美学・美術史講読二〇一四前期


講読テキスト

古田亮『狩野芳崖・高橋由一―日本画も西洋画も帰する処は同一の処』(ミネルヴァ日本評伝選)(ミネルヴァ書房、二〇〇六年)

副読本

宮崎克己『西洋絵画の到来―日本人を魅了したモネ、ルノワール、セザンヌなど』(日本経済新聞社、二〇〇七年)

木々康子『林忠正―浮世絵を越えて日本美術のすべてを』(ミネルヴァ日本評伝選)(ミネルヴァ書房、二〇〇九年)

馬渕明子『ジャポニスム―幻想の日本』(ブリュッケ、一九九七年/新装版二〇〇八年)

田中淳『画家がいる「場所」―近代日本美術の基層から』(ブリュッケ、二〇〇五年)


授業予定

四・十四

   <零>   オリエンテーション (本の紹介/「序章 二人の画家、二つの近代」「第一章 狩野芳崖の生涯」p.39まで配布)

四・二十一

<第一講> 「第一章 狩野芳崖の生涯」(1)

四・二十八

<第二講> 「第一章 狩野芳崖の生涯」(2)

五・五

 (休講) こどもの日

五・七(月振)

<第三講> 「第二章 高橋由一の生涯」(1)

五・十二

<第四講> 「第二章 高橋由一の生涯」(2)

五・十九

<第五講> 「第三章 芳崖、由一、狩野派から近代絵画へ」(1)

五・二十六

<第六講> 「第三章 芳崖、由一、狩野派から近代絵画へ」(2)

六・二

<第七講> 「第四章 スケッチブックに見るひとつの近代」

六・九

<第八講> 「第五章 由一、油絵による近代画の創始」(1)

六・十六

<第九講> 「第五章 由一、油絵による近代画の創始」(2)

六・二十三

<第十講> 「第六章 芳崖の絶筆『悲母観音』をめぐって」

六・三十

<第十一講> 「終章 二つの近代、その後」/年表作成

七・七

<第十二講> 関連資料(1)

七・十四

<第十三講> 関連資料(2)

七・二十一

 (休講) 海の日

 

 

リンクシラバス


講読テキストの構成

序章 二人の画家、二つの近代

フェノロサの翻然/『美術真説』の真意/日本画家芳崖と洋画家由一

第一章 狩野芳崖の生涯

 1 誕生

《悲母観音》の画家/文政十一年、長府/長府の狩野家/父晴皐/母について/長府での成長/江戸遊学まで

 2 絵師として

木挽町狩野家入門/画塾での修業生活/佐久間象山/三村晴山/江戸、長府の往復/安政四年の帰郷、結婚/幕末の長州人として/芳崖となる

 3 維新後の辛酸

長府での維新/生活苦/上京/東京での苦闘/文明開化の世に/島津家雇い

 4 フェノロサとともに

フェノロサの来日/芳崖、フェノロサとの出会い/龍池会と展覧会時代の幕開け/鑑画会

 5 終焉

岡倉天心と図画取調掛/伊藤博文への建白と《大鷲図》/芳崖の美術論/妻よしとその死/新出史料、息子廣崖の手記/東京美術学校開校を前に

第二章 高橋由一の生涯

 1 誕生

洋画道の開拓者/一八二八年、江戸/佐野藩と堀田家/幕末の大都市、江戸/『履歴』にみる前半生/佐野藩の教育と武道/佐久間象山

 2 洋製石版画体験の謎

嘉永か文久か/武道と画道/何を見たのか

 3 油画事始

画学局に入学/絵事は精神のなす業なり/ゼロからの挑戦/外国人教師を求めて/ワーグマンに師事/上海使節団/上海にて
 

 4 維新、そして好機到来

自画像と人相書き/由一を名乗る/維新後の困窮/岸田吟香の援助/博覧会時代の幕開け/活躍の場

 5 洋画拡張への道

画塾天絵社/油絵展観会/フォンタネージとの出会い/美術館建設計画

 6 逆風

フェノロサのいた夏/明治十四年の異変/洋画風凪ぐ

 7 東北へ

三島通庸/東北を歩く

 8 終焉

晩年/洋画沿革展/銀盃の授与/実際院真翁由一居士

第三章 芳崖、由一、狩野派から近代絵画へ

 1 狩野派―近世日本の規範

江戸の規範/「学画」と「質画」/粉本主義の功罪

 2 芳崖、狩野派からの脱皮

画塾での憤懣/模索の時代/写生の重視/古典回帰/南画の流行/幕末明治の画家たちとの関連

 3 由一、伝統画法からの出発

由一の狩野派時代/最初の師、狩野洞庭と探玉斎/狩野派との決別/江戸の洋画体験/博物図を描く/画学局的言/的言と江漢の『西洋画論』/模写と実写

 4 晩期芳崖作品―狩野派から近代日本画へ

近代日本画の萌芽/フェノロサ理論/フェノロサが芳崖に求めたもの/自作を改変する意志/実験作品の数々/《仁王捉鬼》

第四章 スケッチブックに見るひとつの近代

 1 スケッチという原点

日本画・洋画以前/スケッチとは何か

 2 由一の風景スケッチ

《上海日誌》/構図法/パノラマ風景/明治五年の風景スケッチ/写生帖と鉛筆/明治五年スケッチの特徴/ピーター・ガラシ説/ヘンリー・スミス説

 3 芳崖とスケッチ

十三歳のスケッチ/嘉永年間のスケッチ/安政四年のスケッチ/安政四年スケッチの特徴/鉛筆と芳崖/鉛筆の入手方法/鉛筆か毛筆か/芳崖スケッチに見る視覚の変容

第五章 由一、油絵による近代画の創始

 1 油絵とは何か

西洋の油絵/由一の油絵初学/油絵には永久保存の功あり/若きライバル五姓田義松/見世物としての油絵

 2 肖像画・人物画

《丁髷姿の自画像》/自画像の意味/《花魁》/《花魁》は傑作か/林文雄/土方定一論争/肖像画家として/肖像の権威

 3 風景画

《国府台真景図》の見直し/名所を描く/前期風景画と広重/浮世絵的構図と水墨画的細部/江漢を超えて/茜の空/写真と後期風景画/静止する人々/都市の肖像

 4 静物画―《鮭》を中心に

身近な物を描く/広重、再び/《鮭》とは何か/《鮭》を切る/《鮭》のテクニック/動かぬ世界

第六章 芳崖の絶筆『悲母観音』をめぐって

 1 《悲母観音》制作の過程

《悲母観音》とは何か/第一の《観音》制作/《悲母観音》着想の時期について/改変の数々/面貌の変化/彩色方法/フェノロサの関与について

 2 原画存在の可能性

次々現れる原画の数々/《魚籃観音》について/《魚籃観音》原画説/《魚籃観音》の謎/実見と科学調査の上での結論

 3 主題にまつわる議論

作画の動機/日本の聖母子/裸婦下図の意味/《悲母観音》に込められたもの

終章 二つの近代、その後

芳崖の近代/由一の近代/時代の子/芳崖・由一以後/菱田春草の画論/日本画と洋画のはざまに


講読テキスト、副読本の図書館所蔵情報

1.古田亮『狩野芳崖・高橋由一』……山口県立図書館、山口市立図書館

2.宮崎克己『西洋絵画の到来』……山口大学総合図書館、山口市立図書館

3.木々康子『林忠正―浮世絵を越えて日本美術のすべてを』(ミネルヴァ日本評伝選)(ミネルヴァ書房、二〇〇九年)

4.馬渕明子『ジャポニスム』……山口大学総合図書館、山口県立図書館

5.田中淳『画家がいる「場所」―近代日本美術の基層から』(ブリュッケ、二〇〇五年)


提出レポート(要認証)

 第一部 要旨

第一章 狩野芳崖の生涯(1)
   前半pp.9-24.(高橋)/後半pp.24-39.(吉原

第一章 狩野芳崖の生涯(2)
   前半pp.40-55.(山内)/後半pp.55-73.(矢守

第二章 高橋由一の生涯(1)
   前半pp.75-86.(西村)/後半pp.87-105.(大田

第二章 高橋由一の生涯(2)
   前半pp.105-125.(山田)/後半pp.125-141.(藤岡

第三章 芳崖、由一、狩野派から近代絵画へ(1)
   前半pp.143-151.(時廣)/後半pp.151-161.(藤尾

第三章 芳崖、由一、狩野派から近代絵画へ(2)
   前半pp.161-171.(福森)/後半pp.171-183.(中畑

第四章 スケッチブックに見るひとつの近代
   前半pp.185-196.(小原)/後半pp.196-208.(長久

第五章 由一、油絵による近代画の創始(1)
   前半pp.209-223.(脇山)/後半pp.223-233(吉原

第五章 由一、油絵による近代画の創始(2)
   前半pp.233-243.(矢守)/後半pp.243-252(西田

第六章 芳崖の絶筆『悲母観音』をめぐって
   前半pp.253-267.(濱田)/後半pp.268-284.(阿南

終章 二つの近代、その後
   (小野田

 関連資料

古田亮「《悲母観音》考」小原

井上誠「もうひとつの悲母観音〜観音下図と呼ばれる画稿の意味」時廣

佐藤道信「進化論としての悲母観音図」長久

アーネスト・フェノロサ「仏画の復興」大田

 第二部 感想

小原西田時廣長久阿南濱田山田高橋小野田大田西村矢守藤尾中畑脇山藤岡