美学・美術史特殊講義二〇一四


期末試験問題概略告知

一、講義で紹介した展覧会について基礎的な知識を問う(但し、第九講を除く)/○×問題/一〇問/各二点(二〇点)

二、周期展について述べた文章の空欄に適切な用語を選んで文を完成させよ/穴埋め問題・選択肢あり/一〇問/各二点(二〇点)

三、ジャポニスムについて、指定される五つの用語を適切に用いて論述せよ/論述問題・用語指定/字数制限なし/二〇点

四、 海外美術館のコレクション紹介展開催の意義と問題点について、授業で紹介された展覧会や解答者自身が見学した展覧会の内容に即して論述せよ/論述問題・自由形式/字数制限なし/四〇点


成績評価方法

試験:一〇〇点満点×〇.七(計七〇点)

課題レポート:一〇点

出席:一〇回=一〇点(欠席毎マイナス一点 例:欠席三回=出席点七点)

※最初の一回、および第九講をカウントしない

授業態度等の調整点:全回出席者にプラス二点

そのほか授業への参加度をオピニオンシートの回答等をもとに八〜一〇点の範囲で加算


美学・美術史特殊講義(後期)試験問題

実施日時 二〇一五年一月二十七日(火)
12時50分〜14時20分(90分)

(各二点、計二〇点)

一、次に示される(1)〜(10)の短文のうち、内容の正しいものに○印を、誤ったものに×印をそれぞれ解答用紙の各欄に記せ。

(1)第六十八回山口県美術展覧会では、昨年度大賞受賞者の山本新治・TAOによる《キセキ》が特別展示された。

(2)釜山ビエンナーレ2014の本展では、日本から「ちっご共道組合」のヤンキーバイクが展示されて話題を呼んだ。

(3)光州ビエンナーレ2014に展示された荒川医&イム・インザの《非英雄化された劇場》は、一九八〇年の光州事件を主題とするインスタレーションである。

(4)ヨコハマトリエンナーレ2014に展示されたマイケル・ランディの《アート・ビン》は、失敗作を集めるゴミ箱のプロジェクトである。

(5)第五回福岡アジア美術トリエンナーレ2014には、アジア二十一カ国・地域のアーティストが参加した。

(6)國立故宮博物院のコレクションが台湾以外の国で展示されるのは、アジア地域では日本が初めてである。

(7)「ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展」は国際巡回展で、日本巡回後は、ケベック国立美術館とサンフランシスコのアジア美術館へと巡回する。

(8)官展には、文展・帝展(東京)、朝鮮美展(ソウル)、台展・府展(台北)、満州国展(長春)があり、東京以外では、日本統治時代にのみ開催された。

(9)ホドラー、クレー、ジャコメッティは、スイス出身の画家や彫刻家で、チューリヒ美術館展でもまとまった数の作品が展示されている。

(10)ホイッスラー作《紫とバラ色―六つのマークのランゲ・ライゼン》に描き込まれている東洋陶磁器は、画家自身のコレクションである。

 

(各二点、計二〇点)

二、次の文を読み、空欄となっている( A )〜( J )に、のちに記されている(1)〜(30)のうち最も適当と思われる言葉を補い、文を完成せよ。解答用紙には、( A )〜( J )の各欄に該当する言葉を1〜30の番号で記すこと。

 一九九〇年代にビエンナーレが多数新設され、同じ( A )が企画する同じような顔ぶれの国際美術展が増加した状況を指して、ビエンナーレ化現象と呼ぶ。日本では一九九九年に( B )、二〇〇〇年に大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ、二〇〇一年に( C )が開始されて本格的な国際美術展時代に入った。その後も二〇〇七年に神戸ビエンナーレ、二〇一〇年に瀬戸内国際芸術祭とあいちトリエンナーレ、二〇一四年に札幌国際芸術祭が始まるなど、各地で大型の国際美術展が開始されている。当初懸念されていた画一化よりも、独自路線を開拓する方向性が強化されているが、増加傾向にある事実に変わりはない。

 二年毎、三年毎に開催される美術展を「周期展」と呼んでいる。その始まりは、一八九五年に( D )市国際美術展の名称で開催された( D )・ビエンナーレであるが、同展が一〇〇周年を迎えた一九九五年に、「東アジア最大のビエンナーレ」を謳って開始されたのが( E )ビエンナーレである。二〇一四年に開催された( E )ビエンナーレでは、テート・モダンの( F )が芸術監督を務めた。近年、アジアの周期展では、欧米で活躍する( A )に芸術監督を依頼する例が増えており、二〇一四年の開催例では、台北ビエンナーレがフランス人のニコラ・ブリオー、上海ビエンナーレがドイツ人のアンセルム・フランケによって企画されている。

 各ビエンナーレ、トリエンナーレは毎回異なるテーマを掲げる。ヨコハマトリエンナーレ2014のテーマ「華氏四五一の芸術―世界の中心には忘却の海がある」は、( G )のSF小説『華氏四五一度』が着想源となっており、アンナ・アフマートフの詩など六言語によるテキストを収録した本《Moe Nai Ko To Ba》は、会期最終日に美術館前広場でバーナーによって焼却された。失われゆくものに対する追悼と表現の自由を奪う焚書行為に対する抗議の意味が込められているという。第五回福岡アジア美術トリエンナーレ2014のテーマ「未来世界の( H )―ほころぶ時代のなかへ」は、現代美術の表現や主題に、現在の世界の「ほころび」を見出し、未来世界の「萌芽」を見出そうという呼びかけであった。同様に、光州ビエンナーレ2014の「( I )」も、破壊の後に続く新しい何かの生成や変化に対する期待を表明したものであり、三つの周期展のテーマを並べることで、現代が「危機の時代」にあり、未来社会への期待を寄せつつも、未来がバラ色ではない、ということも理解している、といった意識を共有していることがわかる。そうした中、「( J )」をテーマに掲げた釜山ビエンナーレ2014は、「危機の時代」という認識を共有しながらも、しかし、私たちが生きる世界はこの世界以外になく、この現実世界を受け入れて、この世界の中に生き続ける、というメッセージを企画の趣旨としていた点で、より積極性が感じられた。

 

(1)ディレクター  (2)キュレーター  (3)アーティスト  (4)BIWAKOビエンナーレ  
(5)中之条ビエンナーレ  (6)横浜トリエンナーレ  (7)福岡アジア美術トリエンナーレ  
(8)国東半島芸術祭  (9)十和田奥入瀬芸術祭  (10)パリ  (11)ウィーン  (12)ヴェネツィア  
(13)釜山  (14)光州  (15)慶州  (16)オリヴィエ・カペラン  (17)ジェシカ・モーガン  
(18)ジョリーン・ロー  (19)アイザック・アシモフ  (20)フィリップ・K・ディック  
(21)レイ・ブラッドベリ  (22)イリュージョン  (23)パノラマ  (24)ディストピア  
(25)いつも少し先へ  (26)揺れる大地  (27)敷地を燃やせ  (28)世界劇場  (29)世界に居住する  
(30)世界を構築する

 

(二〇点)

三、ジャポニスムについて、次の五つの単語を適切に用いて論述せよ。なお、各語の初出時には傍線を引くこと(字数制限なし)

林忠正     岡倉天心     浮世絵     団扇     ゴッホ

 

(四〇点)

四、海外美術館のコレクション紹介展開催の意義と問題点について、授業で紹介された展覧会や解答者自身が見学した展覧会の内容に即して論述せよ(字数制限なし)

 

 

評価基準は、秀=一〇〇〜九〇、優=八九〜八〇、良=七九〜七〇、可=六九〜六〇、不可=五九〜〇である。本試験の結果をもとに各自の出席数による調整点等を加算したものを評点とする。また、三、四の解答のうち優れたものは、試験問題を蓄積し、今期以後の学生の参考に供するため、ウェブ上で公開する予定である。


一、二の解答