第68回山口県美術展覧会
◆第68回山口県美術展覧会の概要 会場写真
公募展／単館開催
会期：10月2日～10月19日
会場：山口県立美術館
主催：山口県
出品数：359点
入選数：113点
審査会：9月16･17日
審査員：川﨑晃一（審査委員長）、佐藤時啓、福永治※1979年の山口県立美術館の開館を機に改革に着手
1993年の第47回展以降、ノンジャンル化
◆「現代の美術」と「現代美術」―「現代」と「近代」と「同時代」
・現代…Modern, Contemporary
モダン・アート／コンテンポラリー・アート=現代美術
・近代…Modern
ルネサンス以降
ニューヨーク近代美術館、東京国立近代美術館
19・20世紀
明治維新～第二次大戦敗戦
・同時代…Contemporary
ベルリンの壁崩壊後（冷戦終結後）
※本講義では、「現代の美術=同時代を生きている人々の美術」と捉えるcf. 「現代美術」=“最先端”の美術表現
◆作品紹介
1. 山根秀信（山口市）《食卓の上の廃墟》、（部分） 優秀賞
・山根秀信《無題》 ※第66回山口県美術展 佳作
2. 福田武（宇部市）《茜》
4. 中西正（周南市）《小波》 佳作
5. 前野法広（下関市）《トリプルドッペルゲンガー（別府弁天池）》、（部分） 優秀賞
7. 平田詩織（周防大島町）《crazy-bubble 34》 佳作
8. 特別展示 山本新治・TAO（光市）《キセキ》（昨年度大賞受賞者）
10. 西丸貴（島根県）《漁港》
11. 大下和利（宇部市）《静かな想い》
12. 村岡真樹（下関市）《イヌ・ボク・カイヂュウ》 佳作
13. 小田善郎（美祢市）《顔遊び 1》、（部分1）、（部分2） 大賞
14. 3の4（宇部市）《NINGENKOUKA/1996》、（部分1）、（部分2）、（部分3） 優秀賞
15. 吉村大星（山口市）《現実を変えることはできないけど自分を変えることはできる》、（部分） 佳作
・吉村大星《静謐な一時》 ※第66回山口県美術展 佳作
16. 松田政道（下関市）《山頭火の句》
17. 松浦孝（福岡県）《I-nori》
・松浦孝《秘密》 ※第66回山口県美術展 佳作
◆ストゥディウム／プンクトゥム
・ストゥディウム（studium, 一般的関心）
“あるものに心を傾けること、ある人に対する好み、ある種の一般的な思い入れを意味する。…（中略）…私が人物像に、表情に、身振りに、背景に、行為に共感するのは、教養文化を通してだからである”
・プンクトゥム（punctum, 私を突き刺す偶然）
“…ストゥディウムを破壊（または分断）しにやって来るものである。こんどは、私のほうからそれを求めて行くわけではない…（中略）…矢のように発し、私を刺し貫きにやって来るのは、向こうのほうである。”
参考：ロラン・バルト『明るい部屋―写真についての覚書』、花輪光訳（みすず書房、1985年）: 38-39頁。
“母のあの写真が黄ばみ、色あせ、うすれていって、いつの日か私の手でごみ箱に捨てられるとき――といても、私は迷信深いから、まさかそうはしないだろうが――、少なくとも私の死後に捨てられるとき、いったい何が失われてゆくのであろうか? 失われてゆくのはただ単に《生命》（それは生きていて、カメラの前で生き生きとポーズをとった）だけではない。ときにはまた、何と呼んだらよいのか、愛が失われてゆくのである。父と母が互いに愛し合ったことを私は知っているが、その二人が並んで写っている唯一の写真を見て私はこう思う。永久に失われてしまうのは、宝のような愛である、と。なにしろ私がいなくなれば、もはや誰もそれについて証言することはできないからである。”
参考：ロラン・バルト『明るい部屋―写真についての覚書』、花輪光訳（みすず書房、1985年）: 117頁。
◆まとめ
・ストゥディウム／プンクトゥム
―ロラン・バルトの写真論『明るい部屋』より
―一般的な関心と対象の側から私たち鑑賞者を突き刺す力
―「母のあの写真」がバルト自身にとって持つ意味
―私の中に秘められた感情／「今の私」が「未来の私」に伝えられる感情
・現代の美術
―今、生きている人々の美術表現すべて
―美術史を「学びほぐす unlearn」
―「現代美術」と「伝統美術」／美術と工芸、芸能、サブカルチャー
―中心と周縁、歴史の「主体」