第二講 第12回シャルジャ・ビエンナーレ分析


1.現代美術主題分類システムの基本方針

 ◆伝統的な美術の主題分類

  @フランス・アカデミー(Hiérarchie des genres ジャンルの上下関係

1. 歴史画(物語画・神話画・宗教画)
2. 人物画(肖像画・集団肖像画)
3. 風俗画
4. 風景画
5. 静物画

※アンドレ・フェリビアン(André Félibien, 1619-1695)が1667年に基本的なアイデアを提出

“完璧な風景画を描く者は、果物や花、貝しか描かない者より上である。生きている動物を描く者は、静物画や動かない対象を表現する者より評価できる。人間の形象が、神の手による地上における最も完璧な作品であることと同様に、神に倣って人間の形象を描く者が、他のすべてと比べても最も卓越している……。肖像画しか描かない画家は、こうした芸術の高い完全性を持たないし、あらゆる知識に通じているという名誉を主張することもできない。一人の人物像よりも多くの人々から成る群像の表現へと進むべきであり、歴史物語や寓話を扱うべきであり、歴史家のように偉大な行為について表現するか、もしくは詩人のように共感される主題を表現するべきである。そしてさらなる高みに達するために、それらの表現はアレゴリーの組み合わせによって成されなければならず、寓話のヴェールの下に隠れている偉大な人物たちの美徳や、至高の神秘を見抜かなければならない。”                          ――フェリビアン 1668 (訳・藤川哲)

Source: Hiérarchie des genres <http://fr.wikipedia.org/wiki/Hiérarchie_des_genres> (2015/4/27)

A近代以前の日本美術のカテゴリー

・山水画
・花鳥画
・仏画
・美人画
・名所絵

cf. (主題に拠らない)地域や形式による分類:
大和絵/唐絵、南宗画/北宗画、障壁画/屏風絵、軸物/巻物、水墨画、浮世絵、肉筆浮世絵


 ◆参照モデル:

  ・デューイ十進分類法(DDC: Dewey Decimal Classification)

メルヴィル・デューイ(Melvil Dewey, 1851-1931)が考案した図書の分類法。初版出版は1876年。最新版は2011年発行の第23版。

  ・日本十進分類法(NDC: Nippon Decimal Classification)

森清(もり・きよし、1906-1990)がデューイ十進分類法を元に作成。1928年発表。最新版は2014年発行の第10版。

 ◆日本十進分類法の4分類原則:

1.一貫性:一度に区別する原理は常に一つとし、無秩序な交叉分類を生じさせない
2.相互排他性:区分された部分集合(種)はお互いに領域を侵さない排他的なものとする
3.包括性:種の総和が被区分体(類)の全域を包含する
4.段階性:区分は段階的でなければならず、飛躍を認めない

出典:森清 原編『日本十進分類法 新訂9版 本表編』(日本図書館協会、1995年)、xi頁。

 ◆日本十進分類法における「主題分類」:

・分類とは、多数の対象を、それらに共通する性質によって分けることである
・これを図書にあてはめれば、図書の持つ共通の性質には、書名・著者・出版年・形態などの書誌要素が、いろいろあげられるが、各図書の持つ情報内容に着目し、それを分類することが利用者の要求にかなう分類となる
・情報内容は知識であり、あらゆる知識を網羅した仮想空間<知識の宇宙>の中で考えれば、各図書の情報内容はその部分または断片にすぎない。この部分としての知識を形成する核となる内容を主題という。主題は人物、事象、空間上の場所、時系列の過程、あるいは具体的活動、他方では抽象的な概念まで含んでいる

出典:森清 原編『日本十進分類法 新訂9版 本表編』(日本図書館協会、1995年)、ix-x頁。


2.第12回シャルジャ・ビエンナーレ出品作品分析

1. ヤン・ヴォー(ベトナム, 1975- )《我ら人民は》 2011-13年

2. 篠田太郎(1964- )《枯山水》 2015年

3. ライアン・タベット(レバノン, 1983- )《キプロス》 2015年

 ※地図:レバノンとキプロス

4. キム・ボム(韓国, 1963- )《車の鍵(試作)》 2000年

5. キム・ボム《裸婦 #2》 2001年

6. キム・ボム《電気首つり縄》 1992年

7. バイロン・キム(USA, 1961- )《青空旗》 2015年

8. アブドゥラ・アル・サーディ(UAE, 1967- )《案山子》 2013年

9. アブドゥル・ハイ・モサラム・ザララ(パレスチナ, 1933- )《人生は尊厳の闘い:殉教者サナーア・メーアイドリ》 1985 年


 ◆美術用語@ アプロプリエーション

 ◆美術用語A インスタレーション


3.まとめ

 ・現代美術主題分類システムの基本方針

―図書の主題分類法を参照する
―一貫性、相互排他性、包括性、段階性の4分類原則
―主題とは、知識の核となる部分を指す
―人物、事象、場所、時代、具体的活動、抽象概念など

 ・第12回シャルジャ・ビエンナーレ出品作品の主題

―表層の主題と深層の主題
―作品タイトルや図録等の作品解説から得られる情報
―今後の課題としての「段階性」