第一講 第12回シャルジャ・ビエンナーレ報告


1.中東とUAEに関する基礎知識

ISILの支配地域と中東・北アフリカの危険地域

・1-2月の邦人人質殺害事件で「イスラム国(ISIL)」がメディアの注目を浴び、シリア入国予定者にパスポート返納命令(2015年2月7日)

メトロから眺めたドバイの街(遠景にバージュ・アル・アラブ)

ドバイ、アル・コツ地区(遠景にバージュ・ハリファ)

※産業地区で工場などが建ち並ぶほか、アート・ギャラリーが点在する

アル・コツ地区の日本車

日本車の販売代理店(ノール・バンク駅)

ドバイ国際空港のコンコース

・中東=アラビア半島を中心とするイスラム教国地域の総称

イスラム教国(イスラム文明博物館)

※西はモーリタニア、セネガル、南はモザンビークの東岸、北はカザフスタンおよびロシア内陸部、東はインドネシアと、フィリピン、ベトナム、カンボジア、タイの一部

・アラブ首長国連邦(UAE)=アラビア半島の北東、アラビア湾に面する(隣国はカタールとオマーン)。3月の平均最高気温は28度(山口の6月並)。時差はマイナス5時間

7つの首長国=アブダビ、ドバイ、シャルジャ、ラアス・ル・ハイマ、フジャイラ、アジュマン、ウンムルカイワイン

※シャルジャにはホルムズ海峡へ突き出すムサンダム半島東側に飛び地がある


2.第12回シャルジャ・ビエンナーレ

 ◆概要 <スライド>

会期: 3月5日〜6月5日(93日間)

会場:シャルジャ美術財団アーツ・エリア、カリグラフィー・スクエア、シャルジャ美術館ほか

主催:シャルジャ美術財団

テーマ:過去、現在、可能なもの(The past, the present, the possible)

キュレーター:エウンジ・ジュ(Eungie Joo)

シャルジャ主要部地図:ヘリテージ・エリア

ビエンナーレ会場(ヘリテージ・エリア、アーツ・エリア)

ヘリテージ・エリア風景(1)「修復中の建物」

ヘリテージ・エリア風景(2)「併設された現代的なギャラリー(正面の白い建物)」

シャルジャ美術館


 ◆作品紹介

1. ヤン・ヴォー(ベトナム, 1975- )《我ら人民は》(1)(2)(3)、2011-13年

参考:ヨコハマトリエンナーレ2014に出品された《我ら人民は》(部分)

2. 篠田太郎(1964- )《枯山水》(1)(2)(3)(4)

3. 篠田太郎《枯山水習作》(1)(2)(3)、 2013-14年

4. ヘギュ・ヤン(韓国, 1971- )《不透明な風》(1)(2)(3)(4)(5)(6)

ヘリデージ・エリアの壁面(部分)

5. ライアン・タベット(レバノン, 1983- )《キプロス》(部分)

6. エウンジ・ジュ(Eungie Joo)とホーア・アル・カシミ(Hoor Al Qasimi)

7. キム・ボム(韓国, 1963- )《車の鍵(試作) 2000年

8. キム・ボム《裸婦 #2》 2001年

9. キム・ボム《電気首つり縄》 1992年

10. バイロン・キム(USA, 1961- )《青空旗》(1)(2)

11. アブドゥラ・アル・サーディ(UAE, 1967- )《案山子》(1)(2)(3)、 2013年

12. ハッサン・シャリフ(UAE, 1951- )《紐と布》 2007年 /《銅 4》 2014年

13. アブドゥル・ハイ・モサラム・ザララ(パレスチナ, 1933- )《ラクダに乗った花嫁》1990年

14. アブドゥル・ハイ・モサラム・ザララ《「チリ闘争」シリーズより》 1985年

15. アブドゥル・ハイ・モサラム・ザララ《「解放闘争」シリーズ 南アフリカ》 1986年

16. アブドゥル・ハイ・モサラム・ザララ《人生は尊厳の闘い:殉教者サナーア・メーアイドリ》 1985年

・参加作家を選定するキュレーターは韓国系アメリカ人のエウンジ・ジュ。韓国作家や韓国系作家が多め。日本人は篠田太郎1人(前回9人・組)

・テーマはフランスのマルクス主義社会学者アンリ・ルフェーブルのテキストから。“哲学は「過去と現在と可能なもの」を露呈させることで私たちを本当の問題に直面させる”

・過去と現在と可能性を見つめ、考え抜いて、未来へと向かう行動を起こさなければならない


3.シャルジャ美術館の常設展示

17. ウィダッド・オルファリ(イラク, 1929- )《千夜一夜》 1994年

18. ユーセフ・ドゥウェイク(イスラエル, 1963- )《象徴》

19. バシーア・シンワル(パレスチナ)《サブラ−・シャティーラ事件》 1984年

・1980-90年代に描かれた「近代」絵画
・アラブ世界の現在を映し出すコレクション
・ビエンナーレで紹介される「現代」美術と美術館収蔵の「近代」美術


4.今年開催のビエンナーレ

・第12回シャルジャ・ビエンナーレ(3/5〜6/5)
・PARASOPHIA:第1回京都国際現代芸術祭(3/7〜5/10)
・第56回ヴェネツィア・ビエンナーレ(5/9〜11/22)
・第12回ハバナ・ビエンナーレ(5/22〜6/22)
・大地の芸術祭 後妻有アートトリエンナーレ(7/26〜9/13)
・第14回イスタンブール・ビエンナーレ(9/5〜11/1)
・第13回リヨン・ビエンナーレ(9/14〜2016.1/3)
・第5回神戸ビエンナーレ(9/19〜11/23)
・第13回ビエンナーレ・ジョグジャ(11/1〜12/10)
・第8回アジア太平洋トリエンナーレ(11/21〜2016.4/10)


5.まとめ

 ・国際美術展の特徴

―キュレーターによるテーマ設定と作家選定
―現代美術の最先端の紹介と物故作家の再評価
―開催都市や地域の独自性を理解させる会場選び
―非西洋圏では国際社会(≒欧米文化)との接触領域(コンタクト・ゾーン)

 ・中東と日本の地理的・政治的・文化的距離

―情報が「間接的に」伝わってくることの多い遠い地域
―石油の輸入を通じて自衛隊を機雷掃海のために派遣しようかという「死活的に重要」な地域
―私たちが想起できる音楽、映画、料理、アートは?