光州ビエンナーレ2014


光州ビエンナーレ2014の概要 会場写真/地図山口から韓国

企画展/周期展
会期: 9月5日〜11月9日(66日間)
参加作家数:38カ国103作家・組
会場:ビエンナーレ展示館、八角亭、光州市立民俗博物館
主催:光州ビエンナーレ財団
芸術監督:ジェシカ・モーガン(Jessica Morgan)
テーマ:敷地を燃やせ(Burning Down the House)


ジェシカ・モーガン(Jessica Morgan, 1968- ) 顔写真

ダスカロプロス・キュレーター(国際美術、テート・モダン)

2003 「コモン・ウェルス」展
2008-09 タービンホール・コミッション「ドミニク・ゴンザレス=フォレステル TH. 2058」
2013 「サローア・ラウーダ・シューケア」展/ヴェネツィア・ビエンナーレ第55回国際美術展審査委員長


ジェシカ・モーガン「敷地を燃やせ」

“Burning Down the House explores the process of conflagration and transformation, a cycle of obliteration and renewal evident in aesthetics, historical events, and an increasingly rapid exchange of redundancy and renewal in commercial culture. The 10th Gwangju Biennale reflects on this spiral of violent or symbolic events of destruction or self-destruction―setting fire to the home one occupies ― followed by the promise of the new and the hope for change.”
(大災害や変形、消去と刷新の繰り返しの過程を探究する/破壊や自己破壊の後に続く新しきものの約束と変化への希望

“The theme highlights the capacity of art to critique the establishment through an exploration that includes the visual, sound, movement, and dramatic performance. At the same time, it recognizes the possibilities and impossibilities within art to deal directly and concretely with politics.”
(権力層を批判する芸術の力/芸術によって政治を直接かつ具体的に取り扱う可能性と不可能性を意識している)

出典:Jessica Morgan,“Burning down the House,”Burning down the House. Gwangju Biennale 2014 Exhibition Guide. (Gwangju Biennale Foundation, 2014): 8.


トーキング・ヘッズ「バーニング・ダウン・ザ・ハウス」

My house
おれの家
S'out of the ordinary
まともを通り越しちゃってるぜ
That's might
そのとおりかも
Don't want to hurt nobody
誰も傷つけたりしたくないんだ
Some things sure can sweep me off my feet
いくつかのものに 確かに、ぼくは、あっさりと、足を、すくわれてしまう、ことも、あるだろう
Burning down the house
家を焼き払え

No visible means of support
目に見える維持の手段はない
And you have not seen nuthin' yet
そして、おまえは、まだ、何ひとつとして見ちゃいない
Everything's stuck together
ことごとく何もかもが、ひとつにくっついている
I don't know what you expect starring into the TV set
おれには、きみが何を期待して じっとテレビを見てるのかがわからない
Fighting fire with fire
火には火で戦うんだ
Ah
あゝ

album: Talking Heads, "Speak In Tongues"
Japanese translation by komasafarina 2009/10/28
Source: http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20080503(2014/10/17)


光州ビエンナーレ2014の構成

第1展示室 拘束と闘争状態に置かれた身体と個人のアイデンティティの関係性
第2展示室 消費文化と物質的生産からの遊離、個人性の喪失と回復
第3展示室 建築(家、破片化した都市風景)
第4展示室 現在の状況に疑問の投げかける様々な方法
第5展示室 ドミニク・ゴンザレス=フォレステル


光州事件(1980年)

・光州市で1980年5月18日から27日にかけて起こった、活動家、市民、学生らによる民主化運動と韓国軍の衝突

・5月18日、戒厳司令部が金大中ら26人を逮捕、金泳三を自宅軟禁。政治活動の停止、言論・出版・放送などの事前検閲、大学の休校など戒厳布告が発表される

・5月25日 第三次市民大会(5万人)。「金大中の釈放」「戒厳令撤廃」を要求

・5月27日 韓国軍が市内全域を制圧。市民に多数の死傷者が出る

 ※韓国映画「光州5.18」(2007年制作) イ・ヨウォン、イ・ジュンギ、キム・サンギョン、アン・ソンギ


作品紹介

 野外広場

1. リム・ミヌク(韓国, 1968- )《航海ID》

2. スターリング・ルビー(ドイツ, 1972- )《ストーヴ》/ジェレミー・デラー(イギリス, 1966- )《無題》

 第1展示室

3. エル・ウルティモ・グリート《演出(ミザンセーヌ) ※ロベルト・フェオ(イギリス, 1964- )+ロザリオ・フルタド(イギリス, 1964- )

4. ジャック・ゴールドスタイン(カナダ, 1945-2003)《燃える窓》 1977/2002年

5. キム・ユンスー(韓国, 1946-2011)《拷問》(部分) 1988年

6. アンワル・シェムザ(インド, 1928-1985)《抽象的な筆跡》1969年

7. イヴ・クライン(フランス, 1928-1962)《無題(イヴ・クラインよりエヴェレル夫人へ親愛を込めて) 1961年

8. オットー・ピーネ(ドイツ, 1928-2014)《峡谷》 2000/02年

9. コーネリア・パーカー(イギリス, 1956- )《闇の奥》(部分) 2004年

10. エドワード&ナンシー・キーンホルツ(アメリカ, 1927-1994, 1943- )《オジマンディアスの行軍》(1)(2)(3)(4)(5)(6) 1985年

11. ブレンダ・ファヤルド(フィリピン, 1940- )《十字路》(1)(2)(3)(4) 2003年

12. ジェーン・アレクサンダー(南アフリカ共和国, 1959- )《饗宴》(1)(2)(3)(4)

13. 山下菊二(1919-1986)《転化期》 1968年

14. オキン・ コレクティヴ(韓国, 2009- )《作戦―黒く熱い何かのための》 2012年

 第2展示室

石田徹也/チェ・スアンの展示風景

15. 石田徹也(1973-2005)《面接》 1998年

16. 石田徹也《回収》 1998年

17. 石田徹也《無題2》 1998年

18. 石田徹也《待機》 1999年

19. 石田徹也《温室》 2003年

20. チェ・スアン(韓国, 1975- )《抜け殻》

21. チェ・スアン《雑音》(部分)

22. 劉小東(リュウ・シャオドン, 中国, 1963- )《戦場のリアリズム―十八羅漢》(1)(2)(3) 2004年

23. ヨシュア・オコン(メキシコ, 1970- )《オクトパス》(1)(2) 2011年

 第3展示室

24. ウルス・フィッシャー(スイス, 1973- )《38 E. 1st St.》

25. アクラム・ザタリ(レバノン, 1966- )《分解図》

26. レナータ・ルーカス(ブラジル, 1971- )《不便な異物になるまで》(1)(2)(3)

27. ジェニファー・アローラ&ギリェルモ・カルザディーリャ(アメリカ, 1974- , キューバ, 1971- )《鐘、ショベルカー、トロピカル・ファーマシー》

 第4展示室

28. ギャヴィン・ケニョン(アメリカ, 1980- )/ビアギト・ユルゲンセンの展示風景

29. ビアギト・ユルゲンセン(オーストリア, 1949-2003)《アウグスティナの甲冑》(1)(2)(3)(4)(5) 1974年

30. ビアギト・ユルゲンセン《主婦》(1)(2)(3) 1974年

31. 荒川医&イム・インザ(1977- , 韓国, 1976- )《非英雄化された劇場》(1)(2)

 第5展示室

32. ドミニク・ゴンザレス=フェルステル(フランス, 1965- )《M.2062(フィツカラルド)

 AA ブロンソン「恥の家」八角亭

33. AA ブロンソン(カナダ, 1946- )《同性愛雑誌》(1)(2)(3) 1975-2014年

 光州市立民俗博物館 外観

34. ルバイナ・ヒミッド(タンザニア, 1954- )《水没した果樹園/秘密のボートヤード》(1)(2)

 「甘露」展/光州市立美術館 外観

35. キム・サンデク《船で誘拐されて》 1995年

36. 洪成旻(ホン・ソンミン)《アジアの森―その日》(部分1)(部分2)

37. 大浦信行《作品1-14―「遠近を抱えて」より》(部分) 1982-83年

38. イ・ジュンセク《花開くそれぞれの心》(部分)


まとめ

 ・光州事件

―1980年5月18日に始まる民主的な政治を求める市民の蜂起

―軍事政権による大量虐殺と情報操作・隠蔽

―演劇や美術を通じての表現と発信

―民主運動の聖地としての光州からアジアの文化ハブへ

 ・美術と政治

―表現の自由と規制の多い既存メディア

―現代美術≒世界情勢を知る手段

―個人の「肉声」、社会に対する憤り

―PC Art(政治的に正しいアート) cf. マイノリティの表現