第十二講 総括:ビエンナーレの歴史と現代の国際美術展


1. 第T期・第U期の統計的評価

a. 第T期・第U期の統計的評価―外国人作家の推移

b. 第T期・第U期―外国人作品とイタリア人作品の推移

c. 第T期・第U期―外国人とイタリア人の作品数割合の推移

d. 第T期・第U期の統計的評価―観客数の推移

作家・作品数の増加/観客数の減少

・外国人の作家数は、第19回展(1934年)まで増加

・第23回展(1942年)の 291名は、第T期の前半、第1回展(1895年)の156名、第3回展(1899年)の277名、第4回展(1901年)の256名、第5回展(1903年)の154名より多い

・イタリア人作品数が外国人作品数を凌駕するのは、全 23回のうち6回のみ(第T期=第3回、5回、10回/第U期=第20回、22回、23回)

・第16回展(1928年)〜第19回展(1934年)は、観客数の上昇が続いた


2. 第T期・第U期の作品傾向の分析

第T期の後期サロン美術と第U期のファシズム美術

There is a conflict implicit in the fact that the rise of Fascism, which had an increasing influence on the Biennale, coincided with the first exhibitions of early modern art at Venice. In addition, the international style of Post-Impressionism was different in substance from the form of internationalism embodied in late Salon art. However, the Venetian artists whose taste shaped the early Biennales were not abandoned; they continued to be honored, but their painterly style was now accompanied by alternative forms of Italian art. There was programmed Fascist art as well as a subtle classicizing art not ostensibly Fascist at all.

(ファシズムの台頭と近代美術の紹介の並行性。第T期の傾向を決めたヴェネツィア的趣味の継続と変容)

(Alloway, p.93.)


1. グリエルモ・チャルディ《夢の都市》、1909年、油彩・カンヴァス、97×195cm、ヴェネツィア財団、第8回展(1909年)出品

2. エドワード・バーン=ジョーンズ(イギリス)《ランスロットの夢》、1896年、油彩・カンヴァス、138.5×169.8cm、サウサンプトン市立美術館、第4回展(1901年)出品

3. グスタフ・クリムト(オーストリア)《ユーディットII ―サロメ》、1909年、油彩・カンヴァス、175×45cm、カ・ペーザロ近代美術館、第9回展(1910年)出品

4. ピエール=オーギュスト・ルノワール(フランス)《浴後》、1888年、油彩・カンヴァス、65×54 cm、個人蔵、第5回展(1903年)出品

5. ホアキン・ソローリャ・イ・バスティーダ(スペイン)《帆繕い》、1896年、油彩・カンヴァス、220×300 cm、カ・ペーザロ近代美術館、第6回展(1905年)出品

6. ジャック=エミール・ブランシュ(フランス)《手紙(2人の姉妹)》、1898年、油彩・カンヴァス、162×156cm、ニース、ジュール・シェレ美術館、第3回展(1899年)出品


第12回展(1920年)のフランス館

セザンヌ個展/28点

  油彩等

シャルル・アングラン(Charles Angrand, 1854-1926)/3点
ピエール・ボナール/2点
アンリ・エドモン・クロス(Henri Edmond Cross, 1856-1910) /3点
シャルル・ゲラン/2点
マクシミリアン・ルース (Maximilien Luce, 1858-1941) /7点
アルベール・マルケ/2点、アンリ・マティス/2点、オディロン・ルドン/2点
ケル・グザヴィエ・ルーセル(Ker-Xavier Roussel, 1867-1944) /1点
ジョルジュ・スーラ 4点、ポール・シニャック/ 11点, 水彩6点
ルイ・ヴァルタ(Louis Valtat, 1869-1952) /7点

  彫刻

アリスティード・マイヨール /1点

  素描・版画等

オディロン・ルドン/リトグラフ9点
アンドレ・ルーヴェイル(André Rouveyre, 1879-1962)/木版5点組み
テオフィル・アレクサンドル・スタンラン(Théophile Alexandre Steinlen, 1859-1923)/デッサン5点、エッチング2点、リトグラフ5点
フェリックス・ヴァロットン/エッチング5点

7. ポール・セザンヌ(フランス)《赤い肘掛け椅子のセザンヌ夫人》、1877年頃、油彩・カンヴァス、72.4×55.9 cm、ボストン美術館、第12回展(1920年)出品

8. ポール・セザンヌ(フランス)《ジャ=ドゥ=ブフォンの栗林》、1885-86年頃、油彩・カンヴァス、71.12×90.17 cm、ミネアポリス美術館、第12回展(1920年)出品

9. ジョルジュ・スーラ(フランス)《サーカス》、1891年、油彩・カンヴァス、185×152cm、オルセー美術館、第12回展(1920年)出品

10. アンリ・マティス(フランス)《裸婦(カルメリータ)》、1904年、油彩・カンヴァス、81.3×59cm、ボストン美術館、第12回展(1920年)出品

11. ポール・シニャック(フランス)《ヴェネツィア―ヨット》、第12回展(1920年)出品


イタリア人作家の個展・回顧展

 第12回展(1920年):

・プリニオ・ノメッリーニ/43点
・フェデリコ・ベルトラン・マッセス/22点
グリエルモ・チャルディ†/42点
・ウンベルト・モッリオリ†/20点
・アントニオ・マンチーニ/21点
・カミッロ・ミオラ†/8点
・ピエトロ・スコッペッタ†/35点


 第13回展(1922年):

・アントニオ・カノーヴァ†/20点
・カルロ・ボナット・ミネッラ†/7点
エットーレ・ティト/42点
・ウベルト・デッロルト†/13点
アメデオ・モディリアーニ†/12点
・エウゲネ・デ・ブラース/31点
・ヴィットリオ・ツェッキン/8点
・アドルフォ・ウィルト+アレッサンドロ・マッズコテッリ/60点
・セラフィノ・マッキアティ†/32点
・マリオ・プッチーニ†/38点
・リノ・セルヴァティコ/37点
・フランチェスコ・アイエツ†/21点
・モゼ・ビアンキ†/61点
・ウンベルト・ヴェルダ†/26点
・アンドレア・タヴェルニエル/36点
・ウゴ・マルテッリ†/7点


 第14回展(1924年):

・アルマンド・スパディーニ/49点
・ウンベルト・ベロット/52点
「ノヴェチェントの6人の画家」展/ 19点
・アントニオ・マライーニ/48点
・ジュゼッペ・グラツィオージ/42点
・フェリチェ・カソラティ/14点
・バルトロメオ・ベッツィ†/29点
・フェルッチョ・スカットラ/27点
ピエトロ・フラジャコモ†/100点
・ウバルド・オッピ/25点
・ドメニコ・インドゥノ†/28点
・ウゴ・ヴァレリ/50点
・アントニーノ・レト†/28点


 第15回展(1926年):

・ジョヴァンニ・セガンティーニ†/40点
・フェリチェ・カレナ/50点
・エウジェニオ・バローニ/19点
・ジャチント・ジガンテ†/40点
・ダニエレ・ランゾーニ†/43点
・アルデンゴ・ソッフィチ/25点
・マリオ・デ・マリア/25点
・エミリオ・ゴラ†/25点
・ガスパレ・ランディ†/21点
・リノ・セルヴァティコ/45点
・アルトゥーロ・ダッツィ/11点


 第16回展(1928年):

・「19世紀のイタリア絵画」展/246点


 第17回展(1930年):

エットーレ・ティト/45点
アメデオ・モディリアーニ/46点
・モロニ・アントネッロ/37点
・「イタリア未来派」展/127点


 第18回展(1932年):

・ジョヴァンニ・ボルディーニ†/71点
・ロモロ・ロマーニ†/14点
・レンブラント・ブガッティ†/12点
・「ヴェネツィア美術の30年 1870-1900」展/87点
フランチェスコ・パオロ・ミケッティ†/38点
・ヴィンチェンツォ・ジェミト†/55点
・アッリゴ・ミネルビ/10点
・ヴィタリアーノ・マルキーニ/16点
・ダンテ・モロッツィ/11点
・アルトゥーロ・ダッツィ/22点
・ジュゼッペ・モンタナリ/23点
「パリのイタリア人」展/54点
・アルトゥーロ・マルティーニ/5点
・アルベルト・サリエッティ/35点
・ジャンニ・ヴァネッティ/9点
・アキッレ・フーニ/27点
・ジョヴァンニ・コラチッキ/9点
・エミリオ・ソブレロ/11点
・メダル作家展/66点
・ダリオ・ヴィテルボ/21点
・アルド・カルピ/22展
・ラファエレ・グラダ/24点
「航空絵画とイタリア未来派の絵画」展(フォルトゥナート・デペーロ/36点;エンリコ・プランポリーニ/25点)/99点


 第19回展(1934年):

・リベロ・アンドレオッティ†/39点
・「イタリア未来派航空絵画」展/95点


 第20回展(1936年):

ジーノ・セヴェリーニ/17点
・フェリチェ・カレナ/17点
カルロ・カッラ/20点
・マッシモ・クアリーノ素描展/29点
・マリオ・ヴェッラニ・マルキ素描展/点数不明
エットーレ・ティト/26点
・ジジ・チェッサ/45点
イタリア未来派館(ロシア館)/113点
・イタリア版画素描館(アメリカ合衆国館)/64, 69, 76, 59点


 第21回展(1938年):

・ピエロ・マルッシグ†/34点
「アフリカとスペインの未来派航空絵画」展/63点


 第22回展(1940年):

「ファシズム主題公募」展/28, 31点
・カルロ・デ・ヴェローリ†/15点
・「ヴェネツィア公募」展/34, 19, 19点
・チェーザレ・フェッロ†/ 17点
・ジャコモ・グロッソ†/23点
・ヴィンチェンツォ・ミリアロ†/41点
・フランチェスコ・サルトレッリ†/25点
・アルキメデ・ブレシアーニ・ダ・ガゾルド†/11点
・フェルッチォ・ヴェッキ/37点
「イタリア未来派―航空絵画と共時航空肖像画」展/68点


 第23回展(1942年):

・陸軍展(イギリス館)/144点
・海軍展(アメリカ合衆国館)/150点
・空軍展(フランス館)/186点
・公募展(ギリシア館)/111点
未来派館(ベルギー館)/234点


12. エンマ・チャルディ(イタリア)《5月の光》、1920年頃、油彩・カンヴァス、68.5×92.5 cm、ヴェネツィア財団、第12回展(1920年)出品

13. アメデオ・モディリアーニ(イタリア)《ルニア・チェホフスカ》、1917年、油彩・カンヴァス、82×60 cm、グルノーブル、絵画彫刻美術館、第13回展(1922年)出品

14. フランチェスコ・アイエツ(イタリア)《アレッサンドロ・マンゾーニの肖像》、1841年、油彩・カンヴァス、117×91cm、ミラノ、ブレラ美術館、第13回展(1922年)出品

15. レオナルド・ディドレヴィッレ(イタリア)《愛―最初の一言》、1924年、油彩・カンヴァス、266×364 cm、カリポロ財団、第14回展(1924年)出品

16. ピエトロ・フラジャコモ(イタリア)《夕刻》、1895年頃、油彩・カンヴァス、65.5×112.5 cm、個人蔵、第14回展(1924年)出品

17. ルイジ・ルッソロ(イタリア)《シャボン玉吹き》、1929年、第17回展(1930年)出品

18. ジェラルド・ドットーリ《10年》、1932年、技法・寸法・所在等不明


3. 今年度開催される国際美術展

 ◆国内

札幌国際芸術祭2014(7/19〜9/28)

ヨコハマトリエンナーレ2014(8/1〜11/3)

第5回福岡アジア美術トリエンナーレ2014(9/6〜11/30)

 ◆海外

光州ビエンナーレ(9/5〜11/9)

台北雙年展(9/13〜2015. 1/4)

釜山ビエンナーレ(9/20〜11/22)


まとめ

 ・第T期・第U期

―ヴェネツィアゆかりの画家、後期サロン芸術、近代主義

―イタリア性、ノヴェチェント、未来派、ファシズム

―フランス美術の影響力

―日本における欧米美術史理解

 ・今年度開催される国際美術展

―ビエンナーレ、トリエンナーレ、国際芸術祭

―地域性と国際性、都市と自然

―「現代」美術

―作家、サポート・スタッフ、観客、市民の出会いの場