖霊の三者が唯一の神の異なる発現形態であると考える神学思想。

(キ)十字架、槍、聖衣、茨の冠などの総称。ラテン語で「アルマ・クリスティ」。聖遺物として礼拝の対象となった。

(ク)アダムが持ち出した知恵の木の枝が、後世、モーセが青銅の蛇を立てた竿となり、キリストの十字架に用いられたとする物語。

(ケ)十五世紀のイタリア・ルネサンス期を指すイタリア語。

(コ)ルネサンスを牽引した理知的で理想主義的傾向を持つ芸術家たちの総称。

(サ)ルネサンスおよび十八世紀に活躍した画家たちの総称。鮮やかな色彩と享楽的な主題解釈を特徴とする。

(シ)盛期ルネサンスの後に登場した様式。極端に引き伸ばされた人体、歪んだ構図、強い原色などを特徴とする。

(ス)古代ギリシアの学問芸術を司る女神。アポロンとともにパルナッソス山に住む。

(セ)ルネサンス以降に発達した共同体で、親方を中心とする制作集団。

(ソ)「煙のような」という意味。対象の輪郭をぼかして描く明暗法の一種。
 

(a)アブラハム  (b)アフロディテ  (c)イコノグラフィー  (d)イコノロジー  
(e)ヴェネツィア派  (f)遠近法  (g)クアトロチェント  (h)原罪  (i)工房  (j)三美神  
(k)三位一体  (l)受難具  (m)スフマート  (n)聖十字架伝説  (o)青銅の蛇  
(p)ソロモン  (q)ダビデ  (r)ノア  (s)パラゴーネ  (t)ピエタ  (u)ヒエロニムス  
(v)フィレンツェ派  (w)マニエリスム  (x)ムーサ  (y)モーセ  (z)ルネサンス

 


(各二点、計一〇点)

三、次の文を読み、空欄となっている( A )〜( E )に、のちに記されている(1)〜(15)のうち最も適当と思われる言葉を補い、文を完成せよ。解答用紙には、( A )〜( E )の各欄に該当する言葉を(1)〜(15)の番号で記すこと。

 ジョルジョ・ヴァザーリの著作『美術家列伝』には、( A )に始まり、ミケランジェロで頂点に達する美術家たちの栄光の歴史が書かれている。彼はミケランジェロの弟子であり、良き友人でもあった。( B )の評伝の中では、二人でアトリエを訪ね、本人の前では彼の絵を褒めちぎったが、アトリエを出た後は「デッサンをよく学んでいない」とミケランジェロが批判した、というエピソードも記している。
 ヴァザーリはトスカーナ大公( C )に使えた。彼の治世を讃える天井画を( D )の五百人広間に残している。画家、建築家、著述家として多様な活躍の機会に恵まれたが、( C )が一五七四年四月二十一日に亡くなると、後を追うように同年の六月二十七日に六十四歳で亡くなった。ヴァザーリ研究者のロラン・ル・モレは、「何の病気で死んだかは定かでない。一生涯にわたって働き続けたために溜まった長年の疲労でもって力尽き、心身ともに消耗してしまったのだ」と評している。ヴァザーリの遺体は、生まれ故郷の( E )にあるピエーヴェ・ディ・サンタ・マリア寺に埋葬されたが、一八六五年の改装時に、他の人びとの遺骨と混ざってしまい、それ以後特定できなくなったという。


(1)チマブーエ  (2)ジョット  (3)マザッチョ  (4)ジョルジョーネ  (5)ラファエルロ  
(6)ティツィアーノ  (7)コジモ・デ・メディチ  (8)ジュリアーノ・デ・メディチ  (9)コジモ一世  
(10)ウフィツィ美術館  (11)パラッツォ・ヴェッキオ  (12)サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂  
(13)フィレンツェ  (14)シエナ  (15)アレッツォ


(三〇点)

四、講義で紹介された作品を二点以上挙げ、作者名とともに記した上で、それらの作品を対比させつつイタリア・ルネサンスの特色について論じなさい。

 

 

 

評価基準は、秀=一〇〇〜九〇、優=八九〜八〇、良=七九〜七〇、可=六九〜六〇、不可=五九〜〇である。本試験の結果をもとに各自の出席数による調整点等を加算したものを評点とする。また、四の解答のうち優れたものは、試験問題を蓄積し、今期以後の学生の参考に供するため、ウェブ上で公開する予定である。


一〜三の解答